TRPGシナリオ作成講座 第2回

Last-modified: 2018-12-04 (火) 07:33:36

◆これまでのあらすじ

 ゲームマスター初心者、ぬえちゃん。TRPGのシナリオ作りを教わりにきたが、霊夢B装備の執拗な喰らいボム粘りによって絶命した。
しかし、残機と引き換えに基本の3類型「ダンジョン」「ウィルダネス」「シティ」について学んだのであった。

◆本講の目的

 実際のシナリオ作りにあたっての傾向・対策、心構えを知る。

◆一緒に遊ぶのは

 シナリオ作成にあたり「誰に遊んでもらうのか」は重要。気構えなくていいものもあれば、入念な準備が必要なものもある。
本講では身内と遊ぶものとして話を進める。
 
・身内
  テストプレイ不要。思いついた実験作を遊ぶのもよし、自分でシナリオが作れないなら他人のシナリオを遊ぶのもよし。
=====見知らぬ人と遊ぶ壁=====
・オープンコンベンション、公募オンラインセッション
  最低1回以上のテストプレイが望ましい。初対面の人と遊ぶことになる。身内と遊んで評価が高かったものを持ち込もう。
 来るのはそのゲームが好きでたまらないプロのプレイヤーが多い。市販シナリオの大半を所持していたり、動画を片っ端から見たりという人ばかり。
 シナリオは自作が基本。
========仕事の壁========
・学校講義、イベントゲスト、出版
  複数回のテストプレイと検討会が必要。対価をいただいてする「お仕事」。

◆グループの傾向

 プレイグループによってTRPGの『どの要素』を重視したシナリオにするのか、可能ならば変えてみよう。
話すことが好きなのか、なりきるのが好きなのか、ギミックが好きなのか。傾向にあったシナリオを作れると、より良いセッション体験が得られる。
 いずれかの要素のみしか持たないというPLは少ない。多かれ少なかれ、すべての要素を持つPLがほとんど。
そのPL・グループにとってどの要素が大切なのか、何度かセッションするうちに見えてくるだろう。
 
・T:トーク。GMやPL・PC間の掛け合いを楽しむタイプ。
   ギャグやパロディなど、笑いや話のきっかけになりやすいものを取り入れたシナリオが喜ばれる。気を抜くと雑談にそれがち。
・RP:ロールプレイ。そのキャラクターになり切って、別の自分を楽しむタイプ。
   キャラクターや情景の描写を丁寧にすると喜ばれる。PLは存在しない。
   PLメタがないので、キャラクターをどうやって目標に向かわせるのかがポイント。
・G:ゲーム。シナリオのギミックや謎を解き明かすのを楽しむタイプ。
   シティシナリオの推理ものや、ギミック満載の実験作など。ゲームブックの14を苦に思わない。シナリオ作成は大変。

◆GMは楽しませるもの

 『ゲームマスターとプレイヤーは対等であり、ともにセッションを作る。』しかし、立場は対等ではない。
GMはホストであり、PLはホストの自宅パーティに招かれた友人、と考えてみよう。おもてなしの心。
・機知・判断をたたえる
・「まさか!」「その手があったか!」と驚いてみせる
・鋭いことを聞かれたという演技とそれに対するボーナス
・無茶なものでない限り提案を積極的に容れる
 バランスが崩壊しない程度のPC有利は問題ない。大げさであろうと褒められて悪い気になる人はそういない。
PLも好意から自宅に招かれていることを忘れないように。
キテレツな装飾で頭部アルミホイル巻きの奇人が出てこようと「ご立派な家で」と褒めよう、少なくともセッション中は。

◆PLに勝手に振らせない

 ある程度慣れた人でも、勝手に判定をして結果を聞きたがる。
よく聞くのは、クトゥルフでPCが自発的に≪目星≫を振る事例。ソードワールドでも≪探索≫を勝手にするPLはいる。
 判定をさせる権限はGMのもの。指示していない判定に対し、情報・報酬を出す必要はない。ダイス素振りご苦労、とねぎらおう。
PLに許されるのは判定してもよいか聞くこと。GMは意味があるのなら振らせる。さもなくば、意味がないことを伝え振らせない。
 あらゆるシナリオにおいて、探索パートは常に時間がかかるもの。些細なことでいちいち振らせていては判定の緊張感が失われる。

◆判定の意味と緊張感

 判定には意味と緊張感が必要だ。内容が無いような判定はいけない。
・意味
  判定を作る前に、無意味でないか見直そう。2D6の期待値は7ないし5。
 つまり、目標値7は無意味。当たりまえを振らせる必要はない。呼吸や手足を動かすのに判定は不必要なのと同じ。
 意味のある判定を作るには、目標値の設定に気を配ろう。能力値から定めたり、パーティの平均レベルから求めたりする。
 
・緊張感
  判定は必要なときに振らせてこそ、結果に一喜一憂できる。場面ごとに≪探索≫、≪目星≫させていてはただの作業だ。
 成否で状況が大きく変化する重要な判定を数個用意しよう。その重要判定1つにつき、さらに2,3個の関連小判定で十分。
 ただし、失敗するとシナリオに支障をきたす判定は決して作ってはならない。シナリオ解決に必要な情報・アイテムはすべて判定なしで渡すこと。
  初心者GMに多いのが、やたらPLにダイスを振らせる病。聞くと、振らせないと楽しんでもらえているか不安になるらしい。
 ダイスを振ること自体は楽しいが、シナリオの楽しさとは別。振らずともテーブル「トーク」でシナリオは十分進行するし、そのように準備しよう。

◆情報は惜しまない

 情報は出し過ぎでちょうどよい。GMにはすべてが見えているが、PCは集めた情報でしか判断できない。
PCの推理力に頼らないこと。彼らは想定通りに動かないし、思考しない。露骨にあからさまに情報を出して誘導しよう。
警戒されようとも、無視されるより良い。
 

前提:モンスター退治を依頼された冒険者たちが崖の上にいる
×大きな岩がある
  突然このGMは何を言っているのかと思われる。頭ぬえちゃん。
△モンスターを潰せるぐらい巨大で、よく転がりそうな岩がある
  モンスターの気配を探ることをPCに任せてしまっている。
〇崖の下からモンスターたちの声が聞こえてくる。少し先の坂に巨大でよく転がりそうな岩がある。うまくするとモンスターの数を減らせるかもしれない。
  ここまで提示することでようやく「その岩は自分たちで押せそうか」「すでにモンスターが岩陰に隠れててもう少し近づいたらこちらへ転がしてくるのでは」
 「モンスターたちが岩の存在に気づいていないわけがない」「岩の後ろにこっそり回り込みたい」などの話を引き出すことができる。

◆次回予告

 早速シナリオの作り方を知ろうとしたぬえちゃんを容赦なき総括。これにより残機はマイナス。ぬえちゃんはお金がないのでコンティニューできない。
次回はどの類型のシナリオでも使える3つの導入「依頼」「目的」「巻き込まれ」について解説する。