「お互いの気持ち」 (89-196)

Last-modified: 2008-05-11 (日) 23:43:26

概要

作品名作者発表日保管日
「お互いの気持ち」89-196氏08/05/1008/05/11

 
※このSSにはオリジナルキャラが登場します。
 原作に忠実な作品をお望みの方は閲覧に注意してください。

作品

俺の高校生活も、2年目に入ってからそこそこの日数が経った。
思えば去年の今頃からSOS団という最早ここまできたら説明不要の団体に入れられ、俺の生活は変わったんだったな。
まず最初に「キングオブ自己中」という呼び名が宇宙一似合うであろう、SOS団団長、涼宮ハルヒに出会った。
そして無意識のうちに俺はコイツにアドバイスを注いでしまったお陰で、SOS団が結成されてしまった。
その後俺は「宇宙人」「未来人」「超能力者」と名乗る方々とお近づきになることになった。
まぁ、なんだかんだでそのような奇想天外な生活を楽しんでいる俺だった。なぜそう思ったか?
進級の時に「ようやく2年になった」という感覚ではなく「もう2年か」という感覚を俺はもったからだ。
 
 
そんなことを思い返しながら、俺は教室の席に着いた。
「よぉ」
高校生活はじまって以来、ピッタリと俺の後ろをマークしているハルヒにいつもの挨拶を交わす
「フン、相変わらず遅い登校ね」
俺が思うにお前が早いだけだと思うのだが
なんて思ってるうちにチャイムがなり担任の岡部が入ってきた。
…そうだな、俺が遅いんだ。
 
 
「えー、今日は新しいクラスメイトを紹介する。じゃ、入って」
なんだなんだ、転校生か?去年の今頃も確か変な奴が入ってきたよな。まさか今年は異世界人の登場か?
しかし、そんな俺の不安はすぐに消え去ることになった。
おどおどしながら教室に入ってきた転校生は自己紹介をはじめた。
「えぇと…転校してきました、初平美希です。よろしくお願いします」
正直に言おう、可愛い。
背は160手前あたりといったところか。髪は肩のちょっと下まであるセミロング。
整った顔立ちに、キレイな細い足。文句なしだ。…って俺は谷口か。
とにかく、朝倉涼子のようなクラスのマドンナ的な存在になるのも時間の問題だろう。
「それじゃ、皆なかよくするように。えぇとじゃあ…初平さんは席が空いてる窓際の一番前へ」
「え、あっ、はい!」
ああ、期待したよ。俺の隣に!とな。多分クラスの男子のほとんどが期待したんじゃないか。
なんなら俺の後ろに座ってる奴とトレードという形でもよかったんだけどな。
よりにもよって一番前か…まぁ、遠くから眺める後姿というのもまた一興だな…
「何にやけてんの?このエロキョン!」
俺は慌てて声が聞こえた方を向く。どうやら俺は自分の世界に行っていたと同時に顔面の方が崩壊なさってたらしい。
「ふん、どうせ近くになりたかったな。とか考えてたんでしょ」
考えていたとも。何が悪い。
「別に。アンタなんかじゃあんな可愛い子と釣り合う訳ないわよ」
そういうとハルヒは教室を出て行った。まったく、余計なお世話だ。
この後谷口あたりがよってきて「キョン!ありゃトリプルAランクだ」とか言い出すんだろうな。
俺から言わせれば、アイツこそ釣り合う訳ないんだがな。
 
