ツンデレラ (94-24)

Last-modified: 2008-07-18 (金) 11:46:18

概要

作品名作者発表日保管日
ツンデレラ94-24氏08/07/1508/07/17

作品

SS「ツンデレラ」ジャン・フォルジュロン作
 
シンデレラと言う物語を皆さんご存知でしょう。継母と姉に苛められて生きてきた少女「シンデレラ」が魔法使いに衣装と馬車を貰って舞踏会に出席し王子様に見初められるが
12時に魔法が解けてしまうため名前も名乗らず去ってゆき、その時ガラスの靴を落としてしまう
それを見つけた王子はガラスの靴を手がかりにして探したがその靴は誰も履くことができない、
そしてある家で貧しい姿をした娘に履かせてみたところ、ぴったりサイズが合って二人はめでたく再会し結ばれる。
今にして思えばその時のハルヒは魔法にかかっていたのかもしれない・・・
 
アレはいつの事か良く覚えていないが、高校時代の出来事であったのは間違いない
俺と古泉の将棋は最終局面を向かえ、朝比奈さんはメイド衣装のままで編み物をしており、長門に至っては珍しく童話集なんぞを読んでいた放課後のひと時だった。
「嫌な予感がするな・・・」
俺がつぶやくと長考に入っていた古泉が顔を上げた。
「何故です?ここまで来ればあなたの勝ちは固いでしょう」
「いや、その事じゃなくて何事も無い平和なこの時間の事だ」
「まるで事件でも起きることを予期してるかのようですね」
「当たり前だ、今まで起きた事を考えれば、そろそろ厄介ごとが始まる頃だろ」
「そういえば涼宮さんはどちらへ?」
「知らん、だがもうじきドアが勢い良く開いてあいつが仁王立ちしている姿が見えるような気がする」
「僕もそう思います。しかし、あなたはそれを楽しみに待っているのではないですか?あの素晴しい笑顔を」
俺は古泉の言葉を受け流し、最後の一手を指した。
「ほら王手だ、無駄な抵抗はやめて投了しろ」
「参りました。なかなか勝てないものですね、いつの日かあなたを追い詰めて投了させたいものです。」
「ゲームに関してなら構わんが、それ以外のことは勘弁してくれよ」
古泉は将棋をかたずけながら団長席の方を見て意味深な笑みを浮かべる。
「魔法でも使えれば簡単な事なのですがね」
「おまえらだけでも充分に非常識なのに今度は魔法使いか?余計な事をハルヒに吹き込むなよ」
「魔法使いでなくとも女性に魔法を掛ける事は可能です。あなたがその気が有ればの話ですが」
「遠慮しておく、あいつはメタルスライムみたいな奴だからな、魔法はおろか通常攻撃だって効きはしない」
「それは涼宮さんを自慢しているのですか?倒せたときの喜びが大きい事と、メタルスライムが自分の前から逃げない事を」
絶妙の切り替えし、何故これがゲームでできないのだ?
俺が返答に困った姿を古泉がニヤニヤしながら見ている。誰かこの状況を打ち破ってくれ
そんな俺の願いが通じたのか、それとも嫌な予感が的中したのか「バン!」と大きな音をたてて部室のドアが開いた。やれやれ・・・
 
「みんな、シンデレラをやるわよ!」
 
いきなり何を言い出すんだ?毎度のことながらこいつの提案は何の脈絡も無く突然である。
「ハルヒ、わけがわからん、とりあえず事情を説明しろ」
「あたしが通ってた小学校で観劇会を予定してたんだけどね、なかなか劇団が見つからなくて困ってたみたいなのよ」
「どこからその話を聞きつけてきたんだ?」
「あたしが家庭教師してあげてる近所の男の子、昨日その子と小学校に行って校長と話つけてきたのよ、その子の親父さんPTA会長でもあるから許可が出たわ」
おそらく、突然校長室に突入され、日ソ不戦条約をいきなり破棄された関東軍の如く成すすべも無く無理やり話を通されたのが実情であろう
黙って俺とハルヒのやり取りを聞いていた朝比奈さんが口を開いた。
「あのう、涼宮さん?劇をするのはわかりましたけど、なんでシンデレラなんですかぁ」
「いい事聞いてくれたわね、あたしは死亡遊戯とかやりたかったけど校長からのリクエストなのよ」
まあ、小学校の観劇会で燃えよドラゴンを上演されるよりシンデレラの方が子供たちも楽しめるだろう。
俺は古泉に視線を送るが、奴は微笑んだまま微かに首を振った。どうやら「機関」の仕込みではないらしい
「でも衣装や道具類、あと役者やスタッフなんかが足りないぞ、俺たち五人だけじゃ無理だろ」
さて古泉、おまえの出番だ
「全ての機材は僕のほうで用意させて頂きますよ、新川さんたちの劇団に頼めば簡単に揃うでしょう」
まるでドラえもんのポケットだな、「機関」がハルヒの望んだ役を演じる劇団と言う考え方もできるが
「さすが副団長ね!雑用係とは大違いだわ。でもSOS団だけじゃ役者が足りないから非常動員をかけるわよ、みんな頑張ろうね」
100ワットの笑顔で目標に向かって走り始めたハルヒを止める事ができる奴なんてこの世の中いるのだろうか・・・
 
