笑顔の花嫁 (63-57)

Last-modified: 2007-10-01 (月) 16:51:44

概要

作品名作者発表日保管日
笑顔の花嫁63-57氏07/10/0107/10/01

作品

我が団長の命により俺は休日の早朝から走らされていた。
そう、今日もこの世の不思議探索であり集合場所に向かって全力失踪中である。
来なかったら死刑!という恐ろしい予告に負け、こうして仕方なく毎週探索に参加しているのだ。
一体いつになったら俺の平凡な休日は戻ってくるのだろうか。
俺の平凡な休日カムバーック!!と走りながら俺は心の中で刹那に願った。
しかしそんなことを願ったところでSOS団及び我が団長がいる限りはそんな俺の淡い願いは叶いそうにない。
どうやら俺の人生に「逃げる」というコマンドは用意されてないらしい・・・
 
息を切らせながら集合場所に到着すると俺以外の団員は揃っていた。
朝比奈さんはエンジェルスマイルで出迎えてくれた。
今日もあなたの笑顔は太陽、いや聖母のように輝いていますよ。
このエンジェルスマイルが拝めただけで今日は来た甲斐があったってもんだ。
長門は液体ヘリウムのような相変わらず読めない表情で俺を見つめていた。
てかまたお前は制服で来てるのか。
ニヤケ顔でこっちを見るんじゃない古泉!相変わらずお前のスマイルは気持ち悪い!
「遅い!罰金!!!」
どうやら我が団長ハルヒはご立腹のようだ。最もその原因は俺なのだが・・・
今までビリで到着しているは俺だけらしい。もしかしてこれは一種の習性なのか!?
だとしたら習性とはなんとも恐ろしいものだ。
おまけにその習性のせいで俺は毎回奢らされ、もちろん今日もハルヒに俺の財布のライフを減らされてしまうんだろう。
実に悲しい話だ。俺に現金を分けてくれーーー!と空に手を挙げて叫ぶわけにいかんしな。
そんなことをして同情で俺に募金してくれる人間は世界中で何人いるんだろうか。
「いつも同じ街で探索もつまんないから次回の不思議探索は隣町で行うわよ!」
このハルヒの提案で今日はいつもの街で集合しそれから隣町に移動するということになったのだ。
そして俺はビリの罰として隣町への4人分電車代を渋々払わされてしまったというわけだ。
もうやめて!俺の財布のライフはとっくに(ry
 
「やっぱ違う街ってのは新鮮でいいわね!今日もはりきっていくわよーー!!」
もうすでに変なオーラで出てますよハルヒさん?そのオーラを俺にも少し分けてほしいもんだね。
しかしたしかにいつもと違う街ってのは新鮮で悪くはないな。
そんな気持ちもわからなくもないが頼むから許容範囲の行動で頼みますよハルヒさん?
「でまた例によってくじびきか?」
「ううん、今日は皆でこの街で不思議探索しようと思うの。もちろん文句ないわよね?」
と悪魔のような微笑で俺に脅迫してくるハルヒ。・・・何故俺にだけ言うのだ。
朝比奈さんとペアになれないのはいささか残念だがここでこいつの意見を否定する必要もないだろう。
「で行く当てとかあるのか?」
「そんなのないわよ。」
ノープランかよ!
「とにかく出発―――!!」
 
こうして街の捜索を開始した俺たちだが、
世の中の不思議とやらがその辺の道端に転がっているわけもなくただ時間だけが無駄に過ぎていった。
正午になり俺達は喫茶店で昼食を取ることにした。
「もう~!なんであたしの周りで不思議な現象とか起きないわけ!?あったまにくるわね!」
そう言ってハルヒは自分のジュースをあっという間に飲み干した。
ははは、お前の半径1M以内に宇宙人、未来人、超能力者が、お前と同じテーブルに座ってお前とランチタイムを過ごしてるなんて口が裂けても言えねえわな・・・
「まあまあ、とりあえず休息を取ってから探索を再開しましょう。今度こそ見つかるといいですね。」
さすがイエスマン古泉だ、ヨイショがうまいねえ。お前はきっと出世するよ。
だから俺の隣でニヤケ顔して俺を見るのはやめろ。俺の右ストレートが飛ぶ前にな。
「さすが副団長なだけあって向上心があるわ!キョン!あんたも少しは古泉君を見習いなさいよね!?」
・・・だからまたお前は何故俺にだけ言うのだ。
こいつのスマイルを真似ろとでも言うのか?なら全力で断らせてもらおうか。
 
