凉宮ハルヒと台風の夜 (27-291)

Last-modified: 2007-01-20 (土) 02:24:52

概要

作品名作者発表日保管日(初)
凉宮ハルヒと台風の夜27-291氏06/11/2006/11/24

作品

台風が接近し大雨洪水警報が発令中の為、文芸部室にて警報解除を待つメンバー

 

キョン「やれやれ。警報だすなら登校前に出せってんだ。解除するまで学校に残れって警報出そうな日は学校休みにしろよ。」
俺は気象庁と文部科学省の連携に疑問を投げ掛けながら朝比奈さんが煎れてくれたお茶を味わっていた。
ちなみに現在文芸部室にいるのは俺を含め三名、未来からきたエンジェル朝比奈さんと文芸部室の風景と化した万能宇宙人長門だ。
で、我等が団長さまはニヤケスマイルのイエスマンを引き連れ何やら校内を疾走中だ。

 

俺は灰色の空を睨みながらいつぞやの閉鎖空間を思い出していた。あの頃が遠い昔のようだ。今のハルヒは世界に絶望する事もなく俺たちと共に楽しむ道を選ぶはずた。そんな確信に似た感慨に耽っていると文芸部室のドアが勢いよく開かれた。

 

ハルヒ「みんなー今日は台風で帰れないから学校に泊まるわよ~」

 

おいおい、楽しむにしても、帰れないの前提かよ
キョン「泊まるってお前、飯やら寝床はどうすんだ」
ハルヒ「ふっふ~ん。そのてんぬかりは無いわ。ね!古泉君!」
古泉「はい。学校というものは災害時に避難生活が出来るよう衣食住に必要な物が揃っています。実は今この学校に備蓄されている食料の保存期間が迫り、古い備蓄食料を廃棄していると小耳にはさんだもので、僕の知り合いを通じて回してもらったんです。」

 

ほぅ学校関係者にも機関の手が回っていたとわな。つか横領じゃないのかそれは。
古泉「いえいえ、廃棄されるのを待つだけだった資源の有効活用ですよ。」
キョン「学校に泊まる許可が出るとは思えん。」
ハルヒ「大丈夫よ。今日守衛さんは台風のせいで休みだから電気つけないで鍵かけて隠れてりゃ分かんないわよ。」
キョン「飯どうすんだ。食料っても乾パンぐらいだろ。」
ハルヒ「ふっふ~ん。有希!」
長門はトテトテと文芸部室の開かずのロッカー前に移動し、無言で扉を開けた。
キョン「うぉ!なんだこのレトルトカレーの山は?パックのご飯もあるし」
長門「備蓄食料」
長門よお前いつのまに買い揃えてたんだ?

 

ハルヒ「さぁ衣食住の問題も解決したしSOS団臨時合宿張り切っていくわよ!」

 

てなわけで携帯で家に連絡し、学校に泊まりこむことになった俺たちは、備品庫から毛布や寝袋を失敬し長門セレクションレトルトカレーを大鍋でブレンドして食しトランプゲームに興じていた。

 

俺はババヌキを珍しく2抜けするとふと台風情報がきになりパソコンを開けた。
んっ?インターネットに繋がらないな。携帯も圏外になっている。予報では今夜中に台風は日本海に抜けるはずだったが?
予想に反し停滞している。台風に気象庁も困っているだろうに………いや、しかし…

 

俺は古泉を連れションに誘いだし問いつめた。
キョン「おい、台風が停滞しているのはやはり…」
古泉「はい。凉宮さんが望んだからでしょう。今夜はみんなで楽しくお泊まりする。台風が去ってしまえばみんな帰宅してしまいますからね。」
キョン「明日の朝には台風が通過するという保証は?」
古泉「それは凉宮さん次第です。しかし…あなたも薄々感じているのではありませんか?」
キョン「何にだ?」
古泉「この状況が閉鎖空間に似ていると。」
いつぞやの孤島と状況は同じか、灰色の空、断たれた通信……
キョン「じゃあお前は台風が来たのもハルヒが望んだからだというのか?」
古泉「いえ、おそらく台風は自然現象です。むしろ台風に閉ざされた状況に凉宮さんの力が干渉したと考えるのが良さそうですね」
キョン「という事は問題は…」
古泉「えぇいつ終わるのかわからないという事です。凉宮さんが飽きるまで、学校に泊まりこむことになりかねませんね。彼女とは利害は一致するはずですから相談してみましょう。」

 

俺たちが文芸部室に戻ると「守衛」と書かれた腕章を装着した我等が団長さまがまっていた。

 

ハルヒ「見回りに行くわよ!」

 

不法滞在者が何から学校を守るのかね。やれやれ。

 

