概要
作品名 | 作者 | 発表日 | 保管日 |
Break The Chain | 83-571氏 | 08/03/10 | 08/03/10 |
作品
2008年。ギィィィィっ。
嫌な音を立てて古い洋館のドアが開いた。中から異様な臭いが漂ってくる。なんというか、何かが腐ったような悪臭だ。
しかし、阪中は若干顔をしかめただけでズカズカと洋館の中に入っていく。慣れているのだ。洋館にも、臭いにも。
「涼宮さ~ん」
そう呼びかけながら阪中はドンドン奥に進む。そして、ドアの一つを開けると…
「なんだ。阪中じゃない」
「なんだ、とは何よ」
洋館の主、涼宮ハルヒがバイオリンに漆を塗っていた。あと少しで塗り終わりそうだ。
「こんなにいい天気なのに、部屋に閉じこもってそんなことしてるなんて不健康なのね」
「あたしはあまり外に出たくないの」
阪中は涼宮ハルヒの幼なじみだ。彼女がこんな気難しい性格になってしまったあとでも、彼女はこうしてちょくちょく世話をしに来るのだ。
「またこの世アレルギー?アレは涼宮さんの気のせいだったんでしょ?こんなとこに閉じこもってる方が病気になっちゃうわよ」
「でも…」
「おいハルヒ」と突然第三者の声がした。天井からだ。
「もう3日も外出てないじゃねーか。運動不足な状態で、いざって時どーすんだよ」
コウモリのような違うような不思議な生命体(?)。彼の名はキバットバットⅢ世。ハルヒの相棒だ。
「わかったわよ……。支度するからちょっと待ってて」
やれやれ、なんとか外に出てくれる気にはなったみたいだ。
「いらっしゃーい」
どこに行くか。と言えば、喫茶店、カフェ・ル・マルダールというのがいつものパターンだった。ハルヒはここのコーヒーが好きなのだ。
「お、久しぶりだなハルヒ」
「あら、相変わらずマヌケ面ね」
客の一人がハルヒを見かけ話かけてきた。彼はここの常連客で、キョンというあだ名で呼ばれていた。
「またバイオリン作りでもしてたのか?懲りない奴だなあ」
「なにが「懲りない」よ。それじゃまるであたしが前に失敗してるみたいじゃない」
「しかし、現実的に未だにお袋さんのバイオリンを超える品は作れてないんだろ?」
むむぅ…とアヒル顔で口ごもるハルヒ。その口がキョンを罵倒するために開いた時だった。
キュイイイイイン!
洋館にあるバイオリン「ブラッディ・ローズ」が突然ひとりでに激しく振動し始めた。それを感知しキバットが動き出す。そして
「ごめん。あたし用事あったんだ!ちょっと行くね!」
とハルヒもすぐに店を飛び出した。
その行動に一同が疑問を覚える間も無く、キョンの携帯も振動した。
「もしもし?……でやがったか。わかった。すぐに行く!」
人の形をしながら人ではない存在。人の魂を吸い取る悪魔。「ファンガイア」
人の姿から本性を表したソイツは、狂ったように人を襲っていた。
「見つけた!」
ハルヒがそこに現れた。先程のメランコリックな雰囲気は全く感じられず、むしろ軽い高揚すら見受けられる。
「キバって行くぜ!」
いつの間にかキバットも彼女の近くに来ていた。
「行くわよキバット」
そして、彼女は変身する。
全身を紅に染めた、悪魔の如きヒーロー。仮面ライダーキバ!!
「でぇりゃあ!!」
キバの戦闘スタイルは単純な格闘術だ。拳が、蹴りが、次々とファンガイアに炸裂する。
「ギャオオオオッ!」
しかしファンガイアも負けてはいない。キバを上回るスピードで攻撃を仕掛けてくる。思わずたじろぐキバ。
「ちっ、こうなったら!」
キバットがそう叫ぶと同時にハルヒがバックルからフエッスルを取り出し、キバットにセットする。
「ガルルセイバー!」
大空を悠々と飛ぶ「キャッスル・ドラン」。その中に、三人の男女がいた。
「……チェックメイト」
「ん~。参りました。僕の負けです」
「また長門さんの勝ちですねぇ」
その時、彼らは突然席を立ち上がった。
「どうやら、こっちの方は僕の勝ちみたいですね」
「……もう3週間は出てない」
「あたしは先週出ましたから」
男が、不適に微笑む。
「久々に、外の空気を吸って来ますよ。では。まっがーれ↓」
次の瞬間。男は剣状の武器に姿を変え、キャッスル・ドランの口から勢いよく飛び出した。キバを目指して。
そして、キバがそれを掴んだ。
「ガルルフォーム!」
キバが蒼く変色していく。ガルルセイバーを武器とするスピードの形態。ガルルフォームになったのだ。
すぐにファンガイアが攻撃を仕掛けるが、キバはさっきとは打って変わって素早い動きで逆にファンガイアを翻弄する。
そして、一瞬の隙をついたその時だった!
「キバ!」
そこに現れたのはただの人間だった。しかも、ファンガイア、キバ、両方に殺意に近い敵意を向けている。
「お前は……私が倒す」
(さ…佐々木さん!?)
突然の登場人物に戸惑うハルヒ。その隙に逃げ出そうとするファンガイア。そして、佐々木は真っ直ぐにキバに向かってきた。
1986年。カフェ・ル・マルダール。
「こんにちは」
物腰柔らかそうな青年が入店してきた。彼の名は古泉一樹。最近よくこの店に来るようになった客だ。
「いらっしゃいませ。…なんだお前か」
出迎えた店員が親しげに席に案内する。彼は、後にキョンの父となる男。皮肉な事に、彼もまたキョンと呼ばれていた。
「いいコーヒーを飲むこと。それが良い人生を送る秘訣ですから」
そうかい。と投げやりな返事を返すキョン。それを見て苦笑するマスター。とても平和な光景だ。だが、
「キャアアアアアッ!!」
突然外から悲鳴が上がった!反射的にキョンと古泉が外に飛び出る。
「おいでなすったか!」
ファンガイア。それも2008年に現れた物と同一個体だった。愛用の携帯鞭を取り出すキョン。
「お客さん。危ないから下がった方がいいぜ」
「コーヒータイムを邪魔された恨みぐらい晴らさせて下さいよ」
ファンガイアが先に動いた!反射的に避けるキョンと古泉。そして…
「なに!?おっもしろそうな事してるじゃない!」
そこに割り込んできたのはただの人間だった。キョン達に好奇心一杯の眼差しを向ける。
「またお前か!」
「また私よ」
ウンザリと叫ぶキョンに不適に笑う少女。
「私も混ぜてよね!」
彼女の名前は涼宮音葉(おとは)。後に涼宮ハルヒの母となる少女だった。
過去と未来が複雑にねじ曲がる。
「隙あり!」
ハンター、ブラッディ・ローズ、ファンガイア、キャッスル・ドラン、キバ。
「ウェイク・アップ!」
物語は、謎を次々と生み出し加速する!
「ハルヒ、やっちまえ!」
運命の鎖を解き放て!!
「ライダァァァァァァァァッ!キィィィィィック!!」
新番組。「仮面ライダーキバ」2008年、1月27日。テレビ朝日系でキバって行くぜ!
「違うっつの!ダークネスムーンブレイクだろ!」
「いいじゃない。こっちの方が格好いいわよ」
「そういう問題じゃねえ!」
続劇