昼食を終えた俺達は捜索を再開したが、これといってめぼしいものは見当たりそうにない。
こんなの早く終えて家でのんびりとテレビでも見たいぜ・・・
なんてことを考えているとハルヒの目が突然輝き始めたではないか!
「皆あれ見て見て!!!」
一体何を発見したと言うのだ・・・?
ゴ○ラか!?ガン○ムか!?スー○ーマンか!?ターミ○ーターか!?ドラ○もんか!?
とにかくこれは俺にとって不吉の前兆であることだけは断言できそうだ。できればそんなもん断言したくねえ・・・
そんなハルヒが指差したのは教会結婚式場であった。
「なんだただの教会結婚式場じゃないか。あんなとこ行ったって何にもありゃしないぞ?」
「何言ってんのよ!もしかしたら結婚式場で花嫁を奪われた哀れな男の幽霊とか、教会ってことはネ○とパト○ッシュにも遭遇できるかもしれないわよ!?」
とハルヒは100Wの笑顔で俺に熱弁した。
・・・こいつは恋愛ドラマとフラン○ースの犬の見すぎじゃないのか?
「あのないくらなんでもそんな・・・」
「さあ皆!あの結婚式場に行くわよ!!!」
あぁまたこいつ人の話聞いちゃいねえ。今まで俺は何回こいつに話をスルーされてきたんだろうか・・・
ハルヒの強引な提案で俺達は教会結婚式場に向かった。
 
「ねえねえこれ見てみくるちゃん!有希!」
今度は一体何だというのだ・・・しかしハルヒが女性陣だけを呼ぶっていうのは気になる。
朝比奈さんも長門も興味深そうに何かを見ている。
「一体なんなんだ?」
「これよ!」
ハルヒは俺の顔の目の前にチラシを差し出した。
「何々?『只今ウエディングドレス無料試着キャンペーン実施中』?」
なるほど、ハルヒも一応一般的な女子高生だ。こういうことにもちゃんと興味があるのか。
「さっそくこれ行くわよ!」
「まてまて、今日の本来の活動内容を忘れてやしないか?」
「そんなのたった今変更したわ!このキャンペーンに参加することが今日の活動内容よ!」
と我が団長はなんともまああっさり活動内容を変更してしまった。
こんなことで今後本当に大丈夫なのかSOS団は・・・
 
「え~~~!?」
ハルヒの不満そうな声が受付のフロアに響いていた。
教会結婚式会場の職員曰くこのキャンペーンは大好評らしく、ドレスは現在あと1名しか試着できないそうだ。
「そういえば長門、お前もこういうのに興味あるのか?」
「・・・それなりに」
こいつは驚きだ。まさかヒューマノイド・インターフェースにもそんな感情があったとはな。
しかしそれはこいつにとっていい傾向ってことなのだろう。
「よし!ここは公平にジャンケンで決めるわよ!」
まあたしかにジャンケンで決めるのが妥当だろう。しかし3人のウエディングドレス姿かぁ。
朝比奈さんの場合だと胸元が見える結構露出度の高い水色のドレスなど想像できるなぁ。
『恥ずかしいですぅ・・・』なんて照れながらもバッチリ似合ってる姿が目に浮かぶ。
あぁ~こんなことならデジカメでも持ってくるんだったぜ畜生!
長門の場合は無難に着こなしそうだな。紫、オレンジなんてのが似合いそうだ。
ドレス姿の長門が本読んでる姿ってのもそれはそれでグッとくるものがある。
ハルヒの場合は・・・ダメだ全く想像できん。
しかし黙っていればあいつは美人なわけだからどのドレス着てもまあ似合うだろうよ。
「やった~~~~~!!!」
どうやらジャンケンの決着が着いたようだ。勝者はハルヒだった。
朝比奈さんは『くやしいですぅ~』と溜息をついていた。
長門は自分の出したジャンケンの手をずっと見つめていて少し残念そうな顔をしているようにも見えた。
そしてジャンケンに勝ったハルヒの顔は今日一番の笑顔だった。
そんなにドレスが着れるのが嬉しいのだろうか?男の俺にはさっぱりわからんがな。
「ところで新婦がいるというのに新郎がいないというのは不自然じゃありませんか?」
古泉め・・・こいつはまたニヤケ顔で一体何を企んでいやがる。しかしそれに共鳴したように、
「そうですねぇ、私もそう思いますぅ~」
あれ?あ、朝比奈さんまでなんでこんな奴に便乗してるんですか・・・?
「・・・俺は断じてタキシードとか着ないぞ?」
何故俺が巻きこまれなきゃならんのだ。ハルヒ一人にドレス着せれば済むことだろうが。
すると長門が俺の袖を掴み、
「・・・空気読んで」
お前だけは味方だと信じていたのに!てかお前に空気読んでって言われる俺って一体・・・
「・・・し、しょうがないわね。キョン!あ、あんたもタキシード着なさい!団長命令よ!」
・・・マジっすか?
 
