おじいちゃんの思い出 (123-102)

Last-modified: 2010-08-01 (日) 00:29:45

概要

作品名作者発表日保管日
おじいちゃんの思い出123-102氏10/01/1710/01/22

作品

今日は高校生活2回目の冬休み初日だ。
昨年の夏休みの最終日に俺の分の宿題をSOS団員が総出で片付けるハメになった反省を活かし、いつの間にか俺の長期休暇の宿題を初日に片付けることが恒例行事となっている。
今日もハルヒと2人がかりで宿題をすべて片付けることとなった。
俺の頭の回転と手際の悪さでもハルヒの熱血指導によってどうにか今日のうちに宿題をすべて片付けることができていた。
 
俺もはじめこそは、初日から無理に飛ばして宿題をすべて1日で片付ける必要なんてないだろう、なんて考えていないでもなかったのだが、いざ片付いてみると、何というか随分と心に余裕が持てるというか、体中に絡まっていた鎖から一気に解放されたかのような気分だ。
いつも無茶で理不尽な行動によって俺の体力や財力を奪っていくハルヒにも、長期休暇初日ばかりは感謝せねばならんだろう。
 
「ああもう!あんたほんっっと頭悪すぎよ!連立方程式くらいまともに解けないと大学受験で泣きを見るわよ!!」
などと雄叫びを上げながらも、最後まで一緒に宿題を片付けてくれた。
もう夜中の10時半じゃないか。
…そういえば今日は田舎から祖父母夫婦がうちに泊まりにきていたはずだな。
だがほぼ一日中ハルヒと部屋にこもっていたからまだ会ってない。
年寄りだし、もう寝ちまっているだろう。
仕方ない、明日の朝一番に挨拶しにいこう。
 
キョン「ハルヒ、こんな夜中まですまなかったな。」
ハルヒ「まったくだわ!あたしだけなら夕方には終わるのに、こんな時間になっちゃったじゃないの。感謝しなさい!」
キョン「そうだな。ありがとな、ハルヒ。」
ハルヒ「…ふんっ、分かればいいのよ。……ちょっとお手洗いを借りるわ!」
 
ハルヒはガバッと立ち上がると駆け足で出て行った。
何だか顔が赤かったが、もしかしたら風邪でも引いたのか?
こんな夜中までがんばらせちまったからな。
そのせいで体調を崩したとしたらかなり申し訳ないことをした。
…そういえば夕方に国木田から着信があったんだっけ。
勉強中だったから出なかったが、この時間ならギリギリセーフだろうし、かけ直して用件を聞いておくか。
 
国木田『……もしもし、キョンかい?』
キョン「おう、国木田。さっきは出られなくて悪かったな。」
国木田『いや、いいよ。こっちこそ忙しいときにごめんね。』
キョン「それで、用件は何だったんだ?」
国木田『まあ、報告というか……。昨日、うちのコジローが弱ってるって話しただろ?』
キョン「お前んちの柴犬だな。」
国木田『昨日の夜に死んじゃったんだ。』
キョン「まじか。…気の毒にな。」
国木田『せっかく明日お見舞いに来てくれるって言ってくれたのに、ごめんね。』
キョン「いや、それは気にするな。…そういうことなら墓参りにでも行くさ。」
国木田『うん、そうしてあげてよ。きっとコジローも喜ぶよ。キョンには随分懐いていたからね。』
キョン「そうだな。俺も一緒に遊ばせてもらったからな。」
国木田『お墓はうちの庭の目立つところに作ったからすぐ分かるよ。』
キョン「そうか。ところで、コジローは何才くらいだったんだ?」
国木田『20才くらいだよ。』
キョン「そんなにか。俺が中学のときには既に老犬だったからな。」
 
…と、ここまで話した時点でハルヒが部屋に戻ってきた。 
国木田『人間でいうと何才くらいだったんだろうね。』
キョン「そうだな。結構なおじいちゃんだったからな。寿命だったんだろうな、死んじまったのは。」
国木田『じゃあ、明日待ってるから。』
キョン「おう、わざわざすまないな。じゃあおやすみ。」
国木田『おやすみ。』
 
