Getter ALTERNATIVE 07

Last-modified: 2009-07-10 (金) 02:35:17

ゲートをくぐった先は宇宙空間、そして見たこともないBETAが待機していた。
目の前の空間全てを覆い尽くすほどの数。その中へまっすぐ武たちは突っ込もうとしていた。
いくらゲッターエネルギーを纏っているとはいえ、それは大火に飛びこむ羽虫と同じであった。
絶望的。だが進路を変えるほどのエネルギーはもう残されていない。
武たちの命運はココで尽きるほかなかった。
が、その時、武たちのすぐ隣に艦隊が出現した。
そして出現するやいなやビームを発射し、目前の敵を次々と殲滅してゆく。
「な、なんだアレは!? あれは…ゲッター!? いや違う…まさか凄乃皇、なのか?」
シャインスパークの光の中、武はそれが何か確認する。それは巨大な凄乃皇であり、それと同時にゲッターでもあった。
『ついに来たか。君たちがここに来たということは、君たちは地球の未来を切り拓いたようだな』
「この声は…」
巨大な凄乃皇から声が聞こえた。その声に武は聞き覚えがあった。
そんな中、その声に向かって竜馬が言う。
「なるほどな。どうやらここまで計算づくだったわけか。人が悪くなったなあ?」
『ははは。言わなかったことは謝りますよ。でも、もし言ってたら未来が変わる可能性があったんでね。
でも、よく考えたら言ってても貴方たちなら同じようにしてた気もします。
さて、白銀武、ここからはオレたちの戦場だ。元の世界への帰還用ゲートを君たちの正面に開く。
そのままつき進め』
「待て! お前は……!! いや、何でお前が!?」
武が声の主に叫ぶ。が、帰還ゲートが全面に出現し、吸い込まれるように武たちはゲートをくぐろうとする。
『お前が干渉した世界は無事に修復される。後の詳しいことは竜馬さんや純夏に聞け。
さらばだ白銀武。いや、遠い過去のオレ自身よ。またいつかお前はこの戦場に立ってるかもしれん。
それまで仲間たちを、純夏を大切にな』
「どういうことだ!? やはりお前は…」
武は声の主の正体に驚愕する。
自分たちを救い、ゲートを開いた人物が、武自身であったからだ。だがそれを武が理解する前に武たちはゲートをくぐり、救うことの出来た世界へと帰還してゆくのだった。

武たちが帰還したポイントはちょうどオリジナルハイヴの超高空の衛星軌道だった。
武はさっきまで自分がいた世界について考えていた。
遠い未来。BETAとの大規模な戦争。そしてそこに存在した自分自身。
なにもかもが謎で、考えてもさっぱり答えは出なかった。
「おい、武、聞こえてるか」
そこに竜馬からの通信が入る。
「あ、なんですか竜馬さん?」
「今からお前らのゲッターを自動操縦に切り替えるんだが、とりあえず伝えとこうと思ってな」
「自動…操縦?って何でですか?」
竜馬の提案に合点がいかず、理由を尋ねる。
「いや、お前らがクタクタだろうと思ってな。あとな…」
「あと?」
「…たく。みなまで言わすなっての。お前、鑑のことが気になってるだろうが」
「あ…!」
竜馬の気遣いにやっと気づき納得する。
つまりは、早く純夏に会いに行ってやれ、ということだった。
「竜馬さん、ありがとうございます」
「バーカ。当たり前だろうが。仲間なんだからよ」
そうですね、と軽く応えてから、武はゲッターのコクピットを離れ、機体内の移動装置を使って凄乃皇側へと乗り移った。
他のみんなの様子も気になったが、今は純夏のことが一番気がかりだった。
ODLの劣化、凄乃皇への過負荷、予想以上に純夏には無理をさせ過ぎていた。
もしかしたら…、そんな考えが脳裏によぎる。
「霞、大丈夫だったか? 純夏はどうしてる?」
そうこうしているうちに凄乃皇のコクピットへとたどり着く。
コクピットには自動操縦システムと霞しかいない。長い戦闘のためか、霞は疲れ切っていた。
「あ、白銀…さん。私は…大丈夫です。純夏さんなら、別室の専用シートの方にいます…」
「そうか。すまないな霞。お前もだいぶ疲れているのに…」
「いいんです。白銀さんが純夏さんのことどれだけ心配しているか、私にはよく分かりますから。
だから……。はやく純夏さんのトコロへ行ってあげてください」
そう言って霞は力なく微笑む。霞が、満身創痍なのは明らかだった。
だから武はもう一度、すまない、と口にし、純夏のいる00ユニット専用シートの所へと急いだ。

「純夏!大丈夫か!!」
00ユニット専用シートルームへ着くや否や、武は大声で純夏の安否を確認する。
部屋の中央には純夏がいると思わしき装置があった。
「た、ける…ちゃん?」
するとそこから純夏の声が聞こえてきた。
武はすぐに駆けつけ、装置を覗き込む。
「純夏!…無事、だったんだな」
純夏の姿を確認し、無事だったことを知ると、武は涙を浮かべながら純夏を強く抱きしめた。
「痛いよたけるちゃん…。うん、大丈夫だったよ。本当はもう機能停止してたはずなんだけど…、なんだかゲッターに助けられちゃったみたい」
「ゲッターに助けられた? 一体どういうことだ?」
ゲッターに助けられた。その言葉にどういった意味があるのか、武には皆目見当がつかなかった。
だが、そういえばあの世界の“オレ”はあとは全部純夏か竜馬さんに聞けと言っていたな、ということだけは思いだした。
「私が今こうしてタケルちゃんと話せるのはね、ODLをゲッター線によって浄化出来たからなの。
本当は横浜基地にあったBETAの、反応炉によって浄化してたんだけど…。
でもそれがなくなって、ODLの劣化も限界を超えて、桜花作戦終了までもつかどうかだった。
けれどそんな私を救ってくれたのがタケルちゃんとゲッター線だったの。
タケルちゃんのこの星を仲間を、私を救いたいっていう気持ちが、ゲッターの力を引き出したんだよ」
「そんな、まさか…」
半信半疑と言った様子で武は純夏の言葉を聞いていた。
それを察したのか、純夏が続ける。
「嘘じゃないよ。だってこの作戦中、私はずっとゲッター線に触れてたんだから。
ゲッターはタケルちゃんの前進しようっていう意思に反応したの。
最後のシャインスパークだってタケルちゃんの意思が弱かったらあそこまでのエネルギーは引き出せなかったよ。
まあ、あの時だけは竜馬さんたちも力を貸してくれていたけどね」
「そうか。純夏がそう言うんならそうなんだろうな。
そうだ、純夏、ゲートをくぐった世界のオレが言ってたことは?」