さて、場所は変わって鶴屋邸の大広間、ここには大きな舞台があるので練習場にと鶴屋さんが場所を提供してくれた。
非常動員と言ってもいつもの面子、名誉顧問に谷口と国木田、そして昨夜俺から話を聞き自ら志願した我が妹とその親友、以上10人でシンデレラを演じる事になった。
「全く、急に鶴屋さんの家に来いって言うから何事かと楽しみにしてたのに、まきぞえにしやがって・・・」
その口ぶりとは裏腹に谷口がにやけているのは、朝比奈さん、長門、鶴屋さん、といった美少女が揃っているからだろう。(ミヨキチをいやらしい目でみるな!)
「でも、劇をやるなんて小学校以来だよ、なんか楽しくなってきた。配役は決まってるの?」
国木田、楽しんでくれて嬉しいが配役はおろか、脚本だって出来てないぞ一体どうなるのだ?
そして舞台に全員揃うとミーティングが始まった。
「あたしたちが上演するからには最高のシンデレラにするわよ!目標は大きくブロードウエー進出!」
「おいハルヒ、目標を持つのは構わんが配役すらまだ決まって無いのだぞ」
「うん、それだけど古泉君、王子様役、みくるちゃん、シンデレラ役をお願いね」
やっぱりそうきたか、シンデレラは朝比奈さんでおそらく魔法使いは長門、俺は谷口を一緒に馬車でも引くかね。ハルヒは監督で舞台には上がらないだろう
しかし古泉の返事は信じがたいものだった。俺の知る限り古泉がハルヒの依頼にNOと応えたのはこれが初めてのはずだ
「僕は構いませんが、それでは映画の時と同じ様なものになってしまいます。SOS団団長の涼宮さんとしてはマンネリは避けたほうがよろしいかと」
「じゃあ、どうすればいいの古泉君?」
古泉はハルヒに近寄り、何事か耳打ちしている(顔が近いんだよ!それ以上ハルヒに顔を近づけたら殺すぞ、マジで)
古泉の話を聞いたハルヒは伝染されたかの様にニヤリと笑った。
「それは面白いわね、それで行きましょう」
ハルヒはメモ用紙を取り出すと何かを書き込んでいる。猛烈に嫌な予感がしてきた。
そしてそのメモ用紙を俺に渡す。おい、一体これはどういうことだ?
渡されたのは4本線のアミダくじ、下の部分は折り曲げられており見ることが出来ない
「あんたたち男4人で名前を書き込んで、あたりが出たらその人が王子役よ」
そんな事でよいのか?古代ギリシャではくじ引きで政治を行ったなんて野球大会のとき聞いた事があるが今度もくじ引きか
俺、古泉、谷口、国木田それぞれが名前をアミダくじに記入した。それを手に取った古泉はハルヒに声をかける
「では、これから別室にて王子役を決めてきます。女性の皆さんはこちらで待機していてください」
「わかったわ、楽しみにしてる」
そして古泉は俺をみてニヤニヤしている、何をたくらんでやがる、このイケメンペテン師は
谷口と国木田は先に別室へと移動し、俺と古泉は二人でそちらに向かっている
「おい、何でこんな厄介な事をハルヒに吹き込んだ。おまえが王子役でいいじゃねえか」
「くじの結果がそのようになれば喜んでお受けしますよ、しかし僕には当たりません」
「何故だ?」
「あなたもわかっていますね、涼宮さんが提案したくじには偶然はありません、全て彼女の希望通りになります。彼女が本心で王子役を演じて欲しい人に当たるでしょう」
「だってさっきはおまえを指名しただろう、それが希望じゃないのか?」
古泉は俺の質問に答えず。先に別室に行ってしまった。
 
数分後 
王子役が決まり男性陣は舞台へと戻ってきた。
「誰が王子役に決まったの?古泉君!」
古泉おまえの予想も当てにはできんな、谷口と同じぐらいハルヒが望んでいない奴が王子様になっちまったぞ、閉鎖空間が発生したら自業自得だ。
「はい、決まりました。全く問題はありません」
ハルヒは目を輝かせているが、すぐに憤怒の表情に変わるだろう
「彼です。」
古泉は俺の方を向いて言ってしまった。やれやれ・・・どうなることやら
「なんでよりによってこいつが王子様なのよ!」
俺もそう思う、おまえは正しい。しかし普通そこまで言うか!
「でもまあ仕方ないわね、情けない王子様なんてのも新鮮でいいかも」
ハルヒは明らかに愕然としており、なかばヤケクソである。しかし顔が赤くなっているのはなぜだ?
そして古泉が俺に信じられんことを依頼した。
「王子、あなたに主役を決めて貰います。女性たち6人の中から、あなたが最も自分の相手にふさわしいと思う人を指名してください。答えは明日で結構ですから。」
気分は王子様の従者だ。最初からこれを狙っていたんだな、将棋の仕返しにしては強烈すぎる。投了するから勘弁してくれ
「キョン、明日までに決めてきなさいよ、あたしは監督ではやく練習を始めなきゃならないんだから、有希やみくるちゃんたちに迷惑かけないでね!」
そういい残しハルヒは先に帰った。
俺はサ○ラ大戦の○神隊長か?あんなに恋愛フラグを無節操にたてまくらないし、優柔不断でもないぞ、おや、「同じようなものだろ!」と神の声が聞こえる
やれやれ、俺は誰を選べば良いのだろうね?
 
