ウンパスの個別記事2号

Last-modified: 2020-12-14 (月) 17:18:41

メタルマックスゼノリボーン

メタルマックスシリーズとは?

話の本題に入る前に、メタルマックスというシリーズについて話をさせて欲しい。
メタルマックスは1991年にデータイースト社から発売されたファミコン用ソフトを祖にするRPGのシリーズだ。
ゲームデザインはドラゴンクエストのロト三部作(1~3ですね)に参加し、週刊少年ジャンプのファミコン神拳でミヤ王名義でも活躍していた宮岡寛。

メタルマックスはミヤ王の経歴を活かし、ドラクエと同じ一人称のRPGとしてデザインされたソフトであった。
しかしメタルマックスは、当時隆盛を極めていたドラクエ亜種の中でも明確にドラクエとは異なる部分、いわば「アンチドラクエ」とでも言うべき方向性を持っていた。

 ・世界観は荒廃した近未来
 ・戦闘スタイルは銃火器やドス、斧などを使う「人間」と、主砲や副砲、SEといった人間をはるかに超えた大火力と重装甲を誇る「戦車」の二択
 ・ゲームクリアに必要なフラグは最低限のものしかない。その気になれば即座に最後の町まで行って、店売り最強装備を即買いすることもできる。
 ・基本的にボスは各町々で賞金をかけられた賞金首として存在しており、フィールド上でランダムエンカウントする(もちろんダンジョンの奥で固定エンカウントするものもいる)

これらの特徴はスーパーファミコンのメタルマックス2(1993年発売)、初代のリメイクであるメタルマックスリターンズ(1995年発売)でブラッシュアップされ、より完成度を高めていった。
しかしドリームキャストでの発売を目指していたメタルマックス ワイルドアイズの開発中の1999年データイースト社が負債33億円で和議申請、2003年には自己破産を申告してしまった。
メタルマックス ワイルドアイズは日の目を見ずに開発中止となり、シリーズも終了を余儀なくされた。

しかしメタルマックスはそこで死ななかった!
2003年にGBAでナウプロダクション社がメタルマックス2の移植作としてメタルマックス2改を発売。
その後に「メタルマックス」という商標が他社に抑えられてしまったため、「メタルサーガ」とタイトルを改めながらもサクセス社から2005年にPS2で発売されたメタルサーガ~砂塵の鎖~、2006年にDSでメタルサーガ~鋼の季節~、2007年にiアプリでメタルサーガ~旋律の連鎖~、2010年には初のブラウザゲームとしてメタルサーガ ニューフロンティアが発売された。
さらに時は進み、他社に抑えられていた「メタルマックス」という商標も角川ゲームス社が取り直し、2010年にはDSでメタルマックス3が、2011年にメタルマックス2のリメイクであるメタルマックス2 リローデッドが、2013年に3DSでメタルマックス4 月光のディーヴァが発売された。
データイースト社の倒産で一度は絶たれていたシリーズの芽は、ここに再興が成ったのだ。
開発元の倒産を乗り越え、シリーズが復活したというのはメタルマックスシリーズに根強いファン層がいることの証であった。

その後、ソーシャルゲームとして2015年にメタルマックス ファイアーワークス、メタルサーガ~荒野の箱舟~の二本がリリースされ、2018年にPS4とPSVitaでメタルマックスゼノが発売されたのだった。

メタルマックスゼノについて

上記の通り、メタルマックスというシリーズは劇的な復活を遂げたのだが、しかし復活後の道は平穏だとはいいがたいものがあった。
メタルマックス3は9万本を超える売上でシリーズの復活を掲げるにたる実績を残せたものの、メタルマックス2 リローデッドは5万本超、メタルマックス4 月光のディーヴァは2万本超と下がっていく一方で、ソシャゲの方もメタルマックス ファイアーワークスが1年もたずにサービス終了の憂き目にあっていた。(メタルサーガ~荒野の箱舟~は2年ほど持ったがシナリオも未消化の部分が多かった)

そんな中で発売されたメタルマックスゼノはキャラや戦車の等身(戦車の等身ってなんだ?w)を上げてリアル寄りにしつつ、シンボルエンカウント方式になった敵に対して「不意打ち」として砲撃を撃ち込めるようにするなど意欲的な作りではあったものの、開発費用が致命的に足りてないのが明確であった。
特に欠点として多くに指摘されているのがリメインズという戦車から降りて攻略しなければならないダンジョンがあるのだが、これがどのダンジョンも見栄えが変わらない上にひたすら長く、ギミックも少なく単調であった。
またモブキャラクターのグラフィックを用意する手間を省いたのか、メタルマックスゼノでは人類は滅亡寸前のため町が存在せず、イベントも満足な数が用意できていなかった。
それにシナリオ面の自由度も低く、従来作では出来ていたイベントの順番飛ばしが行いにくい構造になっているのもメタルマックスというシリーズとしてはマイナス要素になるだろう。

