E meets G 05

Last-modified: 2009-05-30 (土) 00:02:37

第2発令所。そこは使徒殲滅を目的とするNERVにとって頭脳中枢、といっても過言ではない。
NERVの文字通りの頭脳、人格移植OSを搭載した世界初のスーパーコンピュータシステムであるMAGI。
MAGIも含め、対使徒に関しては、世界中の何処であれここ以上の施設は存在しない。
今、その第2発令所は、いつもにまして緊迫感と喧騒に包まれていた。
NERVはその創設以来初めて使徒以外の敵を迎え撃つ事になったのだ。

「第一搬入用ゲート、外来用ゲート完全に突破されました!侵入者多数!」
「D級以下の職員の避難は全て完了です!」
「セントラルドグマへの侵入は絶対に阻止しろ!隔壁はどうなっている?」
「隔壁の閉鎖全て完了です!・・・!?そ、そんな・・・第二隔壁、破られました!」

事態は思いのほか悪い。
何より状況がさっぱり判らない。侵入者の正体が判らない。
間違いなく判っているのは、このNERVに侵入してきたものがおり、奥を目指し侵攻している。
これだけだ。

「くそ!・・・葛城三佐と赤木博士は?チルドレンの安否は?・・・保安部は何をやってる!」

中央作戦司令部作戦局第一課、日向マコト二尉は苛立っていた。
こんな時に限って、頼れる彼の直属の上司と技術部の責任者は、地表にほど近い面会室におり、消息は不明。
チルドレンのうち二人は、これまた医療施設におり、安否は不明という踏んだり蹴ったりの状況だ。
しかも彼女達のいる場所は、敵の侵入箇所から程近く「敵」と遭遇している可能性はすこぶる高い。

「監視カメラを順次切り替えて、葛城三佐と赤木博士、チルドレンの安否を確認しろ!」

最悪の事態は努めて考えないようにした。
楽観的かもしれない。だが一人の男として考えたくは無かった。
・・・大丈夫ですよね。生きていますよね、葛城さん?

第2発令所。そこは使徒殲滅を目的とするNERVにとって頭脳中枢、といっても過言ではない。
NERVの文字通りの頭脳、人格移植OSを搭載した世界初のスーパーコンピュータシステムであるMAGI。
MAGIも含め、対使徒に関しては、世界中の何処であれここ以上の施設は存在しない。
今、その第2発令所は、いつもにまして緊迫感と喧騒に包まれていた。
NERVはその創設以来初めて使徒以外の敵を迎え撃つ事になったのだ。

「第一搬入用ゲート、外来用ゲート完全に突破されました!侵入者多数!」
「D級以下の職員の避難は全て完了です!」
「セントラルドグマへの侵入は絶対に阻止しろ!隔壁はどうなっている?」
「隔壁の閉鎖全て完了です!・・・!?そ、そんな・・・第二隔壁、破られました!」

事態は思いのほか悪い。
何より状況がさっぱり判らない。侵入者の正体が判らない。
間違いなく判っているのは、このNERVに侵入してきたものがおり、奥を目指し侵攻している。
これだけだ。

「くそ!・・・葛城三佐と赤木博士は?チルドレンの安否は?・・・保安部は何をやってる!」

中央作戦司令部作戦局第一課、日向マコト二尉は苛立っていた。
こんな時に限って、頼れる彼の直属の上司と技術部の責任者は、地表にほど近い面会室におり、消息は不明。
チルドレンのうち二人は、これまた医療施設におり、安否は不明という踏んだり蹴ったりの状況だ。
しかも彼女達のいる場所は、敵の侵入箇所から程近く「敵」と遭遇している可能性はすこぶる高い。

「監視カメラを順次切り替えて、葛城三佐と赤木博士、チルドレンの安否を確認しろ!」

最悪の事態は努めて考えないようにした。
楽観的かもしれない。だが一人の男として考えたくは無かった。
・・・大丈夫ですよね。生きていますよね、葛城さん?