後編に続く

後編

古泉が言った。
「では男性の配役を先に決めましょう。」
男性の配役はあっさりと決まった。王子様の従者は古泉、舞踏会に出席する貴族に国木田、馬車を引く馬の役にはあいつしかいない
 
「そう言う事だ、頼むぞ谷口」
 
散々嫌がった谷口ではあったが、古泉の
「男性が少ないので、舞踏会のシーンでは主役以外の方と踊っていただけますか?」
との言葉に乗せられ、あっさり了解した。
そんな男たちから離れ、ハルヒを除いた5人に王子様は囲まれている
 
「あのうキョン君、私はどんな役でも構いませんから、本当に演じて貰いたい人を選んでくださいね・・・」
朝比奈さん、その涙目はやめてください懇願してるのと同じです、俺だってあなたがシンデレラならどんなに幸せな事か、やっぱり朝比奈さんに決めようかな
 
そして長門は童話集を大事そうに胸に抱きしめながら俺を見つめ続けている。全く迷いの無い水晶のような目だ
「この本にも「シンデレラ」は書かれている、彼女の心理状態に非常に興味がある・・・」
長門にやらせてみるのもいいかもな、感情を表現することや、大きな声で話すことを覚えてくれるかも知れん 
 
「キョン君が誰を指名するのか、めがっさ楽しみっさ!」
鶴屋さん・・・俺は楽しんではいませんよ、でも鶴屋さんだったら、モデルのようなスタイルの良さ、う~ん迷うな、贅沢な悩みだ。あの長髪をポニテにしたい
 
「あの、お兄さん私に演技なんて出来るでしょうか?自信ないです・・・」
観客は小学生だし主役も小学生の方がいいかも、つたない演技でも、それは俺も同じだ。
外見は小学生では無いがミヨキチ相手なら気楽にできる。
 
「キョンくん、だれをシンデレラにするの?」
妹よ、おまえとハルヒだけは絶対指名しないから安心しろ
「あたしじゃなくていいから、ちゃんと、くうきよんでね」
おい、空気嫁とはどういう意味だ、俺に何を期待している?
 
結局その日は結論は出ず、俺が部屋で寝転んでいると携帯が鳴った。
「キョン!はやく電話に出なさい、何でいつも切る寸前まででないのよ」
「おまえはいつも5コールぐらいしか鳴らさないだろ!一体何の用だ!?」
「監督として主演女優が誰になったか早く聞きたいのよ、やっぱりみくるちゃん?それとも有希?ひょっとして鶴屋さん?小学生はやめときなさいよ」
「まだ決めてねーよ」
「そう・・・早く決めなさいよ!あんたが王子じゃシンデレラ役がかわいそうだから、監督として慰めてあげなくちゃいけないんだから!」
「わかった。明日のミーティングで発表するよ」
「5人のなかから誰を選ぶのよ?あんた優柔不断だから期待しないで待ってるわ。」
「おい?女性は6人だろ誰かひとり抜けてるぞ」
「えっ、そう・・・、あんたの考えてるのは6人の中の誰かなんだ・・・」
そして電話は切れた。あいつは誰を忘れていたのだろう・・・
再び携帯が鳴った。
「夜分遅く申し訳ありません。衣装の事で報告しておく事があります。」
「古泉、俺の衣装はどうだっていいぞ」
「いえ、王子様の衣装は特別なので早めに頼んでおきませんと間に合いません。制服のサイズと同じでよろしいですか?」
「さすが「機関」俺の制服のサイズまでご存知か」
「はい、先程あなたの衣装とシンデレラの衣装のサイズを森さんに報告しました。期待していてください」
なにか引っかかる。おい待て古泉!
「俺はともかくシンデレラ役は決まって無いのに、どうやって発注したんだ?まるで俺が誰を選ぶのかわかってるみたいじゃねえか!」
電話は切れていた。一体誰のサイズでシンデレラの衣装を発注したのだ?
 