学校の主と化した団長様に引きつられ、夜の校内を懐中電灯片手に巡回だぁ。台風の風にビクビクした朝比奈さんの姿は子猫のようで可愛らしかったなぁ…
ちなみに廊下の曲がり角でばったり出くわした長門に驚いた朝比奈さんが「ひゃい~ん」と天使のような叫び声を上げ気絶されたのはまた別の話だ。

 

さて、シャワーを浴びて寝袋と毛布をひいて就寝時間と相なりましたが、さすがに寝間着まで用意出来ずに学校指定のジャージだ。う~ん朝比奈さんは何を身に付けてもお似合いになるなぁ

 

ハルヒ「あんた何やらしい目付きしてるの。襲っちゃ駄目よ。」
キョン「おい。こんな状態でどうやれと?」
俺は寝袋の上に毛布でグルグル巻きにされた素巻の状態で嘆いたが、妹にこんな姿を見られたら喜んで馬乗りされるんだろうな…
ハルヒ「ふんっ天井から逆づりにしなかっただけ有りがたいとおもいなさい!」
俺は新宿の種馬と呼ばれる凄腕のスィーパーかよ。てなことを考えながら消灯時間となり俺たち眠りについた。

 

て…おき……おきてください……なかなかおきま……ならば…ムフ……
ガバッ
キョン「何をしようとしている。顔が近いぞ古泉。なんだそのあからさまにチッしくじったてなツラは?」
外を見ると相変わらず台風の雨と風がガラスを叩いている。時間は午前2時か、
古泉「おやおや残念ですが、おはようございます。では予定通り我々は先に向かいます。」
キョン「あぁ頼む。」
古泉「では、御武運を」
ああまかせろニヤケスマイル
みくる「ふわぁ~頑張ってくだしゃいね。」
そんな目を真っ赤にしないでください朝比奈さん無理しないで寝ててもいいんですよ。

 

長門「……」
おぅまかせろ。

 

さて、しばらく団長様の寝顔を拝謁させていただきますかって、ありゃ。台風の風かおさまって月の光がさしこんできたな。やれやれ仕方がない
キョン「おい、ハルヒ起きろ。」
ハルヒ「…キョン…」
ん?コイツ今寝言で俺を…
ハルヒ「…シャミセンったら…」
……コイツどんな夢を見てるんだ?まぁいい
キョン「おいハルヒ起きろ」
ハルヒ「ん…キョン…!なっ!?なによあんた!?まさかよば……ムグ」
ハルヒの口をふさぐ。余計な事は喋らせない方がいい時だ。
キョン「しっ静かに他の連中が起きちまう。いいもの見せてやる。ついて来い。」
ハルヒはコクコクと頷き珍しく素直に従ったが、寝起きの不意を衝かれたせいだろう。顔が赤かったのは寝顔を見られたせいだ。うん。

 

俺はハルヒと共に屋上にむかった。なぜかハルヒは黙ってついて来てくれた。

 

キョン「ここだ。」
ハルヒ「え?屋上にでるの?あんた、こんな時間に起こしてつまらないものだったら罰ゲームよ」

 

あぁ大丈夫だよ。
ハルヒの手を取って屋上へ進んだ。

 

ハルヒ「うわぁ」
キョン「おぉ」

 

真っ暗な夜、灰色の分厚い雲、そこにぽっかりと空いた円い穴と煌めく星々、俺とハルヒは思わず言葉を失って夜空を見上げたね。

 

ハルヒ「すごい…台風の目だ。」

 

世界の中で俺たちの為だけにある世界。台風の中心に立っているとそんな気分になるから不思議だ。
まぁ間違いなく世界の中心は隣で目を輝かせてるコイツだがさっさと本題に入ろう。

 

ハルヒ「すごいすごい!私台風の目を見たの初めて!!」
キョン「はは、満足したか?」
ハルヒ「あんたにしちゃ上出来ね。今週末の不思議探索分のノルマ、達成したことにしといてあげるわ。」
キョン「へいへい、満足して頂きありがとうございます。」
ハルヒはとびきりの極上スマイルでご機嫌の程も伺えるってなもんだ。(コイツの目をみちまうと間違いなく引き込まれちまうな。うん。)
キョン「なぁハルヒ。台風の目ってのがあるのは知ってたか?」
ハルヒ「当たり前じゃない。ちなみに台風の渦が回転する方向は南半球と北半球で違うのよ。」
キョン「ふーん、さすがだな。なぁハルヒ。俺最近思うんだが、知識として知ってる事と自分で体験した事はやっぱり違うんだよな。」
ハルヒ「当たり前じゃない。」
キョン「つまらないと思ってた日常ですら条件が変わるだけで世界はなんて美しいんだって感じる事もある。」
ハルヒ「何が言いたいの?」
キョン「ん……俺はハルヒと一緒にいて楽しいって事だ。」
ハルヒ「ふっふーん。感謝してる?」
キョン「ああ」
ハルヒ「あたしも。キョンとSOS団のみんなのおかげで毎日が楽しい。ありがとうキョン!」
今日一番の笑顔が淡い月明かりに照らされ美しい顔がなんだか神々しくも見え……って言ったらわかるか?えぇい!
とにかく俺は、目があったと思うと俺はハルヒの目に引き込まれて…