「キョン!ありゃトリプルAランクだ!」
ほらな。言ってきた。
「見てみろ、早速女子の集団が周りにできてる。こりゃファンクラブ創設も近いな」
まぁコイツが会員番号01になるのは目に見えているな。
そういう俺も20番台あたりにいることになるのかもしれないが。
「それにしてコイツ、隣なんて羨ましいぜ。な?キョン」
ん…、そういや、転校生のえーっと…、初平さんといったか。の隣は国木田だったか。
「ああ、そうだな。」
「いやぁ、でも緊張するよ。何話したらいいかわからないし。」
「いいか、国木田。緊張してるのは相手も同じ。まずは積極的に話しかけるんだ。そして仲良くなったところで俺を紹介だ」
何バカなこといってんだか。そう思ってたんだが、数時間後の弁当の時間にいきなり国木田が
「そうそう、初平さんと仲良くなったんだよ。友達ってことで、キョンと谷口を紹介しといてあげたよ」
と、完全な上から目線で偉そうに言ってきた。コイツはいつからこういうキャラになったんだ?
なぁ、お前から何か言ってやってくれ、谷口。
「よくぞやってくれました国木田様!!」
ダメだこりゃ。
それから俺は午後の授業を睡眠時間にあてることに成功し、放課後になった。
ハルヒの奴はなにやらやることがあるみたいで急いで出て行った。
俺も部室に朝比奈さんのメイド姿を拝みにいくかな。そう思い席を立ったんだが、後ろから声をかけられた。
振り向くとそこには、転校生の初平さんがいた。
「あの、国木田くんから聞きました。キョンくんですよね?」
「えぇ、まぁ」
「キョンくん、有名人なんですって?しかも学校外にも知られてるみたいで」
「いや、まぁ有名というかなんというかですね…」
という感じで俺は、なんだかんだで初平さんと教室で話し、放課後を楽しんだ。
お互いの事を話したり、SOS団の概要について話したり。
SOS団の話をしてる時は、彼女は笑ったり、驚いた表情をみせたり、それはもう、凄く可愛かった。
「へぇ~、キョンくんと涼宮さんは付き合ってるんですか?」
俺は思わずイスから落っこちそうになった。
「いや、それは誤解ですよ。アイツといると、そりゃもういろんなとこ連行されるし
壮大な迷惑をかけられるし、とにかく疲れます。
おそらく付き合うと今の2倍は疲れるでしょうね。絶対にムリですよ俺には」
と口ではいいつつ、俺は頭の中でハルヒと付き合ってるシーンを思い浮かべた
…やっぱり疲れるな。というよりも、今の生活とあまり変わらない気がするな。
「涼宮さんちょっとしか見てないけど、美人さんだよね。スタイルいいし」
アイツは黙ってれば美少女なんだがな。というかあなたも充分美人です。
「キョンくん結構カッコイイし、お似合いだと思うんだけどな~」
この後、俺は照れ隠しをしながら会話を進めたのは言うまでもない。
聞くところによると、彼女は今まで付き合ったことがないらしい。もったいない。
おそらくこの後告白ラッシュがきますよと忠告したところ「えぇー、そうですかぁ?」
と、少し照れたような笑顔をみせた。ああ、わかってる。可愛かった。
その後もだらだらと会話をしていたのだが、なぜか話題は髪型の話になった。
俺は少々戸惑ったが、ポニーテールが好きということを彼女に伝えた。
「ポニーテールかぁ…あんまりやんないんだよなぁ」
といいながら、右手を後ろにまわして髪を束ねた。「どうかな?」
可愛い以外の単語が見つかりませんよ初中さん。
そしてゴムではなく右手で髪の毛を束ねているその姿がまた可愛かった。
「似合ってますよ」
「ホントに?じゃあ明日はこれでこようかなぁ~」
ええ、是非。明日だけといわず毎日お願いします。
「毎日~?でもキョンくんのお願いなら…あ」
「どうしました?」
彼女の視線の先を見る。そこには、ドアの前で怒ったような表情を浮かべているハルヒがいた。
しかしハルヒの表情から次第に怒りの色が消えていき、寂しげな表情に変わった。
「キョンのバカッ…」
小さな声でそういうとハルヒは走っていった。
俺はイスに座りながら固まっていた。
おそらくハルヒは俺と初中さんが楽しそうに話しているのをみて怒ったんだろう
なぜ怒ったか?なぜ寂しそうな表情を浮かべたか?
俺は気付いていた。ハルヒの俺に対する気持ちに。同様に、俺のハルヒに対する気持ちにも。
「いってあげて、キョンくん」
「すみません、初中さん」
そういい、俺は教室を飛び出した。
廊下の窓から、ハルヒが歩きながら部室棟に行くのが見えた。
手を目の部分にあてているが、泣いているのか…。あのハルヒが。
俺は全速力で階段を下り、部室棟を目指した。
ハルヒには悪いかもしれないが、初中さんには感謝だ。
ようやくハルヒに気持ちを伝えようと思えた。もういい、全部ぶちまけてやる。
 