その翌日、ハルヒの様子はいつもにも増しておかしかった。ぼんやりと外を眺めているかと思うと、突然ニヤニヤしたり、憂鬱な表情を浮かべたり
何か気になる事でもあるのだろうか?谷口に心当たりはないかと聞いてはみたが
「キョン、それ自慢か?うらやましくなんかねえぞ」
と力なく答えながら「花の慶次」なんぞを読んでいる。馬車を引くのに松風は必要ないから変な事古泉にリクエストするなよ
 
そして放課後
舞台に集合した全員は俺の発表を待っている。
左から鶴屋さん、朝比奈さん、長門、ミヨキチ、妹とならんでおり俺を見つめている
おや、ひとり足りないぞ、舞台裏から声が聞こえる
「嫌よ!なんであたしも並ばなきゃならないのよ、」
そうか・・・あいつがいなかったな
「涼宮さん、あなたも納得したルールですよ。団長たるものルールは守らねばなりません」
裏でごねていたハルヒを何とか説得し古泉が舞台に連れてきた。そしてハルヒは俺を睨みつけながら言った。
「あんた、馬鹿なこと考えるんじゃないわよ!ふさわしい人に決めなさい!」
「わかった、わかった、早く並べ」
これで全員そろい合計7人、あれっ?
おい古泉!おまえは並ばなくていいぞ、てゆーか離れろ、気持ち悪い
「残念です・・・」
薄気味悪い笑顔を絶やさずに、古泉は列から離れた。(おまえまさか本気じゃないだろな?)
 
そして俺は意中の人物を発表しようと口を開いたとき、列の端っこでふて腐れていたハルヒが大声を出した。
「はやく言いなさいよ!このバカキョン、あんたの下手な演技に付き合わされるシンデレラの役が誰になるの!?」
頭にきた。ふざけんな、俺の演技が下手なのは認めるが、おまえはどうなのだ!?そして頭に血が上ったせいで信じられん事を言ってしまった。
 
「おまえは映画の時だって役者に無茶な注文ばかりしてただろ!たまには舞台にあがって役者の苦労も味わってみろ」
「うるさい!あんたに何の権限があってそんなこと言うのよ、あたしは団長であんたは雑用係よ、団長の命令は絶対なのよ!」
「よし!団長の命令は絶対守るぞ、王子様役がシンデレラを決めるとの提案を了承したのは団長自身だな!」
ハルヒは俺を睨みつけており、今にも襲い掛からんと身構えている。
そして言ってしまった・・・・勢いって奴だ、他意は無い  多分・・・
 
 
「ハルヒ、おまえがシンデレラをやれ」
 
 
その空間が動きを止めた、古泉、バイトがまもなく入るぞ、しかし俺を恨むなよ自業自得だ。
「バ バカキョンなんであたしなのよ!?みくるちゃんでも有希でもいいじゃない!」
ハルヒは顔を真っ赤にして抗議の声を上げるが、誰も反対意見はない、あるのは俺の後悔だけだ。
「あたしもハルにゃんのシンデレラみたいなぁ~」
妹よ、選んだ俺が言うのもなんだが、何故そんなものがみたいのだ?
「あたしもそれが一番と思っていたっさ!」
鶴屋さんは満面の笑顔で賛成する。
「・・・予想はしていた。」
長門は少し悲しげな目で持っていた本を見つめている。
「涼宮さん、頑張って下さい。きっとキョン君の中ではこの選択が規定事項だったはずですよ」
朝比奈さん、俺がハルヒを選んだのは頭に血が上ったからで、今は後悔しています。
 
その様子を谷口と国木田はあきれ返った表情で見ている。
「みんながそう思うなら仕方ないわね、わかったわよ」
ハルヒは渋々了承した。
「では皆さん、主演女優が決まったところで配役をすべて決めてしまいましょう」
古泉は俺の選んでしまったシンデレラに驚く様子も無く、話を進めてゆく
議論の末、配役は以下のごとくになった。
 
シンデレラ ハルヒ
王子様   俺
魔法使い  長門有希
継母    鶴屋さん
姉     朝比奈さん
馬車馬   谷口
貴族    国木田
貴婦人   ミヨキチ
司会    妹
 
以上の配役でシンデレラを演じることになり、照明や音声などの係はコンピ研にやらせる事に勝手に決めた。
「脚本ですが通常のシンデレラでは面白くありません、涼宮さんの個性が発揮できる物を僕が書いてきますから、お任せください」
古泉がオリジナル脚本と演出も兼任する。まあ孤島の例もあるし期待しておくか
 
その日の帰り道、妹とミヨキチは先に帰っていたため、俺はハルヒと二人で帰った。朝比奈さんは鶴屋さんと衣装合わせ、古泉と長門は脚本を書き始めている。
「キョン、本当にあたしでよかったの?・・・」
「今更変更はできないだろ、他人を演じてみるのも楽しいものだぜ」
「あんたがいいなら、それでいいけど・・・」
そういい残しハルヒは去っていった。
 
翌日、朝っぱらから珍しく古泉が5組の教室にやってきた。
「脚本が出来上がりました。涼宮さんにも渡しておいてください」
プリントされた紙をホチキスでまとめたシンプルな脚本の表紙には誤字があるようだ
「古泉、表紙の字を間違えてどうする、長門は気づかなかったのか?」
古泉は首を振り答えた。
「いえ、間違いではありません、その題名のほうが涼宮さんらしいと思い変更しました。」
「そうか?あいつとは少し違うと思うが・・・」
「とぼけているのですか?あなたが最も良くわかっているでしょう」
古泉は2冊の脚本を置いて教室を出て行った。入れ違いにハルヒが教室に入ってくると俺の机にあった脚本を一瞥し驚きの声を上げた。
 
