未来からの電話 (48-487)

Last-modified: 2007-07-17 (火) 02:39:34

概要

作品名作者発表日保管日
未来からの電話48-487氏、497氏07/05/1107/05/11

作品

よくわからない。窓一つない空間。不思議は大歓迎なんだけど何もない不思議なんてのは願い下げなんだけど。
鳴り響く電話の音。気付けば目の前に電話があった。怪しいけど何事も踏み出さなきゃ始まらないわ。
「もしもし!あんた誰!」
「…あんたこそ誰よ」
「あたしは涼宮ハルヒ。あんたなんでこんなとこに電話かけてるの?やっぱり不思議の関係者?」
「ちょっと待ちなさいよ。ハルヒはあたしなんだけど」
「へ?」
「だからあたしも涼宮ハルヒなの」
 
信じられないけど事実みたい。電話の相手はあたし。しかも未来のあたし。これはわくわくするわ。何から聞こう。
「その前にさ、キョンはいる?」
キョン?なんであいつの名前が出てくるのだろう。
「いないけど、それがどうしたの?別にあんな奴いなくても…」
「何言ってるのよ。キョンがいなくちゃ始まらないでしょう。だってあたしにはあいつが必要なんだから」
「な、あんたこそ何言ってるのよ。キョンはただの雑用で…」
「あ、そっか。まだなんだ。あたしねキョンと付き合ってるの」
「え、ええええーーーーーー!?」
 
「でね、キョンてね」
さっきから延々とノロケ話が続いてる。こいつホントにあたし?
「ちょっと、聞いてるの?キョンはね…」
「ああもう!あんなダメな奴のどこがいいのよ!」
「あんたキョンのいいところなんにもわかってないわね」
「うっさい!あんたこそキョンの何を知ってるって言うのよ!」
「あたし?あたしはキョンの全部を知ってるわ。良いところも悪いところも」
「あいつは悪いとこばっかりじゃない。優柔不断だしデレデレするし言うこと聞かないし察し悪いし頭悪いし」
「何言ってるの。悪いところも含めてのキョンでしょ。全部ひっくるめてあたしはキョンを愛してるわ」
「な・な・な。何言ってんのよ!勝手なこと言うな!」
「本当の事よ。単なる事実。あたしはキョンのほくろの位置まで知ってる」
「そ、それって、まさか」
「キョンはベットの上では意外にSなのよね。「許して」って言っても全然解放してくれないのよ」
嘘でしょ、あたしとキョンが?想像してしまい急に恥ずかしくなる。絶対そんなの嘘。
「うう、じゃ、じゃあじゃあ、キョンのいいところ言ってみなさいよ。そんな仲ならいえるはずでしょ」
全部反論してやるつもりだった。
「言っていいの♪じゃあねー、なにから話そうかしら♪」
うー、なんでそんなに楽しそうなのよ。
「そうねぇ、優しいところかな」
「誰にでも優しいだけでしょ」
「ううん。あたしにはね、優しくないの。文句言うし止めるしちょっかい出すし。でもねそれはキョンがいつもあたしのこと見てくれてる証拠。いつもキョンが見ててくれるからあたしは絶対に間違えない。だからキョンはあたしに一番優しい」
その自信と信頼にあふれた言葉になにも言えなかった。
「あとかっこいいところかな。特に告白してくれたときなんて最高に素敵だったなぁ。肝心なところで臆病だったあたしに『俺にはお前が必要なんだ。だから一緒にいてくれ』だって。きゃー!」
あのバカは何てこと言うのよ。…うう。
「あとは照れ屋なところとか」
「どこがよ、キョンが照れるなんて想像するだけで気持ち悪い」
「へ~、あんた気付いてないんだ?あたしも結構かかったからしょうがないけど、手を握ったときの嫌そうな顔とかくっついたときに「離れろ」って言ってたんだけど、全部照れ隠しだったんだって、本人が言ってたわ。本当は嫌じゃなかったとか」
「じゃああたしが同じことした時にもあいつは照れてるの?」
「たぶんね、でもまだキョン自身だって気づいてないだろうけど」
だったらあいつどれだけわかりにくいのよ。
「でもね、一番は『あたしを信じてくれてる』ってところ」
「信、じる?」
「そ、あたしね、『信じる』って言葉が好きなの。あいびりーぶゆー♪って奴ね。世界のみんながあたしを否定したって、キョンは、キョンだけはきっと最後まであたしを信じてくれる。それがキョンの一番好きなところ」
なんてまっすぐ。一切の迷いもなく。本心から。当然のように。こんなに人を好きになれるのか、あたしは。
「あ、もちろんあたしだってキョンのこと信じてるわ。あたしはキョンについていく。たとえ世界の果てだってね」
眩しい。そんなにも信じられるのか。そんなにも信じてもらえるのか。あたしはそんなふうになれるのか。
反論なんて出来るはずもない。ただ押し黙っていた。そして電話が乱れ始めた。
「あ…れ?……なん…か…ザッ…聞こえ…ザッ………まあ…せいぜい頑張んなさい」
 
