概要
作品名 | 作者 | 発表日 | 保管日 |
お題「博物館で」 | 124-411氏、413氏 | 10/02/21 | 10/02/25 |
お題 (411氏)
博物館でキョンの目は絵画や骨董品に釘付けになって置き去りにされたハルヒ
作品 (413氏)
「……ほぅ」
思わず口から漏れるのは、感嘆のため息だ。
綺麗な女の人がそこには描かれていた。
えー、これは……聖母マリア、の絵らしい。
……ちなみに俺は今、某所で開かれているルネサンスだかフィレンツェだかの有名画家美術展に来ていて、それを見ている。
来る経緯は古泉のわざとらしい無料券の提供やら何やらがあったが、それは割愛させていただこう。
「……ん?」
まぁ古泉の名前が出た時点でお分かりだろうが、俺はここに一人で来た訳ではもちろんなく、ハルヒが一緒に来ていた。
来ていた、はずなのだが……
「ハルヒ?」
いない。
それと同時に、俺は言い知れぬ不安感に襲われた。
どうにもあの12月以来、俺はハルヒを見失うと動揺してしまう体質になってしまった様だ。
少なくとも、走ってアイツの姿を探す位には。
けれど、今回はそう息切れせずに済んだ。
すみのベンチに腰掛けていたハルヒを俺はすぐに見つける。
「おい、ハルヒ!勝手にどこか行くなよ」
「……なによ」
心配するだろ、と言おうとして、
「……俺が構ってくれなくて、退屈だったか?」
出てきたのは違う言葉だった。
でも、当然だと思うね。
こんなしょんぼりした、寂しそうなハルヒを見せられたら、俺の心の方が痛むってもんだ。
「なっ……!あたしは、別に、」
「ほら」
手を、思わず差し伸べる。
そっと笑いかけた。
「今度は、一緒に回ろう」
「……っ」
団長様は一瞬何かをものすごい勢いで考えていたが、やがて躊躇いがちに、それでも俺の手を握ってくれた。
「……ありがと」
僅かにはにかんだその笑みは、くらくら目眩がする程に、聖母マリアの笑みが霞んで見える程に、綺麗だった。