「なによこれ?「シンデレラ」じゃなくて「ツンデレラ」になってるじゃない!?」
「古泉いわく、おまえにぴったりな題名だそうだ、俺には意味がわからんがな」
ハルヒは脚本を読み終わると100ワットの笑顔をみせる。
「さすが古泉君、こっちのほうが面白いわ。王子様があんたなのは不満だけど楽しくなってきたわよ」
 
やれやれ・・・、そんなわけで全てが決定し、俺たちは連日の稽古のすえ、人にみられても恥ずかしくない程度には演じることができるようになった。
そして観劇会当日、日曜にもかかわらずたくさんの児童たちがあつまり東小体育館にて
SOS団特別公演「ツンデレラ」の幕が揚がった。
もう一度だけ言わせてくれ
 
ハルヒはこの時、魔法にかかっていたかもしれない
 

公演

「みんな、こんにちは、きょうは北高のお兄さんとお姉さんがみんなのために、劇をみせてくれるよ、それでは「ツンデレラ」の始まり始まり~」
 
第一幕 郊外のツンデレラの家にて
 
長髪の母親と巨乳の姉が美しい服をきているのに、ツンデレラはみすぼらしい服を着ていてかまどの掃除をしているため灰まみれだ
「ツンデレラ、お掃除はまだ終わらないのかなっ?」
「すいませんお母様、もうすぐ終わります」
「ツンデレラ、かまどの掃除が終わったら今度は水汲みをおねがいしますぅ」
「ゲホ、ゲホ、あの晩御飯は?食べていいのですか?」
「そんな灰まみれの汚い娘は、あまり物でも屋根裏で食べてるがいいっさ」
「そんな・・・はい、わかりました。」
 
ツンデレラはお父さんが亡くなったあと、ずっと意地悪な継母と姉に苛められて生きてきました。そんな彼女には夢がありました。
 
「寒いわ、でも水汲みを早く終わらせないと、また怒られちゃう」
 
もうすっかり夜もふけてきており北風が吹く寒い中、ツンデレラが井戸から水を汲み上げていると、よれよれの制服をきた兵士がどこからかやってきました。
 
「すまん、お城への道はこの道沿いでいいのかな?暗くて道に迷ってしまってね」
「この道でいいのよ、あんたほんとにお城の兵隊?こんな簡単な道を迷うなんて」
「ありがとう、なんでこんな寒い中、娘ひとりでしかも夜中に水汲みなんてしてるんだい?」
「あたしは家の厄介者だからどんなお仕事でもやらないと生きていけないの・・・」
「そうか・・・じゃあちょっとその桶をかしてくれ」
「なにをするの?」
「道を教えてくれたお礼に水汲みをするよ、そこで休んでいろ」
 
兵士は強引に桶を受け取ると井戸から水を汲み始めました。その様子を黙ってみていたツンデレラは地面に木の枝で何かを書き始めている。
 
「水汲み終わったよ、ところでさっきから何を書いているんだ?」
「魔法陣、あたしが考えたの、魔法使いに「私はここにいる」ってメッセージを書いたつもりなんだけど」
「なんで魔法使いを呼びたいんだ?」
「ここにいても毎日がつまらないから、魔法使いに会えれば凄く面白いことを体験させてくれそうじゃない!お母様やお姉さまにはバカにされるけど・・・」
「魔法使いか・・・面白いな!俺も毎日が退屈でうんざりしてたんだよ、もし魔法でもかけて貰ったら教えてくれ」
「わかった、教えに行ってあげる」
そして魔法陣も書き終わり兵士は去ってゆく、
「ちょっと、あんた名前を教えてよ!」
少しの間、兵士は返答をためらったが、やがて大きな声で教えてくれた。
 
「俺の名前はジャン・フォルジュロン、覚えておいてくれよ!」
「わかったわ!あたしの名前はツンデレラ、絶対忘れちゃだめよ!」
 
その出来事からしばらくたったある日の事、ジャンと出逢ってからのツンデレラはいつかお城で働いている彼に会いにゆく目標ができていきいきと働いていました。
「ツンデレラ!今日はお城で舞踏会があるっさ、なんでも王子様のお妃を選ぶのも兼ねてるらしいにょろ、ドレスの準備を早くするっさ!」
「おかあさまぁ、前のドレスじゃ、もう胸がきついですぅ」
「それでいいっさ、王子様にアピールして何とか玉の輿に乗るにょろ」
「わかりましたぁ、男なんて単純だから、胸の谷間だけであっさり鼻の伸ばしてニヤニヤしてる。簡単ですぅ」
めったにお城に出かける機会なんてありません、どうしてもジャンに逢いたいツンデレラはお願いしました。
「あの、あたしも舞踏会にいかせてください・・・」
継母と姉は急に笑い出し、そして怒りました。
「何言ってるっさ?ただでさえ邪魔なのに、お城になんてつれてゆくつもりはないにょろ」
「そうですぅ、あなたは灰にまみれてお留守番してるのがぴったりですよぅ」
二人はツンデレラに目もくれず舞踏会に行ってしまいました。
「あたしもお城に行きたい、一目でいいからジャンに逢いたい・・・お願い、魔法使いさん、あたしはここにいるからお城に連れてって・・・」
 