「よくお似合いですよ?」
「うるさい。」
こいつの5割増しのニヤケ顔が忌々しい。ああ忌々しい。
こうしてSOS団の脅迫により白いタキシードを身に纏っている俺・・・
「でもキョン君いつもと違ってカッコイイですよぉ~」
あなたにそんなこと言われるなら俺はいつだってタキシード着ますよ。
しかし『いつもと違って』がとっても気にかかるんですけど?
「・・・それなり」
お前の『それなり』はいい意味で受け取ってもいいのかわからんぞ・・・
どうやらハルヒはまだ試着中のようだ。やっぱりドレスとなると試着に時間が掛かるものなのだろう。
にしてもまさか俺がタキシードなんか着ちまうなんてな・・・谷口にでも見られたら学校でいい笑いものだぜ。
「おまったせ~~~~」
やっとお姫様の登場らしいな。ハルヒに文句の一つも言ってやりたいもんだ。
溜息をついて俺は振り返ってハルヒを見た。
「おかけで待ちくたびれ・・・」
その瞬間俺の中で世界が止まったように思えた。そこに立っていたのは、
―――人の形をした天使だった。
純白のドレスを着て、頭にはティアラを着けていた。
少し化粧しているようで赤い口紅をして、可愛いというより綺麗でいつもより大人びて見えた。
ハルヒは天使の微笑みとも言える笑顔で俺を見ていた。
俺は正直見惚れていた。たった数秒間が何分、いや永遠のようにも長く感じた。
「ん?どうしたのキョン?」
ハルヒの言葉で俺はやっと我に返った。
「べ、別に・・・!」
今更何緊張してんだ俺!?姿形微妙に違えどあのハルヒだぞ!?
つーか俺さっき心の中でなんて言った!?『天使』、『綺麗」だって!?
ああ~!誰か俺の記憶を抹消してくれ!5秒以内に誰か頼む!なんなら今すぐ俺を宇宙へワープしてくれ!
「何?もしかしてあんたあたしに見惚れてた!?」
うっ・・・図星ってのが我ながら情けないぜ。
 
「で・・・どうかな?」
ハルヒは少し照れながらドレスの裾を持って婦人のようなポーズをしながら俺に言った。
「・・・綺麗だよ」
って何正直に言ってんだ俺!あぁどうやら今俺の脳に異常事態が起きているらしい。
近日中に脳外科へ行く必要があるようだ・・・
「えっ!?ホント・・・?」
俺の意外な返答にハルヒは少し動揺しているように見えた。
ただハルヒが目の前にいるだけだと言うのに俺はハルヒと目を合わせづらかった。
ハルヒも俺と同じ心境なのか俺と目を合わせるとすぐ目を逸らしてしまう。
「とてもお綺麗ですよ涼宮さん。そういえば追加料金で擬似結婚式というのが行えるらしいですよ?」
擬似結婚式とは、神父(結婚式場の職員)が教会で誓い言葉を言ってくれるらしい。
一体何を言い出すんだ古泉?俺はとっとと着替えて帰りたいんだが?てかお前はもう黙ってろ。
「そんなもんやらなくていいだろうが。俺はとっとと帰りた・・・」
とハルヒが俺の腕を掴み上目遣いで俺に、
「・・・ダメ?」
か、顔近いぞハルヒ。その上目遣いのトローンとしたその天使の微笑みは反則だ・・・
あ、俺また『天使」って・・・あぁ~~~~~~~!
「今回は割勘でいいから・・・ねっ?」
『今回は』かよ!しかしちょっとこの笑顔は俺には強烈すぎる。
俺もうKOしそう・・・いやすでにKOしちまってるな。
「・・・しょうがねえな。」
「ありがとーキョン!!!」
俺は渋々承諾してしまった。この笑顔に勝てる日本男児がいるならぜひこの場に現れてほしいもんだね。
って俺の腕に抱きつくな!柔らかい感触が腕に当たって必死で保っている俺の理性が崩壊しそうだ・・・
 
ということで今教会で神父(職員)が俺とハルヒの目の前で誓い言葉を淡々と述べている。
もちろん俺はそんな言葉を聞く余裕などなく心臓が張り裂けそうな想いで立っている。
古泉達は神父(職員)の後ろに立って俺たちを見守っている。
・・・何をニヤニヤしてやがる。古泉スマイルがマジでムカつく。あとで一発と言わず十発殴っておこう。
朝比奈さんは「おめでとうございますぅ~」と俺たちに言った
あの~あなたは何か誤解されているようですがこれは擬似結婚式なんですよ?
長門は俺にしか聞こえない声で、
「・・・グッジョブ」
と親指をグッと小さな動作で突き立てて見せた。今日なんかお前若干キャラ違くねえか・・・?
 