第2発令所。そこは使徒殲滅を目的とするNERVにとって頭脳中枢、といっても過言ではない。
NERVの文字通りの頭脳、人格移植OSを搭載した世界初のスーパーコンピュータシステムであるMAGI。
MAGIも含め、対使徒に関しては、世界中の何処であれここ以上の施設は存在しない。
今、その第2発令所は、いつもにまして緊迫感と喧騒に包まれていた。
NERVはその創設以来初めて使徒以外の敵を迎え撃つ事になったのだ。

「第一搬入用ゲート、外来用ゲート完全に突破されました!侵入者多数!」
「D級以下の職員の避難は全て完了です!」
「セントラルドグマへの侵入は絶対に阻止しろ!隔壁はどうなっている?」
「隔壁の閉鎖全て完了です!・・・!?そ、そんな・・・第二隔壁、破られました!」

事態は思いのほか悪い。
何より状況がさっぱり判らない。侵入者の正体が判らない。
間違いなく判っているのは、このNERVに侵入してきたものがおり、奥を目指し侵攻している。
これだけだ。

「くそ!・・・葛城三佐と赤木博士は?チルドレンの安否は?・・・保安部は何をやってる!」

中央作戦司令部作戦局第一課、日向マコト二尉は苛立っていた。
こんな時に限って、頼れる彼の直属の上司と技術部の責任者は、地表にほど近い面会室におり、消息は不明。
チルドレンのうち二人は、これまた医療施設におり、安否は不明という踏んだり蹴ったりの状況だ。
しかも彼女達のいる場所は、敵の侵入箇所から程近く「敵」と遭遇している可能性はすこぶる高い。

「監視カメラを順次切り替えて、葛城三佐と赤木博士、チルドレンの安否を確認しろ!」

最悪の事態は努めて考えないようにした。
楽観的かもしれない。だが一人の男として考えたくは無かった。
・・・大丈夫ですよね。生きていますよね、葛城さん?

「第一搬入用ゲート、保安部担当から連絡入っています!双方向回線開きます!」

副発令所からの女性オペレーターの声に、はっと我に返るマコト。
やや感傷的になっていた自分を心中で叱咤する。
葛城三佐がいない今こそ、自分がしっかりしないでどうするんだ。

「正面に回してくれ!」
ややあって第一搬入用ゲートの詰所内の映像が映し出された。
その瞬間、発令所にいた全員が思わず息を呑んだ。
発令所に常駐する女性職員の何人かが、思わず視線を逸らしたのもむべなるかな。
そこはまるでバケツでブチ撒けたかのように、あちこちに血飛沫が飛んでいた。
後方に映る手が無かったり、脚が無かったりといった無惨な姿の骸は、全てNERVの制服を身に纏ったものばかり。
こちらを向いて画面の中心に映る男も、左腕で右肩の辺りを押さえており、その右腕は無かった。
その身に纏うNERV保安部の制服も、あちこちに乾いた血飛沫がこびりついている。
腕からの失血が激しいのだろう、顔色はまるで紙のように白い。

「一体何がどうなっている!?説明してくれ!」
マコトの声に、やや朦朧とした顔をしていた男は顔をこちらに向けると、荒い息を吐きながら話し始めた。
「見てのとおり・・・第一搬入用ゲートは・・・俺以外は・・・全滅だ。・・・奴等、隔壁を破壊しながら奥に向かっている・・・」
それは判っている。だが一体何者だというのだ?
「侵入してきたのは何処の国の連中だ?・・・戦自か?」
マコトの問いに、男は視線をやや空中に走らせた。
身震いしたその顔に、激しい恐怖の表情が一瞬浮かんだのが見て取れた。
「いや・・・敵は・・・何と形容していいのか判らん・・・少なくとも人類では無い・・・あれは・・・化け物だ」
惨劇の様子を思い出したのだろう、恐怖の表情を露にした男の呼吸は一層荒くなっていた。
だがマコトは男の言葉に一瞬呆然とした。
化け物だと?
だが、男の顔は無論冗談など言っている顔ではない。男の顔に浮かんだ恐怖が何よりの証だ。

「化け物、とはどういう事だ?使徒なのか?」
マコトの知る限り、化け物なんて言葉に該当するのは使徒くらいのものだ。
「おそらくは・・・あの化け物共は、使徒じゃない・・・火器の類いは・・・ないようだが、信じ難い身体能力と・・・生命力を持っている」
失血がより酷くなっているのか、男の口調は段々と掠れたように小さくなっていたが、マコトの言葉ははっきり否定した。