井戸の脇でツンデレラが祈っていると突然、以前書いた魔法陣が光りだしました。
「ななな、なにが起きたの!」
おどろいたツンデレラの前には、黒いマントと黒いとんがり帽子を身に着けたショートカットの女の子が立っていました。
 
「・・・私は魔法使いである」
 
めずらしく大きな声で魔法使いが登場してきた。
 
「本当?本当に魔法使いなの?」
「・・・正確に言えば、それに近い存在」
(余計なアドリブ加えるなよ長門)
「あなたが私を呼んだ、それが私がここにいる理由」
「じゃあ、お願いがあるの、あたしを舞踏会に連れてって、王子様はどうでもいいけどお城にいるジャン・フォルジュロンに逢いたい」
「・・・そう、しかし私はあなた以外の人間の前に姿を見せられない」
「せめてドレスを着させて、あたしはお父様が買ってくれたガラスの靴しか持ってないの、ドレスを着ればお城に入れるわ」
「わかった・・・」
魔法使いが、スターリングインフェルノを軽くかざすと、ツンデレラの家に光が差し込んだ。
「あなたの部屋にドレスを用意した。着替えてから、かぼちゃをひとつ私のところに持ってきて」
「ありがとう、すぐに着替えてかぼちゃを持ってくるわ!」
 
数分後、ツンデレラは美しい女性に変身していた。白いドレスに身を包み、髪は後ろで縛ってある。どんな男も秒殺されるだろう。
「これからお城に行ってくるわね」
「待って・・・そのままでは不自然、馬車を用意する」
ツンデレラから受け取ったかぼちゃ持って魔法使いは舞台裏に下がった。さあおまえの出番だ頼むぞ谷口!
黒い馬体で白いたてがみをした間抜け面の馬が小さな馬車を引いて姿を現した。かぼちゃを象った馬車には司会の役では飽き足らなかった従者が乗っている。
「これでお城まで行けば誰も怪しまない、早く行きなさい」
「ありがとう、魔法使いさん!」
ツンデレラが馬車に乗り込むと馬が嘶いた。
「ヒヒーン!俺はこんな役ばっかりだ!」
余計なアドリブを加える谷口、だがそれがいい、それでこそ谷口ではあるまいか
「待って、私の魔法は12時に解けてしまう。それまでに帰ってくることを忘れないで」
魔法使いの助言を受け取ったツンデレラは一路王子様ではなくジャン・フォルジュロンの待つお城へと向かっていった。
 
第二幕 舞踏会会場にて
 
お城の舞踏会場ではきらびやかな衣装を身にまとった貴族たちが踊っている。
小柄な貴族と年のわりには大人びている貴婦人が以外にお似合いだった。そして継母は先程まで馬車を引いていてはずのスケベ面と踊っており、姉は立派な服を着て微笑んでいるイケメンと踊っている。(頼む、俺と変わってくれ)
姉は王子様とおぼしきその紳士にアピールするべくわざとふらついて抱きついてしまった。
「ごめんなさい王子様、緊張しちゃいましたぁ」
上目遣いで王子様を誘惑していた。(ひょっとしてこれが中の人の本性なのか?)
しかしイケメンは首を振りそれを否定する。
「僕は王子様ではありません、側近のイツキと申します。王子はまもなくこの会場に姿を現すと思いますが・・・」
そのときラッパが鳴り、姉から離れたイツキの声が響いた。
「わが国の後継者、キョン王子が来場されました。!」
入ってきたのは豪華な衣装を着崩した冴えない男だった。やる気のなさそうな表情を浮かべため息をついている(古泉、これも仕返しか?)
 
そのとき美しい女性が舞踏会場に入ってきたが、王子と同じようにその顔色は冴えない
 
「はぁ・・・せっかくお城に来たのにジャンはどこにいるの?他の兵隊に聞いたってジャン・フォルジュロンなんてお城の兵士にはいないって言われたし・・・」
その美しい女性に会場一同、目を奪われていたが本人は気づかず椅子に座り込んでしまった。
「お母様、あのきれいな人をしってますぅ?」
「初めてみたっさ、どこかの貴族のお嬢様にょろ、きっと」
一緒に住んでいる継母は姉もその女性がツンデレラだとはわからない。しかし会場で動き始めた男がいた。座っているツンデレラに手を差し伸べ声をかける
「良かったら俺と踊ってくれないか?」
ツンデレラは嫌々顔を上げる。いつもは「恋愛感情なんて病気の一種」と言い切ってるのに顔を赤くして驚いている。
「あんた、どこかであたしに会ったことがない?」
「いや、君と会うのはこれが初めてのはずだけど」
「ふ~ん、仕方ないわ、探してる人は見つからなかったけどあんたで我慢してあげる」
おそらくツンデレラはこの冴えない男がキョン王子とは気づいておらず。無礼な口を聞いているが、王子は全く気にも留めない
「ありがとう、じゃあご一緒に・・・」
二人が腕を組み立ち上がった。それと同時に音楽隊が演奏をはじめ、踊り始める
二人ともややぎこちなかったが、それはそれは楽しそうでありました。
(マジで楽しかった。練習で散々怒られたときに比べれば)
「お母様、私の負けですぅ・・・」
「しょうがないっさ、今度はあの側近を狙うにょろ」
そして舞台の上では4組の男女によるダンスが繰り広げられ、観客の子供たちはツンデレラの美しさに目を奪われていた。
 