 
部室棟に入ると、階段の脇でハルヒがうずくまっていた。
おそらく、泣いたまま部室にはいけないというハルヒの強がりだろう。
俺はハルヒの隣にしゃがみこんだ。
「ハルヒ」
ハルヒは涙を拭いながら、俺の方をみる
「何よ、教室で楽しく喋ってなさいよ。あんたもあの子も楽しそうだったじゃない。
いいわ、アンタをSOS団から解放してあげる。あの子と楽しい学校生活を送りなさいよ。
よかったわね、彼女ができて。かげながら応援してるわ。皆にも伝えておくから」
コイツ、ボロクソいってくれるな。だが、俺はコイツ以上にボロクソ言わなきゃいけないんだよ。
俺はハルヒの肩をつかみ、一呼吸した後、ハルヒに言った
「ハルヒ、きいてくれ。俺はお前が好きだ。教室で初中さんと喋ってるよりもお前と一緒にいたほうが何倍も楽しい。
お前といると、いろんなとこ連行されるし、壮大な迷惑をかけられるし、とにかく疲れる。
でもな、何よりお前といれるってことが俺は楽しい。いろんなとこ連行してくれ、壮大な迷惑かけてくれ
なんなら3日動けないくらい疲れさせてくれたっていい。お前がそばについててくれればな。
俺をSOS団から解放しないでくれ。ずっとそばにいさせてくれ。」
ハルヒは驚いた表情で俺の方をみてる。そりゃそうだ、大声でこんなにいろんなことを言われたらな。
「なにいってんのキ」
俺はハルヒの言葉をさえぎり話した
「もう1度いう。ハルヒ、俺はお前が好きだ。そしてハルヒ、お前も俺が好きだろ?
俺が彼女にしたいのはお前だ。俺と付き合おう。これからも一緒にバカやっていこう。
皆には俺から伝えるから。皆に応援してもらいながら仲良くやっていこう。
もちろんSOS団は継続だ。SOS団としての時間もとりながら、二人の時間もつくっていこう。」
あぁ、言い切ったよ。溜まってたもんを全て出した。
「…キョンのくせに何いってんの?アタシがアンタを好き?そ、そんなの誤解よ。
でもまぁ、キョンが付き合ってほしいっていうんなら付き合ってあげなくもないわ。
でも、さっきキョンが言ったんだからキョンからしっかり皆に伝えてもらうわよ。私たちが付き合うってことをね」
そういえば、言ったような気がするな。まぁ、この際いいだろう。「俺たち、付き合うことになった」といえばいいんだから。
「それはいいが、ハルヒ。俺がお前に言ってお前が俺に言わないって言うのはどうかと思うぞ
「わ、わかったわよ…。キョン、アンタが好き。アタシはキョンが大好きよ。」
今日初めてみた100Wの笑顔だった。そうだな、この笑顔が見れるから、俺はハルヒのために何でもやってきた。
「ホラ、はやくドアあけなさい」
俺たちは階段を上り、部室の前まできていた。
「アンタもしかして緊張してんの?情けないわね~」
こいつ、自分から言わないのをいいことに余裕の表情みせやがって
「じゃあエネルギーを注入してあげる!」
そういうとハルヒは背伸びして俺の頬に唇をつけた。
「頑張りなさい!あたしのキョン」
今度はハイビスカスのような笑顔をみせながら手を握ってきた。まったく、上機嫌になったもんだ。
俺は意を決してドアをあけた。
「お、ハルにゃんおかえり~。あ、キョンくんも!」
今日に限って鶴屋さんがいる…これは誰の罠だ?
「今日顔をあわせるのは初めてですね。どうされましたか?」
後はいつものメンバー全員出席といったところだ。
「いや、その、ちょっとお知らせが」
全員の視線を浴びる。なんというかこれは、言い出しにくいな。
「涼宮さんとお付き合いをすることになった。とか言い出すつもりですか?」
コイツはまるでわかっていたかのような変な笑みを浮かべながらそう言った。
「…古泉、お前なぁ」
「お、キョンくん?それマジなの~?いや~今日はお祝いだねっ!」
「キョンくん本当ですかぁ?わぁ~凄い。いいなぁ~」
3年生コンビが顔をあわせて盛り上がっている。あぁ…古泉に言われちまった。
今思うと、やっぱり自分の口から言えばよかったな。
「…あなたの口から直接聞いていない」
「そういえばそうですね。長門さんの言うとおりです」
長門、これは俺にチャンスをくれたと捉えていいのか?
「ホラ、キョン!はやくいいなさい」
そういうとハルヒは俺に近づき「さっきエネルギーを分けてあげたでしょっ」と囁いた。
「そうだな…」
俺はあらためて皆に視線を落とす。
とりあえず、今日は鶴屋さんが言ったように、お祝いをしてもらいたい気分だな。
ま、暇人の集まりだから、夜もどうせ暇だろう。とにかく、お祝いの目的を俺の口から伝えなきゃな。
「俺たち付き合うことになった」