その他/コーテルセット

Last-modified: 2020-05-08 (金) 21:09:20

王将の限定メニューは店舗によって全く異なっているのをご存じだろうか。
 ラーメンや餃子や天津飯にサラダや揚げ鳥まで王将の代表メニューをほぼ網羅した千円ちょいのわがままセットが看板商品であるところもあれば、小さめサイズのラーメンとチャーハンとおかずをセットにして百円で提供しているところもある。
 そんな数ある店舗限定セットメニューの中でも、個人的に最も当たりだと思うメニューが、餃子+ごはん+スープ+一品が七百円くらいで食べられるというもの。せっかく王将に来たのだから餃子を食べたいところだが、限定メニューに餃子が含まれていないという店も意外に数多くあるもので、餃子セットがちょうどいい値段で売られているところはしっかりとメモしておきたい。
 そして、なんと事務所の近くの王将のセットは、その大当たりなのである。餃子+日替わりごはん+スープ+ミニから揚げで七百二十円。餃子を軸に編成した王道セットである時点ですでに高評価だが、ごはんが日替わりでチャーハンや天津飯になるところがマンネリを防いでいてよい。さらに、一品メニューがから揚げというところが何気に素晴らしい。こうした小皿がキムチである店はかなり多いのだが、キムチを食べるとにんにく臭くなるので社会人のお昼にはNGだろう*1
 どうだろう。この、王道ながら細かいところまで考え抜かれた完璧なセットは。まさしく餃子の王将界のillumination STARSといったところではないだろうか。あ、illumination STARSとは私が勤める事務所でプロデュースを手掛けているアイドルユニットである。まだまだ駆け出しだけど来年のW.I.N.G.目指して頑張ってるからよろしくね。
 ……閑話休題。私は今日もこの「餃子の王将 成績下がるヶ丘店」ののれんをくぐる。カウンターの向かいにある二人掛けテーブル席の奥から二番目に座り、メニューを見ずに餃子セットをにんにく抜きで注文する。
 すみません、店員さん。

 ……? 忙しそうだな。

 …………あっあの店員さんすみません。TEN IN SAAN!

「大変お待たせいたしました。ご注文をお伺いいたします……?!」
灯織?! どうしてここに。
「プロデューサーさんこそ、どうしてここに? あのお昼にはコスパが良くて安定した味の中華料理を好むプロデューサーさんが、なぜ昼休みに餃子の王将へ?」
いやコスパが良くて安定した味の中華料理を食べたい人は王将に来るだろ……じゃなくてだ。お前、前からここでバイトしていたのか?
「いえ、プロデューサーさん、先週からです。……すみません」
 いや、オフの時間をどう使うかを強制する権利は俺にないから、別に構わないが。しかし、どうして王将でバイトを?
「…………目覚めてしまいました」
 一体何にだ、コスパが良くて安定した味の中華料理をオールウェイズ出してくれる餃子の王将の素晴らしさにか?
「いえ、『餃子道』です」
 餃子道?
「餃子をパリっとさせるには、ただ単にガチガチにやるだけでは済まないということを、先日知りました。その日の室温、湿度……そして餃子を食べる人の好み、人生哲学、流行順位……色々なものが絡むことを知りました。例えば、その日の流行順位が一位からVo.Vi.Daだったら、適当に作った餃子の味は空っぽです。何も感じません」
 ——その通りだ。
「そんな餃子の奥深さを知って、私は餃子のことをもっとよく知りたい、餃子を極めたいと思ったのです」
 ……なるほどな!
「プロデューサーさん、こんな私でも、私をトップ・ギョーザへと導いてくれますか?」
 勿論だ! お前ならわかっているだろう、餃子は餃子の王将におけるトップアイドルといっても過言ではない。餃子はアイドルなんだ。お前は、トップアイドル、もといトップ・ギョーザになる素質がある!
「……はい!」
 だから灯織、ギョーザ定食一人前お願いします!
「コーーーーーーーーテルセットイーーーーーーーー、入りまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーす!!!!!!!!!!!!!!!」


*1 tips:王将の餃子にはにんにくの代わりにしょうがを使ったにんにく抜きしょうが餃子というものもあるよ!