第三幕 お城のテラスにて 
 
二人はよりそい星空を眺めている、周りには誰もおらず完全に二人の世界だ
「今日は楽しかったよ、実は城を抜け出して外に遊びにいきたかったんだが、そんな事を忘れてしまった」
「あたしも楽しかったわ、あんたと一緒に踊れてね」
そして王子はツンデレラの肩を両手で掴んだ。
「そうか・・・良かった。実は俺その髪型が好きで見とれてしまった。もし良かったらこの城で俺と一緒に暮らして欲しい」
「この城で暮らすって!?あんたもしかして・・・」
「黙っていた事は謝る、王子様って奴なんだ・・・」
「ごめんなさい・・・あたしはお妃なんかになれる人間じゃないの、今日はお城に人を探しに来ただけだから」
その時、十二時を告げる鐘の音が響き始めた。もうすぐツンデレラにかけられた魔法は解けてしまう
「本当にごめんなさい・・・」
ツンデレラは王子の手から離れて階段を下ってゆく、必死に王子はそれを追ったが追いつけずに見失ってしまった。
「あの女・・・どこかで見たような?」
そして階段の上に落ちていたガラスの靴を拾い呆然としていた。
 
 
終幕 ツンデレラの家にて
 
その夜、家に着いたらいつものボロ服に戻ってしまい、化粧も落ちて灰まみれになっていた
「魔法が解けても裸にならなかった事に感謝しなくちゃね、ガラスの靴をひとつ無くしちゃったけどジャンも魔法使いも不思議な人だったからそれだけで充分楽しかったわ」
 
ツンデレラは独り言を言うと涙を流しながら屋根裏部屋で眠ってしまった。
 
それからの毎日はいつもと同じ、継母と姉の苛めは続くが、ツンデレラは必死に耐えて働いていた。
そして舞踏会から5日たったある日のことお城から重大発表があった。
 
「国中の若い娘全員をキョン王子が審査するので自宅にて待機すること、王子が持っているガラスの靴がぴったりあって気に入った娘なら妻に迎える」
 
この告知に国中が大騒ぎになった。年頃の娘がいる家庭は何としてでも王子様に気に入って貰うため、ドレスを買ったり、宝石を買ったりで大忙し、しかし数日経っても王子様が気に入った娘は見つからない
「ツンデレラ!今日は王子様が我が家に来るのだからしっかり掃除をしておくっさ」
「はい、おかあさま」
(見つかるはずないわ、あの靴の持ち主がこんな格好で掃除をしてたら誰だってわからないもの、王子には悪いけど黙っておこう、それよりジャンに逢いたい・・・)
 
そしてキョン王子は側近のイツキを伴いツンデレラの家にやってきた。
「どうしてもサイズが会わないですぅ。王子様・・・・」
姉はいつもにも増して胸を強調するドレスで王子の前に現れたが、靴があわない、そして首を振った従者は言った。
「王子、この家にも例の女性はいないようですね」
しかし王子は首を立てには振らない
「いや、この家にはもうひとり娘がいるはずだ、連れてまいれ!」
影で見ていたツンデレラは不思議に思った。
「なんで王子様があたしの事をしってるの?」
母親に無理やり連れ出されてゆくツンデレラ
「王子様、この娘はお目にかかる程の者ではありません、できれば姉の方を・・・」
そんな継母を無視して王子はツンデレラにガラスの靴を履かせた。
「やはりツンデレラ、君だったか、あの時は気づかなかったが間違いない!」
そして王子の姿を見ると、お城の兵士の制服を着ている。
「ジャン?ジャン・フォルジュロン、やっぱりあんただったんだ!」
その様子をみていた側近が呆れ顔で王子に話しかける
「お嬢さん、王子対しての口の聞き方に注意してください、それと王子、また変装してお城を抜け出して城下をふらついていましたね」
「まぁいいじゃないか、散々嫁を探せと言っていたのはおまえだろ、」
「確かにおっしゃる通りです。お嬢さん、王子はあなたを妻に迎えたいと希望しております。承諾して頂けますか?」
「ごめんなさい、お城で逢ったのはあたしであってあたしじゃないの、だから王子様と一緒になる事はできません」
継母と姉は抗議の声を上げるが、ツンデレラはそれを無視している。
そしてジャン(聖ヨハネ)・フォルジュロン(鍛冶屋)ことキョン王子はツンデレラに言った。
「やれやれ、俺は一言も舞踏会で逢った女性を妻にしたいなんて言ってないぞ、俺が妻に迎えたいのは、魔法陣をかいて魔法使いを呼ぼうとしていたツンデレラだ
結局魔法使いには会えたのか?今度は俺も一緒に面白いことをしたいから一緒に暮らしてくれ、その為だったら王位後継者など捨てても良い」
「キョン王子、本当にあたしでいいの?」
「ああ、もちろんさ、」
二人は抱き合いお互いを離さない、そしてお城で幸せに暮らしましたとさ
 