ようやくハルヒを見つけた。
長門の助けでこの空間まで来たが探すのに時間がかかってしまった。
ブツン、ツーツーという無機質な音。ハルヒはなぜか受話器を握り締め、「…嘘…嘘」と繰り返している。
「お、おいハルヒ。何があったんだ」
ハルヒは俺に気付いて真っ直ぐ近づいてきた。そしていつものようにネクタイを引っ張って顔を近づけ
「…あたしはあんなのにはならないからね」
「は?ちょ、ちょっとまて、どういうことだそりゃあ」
「キョン。あんたをあたし無しではいられない体にしてやるわ」
「…え!?お、おい、どういう意味だ」
「言葉通りよ。絶対にあたしに惚れさせてやるから」
「ハ、ハルヒ?」
「このあたしがキョンなんかに、あんなに、メロメロに…」
「メ、メロメロ?」
「うるさい!そうね、まずは…」
またブツブツ言い出したところで俺たちは長門に救助された。
 
ハルヒはあの世界を夢とでも思っているのか特に何も言ってこなかった。
それならそれでいいかと思っていたが元の世界に戻った後、ハルヒは妙に積極的だった。
餌付けのつもりか弁当を作ってきてくれたり、勉強を教えてくれる時間も増えた。
変わったこととして今まで当然のようにえらそうにふんぞり返っていたハルヒが優位な立場であろうとしていることか。
今まで当然のようにしていたことをあえてやるのは逆に難しいのか変な失敗をするようになった。
らしくないドジなんかをフォローしているうちにこいつも可愛いところがあるんだな、なんて思うようになっていた。
2人きりになることも多くなり、ハルヒがべたべたとくっついてくることも多くなった。もちろん嫌ではなかった。
他の娘といる時の嫉妬もより激しくなったが、そんなハルヒも可愛いもんだなんて思うようになっていた
そして、もう言葉にはしなくてもお互いの気持ちはわかっていた。
でもはっきりと言葉にしたい、してやりたいという気持ちもあった。
ハルヒはどうすればいいかわからないようだったので、俺から一世一代の勇気を振り絞ってはっきりと気持ちを伝えた。
ハルヒは泣いていた。嬉し涙らしい。悲しい涙なんて流させるものか、なんて柄にもないことを思ったりもした。
俺に対してはそんなに変わっていなかったが、他のやつに対してのハルヒの反応は相当変化したようだ。
俺のことを褒めまくったり、自分がいかに幸せか語ったりしているらしい。
友人関係が続いていた谷口からは「どんな魔法を使ったんだよ」なんて言われたりもした。
その後もどれだけハルヒがいろいろ吹聴していたかを愚痴られたので謝ったのだが「『ウチのが悪いな』ってか完全に嫁だな」
なんてからかわれた。どうしろって言うんだよ一体。
 
ある日二人で店に行き、酒を飲んだ。
「はぁ、結局こうなっちゃったか」
どういう意味なのだろう。
「あんたとこういう関係になっちゃったこと!」
「…嫌なのか」
「そんなことない!…でも、あたしはもうあんたなしじゃ生きていけないだろうなって」
酔いが回っているのか普段は言わないようなことを言っている。なら俺だって。
「そりゃお互い様だ。俺もお前なしじゃ生きていけない」
「ホ、ホント?えへへ」
にへらと言った感じの笑み。酒を飲んだときか『行為』の後くらいしか見せない笑み。俺以外に見せなければいいさ。
「でもね、絶対にあたしのほうがあんたのこと好き。ホントはあんたをメロメロにしようと思ったのになぁ」
何かのリミッターが外れているんだろう。いつものハルヒならここまで言わない。
「あたしのほうがメロメロにされちゃった」
その笑顔は、まずい。ここが自宅なら押し倒していた。

 

「キョン、運命って信じる?」
どうなのだろう。運命なんて言葉で片付けたくないことは多い。でも、
「一個だけは信じてる。お前と出会ったことはきっと運命だ」
ハルヒは微笑んでいた。とても満足げに。
「ありがと、キョン。キョンがそう言ってくれるならあたしはきっと信じられる」
ハルヒは「ふふ」と笑って続ける。
「あとはいつ電話がかかってくるか、ね。ちゃんと教えてやらなきゃ」
聞いたがハルヒは答えてくれなかった。その代わりとでも言うように歌を口ずさみはじめた。
きちんと歌っているわけでもない、鼻歌と大差ない程度の声量なのに、とても透き通って聞こえたのはひいき目ではないだろう。
聞き覚えも、身の覚えもあるその歌はこう締めくくられた
I believe you、と。
 

派生作品

            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
            |  うん。そうなのよ。ほんっと理系の頭カラッポでさ
            |  秋の模試でやっとC。あたしも志望落とそうと思った
            |  だけどね 頭下げて頼んできたのよ。うん あいつが!
            |  あいつ あたしに何て言って止めてくれたと思う?
            |  『俺はハルヒ、お前についてく。だけどお前は――』
            |  とっとっ、駄目。これ、お楽しみにしとくのがいいわ
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |  今夜も電話かよ。相手に迷惑かからない程度にしろ
    \___  _____/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
            |/       |  何言ってんのキョン。身の上相談よ
                 |  もしもし? うん、いるのよあいつ。代わる?
                 |  あら そーお? まっ それがいいかもね
 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\_______  _________
 | 身の上相談?? 誰の? |          ∨
 \_________  __/   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    _____  |/      |  ん? 聞くまでもないわ あたしは幸せ!
  /______/|.           |  ふふっ そっちもがんばんなさい!
  |Ll__=__| :|            \______  ________
  |Ll__. , -‐-ー.、 キョン テ ヨブノハ    , -‐―‐- 、∨__
  |Ll__〃;   ヽヾ ヤメロッテノ     ./rシ/ニニヽヽ   ]
  |Ll__i ハハバハ.>.______ ハ芥.lノノ从从|゙t ̄ ̄l_______
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