電話を切ると、ハルヒがおもむろに話しかけてきた。
 
ハルヒ「……亡くなったの?」
キョン(そういえばハルヒも国木田の話を聞いていたんだっけな。)
キョン「ああ、昨日死んじまったんだ。」
ハルヒ(そっか、キョンのおじいちゃん亡くなったんだ……。)
ハルヒ「そうなの。それはご愁傷様だわね……。」
キョン「明日早速墓参りに行ってくるよ。」
ハルヒ「墓参り?!もうお墓出来てるの?!早いわね。」
キョン「そうだぞ。ちゃんと庭に埋めたらしい。」
ハルヒ「庭に埋めたの?!今までずっと不思議探索してきたけど、庭に埋めるその風習がまさに不思議だと思うわよ?!」
キョン「そうか?コジローもその方が喜ぶと思うんだがな。」
ハルヒ(キョンって、亡くなったおじいちゃんを呼び捨てにしてたのね。)
ハルヒ「うちも、あたしが小学生のときに亡くなっちゃったのよ。」
キョン「そうだったのか…。いざいなくなってみると、寂しいもんだよな。」
ハルヒ「そうなのよねー。…実は、このカチューシャ、形見なのよ。」
キョン「形見?!その方がよっぽど不思議と言えるぞ!!」
ハルヒ「ああ、もちろん本人が付けてたわけじゃないわよ。」
キョン「そりゃそうだろうとも。」
ハルヒ「お前に似合うだろうって、買ってくれたの。」
キョン「買ってくれたのかよ!!」
キョン(ハルヒの変態パワーにかかると何でもアリなんだな!!)
ハルヒ「あたしが小学生の頃も両親が忙しくて、代わりに授業参観とか来てくれたのよ。」
キョン「授業参観に?!目立たないか?!」
ハルヒ「そりゃあ、周りは若いお母さんたちばっかりだったからね。」
キョン「いや、そういう問題じゃなくてだな、種類というか…。」
ハルヒ「あと、昔うちでも猫飼ってたんだけど、猫の世話とかするのが好きでね。」
キョン「猫の世話ぁ?!ケンカしないのか?コジローなんか庭に野良猫が入ってきただけで噛みついてたぞ。」
ハルヒ「噛みついてたの?!猫に?シャミセンにも?!」
キョン「いや、コジローとシャミセンは会ったことがないぞ。」
ハルヒ「あ、そうなの。そりゃあ危なくて会わせられないわよね。…ああ、一番の思い出といえば、一緒にキャッチボールしてくれたことかしら。」
キョン「キャッチボール?!キャッチボールなんてどうやってやるんだ?!」
ハルヒ「そりゃキャッチボールだから、ボール投げ合うのよ。」
キョン「投げ合うのか!?じゃあ、投げ返してくるのか?!」
ハルヒ「投げ返してこなきゃ、キャッチボールにならないでしょ。」
キョン「いや、コジローなんて投げたボールを口でキャッチするくらいだぞ。」
ハルヒ「口でキャッチ?!そっちの方がすごいわよ!」
キョン「いや、コジローに限らず普通はそうだろう。」
ハルヒ「コジロー基準で考えてちゃいろいろやばい気がするわ。」
キョン「かわいい奴だったな。一緒に遊んでると俺のところに寄ってきて、俺の顔をペロペロー、ペロペローって舐めるんだよ。」
ハルヒ「気持ち悪いわよ!あんたそういう趣味あったの?!」
キョン「そういう趣味とは何だ!だがそうか。
ハルヒはそういうの苦手な方なのか。」
ハルヒ「当たり前じゃない!!」
キョン「あと甘やかしすぎたんだろうな。一緒に散歩をしてると、道の至る所でウンチとかしちまうんだよ。」
ハルヒ「道で?!それしつけとかそういう次元の話じゃないわよ!」
キョン「商店街のど真ん中でされたときはびっくりしだぞ。」
ハルヒ「そりゃびっくりするわよ!何考えてんのよ!」
キョン「あんときは国木田も慌てて掃除してたな。」
ハルヒ「あんたがやんなさいよ!なんで国木田に押し付けてんのよ!」
キョン「もちろん俺だって一緒にやったぞ。」
ハルヒ「……キョン、あんたきっと頭使いすぎて疲れてんのよ。ココアでも淹れてきてあげるから待ってなさい。」
キョン「いや、いくらハルヒでも俺の宿題に付き合わせた上にそこまでさせるのはさすがに悪い。」
ハルヒ「いいの!気にしないで待ってなさい!団長命令!!」
 
ビシッと言い放つと、ハルヒは部屋を出て行った。
1分くらい待ってると、ドアが開いた。
やけに早いな、と思っていると入ってきたのは祖父だった。
 
キョン祖父「おお、久しぶりだな。しばらく見んうちに大きくなって。」
キョン「じいちゃん!久しぶりだな。うるさくしててごめんな。眠れなかったろ?」
キョン祖父「いや、気にするな。それより、さっきの娘さんがハルヒちゃんって子か?」
キョン「知ってたのか。」
キョン祖父「あの娘さんは今にきっと美人になる。取り逃すなよ。」
キョン「じいちゃん。ハルヒはそんなんじゃないぞ。」
 
と、言ったところで再びドアが開いた。
 
ハルヒ「キョン、おまたs」
ガシャーーーーーーン!!!!!!
 
ハルヒは豪快にココアが入ったマグカップを床に落としやがった。
あーあー、何てことしやがる、と言おうとしてハルヒが顔面蒼白で固まっていることに気づいた。
 
キョン「おいハルヒ、大丈夫か?!やっぱり体調がわr」
ハルヒ「キョン!!コ、コ、…コジ、コジローが……」
キョン「え?コジローは死んじまったんだからここにいるわけないだろ。」
ハルヒ「よ、よ、…横!キョンのよ横!!」
キョン「んー?……右にも左にも、
ついでに後ろにもコジローなんていないが。」
ハルヒ(あたしにしか見えないんだわ!!いや、確かに本物が出てきてほしくて不思議探索でいろいろ心霊スポットとか探検したけど、ま、ま、まさかキョンの家でいきなり本場のほんm)
キョン祖父「あなたがハルヒさんか。いっつも孫が世話になっt」
ハルヒ「キャーーー!!たすけてーーーーーー!!!!!!!!」
 
終われ
 
 
元ネタ:アンジャッシュのコント「サブローの思い出」