「それなら、あのタケルちゃんの言ったとおりだよ。ゲッター線ってのは本当にすごいんだね。
実はタケルちゃんをこの世界に呼び込んで、因果導体にしていた原因は私だったの。
ハイヴに脳だけで囚われてた私のとりとめのないタケルちゃんに会いたいっていう意思と、ハイヴに落とされた2発のG弾のエネルギーが反応して、
タケルちゃんを元の世界からこっち側に引きずりこんだの。
だから私が存在する限り、武ちゃんは因果導体のままだったの…」
「なんだって…。そんな、純夏が死ぬ必要があった、てのか?」
純夏の口から明かされた事実に愕然となる。まさか自分の運命を縛り付けていたものが純夏だったとはとても信じられなかった。
「ごめんね…。私がタケルちゃんに会いたいっていう思いが、タケルちゃんを苦しめる結果になっちゃって…。
でも、それもゲッター線の力が解決しちゃったの。
タケルちゃんがゲッターを信じてたおかげかもね。ゲッターもタケルちゃんのことを信じてくれてたみたい。
でもそのおかげで、ゲッターは私がタケルちゃんの因果導体にしている鎖を断ち切ってくれたの。
その断ち切る事の手助けをあっちのタケルちゃんもしてくれたみたいだけど。
あの世界のタケルちゃんは、これからゲッターとともに戦い続けた先に存在するひとつの可能性。
どうしてタケルちゃんがあんなに遠い未来でも生きてるのかは分からなかったけどね…」
「……」
純夏の説明を武は静かに聞いていた。
あの自分が何故ああなったのかは分からなかったが、なんにせよ、彼のおかげで純夏と自分は助かったのだということは分かった。
「でも、ごめんね。私のせいでタケルちゃんを苦しめてて、ほんとに、ごめん……」
純夏は話し終えると、自責の念からか泣きだしてしまった。最愛の人を苦しめていたのが自分だったことをその本人に明かした辛さもあったのだろうか。
そんな泣きじゃくる純夏を武は強く抱きしめた。
「いいんだ。純夏。そんなのどうだっていい。お前やみんな、それにオレが無事だったんだ。それだけで十分なんだよ」
「うん、ありがとうタケルちゃん…」
そしてそのまま二人はしばらくの間静かに、そして強く抱き合った。

武が純夏に会いに行っている途中に、武と竜馬たち以外の隊員もようやく目を覚ましていた。
「うう、ここは? さっきのは一体?」
「よう御剣、ようやくお目覚めか。さっきのはこの世界の未来、つーより似たような世界の未来だ」
「それって一体どういうことなのかしら? 私たちに分からないのに何故あなた達が知っているの?」
「それは俺から説明しよう」
そして隼人が冥夜たちに事の次第を話し始めた。
安倍晴明の正体と自分たちの関係。
飛んだ先のあの世界がこの世界の未来の可能性のひとつであること。
横浜基地で自爆した自分たちを時空を超えて回収し、命を救ってくれたのが未来の武であること。
そしてこの世界へ再転送してもらい、助けに来たこと。
全てを話し終えるのにそう時間はかからなかった。
なぜなら彼女たちもシャインスパークの時にゲッター線にふれ、心ではなんとなく理解していたからだった。
「――以上だ」
「ふわああ、信じられないくらい、すっごいスケールの話だねぇ」
隼人の説明が終わるといの一番に美琴が驚きの声をあげる。
「ハイ、まさか私たちの戦いがそんな異世界や未来とも関わりがあったなんて…」
「驚き…。」
「ははは! おめえらが驚くのも無理はないぜ! オレ達だってはじめは信じられなかったんだからよ!」
皆の反応が想像通りだったのがおかしいのか、弁慶が大声をあげて笑う。
「そんなに笑うことなかろう武蔵坊! しかし、我らの想像をはるかに超えているのは事実だな」
「異星生命体と戦ってるかと思ってたら、実は異世界の敵と戦ってたなんてね。
驚きすぎて呆れてきちゃうわよ」
千鶴がやれやれといった様子でため息をつく。
そうこうしているうちに、武がようやく純夏の所から帰ってきた。
「みんな、無事で本当に良かった。竜馬さんたちから話は聞いたろうけど、その先は基地に帰ってから話そう。
今は早く基地に帰って副司令や他のみんなに俺達の元気な姿を早く見せてやろうぜ」
武の言葉にそれぞれがうなづく。
細かいことより、自分たちが帰るべき場所へ早く戻ることに反対するものなどいようはずがなかった。
そしてゆっくりと9機のゲットマシンと凄乃皇の連絡艇は基地へ帰投していくのだった。