ようやく誓いの言葉が述べ終るようだ。やっと開放されるのか俺は・・・
「あなたはこの方を一生愛すると誓いますか?」
こんな質問当然スルーに決まっている。ハルヒもきっとそうするに・・・
「・・・誓います」
って何でマジで答えてんだお前は!これはお芝居にすぎないんだぞ!?
この状況はもしかして俺も言わんといかんのか・・・?お芝居とはいえ恥ずかしぎる。
すると長門がまた俺にしか聞こえない声で、
「・・・空気読んで」
・・・わかりましたよ。言えばいいんでしょ言えば。こうなったらもうヤケクソだ・・・
「誓います・・・」
ふぅ・・・これでようやくこんな空気とおさらばできる。
「では誓いのキスを」
・・・はっ!?おい神父(職員)よ今なんて言った!?さては古泉の回し者か!?いくらなんでもこれは無理な注文だ。
「ハルヒ、お前も何か言ってや・・・」
しかしハルヒは俺のほうを向いて唇をわずかに突き出してるではないか!
もう何が何だかわからん。俺は夢を見ているのか・・・?そうだこれはきっと悪夢に違いないんだ!
明らかにパニくってるぞ俺!朝倉よ今ならお前にナイフで刺されてもいいぞ・・・
「・・・早くして」
パニくってる俺にさらに追い討ちをかけるんじゃないハルヒ!
目を瞑っているハルヒの綺麗な顔が俺の理性をどんどん崩していく。どーする!?どーすんの俺!?
・・・しかしハルヒがいいと言うならホントにいいってことなのか?
ハルヒをよく見てみると体が小さく震えていて顔も赤く染まっている。
そうだ、こいつはきっと俺以上に恥ずかしい思いをしているんだ。なのに俺はこのままヘタレでいいのか?
ヘタレな俺はやっと決心し、ハルヒの両肩を掴む。
「・・・いくぞハルヒ」
心臓の鼓動早すぎて息が充分にできてない気がする。俺の両手は緊張でわずかに震えていた。
俺は目を瞑り自分の唇をハルヒの唇へと近づけた・・・
 
唇に何かが柔らかい感触が当たった。ついに現実でしてしまった・・・俺は恐る恐る目を開けた。
と俺の唇に当たっていたのはハルヒの指だった。
「引っかかった~このエロキョン~!!あたしがあんたにキスなんてさせるわけないでしょ!」
憎たらしい小悪魔・・・いや悪魔の笑顔で俺を笑っていやがる・・・
・・・やられた。俺のあの一世一代の決心は何だったんだ・・・?
あぁパト○ッシュ・・・俺疲れたよ。今とっても疲れたんだ・・・
この世の絶望のように放心している俺に、
「・・・でも、誓・・・の・・・スはいつか・・・ね?・・・や、約束だからね!」
とにハルヒは顔を真っ赤にしながら俺の耳元小さく囁いた。
何が何の約束だって?全然聞き取れねえっての。どうせまた俺をドッキリさせようってか。もうイヤだ・・・
俺は全てを吐き出すような深い深い溜息をついた。はあぁぁぁぁぁ・・・・・・
もし溜息世界一決定戦なんてものがあったら今の俺なら上位ベスト3に入る自信があるね。
やれやれ・・・
 