終わり 

エピローグ

子供たちからは万雷の拍手が送られ幕は閉じた。しかしそこからハルヒの様子がおかしくなった。
「いつまで抱き合うつもり!?離しなさいよ、もう劇は終わったんだから!」
 
ハルヒは俺を突き飛ばすと舞台裏に走り去ってしまった。いくら恥ずかしかったと言ってもこれは異常だ
心配した鶴屋さんと朝比奈さんが追いかけたが、すぐに私服に着替えて体育館から出ていこうとする
「ハルにゃん、どうしたっさ!?」
「涼宮さん・・・」
そんな二人を振り切るようにハルヒは言った。
「もう舞踏会は終わったのよ、あたしはあたしに戻るの!」
そういい残しハルヒは去って行った。
「どうしたの言うのだ?いったい」
俺が呆れ返ってハルヒの後ろ姿が消えてゆく様子を見ていると、古泉が全員を集めた。
「涼宮さんを責めないで下さい、彼女はシンデレラと同じなのです。劇を演じる魔法をかけられた間だけは王子様に素直になれますが、劇が終わってしまいました。
おそらく、涼宮さんは劇が終わったとき思ったはずです。『王子様が好きなのはツンデレラであって、涼宮ハルヒでは無い』と・・・」
 
わけがわからん、ハルヒはハルヒだろ、おい古泉ドサクサ紛れに変な既成事実をみんなに認識させるな!
そして全員から俺は生暖かい視線を浴びている。やっぱりハルヒを指名して失敗だったか・・・
誰かが俺の袖を引っ張る
「長門、どうした?」
「あなたに依頼する・・・」
「何をだ?」
「この、女性控え室にあった忘れ物を持ち主に返して欲しい」
この忘れ物の持ち主はどう考えても世界中にひとりしかいないだろ、自分で行かないのか?
「よろしいですか」
急に後ろから古泉が話しかけてきた。
「急に話しかけるな、息を吹きかけるな、顔が近いんだよ」
「申し訳ありません、実は僕のシナリオはここからがクライマックスなのです。王子、あなたがこの忘れ物を届けてあげてください、後ろの席じゃないですか」
そうかそういう事か、負けたよ古泉、投了する。
「わかっていただいて恐縮です、学校側に涼宮さんは急用で帰ったと報告しておきましたので、ご安心を」
 
 
そして月曜日いつも通り登校し教室に入ったが、ハルヒがおかしい、髪形をポニーテールにして外を眺めている、知らん振りをして俺は席に着く
 
「おはよう、なんで昨日は急に帰った?みんな心配してたぞ」
「もう劇は終わったからいいじゃない、あと勘違いしないでよね、あんたと踊ったのはツンデレラなんだから・・・」
「ツンデレラか・・・もう一度逢いたいな」
「もう逢えないわよ、魔法は解けちゃったからね」
「そうか?でも俺は手がかりを持ってるんだ、だからジャンと同じ様に彼女を探す」
「あんたバカァ?何言ってるのよ、意味わかんない」
俺はバックの中からツンデレラが控え室に忘れてしまったものを取り出し、ハルヒの机の上に乗せる
 
 
「ハルヒ、ツンデレラじゃなくていいから、この黄色いカチューシャが似合う笑顔がまぶしいそして騒がしい女を俺は捜している、心当たりはないか?」
 
 
「バカキョン・・・すぐ近くにいるじゃない・・・・」 
 
 
エンディングテーマ

ツンデレラ ツンデレラ ここにずっといたくてもいられない
ツンデレラ ツンデレラ 口に出せない事が多すぎて
素直になれやしない
ツンデレラ ツンデレラ 涙流したあの日が蘇る
ツンデレラ ツンデレラ 今じゃ失う物が多すぎて
素直になれやしない
綺麗なドレスが気になると 気持ちは踊れない
ガラスの靴は冷たくて まともに歩けない
裸足のままじゃ傷付いて どこにも行かれない
ガラスの靴は冷たくて まともに歩けない
涙はそのうち渇くでしょう 痛みは取れるでしょう
心配しても変わらない それなら始めましょう
ツンデレラ ツンデレラ ここにずっといたくてもいられない
ツンデレラ ツンデレラ 口に出せない事が多すぎて
素直になれやしない
素直になれやしない 素直になれやしない

 
終幕