ラブレターとキス(110-806)

Last-modified: 2009-05-24 (日) 15:32:18

概要

作品名作者発表日保管日
ラブレターとキス110-806氏09/05/2409/05/24

作品

「うぅむ。なかなかはかどらないな」
「何を書いてらっしゃるので?」
「ああ、古泉か。ラブレターだよ」
「な……!? だ、誰にですか!」
「ハルヒのやつがな、最近愛を囁けと煩いんだ」
「……は?」
「まて、お前の言いたいことは分かる」
「ですが……」
「俺たちが付き合って大分経つし、お前の疑問も分かるんだが……。面と向かってそんな恥ずかしいことは出来るか!」
「それでラブレターというわけですか」
「ああ。お互い顔を会わせなくてもすむからな」
「なるほど。手紙ならお互いに愛を囁くのにも顔色を伺う必要がないから安心だ、と」
「……まあな」
「いずれにせよ恥ずかしいことには変り無いと思うのですが……事情は分かりました。では僕は邪魔にならないよう、今日は先に帰らせていただきますね」
 
 
「やっほー! キョン、居るかしら?」
「居るぞ。だがちょっと待て。まだ途中だ」
「あんたまだ書いてんの? 早く書きなさい! そして見せなさい!」
「そう急かすな。なかなか上手く書けなくてな」
「えーと、なになに。……。……、……! ……、……。回りくどい上に無駄に長いわね。その上肝心なコトが分かりにくいわ」
「ええい、読むんじゃない! まだ序章だ!」
「はあ? 序章? あんたこれラブレターよ? 分かってんの? 長ければいいってもんじゃないの!」
「じゃあお前のはどうなんだ。出来たんだろ。見せてみろ」
「だ、ダメよ! お互い交換っこしてから一緒に読むつもりなんだから」
「どの口で言うんだよ……。分かった、じゃあちょっとだけだから。な? ちょっとだけ!」
「はあ、しょうがないわね。ホントにちょっとだけだからね」
「…………」
「…………」
「あのーハルヒさん? 一つ聞いてもよろしいでしょうか」
「何よ。もったいぶっちゃって。あたしの愛を疑うならそれ相応の報いを、」
「じゃなくて、これのどこがラブレター!? なんか不思議な等式が書いてあるじゃねーか!?」
「あたしのこの迸る愛を表現するには既存の文字では表現しきれないのよ! しょうがないでしょ!」
「ハルヒ……悪いがお前の愛も俺には分かりにくい」
「どの口で言うわけ?」
「それはこっちのセリフだ!」
「いいえあたしのセリフよ!」
「なあハルヒ。やっぱり俺たちにこういうのは向いて無いんじゃないかと思う」
「じゃあ、どうすんのよ。まだあたしはあんたから愛の囁きを聞くのを諦めたわけじゃないんだけど?」
「だいたい想いを伝える手段なんて、何も言葉だけじゃ、」
「そうよ! 閃いたわ! 何でこんなことに気づかなかったのかしら!」
「おい、いきなりなんだ──、」
「うっふふふふ……」
「ま、まさかと思うが、この体勢は……キス、するつもりか、しちゃうのか、ハルヒ」
「そのまさかよ! あたしの愛を注入してあげるから!」
「ま、待て待て待て!」
「問答無用!」
「ぐ、う……むう、むちゅ、ちゅっ」
「う……ん、んぅ、むちゅっ、ちゅっ──ぷはっ、はぁはぁ」
「ハ、ハルヒ、お前……」
「どう、伝わったかしら……」
「あ、あぁ。伝わった、と思う。ハルヒの気持ちが」
「思う、じゃだめ。もう一回ね」
「だから待て、ハルヒ」
「何よ!」
「こういうのは、その、な。お、男からするもんなんだよ……!」
「…………あ。そ、そう、ね。……わかった、わ」
「目、瞑れよ」
「……うん。来て、キョン」
 
「なあ、まだするのか?」
「ダメ。まだ全然足りないわ、ね、もっと」
 
「──やっぱり手紙にするか」
「──そうね、たまには新鮮でいいかもね」

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