壮大なドッキリとも言えるイベントを終え、俺達は駅に向かって帰ろうとしていた。
「今日はとても興味深いものを見させてもらいました。」
お前は俺に殴れと言ってるのか?そういうことなら容赦なく殴るぞ?
「今のあなたたちじゃあれが限界だと思っていましたけどね。それでも面白かったですよ?」
「それ以上喋るな」
なんで俺はこんな憂鬱な気分で帰らなきゃならんのだ。これもみんなハルヒのせいだ。
・・・でもあいつのハルヒのドレス姿は最高に綺麗だった。これだけは否定しようがない。
あの天使の・・・って俺また『天使』って言っちまった!家帰ったら首吊ろうかな・・・
「キョン君どうしたんですかぁ?」
「いえ別に。ただハルヒの暴走に付き合わされて疲れてるだけですよ。」
「もう一度涼宮さんのドレス姿見てみたいって思ったんでしょ?」
見たくないと言えば嘘になるが・・・まさかこの人にそんなこと言われるとはな。
「え・・・あ、まあ・・・」
すると朝比奈さんはエンジェルスマイルで俺に言った。
「大丈夫です。あなたは将来必ずもう一度見ることができると思いますから。」
俺はハルヒのドレス姿よりもあなたのドレス姿を見てみたいものですよ。
それにしてもまたもう一度必ず見れるっていうのはどういう意味だ?
―――俺が朝比奈さんのその言葉の意味に気づくのはずっと、ずっと先のことだった。
 
俺達は街に帰ってきてそれぞれ解散したが、
ハルヒがどうしても自分を家まで送っていけというので渋々ハルヒの家まで送ることになった。
俺はまだテンションが低いままとぼとぼハルヒと歩いていた。
「あんた何そんなに落ち込んでの?」
顔近いぞハルヒ。今日のお前は古泉か?てか全部お前のせいだろうが・・・
「今日は・・・楽しかったね。」
「楽しんでたのはお前だけだろ?おかげで俺はいい迷惑だったよ。」
「あたしと一緒だったのが不満ってわけ!?それとも・・・キ、キスできなかったのが不満だった・・・?」
この俺の低いテンションの原因はおそらくそれもあるだろうよ。
あそこまで期待させといてそりゃないだろ・・・
ここで一応言っとくが別にキスできなかったからものすご~く不満だったというわけじゃないからな?
「自惚れるんじゃない。そんなわけないだろ。」
「ふぅ~ん、そうなの・・・」
なんだよそのリアクションは。こいつ俺の言葉を信じてないな・・・
「あっ!みくるちゃんが男と手つないで歩いてる!」
「な、なんだってーーーー!?」
朝比奈さんが男とデートだと!?その男に俺の右ストレートをおみまいしてやる!
二人の交際をおとうさんは断じて認めませんよー!
一体どこにいるんだその忌々しい男は!
「でどこだ!ハル・・・」
―――また俺の中で世界が止まった。
気づけばハルヒの顔が俺の目の前にあり、唇と唇が重なっていた。
唇が離れると、ハルヒは顔を耳まで真っ赤にして俯いている。
何が起きたか俺の脳はパニックで把握できていない。
・・・俺はキスをされたのか?
「あんな見え透いた嘘に引っかかるんじゃないわよバーカ・・・」
キスしといてバカ呼ばわりかよ。引っかかった俺もバカなわけだが・・・
「このせ、責任はちゃんと取りなさいよね!い、一生掛けて・・・」
「お前からしたくせに何をいばっとるんだ。おまけに一生かよ・・・」
しかしそれでも別に構わないんじゃないかと俺は思い始めていた。
 
 
 
―――7年後
 
俺はあの教会結婚式場の教会にいる。
俺の隣には、美しい純白のウエディングドレスを纏っている俺の妻が、ハルヒが立っている。
朝比奈さんが言った言葉の意味を俺はようやく理解できたわけだ。
あの言葉って実は禁則事項だったじゃないんですか朝比奈さん?
結婚式にはSOS団をはじめとする多くの友人、家族、知人が参加し祝福してくれた。
今誓いの言葉を神父(本物)が述べている最中だ。
こうして神父(本物)の誓いの言葉を聞くのも二度目だなぁと俺は心の中で苦笑していた。
「あなたはこの方を一生愛すると誓いますか?」
あの時と同じ言葉なのに違う言葉のように聞こえた。
「誓います」
ハルヒは静かだが芯のある返事をした。
そして俺も
「誓います」
あの時とは違う。この言葉には俺の決意と想いがこもっているから。
「では誓いのキスを」
俺とハルヒは向き合った。
長年付き合ってるっていうのに改めて向き合うと少し恥ずかしい。
「ちゃんとあたしを一生幸せにしないと死刑だからね!」
「死刑はゴメンだな。・・・だから必ず一生幸せにするよ。」
―――そして俺達は誓いのキスを交わした。
「・・・約束守ってくれてありがと。」
「約束?何の約束だ?」
「な・い・しょ!」
そう言ってハルヒは昔と変わらない100Wの笑顔を俺に見せた。
「やれやれ。」
こいつのこの笑顔が一生見れるんだったらなんだって構いやしないさ。
 
 
 
終わり