「・・・見ろ」
男が自分の右肩、腕の無い方を画面に向ける。
血塗れのその部分は、正直正視に耐える状態ではなかった。応急止血こそ施してはあったが、血が滴り落ちている。
その切断面は何か大きな力でもぎ取られたかのように、ズタズタになっていた。
「・・・奴等は・・・俺の、俺の腕を・・・喰っちまったんだ」
淡々と凄惨な内容を語る男の顔は、まるで熱にうかされたかのように朦朧とした表情だった。
と、男がこふこふ、と咳き込み、それでは収まらなかったのか、下を向いて嘔吐し始めた。
血が気管にでも詰まったのだろうか。
「ど、どうした!?しっかりしろ!」
明らかに見える男の死の兆候に、思わず声が上ずる自分を心中で罵りながら、マコトは男に声をかけた。

自分の声に応え、男がゆっくりと顔を上げた時、マコトは自分の心が根源的な恐怖に鷲掴みにされたのを感じた。
男は画面の向こうで、死が迫る人間から、何か別の生き物に変貌しようとしていた。

ぐるん、と白目を剥いたその眼球の色が、みるみるうちに黄色く濁っていった。
肌の色が急激に死体のように白くなり、更に灰褐色へと変化していく。
「・・・うおオウゲェエエ!おガウアアアア!」
意味不明の絶叫を上げながら、大きく開いた口から伸びる犬歯は、叫ぶその間にもみちみち、と音を立て伸びている。
食い千切られた、と言っていた腕が、まるでビデオで逆再生された映像のように見る間に復活していった。

そしてその額を突き破って、醜悪に捻じ曲がった角が現れた時、最早男は明らかに人ではない「化け物」と化していた。

「化け物」は画面をゆっくりと睨み、一声鋭い声を上げると、先ほどまでは無かった右拳を振り上げる。
最後に見えたのは、ごつごつと歪に盛り上がった毛むくじゃらの右拳が、画面一杯にアップになった映像だった。
大きな衝撃音と共に、画面はサンドストームに変わった。

先ほどまでの喧騒が嘘のように、発令所はしんと静まり返っていた。

「通信・・・途絶です・・・おそらく向こうの端末が破壊されました・・・」
女性オペレーターの蚊の泣くように小さい声は、恐怖に震えていた。
無理も無い。あれはあまりにショッキングな映像だった。
出来の悪いスプラッター映画のような光景。
映画だったら「気持ち悪かった」の一言で現実に戻るが、生憎と今はこれが現実だ。
あの「化け物」は何だ?
誰もが本能的に気がついている。確かにあんな化け物は使徒ではない。
そしてあんなモノが何故NERVを襲う?
あり得ない光景に思わず、マコトの口から声が漏れた。

「一体・・・何が起きているんだ」

そして気を失いそうな程ショッキングな映像を目の当たりにしながら、マヤは思い出し、気がついた。
これが、この化け物こそが、あの時NISERの面々が話していた怪物、「鬼」なのだ、と。

「・・・戦自、国連軍へいつでも応援要請出来るよう準備を!それとこの案に関しての賛否をMAGIに打診!」
意を決したマコトの命令に、一瞬発令所の中がどよめいた。
マコトにとってもこれは苦渋の決断ではあった。
NERVと戦自、国連軍は誰とても知る犬猿の仲である。
正直彼等をNERV内に入れてしまえば、それを機として何をしでかすか判ったものではない。
幾度かの衝突により、彼我の関係は、現在そこまで悪化していた。

だがそれを差し引いても現在のNERVにとって、この「敵」はあまりにも脅威である。
一言で言えば対抗できる手段がない。
NERVは一言で言えば金食い虫であり、その予算の殆どはEVAとそれに付随する内容に注ぎ込まれている。
どこの組織でも変わらない事だが、予算の緊縮は常に要求され、何処かにその皺寄せが出るのが常だ。
NERVの場合、保安諜報部の要員配置計画がその影響をもろに引っ被った形になってしまった。
具体的には保安諜報部の「保安」の方の能力は、必要最低限レベルまで落とされていた。

「敵」がどれ程の数で侵入してきているか、実際の戦闘能力が如何ほどなのかは判らない。
しかし「敵」は第一搬入用ゲート、外来用ゲートを突破し、隔壁も破壊している。
加えて「敵」はどういう手段かは知らないが、人間を自分達の仲間にする事が出来るようだ。
まるで伝承にある吸血鬼が人間の血を吸う事で、己の眷属を増やすように。
そういう相手には数で押し包んで殲滅するのが最良の方法だろう。
しかし現状のNERVの乏しい戦力では、火に油を注ぐようにかえって敵を増やしかねない。
加えてチルドレン二人と葛城三佐、赤木博士といったNERVの根底を支える貴重な人材が危機的状況にある。
そう。背に腹は変えられない。

