100万回生きたハルヒ (53-375)

Last-modified: 2007-07-17 (火) 02:47:25

概要

作品名作者発表日保管日
100万回生きたハルヒ53-375氏07/07/1207/07/13

作品

ハルヒという名前の女の子がいました。
ハルヒには、世界を自由に作り変えるちからがありました。
つまらない世界は何度でも作り直し、つまらない人生は何度でもやり直しました。
そうしてハルヒは、100万回も死んで、100万回も生きたのです。
かわいい美少女でした。
100万人の男が、ハルヒをかわいがり、
100万人の男が、ハルヒが死んだとき泣きました。
ハルヒは、1回も泣きませんでした。
 
あるときハルヒは、谷口の女でした。
ハルヒは、谷口なんか嫌いでした。
ハルヒは、谷口を五分で振りました。
谷口は、大きな声で泣きました。
 
あるとき、ハルヒは誰のハルヒでもありませんでした。
ハルヒは初めて自分のハルヒになりました。
ハルヒは自分が大好きでした。
 
どんな男も、ハルヒのお婿さんになりたがりました。
ハルヒは言いました。
「あたしは、100万回も死んだのよ。いまさらおかしくって!」
ハルヒは、誰よりも自分が好きだったのです。
 
たった1人、ハルヒに言い寄ってこない、キョンという男の子がいました。
ハルヒは、キョンのそばにいって、
「あたしは100万回も死んだのよ!」
といいました。
キョンは、
「ほう。」
と言ったきりでした。
ハルヒは少し腹をたてました。なにしろ、自分が大好きでしたからね。
つぎの日も、つぎの日も、ハルヒはキョンのところへ行って、言いました。
「アンタはまだ1回も生き終ってないんでしょ。」
キョンは、
「ああ。」
と言ったきりでした。
 
ある日、ハルヒは、キョンの前で、くるくると3回、世界改変をして言いました。
「あたし、女王になったこともあるのよ。」
キョンは、
「ほう。」
と言ったきりでした。
「あたしは100万回も……。」
と言いかけて、ハルヒは、
「しょ、しょうがないからそばにいてあげるわよ!」
とキョンに言いました。
キョンは、
「ああ。」
と言いました。
ハルヒは、キョンのそばに、いつまでもいました。
 
ハルヒは、キョンの子どもをたくさん産みました。
ハルヒはもう、
「あたしは、100万回も……。」
とは、けっして言いませんでした。
ハルヒは、キョンとたくさんの子どもを、自分よりも好きなくらいでした。
 
やがて、子どもたちは大きくなって、それぞれどこかへ行きました。
「あの子たちも立派な大人になったわね。」
と、ハルヒは満足して言いました。
「ああ。」
と、キョンは言いました。
そして、よしよしと、優しくハルヒの頭を撫でました。
キョンは、すこしおじいさんになっていました。
ハルヒは、いっそう優しく、キョンの頭を撫でました。
ハルヒは、キョンといっしょに、いつまでも生きていたいと思いました。
 
ある日、キョンは、ハルヒのとなりで、しずかに動かなくなっていました。
ハルヒは、初めて泣きました。
夜になって、朝になって、また夜になって、朝になって、
ハルヒは100万回も泣きました。
朝になって、夜になって、ある日のお昼に、ハルヒは泣きやみました。
ハルヒは、キョンのとなりで、しずかに動かなくなりました。
 
ハルヒはもう、けっして生きかえりませんでした。