 

俺はハルヒをそっとひきよせ

 

キスをした。

 

古泉「疑似閉鎖空間が消滅しました。」
長門「凉宮ハルヒから発せられる干渉能力の断絶を確認」
みくる「ふぇ~んよかったですぅ。問題解決ですねぇ」
古泉「さて、外野はさっさと退散して、後は若い二人に任せましょう。」

 

あいつら、台風に目を作ったら文芸部室で寝たふりする約束だったのに……
給水塔の上で何やってやがる。
おい!給水塔から降りるぐらい超能力的宇宙人的パワーを使え!朝比奈さんがハシゴから足を踏み外しそうじゃないか!
ハルヒ「キョン…どうしたの?後ろに何か…」
えぇい!今後ろを振り返られたらまたややこしくなる。
キョン「ハルヒ。俺だけを見ていてくれ。」

 

二度めのキスは強引だぁ!なんせハルヒの後頭部を右手でガッシリとロックしてやったからな。ハルヒ俺からは逃げられんぞ。いや、逃がさん!
あ、朝比奈さんよそ見してないで早く!早く!俺がハルヒを押さえている間に……
ドゴォ!!!!
キョン「グハァ?!」ナイスアッバーだハルヒ
ハルヒ「ハァハァ息ができないじゃない!!」
俺はハルヒに吹き飛ばされ地面に叩きつけられるまでの間「あぁ夫婦ケンカしても勝てないな…」なんてことを考えて、意識を失った。

 

翌早朝、台風一過の空の下旧校舎屋上にて

 

古泉「お疲れ様でした。」
キョン「予定通りと言えば予定通りだが、なんでお前ら給水塔の上にいたんだ?」
古泉「フフ、他意は無いんですよ。思いの外長門さんの消耗が激しかったので。」
キョン「何?そうなのか」
古泉「ええ。閉鎖空間の壁となった台風の雲に僕が亀裂を入れ、長門さんが穴を広げる。凉宮さんの能力の干渉を受けた自然現象ですから、環境への影響に対する修正に力を費やしたみたいですね。」
キョン「そうだったのか。」
古泉「しかし今回の件に関して機関で論争が始まりそうですね。凉宮さんが閉鎖空間に招待するに値すると認められる範囲が以前のあなた一人からSOS団にまで増えた。
ということは、発展すれば、神に選ばれた者のみが新世界への切符を手にする………」
キョン「フン、馬鹿馬鹿しい。まだハルヒを神扱いしてるのか。付き合いきれん。」
古泉「おやどちらへ」
キョン「教室だ。もうすぐ一時間目だろ。」

 

台風一過の空の下

 

俺は旧校舎から渡り廊下でまってたハルヒの手をとり教室に向かう。
ハルヒ「あっ!ねぇ…キョンあの…」
キョン「おはようハルヒ!今日も一日楽しく行こうぜ!」
キョトンとするハルヒの手を引いて教室に向かう。
キョン「何ボーッとしてんだ。こうしている間に、まだ知らない楽しい事が逃げちまうぞ。」
ハルヒのヤツはまたまたキョトンとしたが、とびっきりの笑顔で耳が痛くなる大声出しやがった。
ハルヒ「それあたしのセリフ!ついて来なさい!キョン!」
追い越して俺の手を引っ張るハルヒ。やっぱりこうでなきゃな!

 

台風一過の空の下
俺はハルヒの背中に向けて声をかける。

 

おいハルヒ。お前は台風みたいなやつだな。
さんざん周りを巻き込んで大暴れしやがる。
けど、巻き込まれる方もそんな悪い気もしないんだぜ。
そう…台風の後にはこんなに気持ちのいい青空を連れてきてくれるからな!

 
 

凉宮ハルヒと台風の夜おまけ

おまけ

 

最初に受信した電波です。

 

●〈長門さんが雲に穴をあける姿は壮観でしたね。
キョン「ほぉう」
●〈暗雲と呼ぶにふさわしい分厚い雲にむかい長門さんが拳を突き上げ

 

長門「我が生涯に一片の悔いなし…」

 

キョン「なっ?!長門ぉ?」