「・・・MAGI判断出ました!条件付き賛成2、否定1です!」
MAGIバルタザール主任オペレーター、阿賀野カエデの言葉に、マコトは後押しされるように声を張り上げた。
「よし、戦自と国連軍に・・・」
「その必要はない」

頭上から降ってきた低く威圧的な声が、マコトの指示を途中で遮った。
「敵の撃退と殲滅に関しては、戦自や国連軍への応援は一切認めない。あくまでNERV内の戦力でこれを行う」
日頃耳にし、しかしいつ聞いても、未だ聞き慣れぬ声。
声に振り向けば、オペレータ席を見下ろす位置にある司令席に、NERV総司令碇ゲンドウが着座していた。
つい先ほどまではいなかった筈だが、いつの間にか司令席に着座していたようだ。

だが問題はそんな事ではない。
これ以上、敵をNERV内に侵攻させる訳には行かないのだ。
「しかし司令!現行の戦力では『敵』・・・の撃退はかなり厳しく、作戦本部としては・・・」
「これはNERV総司令としての命令だ。日向二尉」
ぐっと言葉が詰まる。
上司と部下である以上、その言葉が出てしまったら意見も何もない。
力なく視線を落とすと、同僚の通信・情報分析オペレーター、青葉シゲルがアイコンタクトを取ってきた。
おそらくは「もうこれ以上は楯突くな」とでも言っているつもりなのだろう。

「それと「敵」は使徒ではない。現時点よりあの侵入者を『侵略者(インベーダー)』と呼称する」
碇ゲンドウは自分の右手を、手袋の上から擦りながら、再び口を開いた。
そして言葉が終わるや、なんと司令席を離れ、昇降用リフトに歩み始めていた。

「司令!どちらへ向かわれるのですか!?」
「・・・ターミナルドグマだ。『侵略者』の撃退は君達に任せる」
シゲルの悲鳴同然の声を、ゲンドウは威圧的な視線と必要最低限の言葉でこれを封ずると、最下層目指して行ってしまった。

再び発令所を静寂が支配した。
口には出さないが、皆の思いは共通だったかもしれない。
そしてそれは誰もが決して口に出せない内容だった。
ふと気がつけば、発令所全員の視線が自分に向いている事にマコトは気がついた。
そうだ。
みんな俺の指示を待っているんだ。
・・・葛城さん。無事でいてください。
何とか、いや必ずやってみます。きっと手はある筈ですから。

最善、と思われた手段が司令から許可が下りなかった以上、出来る事からやっていくしかない。
マコトは両の頬をぱんと、両手で叩き気合を入れて、大声を上げた。
「・・・NERV保安部はチームとなって『侵略者』の撃退に当たってくれ!第三隔壁の突破は何としても阻止しろ!」
次に下層に向かって口を開く。
「現在の葛城三佐、赤木博士、チルドレンの位置は確認できたか!」
「シンジ君、アスカ共にアスカの病室である303号室にいます!」
「葛城三佐、赤木博士は現在面会室には確認できません!・・・現在近辺をチェック中です!」
「監視カメラの映像を逐一チェックしてくれ!葛城三佐、赤木博士、チルドレンの救出は最優先事項だ!」

最善の手段と思われる事はどんどん実行しなければ。
手遅れになる前に。

「保安チームをチルドレン救出、葛城三佐及び赤木博士救出、隔壁破壊阻止の三班に分けて・・・」

「!?・・・・・・日向二尉!」
マコトの声がまたしても、しかし今度はうろたえるような女性の声に遮られた。
声の主はクールなことで知られる筈のメルキオール主任オペレーター、最上アオイ。
「どうした?」
「あの・・・外来用ゲート奥、P6通路の映像です。・・・し、正面に出します!」
それだけ言うのが精一杯だったのか、キーボードを猛烈な勢いで叩き始める。

映し出された光景に、おそらくは発令所にいたほぼ全ての人間が唖然としたことだろう。
シゲルにいたっては、見た瞬間手に持っていた連絡用のコードレスフォンをあやうく取り落とすところだった。