しかし見るべき点がなかったのかというとそうでもなく、戦車のカスタマイズの幅は広く、また2周目からはイベントをすべてすっ飛ばしてボスである賞金首をまっすぐに倒しにいけるハンターモードが追加されることもあり、強い戦車をビルドして強力なモンスターを狩り、そのドロップアイテムでさらに戦車を強化していくハックアンドスラッシュ要素は非常に楽しいゲームであった。

とはいえメタルマックスゼノは1~4の従来作に比べると見劣りする作品だったのも事実であり、そういった評価で固まった所があった。
しかし2019年10月、メタルマックス公式が2021年のメタルマックス30周年に向けて新たに打ち上げたロードマップにてメタルマックスゼノのリメイクであるメタルマックスゼノリボーン(とリボーン2と未知の新作CODE ZERO)が発表されたのである。

メタルマックスゼノの新生<リボーン>

2018年に発売したタイトルを、2020年にリメイクして発売する。
一般的にこれだけ短いスパンでリメイクが行われることは非常に珍しいことだといえよう。
他のゲーム、たとえば真三国無双シリーズの場合だとこのスパンで出るのは猛将伝といった追加拡張パックの方向性になるだろうから。
だからウンパスも当初はリメイクと言いつつ、メタルマックスゼノ完成版になるのだろうと思っていた。
しかし2020年9月10日に発売されたメタルマックスゼノリボーンは、まさに新生<リボーン>の名が相応しい一品として仕上がっていた。

さて、メタルマックスゼノの特徴としてウンパスが挙げたのは大きく分けて以下の四点だ。欠点もよかった点も、一緒くたにしてまとめてみよう。

 ①リメインズが単調で長い(欠点)
 ②キャラクター数が少なく、イベントの数も少ない(欠点)
 ③イベントの順番が固定化されている(欠点)
 ④ハンターモードによるハックアンドスラッシュ要素(よかった点)

これらに対してメタルマックスゼノリボーンはこれらに対して明確に回答を出してくれた。

 ①リメインズが単調で長い(欠点)
  →リメインズ自体に特有のギミックを持たせ、単調ではなくして長さも適切なものに修正した。
 ②キャラクター数が少なく、イベントの数も少ない(欠点)
  →シナリオは逆に最小限に留め、後述の新戦闘モード極振りにした。
 ③イベントの順番が固定化されている(欠点)
  →店売りの品は初手から全品揃っているし、ゲーム開始直後にラスボスに挑めるくらいにはイベントの進め方をユーザー任せにした。
 ④ハンターモードによるハックアンドスラッシュ要素(よかった点)
  →ハンターモード自体は廃止されたが、一周目から実質ハンターモードになっている。ハックアンドスラッシュのよさはそのままで、さらに後述の新戦闘モードで楽しさ倍増。

①でリメインズの欠点は完全に解消された。
②については欠点の改善ではないものの、逆にシナリオが薄くなっても気にならない程度には後述する新戦闘モードが楽しかった。
③も記述の通りで、メタルマックスゼノは構造的にドラクエ1の「ラダトーム城の目の前に竜王の城がある」状態だったのだが、メタルマックスゼノリボーンではラダトームからいきなり竜王の城に殴りこめるようになっているのである。
また店売りの商品は途中で一段階向上するとはいえ、基本的に初手から全商品がそろっている状態で、稼ぎを入れればいきなり店売り最強装備で固めることができた。
個人的にはこういう無茶な作りは往年のメタルマックスのようで大歓迎だった。
④も後述する新戦闘モードに関わる話なので、そちらで大きく語ろう。

新しい戦闘様式の魅力

メタルマックスゼノリボーン最大の変更点が戦闘モードの変更である。
メタルマックスはシリーズ通して、メタルマックスゼノも含めていわゆるドラクエ的なターン制のコマンド入力形式バトルを採用していた。
しかしメタルマックスゼノリボーンはこれにシリーズで初めて大きなメスを入れたのである。

