とある勇者の非日常風景 (119-304)

Last-modified: 2009-10-19 (月) 23:36:09

概要

作品名作者発表日保管日
『とある勇者の非日常風景』119-304氏09/10/1909/10/19

作品

本日も快晴。絶好の冒険日和であるが。
何故だろう、全く冒険に出る気がしないのだ。
それは俺の横をしかめっ面で歩いている女性が原因だのだが。
 
「何よあの商人ったら『成功報酬から損害分引かせてもらいます』
だなんて、あたし達をなめてるのかしら。」
「しかたないだろ?依頼の積荷は護れたが他に損害だしちまったんだから。」
「だからって報酬を減らすなんて契約する時は言ってなかったじゃない!!」
「そうだろうが、口であの手の人種に勝てるのか?いやお前だったら勝てるだろうが
世間体は考えろ。お前の持ってる肩書きで問題起こせば、最悪依頼が来なくなるぞ。」
「分かってるわよそれくらい。ふん!コレならこんな肩書き貰うんじゃなかったわ。」
 
そういって肩を怒らせてドスドスと大股で歩いてる女性。
名前を『ハルヒ』と言う。
そして俺は・・・なんというか本名よりあだ名が知られてるのであえて『キョン』と名乗ろう。
 
俺達は俗に『冒険者』と呼ばれる仕事をしている。
もっとも正式な仕事かというと厳密には難しいがこの『カドカワ王国』では意外にありふれた職種だった。
もちろん、個人個人はそれぞれ本来の肩書きを持っているのだが大きな意味で『冒険者』で問題ない。
さて、今回商人のキャラバンの護衛といった初歩的なクエストをこなしたのだが・・・
我が『SOS団』の団長たるハルヒがモンスター退治の際に商隊に被害を出してしまったので
成功報酬が引かれてしまったのだ。その事で直談判にハルヒが乗り込んだものだから、さぁ大変。
結局半額になるところを7割で手を打ってもらったがハルヒの勢いなら絶対全額請求するところだ。
 
「全くそんなに必死にならなくても金には困らんだろ?」
「何言ってるのよ!!お金なんて幾らあっても足りない位よ、寧ろあって然るべきよ。」
「だからって無理強いはよくないぞ。」
「だから分かったって言ってるじゃない。・・・はぁ~。ところで有希やみくるちゃんは?」
「長門は魔術師ギルドだ。最近はクエストに出るなとか釘を刺されてるらしいがな。
 朝比奈さんは神殿だ。帰ってきたから報告に行くんだと、それと鶴屋さんのとこにも顔だすって。」
「古泉君は?」
「小銭稼ぎに広場に行くって言っていたな。」
「ふ~~~ん。なら古泉君のところに行ってみましょうか。」
「そうだな。長門も朝比奈さんも後から来るだろうしな。」
 
そういって俺達は広場に向かった。
だが今思えば行かないほうが良かったと俺は思った。
少なくとも俺とハルヒは同意見だと信じたい
 
俺達が広場で見たもの。それは多くの女性に囲まれた古泉と、そして古泉が演じる詩であった。
 
〔美しき勇者と勇ましき戦士。彼女と彼は互いをパートナーと認め信頼していました。〕
 
(・・・ねぇキョン。これなんの詩かしら?)
(分からん。古泉レベルだと自分で創作するのもザラだから今回もそうだろうさ。)
 
〔勇者はしかめっ面で戦士に言いました 『如何して分かってくれないのよ!!』 〕
 
(勇者の癖にしかめっ面って。)
(・・・俺は良く見てるがな。)
 
〔戦士は困り顔をで応えるのです 『やれやれしょうがないな』 と〕
 
(・・・変な戦士に誰かに似て。)
(誰かって誰だよ。)
 
〔あぁこんなにも愛し合っているのに何故想いは届かない!何故想いは通じない!!〕
 
(どうやら勇者と戦士ってできてるみたいね。)
(なんだそりゃ。それにそんな要素あったか?)
 
〔あぁ偉大なら我が国の勇者よーー!あぁ猛々しい我が国の大戦士よーー!!〕
 
(へ?)
(はぁ?)
 
〔何時か叶うだろうと願うー二人の切なき想いーーー!!!〕
 
と一頻り古泉が詩い終えた後には大きな拍手とそして
俺達は見詰める多くの瞳があった
中には『勇者様に早く気持ちを伝えなさいよー』とか『勇者様がんばってー』等
黄色い声援まで飛び交っていた
 
「ちょ、えっと。」
「ま・待ってくれ今のは古泉の創作の上での話であって。」
「・・・問題ない。その婚礼ならギルドは承認する。」
「おめでとう御座います。早速、式の段取りをしましょうね。」
「なんだいハルにゃんにキョン君そうならそうと言ってくれないと、国賓招くのも大変なんだよ。」
「お二人の想いを詩にしてみましたが大盛況のようですね。流石はこの国の勇者と大戦士です。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。」
「俺達は未だそんな関係じゃ!!」
「・・・“未だ”なら何れは成るという事。」
「なら善は急げですよ。」
「隣国にも使者を出して盛大にいくっさ!」
「後、エルフやドワーフなどの族長にも文をしたためないといけませんね。」
「「だから人の話を聞けーーー!!」」
 
結局こうなっちまった。
まぁ確かに何時も隣にはハルヒが居るし、ハルヒの隣には俺が居た。
まだハルヒが駆け出しの頃からずっと一緒にやってきた。
ハルヒに対して特別な感情がないかといえば嘘になる。
だがまだ時期尚早というか、こんな勢いや流されて見たいな事は勘弁願いたかった。
だから俺は隣にいるハルヒの手を掴んだ。
 
「逃げるぞハルヒ!」
「ふぇ!!」
「まだお前は世界を盛り上げたりないんだろ?俺だってそうだ此処で身を固める話をされても
お互いのためにならんからな。此処は一先ず逃げる!」
「わ、分かったわよ。そのかわり確りあたしをエスコートしなさい!何たって勇者なんだから。」
「ヘイヘイ。」
 
そう未だ俺達はやりたい事があるし、世界を見ても回りたい。
そんなの身を固めても出来るかもしれないが今は未だこの関係が丁度いい。
まだ俺達の冒険は終わってないのだから。
 
そうだよなハルヒ
「あったりまえよ。ねっキョン!!」