谷口のミニ同窓会 (62-339)

Last-modified: 2007-09-26 (水) 12:12:45

概要

作品名作者発表日保管日
谷口のミニ同窓会62-339氏07/09/2607/09/26

作品

進級してしばらく経った土曜日、久々に中学時代の級友3人と会うことになった。
北口駅近くのファミレスに入り、ドリンクバーでだべっていた。
久々の友達だ、中学時代の話や近況なんかで結構盛り上がったよ。
昔の友達ってのもいいもんだよな。
「そういや、お前北高だったよな。あの涼宮と一緒だろ?」
誰かがそんなことを言い出した。
一緒も何も、何が悲しくて5年も同じクラスにいるんだよ畜生。
まあ、東中一の有名人だったからな。そりゃどうしたって思い出すってもんだ。
「また同じクラスだよ」
うんざりして返すと、他の3人は興味を持ったようだった。
「相変わらずなのかよ?やっぱり男取っ替え引っ替えしてるのか?」
俺は中学時代の涼宮を思い出す。そりゃ当時しか知らなきゃそう思うだろうよ。
「変人ぶりは相変わらずだけどよ。男ってのは1年近く続いてるぜ」
「えっ!?」「嘘だろ!?」「マジかよ!?」
見事に3人同時発言だ。わかるぜ。俺だって信じられん。
まあ、続いてるというよりは、本人曰く「何でもない」らしいが。
それこそ信じられねーよ!
「どんなやつだよ、あの涼宮を落とした男ってのは」
 
そのときだった。
 
「ちょっとキョン、待ちなさいよ!!!」
「ぶっ!!!」「うわっ!きったねぇ!!!」
良く通る聞き慣れた声が聞こえてきて、俺は飲んでいたソーダを吹いちまった。
どういう偶然だ!!!???
「あんたはみくるちゃんが心配じゃないの!?」
「古泉がここで待ってろって言ったんだ。今から行ってもすれ違いになるだけだろうが」
わざわざ確認するまでもないよな。キョンと涼宮が店員に案内されながらこっちに向かってきた。
「やっぱり今から行くわ!みくるちゃんが怪我したなんて放っとける訳ないじゃない!」
「だったら最初から古泉にそう言え。一旦了承したのはお前だろうが。いいから座れ」
そんな会話をしながら……って隣の席かよ!しかも無視かよ!
あー畜生、教室だけにしてくれよ。こんな所でも見せつける気かお前ら。
 
2人なのに6人がけの席に座ってるし、話の内容からすると、朝比奈さんと長門も来るようだな。
あの朝比奈さんと会えるなら、それだけで今日は得したぜ。
思わずニヤニヤ笑って自分の席に視線を戻した。
涼宮とキョンには悪いが朝比奈さんに比べればどうでもいい。
しかし……。
( ゚д゚)( ゚д゚)( ゚д゚)
どうやら三人とも凍り付いているらしい。
いや、その気持ちよ~~~く解るぜ。
涼宮が気付いたら「こっち見んな!」なんて言われそうだけどな。
 
「長門と古泉が大丈夫だって言ってるんだ。ちょっとは信じてやれ」
「……そうね。わかったわ」
2人の会話が聞こえてくる。俺たちの座席の空気は凍ったままだ。何とかしてくれよ。
飲み物を取りに2人が席を立って、ようやく誰かが口を開いた。
「あれ……涼宮だよな?」
「なんか……涼宮、感じ変わったよな」
わかる、わかるぜその気持ち。俺だって最初はびびったもんな。まさに驚天動地だ。
そもそも、涼宮があんなに感情を表して話すことなんてなかったよな。
常に不機嫌そうで、滅多に話さない。俺以外の3人は、そんな涼宮しか知らない。
「なんか、今、友達を心配してなかったか?」
「俺の……聞き間違いだよな?」
相変わらず豆鉄砲を食らった鳩と同じ顔をして俺に聞く。
聞き間違いじゃねーよ。
 
「あれか?さっき言ってた1年続いてる男ってのは」
興味津々、といった具合に1人が聞いてきた。キョンもあれ扱いかよ。
「つーか、涼宮を落としたってんだからどんないい男かと思ったら、すげー普通だよな」
言われたい放題だな、キョンよ。だが俺も同感だ。
「俺だってわけわからん。いつの間にかキョン……あいつだけどな、しゃべるようになってたんだよ」
2人とも戻ってきているのでひそひそ声になる。
しかし、まだ俺に気づかねぇのかよ。2人の世界ってか?このヤロー。
中学時代の奴らは、やはり涼宮の変貌ぶりに興味を持ったようだ。
自然と2人の様子を観察することになった。
 
「おかわり! キョン、取ってきなさい!」
「断る。自分で行け」
「あんたは団員その1にして雑用係なんだから団長のために取ってくるのは当たり前でしょ!」
相変わらずそんなことやってるのかお前ら。
「俺はまだ飲んでるんだよ」
キョンのグラスにはまだ半分以上残っている。
「ふ~~~ん」
ニヤリと笑った涼宮は、電光石火でキョンのグラスを奪うと一気に飲み始めた。
て、それキョンのストローだろ!
「おいっ! 何勝手に飲んでやがる!」
キョンは手を伸ばして奪い返そうとするが、それをかわして涼宮は全部飲んでしまった。
「ふふ~ん、これでグラスは空よね。ついでに私のも取ってきなさい。団長命令よ!」
勝ち誇ったように笑う涼宮。
「やれやれ、わかったよ。何を飲むんだ?」
キョンはため息を1つつくとグラスを2つ持って立ち上がった。
相変わらず尻に敷かれてるよな。
 