さて、メタルマックスが3Dモデルを採用したのは3DSのメタルマックス4 月光のディーヴァからであるが、メタルマックスゼノも含めて戦車の操縦は十字キーか左スティックを使用しての操作であった。
右にキーを入力する、または右にスティックを倒せば戦車は東に移動するし、それが上なら北という具合である。
だがメタルマックスゼノリボーンでは戦車の操縦はアクセルボタンとブレーキボタンで前進、後退、ブレーキを行うように改められた。では左スティックはどうするのかというと、いわゆるハンドル操作がそれに当たるのだ。
そう、メタルマックスゼノリボーンでは戦車の操縦に簡易的ではあるがレースゲームの要素を取り入れたのである。
これにより従来作よりはるかに「戦車を操縦している」感じが強くなった。

そしてこの戦車の操縦は戦闘時にもシームレスで行えるのである。
従来のメタルマックスは戦闘時、専用の戦闘画面に移行して行われていた。しかしメタルマックスゼノリボーンではフィールド上にシンボルエンカウントした敵とマップ上でシームレスに戦うことになるのだ。そしてこの戦闘中、プレイヤーは戦車を自由自在に動かすことができる。
さらにメタルマックスゼノにあった不意打ちの要素は射撃モードとして本格的に実装され、モンスターを戦車砲で狙い撃つ要素も大きくなっている。
実際の画面を元に説明すると、このような戦闘システムになっている。
https://twitter.com/yamzui/status/1304583719890501633
https://twitter.com/yamzui/status/1304696211526447104
https://twitter.com/yamzui/status/1305863353760460803
https://twitter.com/yamzui/status/1306554180367122432
この戦闘中に自分で戦車を動かすこと、それ自体に意味はない。相手と近ければ攻撃力アップだとか、相手の射線をさえぎるようにすれば味方をかばうとか、そういう要素は一切ないおまけではあるのだが、しかし自分で作った戦車が一番映えるカタチで戦わせられるというのが非常に非常に楽しい。世の女子がインスタ映えを狙いたがる気持ちがよくわかる。
コマンド入力は素早さ順で攻撃ターンが回ってくるたびに逐次手入力することもできるが、前に入力したことをオートで続けることも可能なので、オート戦闘にしたまま戦場を戦車で駆け回ることが難なくできる。これがすげぇ楽しい。
この戦闘システムを組み込むために発売を二回、半年以上延期しているのだが、それだけの価値がある戦闘システムだと断言できる。

しかしながら残る欠点

こうしてメタルマックスゼノリボーンを褒めちぎっているわけだが、しかし欠点がすべて解消できたとは言い難い部分があるのも事実だ。
やはりRPGである以上はシナリオをもう少し濃くしてほしいという思いはある。
また、UIがおせじにも使いやすいとは言い難い。特に人間時のアイテム使用のUIのまずさ(アイテム一覧表示する度にロードが入りなおす)と戦車改造のUIの使いにくさについては公式ツイッターアカウントが募集していた「次回作への要望」でも指摘せざるをえなかった。
特に戦車改造のUIはメタルマックス4が一番やりやすかったので、そのレベルに戻してほしいものだ。

メタルマックスゼノリボーンの総評

というわけでウンパスは、メタルマックスゼノリボーンは総じて新戦闘システムのお披露目、特に新戦闘システムがユーザーからどう評価されるかを確認するための新生であったと考えている。事実、この新戦闘システムを載せたメタルマックスゼノリボーンは粗削りではあるものの、非常に楽しいゲームとして完成している。
恐らく開発スタッフが本命としているのはメタルマックスゼノリボーン2の方だろう。
個人的にはこの新戦闘システムには大満足であったし、今後これを土台にシステムを追加拡張していくならきっと楽しいものが出来上がるのだという予感はある。
そして開発スタッフ自身もメタルマックスゼノリボーンの感想や意見をツイッターで広く募集し、結果を公表して次回作に反映させることを約束するほどに誠実にメタルマックスと向き合ってくれている。
個人的には今回の新生<リボーン>でメタルマックスシリーズが向かうべき道標はできたと思っているし、スタッフはその道標を進み始めている。
一メタルマックスのファンとして、この道標の先を見続けていきたい。そう思わせる未来を感じさせてくれる一作であった。
もしこの記事を読んでメタルマックスゼノリボーンをプレイしてみたくなったのならぜひ手に取ってプレイしてみて欲しい。この新戦闘システムは体感するととても楽しいものだとわかってもらえるはずだ。

完全に余談

ウンパス的シリーズオススメ順
オススメ            今やるとキツイ                昔からキツイ
2R<4<ゼノリボーン<リターンズ<2=3=1<ゼノ=砂塵<<<<越えられない壁<<<<鋼の季節