スクリーンに映し出されたのは、通路を大挙して「侵略者」共が奥へと進んでくる場面だった。
「侵略者」は二十・・・体はいるだろうか?
だが何かがおかしい。ただ進んでいるのではなく、まるで何かに追われ、逃げているかのような勢いだ。
やがて画面に角を曲がり、巨大な銃を抱えた一人の男が現れた。
その男が現れるやいなや「侵略者」共は足を止め、咆哮を上げながら男に襲い掛か・・・ろうとしたが、全て男の打ち出す鉛弾の
餌食となっていった。
即座に逃げに転じようとした「侵略者」も、後ろから容赦なく冷徹に襲い掛かる鉛弾によって次々と仕留められていく。

信じ難い事だが、たった一人の男が「侵略者」共を蹴散らしていた。

埃に塗れたボロボロの野戦用コートを身に纏ったその男は、どう見間違ってもNERVの職員ではない。
薄汚れた赤いマフラーの様な布を首から顔にかけて巻いた浮浪者同然とも取れる格好だったが、男の持つ強靭で獰猛な雰囲気が、
男を浮浪者などには見せていない。
映像というフィルターを通してすら感じ取れるほどに、それは濃密な空気だった。
その手に持つ巨大な電動チェーンガン、何十年か前のアメリカのマチズモ全開な戦場ヒーロー映画にでも出てきそうな代物だ。
どうみても20kgを下らないであろう重量と、おそらく半端無い反動があるにも関わらず、男はそれを軽々と振り回している。
押し出し同様、破壊力は半端無く、弾丸が掠めただけでも「侵略者」の醜悪な頭がまるでスイカのように吹き飛んでいた。

そんな光景が自分の前の映像で展開されていても、マコトは自分の目が信じられなかった。
これは夢、かつて見た映画の夢を立て続けに見ているんじゃなかろうか?
さっきはスプラッター映画で、次は大昔の所謂戦場ヒーローもの辺りで。
マコトは本気でそう思いたくなってきた。

やがて弾丸が尽きたのか、男は頼みの綱とも言うべきチェーンガンをあっさりと投げ捨てる。
無数の弾着によりもうもうと上がる埃は「侵略者」がどういった状況にあるかの確認を困難にさせていた。
自分が「侵略者」だったらこれを好機と思うだろうな。
そうマコトが思った時、埃の壁を突き破り「侵略者」共は咆哮を上げながら、一斉に男に飛び掛っていった。
対する男は手にナイフ一本持っていない。
だが。
男は薄笑いすら浮かべ、悠々とコートの奥襟に手を突っ込み、黒光りするショットガンを一息に引き抜いた。
引き抜いた勢いのまま、無造作に迫り来る「侵略者」に向けるやいなや、次々と発砲する。
不用意に近づいた「侵略者」共は、黒い銃身に気がつき、慌てて回避しようとするが時既に遅し。
無慈悲な散弾が次々と「侵略者」共の頭を穿ち、無惨な屍の山を築いてった。

・・・程無くして、画面内で動くものは男のみとなった。

「一体誰なんだよ・・・敵では無さそう・・・だと思う、けど・・・」
歯切れの悪いシゲルの言葉には正直マコトも、そして発令所に詰める全員が心中で同意していた。
その男が纏う、兇悪で狂暴な雰囲気が「味方」という一言を口にする事を躊躇わせていた。
そんな中。
「・・・うーん」
訝しげな声にマコトはふと隣を見ると、血飛沫く光景に顔をしかめながらも同僚の伊吹マヤが画面をじっと見据えていた。
「やっぱり・・・あの人、間違いない・・・確か流・・・さん」
やっと心中の思いが定まったのか、ぼそりとマヤは呟いた。

「!?・・・伊吹さん知ってるの!」
シゲルが長髪を振り乱しながら、食って掛かる勢いで思わずマヤに詰め寄る。
「う、うん。今日・・・北海道のNISERからレイちゃんが来るって話あったでしょ。そのNISERの人」
勢いに気圧されながらも、マヤは水飲み人形のように何度も頷いた。
思わずマコトとシゲルは顔を見合わせる。
確かにそういえばそんな話もあった。ありましたよ。

そして当然の疑問が二人の脳裏に同時に浮かんだ。
・・・だけど何だってそんな人が、今NERVで重火器抱えて「侵略者」相手に大暴れしてるんだ?