「す……涼宮が……笑った……」
拾った宝くじが実は1等3億円当たってたなんてことがあってもここまで驚かないだろうな。
あいつらのせいでこっちの座席は盛り下がりまくりだ。なんせ3人そろって真っ白だ。灰になるのかよ。
「あいつ笑えるんだな……」
1人がぼそっとそう言った。そういやこいつは涼宮に告白して3日で振られたクチだ。
「そう言う谷口は5分だろ」
おいっ!それを言うなって!!
「なんか、あれだけの美人が笑うとすげーいいよな」
立ち直りの早いやつがニヤニヤ笑って言い出した。
まー同感ではあるな。あの奇人変人ぶりがなきゃ、俺的美人ランキングでも上位に入るだろう。
だがな、俺は普通の女がいいんだよ。
「お前の意見はどうでもいいよ」
ってそれひどくねーか??
「随分丸くなったみたいだしなー。あんな涼宮なら付き合って見ても良くねーか?」
とんでもない!!!
「止めてくれ、とばっちりが俺に来るだろ!」
絶対「谷口の差し金!?何考えてんのよ!」なんて言われるに決まってるんだ。
「あんな普通なやつと付き合えるなら、俺だって行けそうだ」
自信があるのかないのかわからんセリフだ。
「いや、無理だろ」
俺は断言した。
「何でだよ」
俺はため息をついた。
「上手く説明できんけどな。1年同じクラスで見てりゃ嫌でもわかんだよ。涼宮をあしらえるのはキョンくらいだ」
尻には敷かれてるけどよ。
 
そんなことを話しているうちに、あいつらはまた飲み物の取り合いを始めた。
そんなことやってるんだったら、もう1回取りに行った方が早いだろうが。
「ちょっと寄越しなさいよ!」
「お前いい加減にしろよ!」
言い合いながら、キョンは取られないようにグラスを頭の上まで持ち上げた。
涼宮は立ち上がって奪おうとするが届かない。
業を煮やした涼宮は、キョンの襟首をつかんで自分の方に引き寄せる。
「おい、こぼれるって」
「だったらサッサと寄越しなさい!」
お前ら顔近いよ!!!
つーかもう我慢の限界だああああ!!!!!!!!
 
「うがあああああ!!もうお前らよそでやれえええええ!!!」
 
「谷口?」
「やっと気付いたか」
よう、とキョンは手をあげた。
涼宮はジロっと俺たちを一睨みすると、フンっとばかりに顔を背けやがった。
元級友もいるんだが挨拶もなしか?
「いつからいたんだ?」
「お前らが来る前からいたよ!」
「そりゃ悪かったな。で、何叫んでるんだ?病気か?」
えらい言い草だ。誰のせいだと思ってるんだ!
「お前ら毎日毎日なぁ……。休日まで見せつけるんじゃねぇよ」
「は?何の話だ。ハルヒのやつが人のもん横取りしやがるから阻止してただけだ」
毎回思うけどな、ほんとに自覚ねぇのかよ。
「あんたの物をあたしがどうしようが勝手でしょ!」
涼宮が口を出してくる。
「おい、そりゃねーだろ!」
「うるさいわね!口答えする気?罰金よ!ここの支払いもキョンの奢りね!」
「無理だな。俺の財布はもう底が見えている。古泉に払わせろ」
また俺の存在は無視ですか……。もう泣いていいですか……。
「ま、このドリンクバーくらいなら払ってやってやらなくもない」
「仕方ないわね!」なんて言いながら涼宮も嬉しそうに笑ってやがる。
 
「よそでやれって言ってんだろ!!!!!!!」
「だから何の話だ」
ほんとに勘弁してくれよ。くそぅ、涙があふれてくるぜ。
「あーもうやってらんねえ!!!!」
結局俺は他の3人に言って店を出た。
せっかく旧交を温めていたのに邪魔しやがって。
「じゃあまたな」
キョンは何事もないような顔をして挨拶してくる。
朝比奈さんが来るまでいたかったんだよ俺は!!!
キョン、殴っていいか?
 
「何となく、お前が言ったことがわかった気がした……」
店を出ると、涼宮と付き合ってみてもいいなんて妄言を吐いたやつがボソッと言った。
「あいつ……絶対俺らのこと覚えてないよな」
「谷口に気付いた瞬間、中学時代に戻りやがった」
口々に感想を言う。
「あのキョンってやつ何者だ」
俺が聞きたい。
「お前「毎日」って言ってたな。ほんとに毎日あんな感じなのか?」
聞かれて俺は海より深いため息をついた。
「そうだよ……。あれで付き合ってないって言い張るから参るぜ」
俺のセリフを3人は即座に否定した。
「嘘だろ!?」
「あれでか!?」
「どう見てもバカップルです。本当に(ry」
キョン、今日初めてあったやつにまでそう思われてるんだぜ。
いい加減自覚してくれ。
そんでサッサとくっついちまえ!!!
 
「ま、お前も苦労してるんだな……」
旧友たちは、深く同情してくれた……。
 
 
おしまい。