概要
作品名 | 作者 | 発表日 | 保管日 |
ハルヒと親父 外伝ー恋文たち | 110-716氏 | 09/05/23 | 09/05/24 |
作品
ハルヒ「親父、母さんってそんなにもてたの?」
オヤジ「ああ。おまえだって、おれの遺伝子が入ってさえなけりゃ、いまごろ逆ハーレムだぞ」
ハルヒ「なにそれ? 意味がわかんない」
オヤジ「涼宮のDNAには、どうやら人をイライラさせる遺伝子と、ハラハラさせる遺伝子が入ってるらしい」
ハルヒ「あほらしい。母さんに聞いてくるわ」
ハルヒ「母さん、すごくもてたってほんと?」
母さん「どうかしら? 確かにお付き合いした人は多いけど。今でもお手紙をやりとりしてる人もいるしね」
ハルヒ「ええっ、そうなの?」
母さん「今では立派になってる人も、妻子持ちの人も、いるわ。私信だけれど、愛する娘に見せる分には大丈夫ね、きっと」
ハルヒ「げ、この人、知ってる。こっちも結構、有名」
母さん「あら、お父さんだって昔、どこかのアフリカの大統領に気に入られて、切手になるところだったのよ」
ハルヒ「げげっ」
母さん「お父さん、必至に止めて事なきを得たらしいけど。結局、原産のカブトムシか何かのデザインになったって」
ハルヒ「……やりとりしてるって、母さんも返事書いてるの?」
母さん「ええ、そうよ。お互いに書かないと続かないでしょ?」
ハルヒ「そりゃ、そうだけど。これなんか、まんまラブレターだわ」
母さん「ああ、詩人になり損ねたお医者様ね。もう80を越えていらっしゃるけど」
ハルヒ「こっちは和歌。どこの光源氏よ、在原業平よ」
母さん「しかも、いつまでたっても上手くならないわね。国文学の先生らしいけど」
ハルヒ「むう」
母さん「あら、ハル。ご機嫌斜めね」
ハルヒ「母さんのやってることに文句つけるわけじゃないけど」
母さん「浮気みたい?」
ハルヒ「そういうのじゃないのはわかってるわよ」
母さん「なんというのかしら、一種のアフター・サービスね。『元気でやってます。私、幸せです』って返事を書くの」
ハルヒ「え?」
母さん「古い付き合いの人たちは、母さんの体が弱いことを知ってるわ。それと、お父さんと結婚したとき、お式はできなかったけど、このひとたちにはみんな写真つきの結婚しましたハガキを送ったの。お父さんって、ちょっと説明し難い人だし、普通の人からすると何だか得体が知れないでしょ? それで、ものすごく心配してくれたり、大反対した人も何人かいたの。この人たちが今、母さんをどう思っていてくれているのか、わからないけれど、一時でも想ってくれた人には、母さんの「今」をちゃんと知らせておこうと思って。それにね」
ハルヒ「……」
母さん「この手紙の中には、お父さんからのもあるのよ。今でも送ってくれるの。一緒に暮らしてるのにね」
ハルヒ「なにやってるの、あのバカ親父は?」
母さん「この中にあるわ。探してみる?」
ハルヒ「うーん」
母さん「一番短いやつがそうよ」
ハルヒ「え、これ? うわ、頭痛い。……母さん、これにも返事書いてるの?」
母さん「もちろん♪」
「宇宙一の幸せ者から最愛の人へ。君の方はどうだ?」
「宇宙で二番目の幸せ者からお馬鹿さんへ。あなたを愛しています」