Commentary

Last-modified: 2008-11-20 (木) 17:15:18

Commentary情報

ゲームの解説情報、コメンタリー情報です。

イントロダクション

ようこそ、Left 4 Deadへ。
Left 4 Deadは、一人用のゲームとマルチプレイヤー用ゲームの長所を融合させた、新しいタイプのゲームだ。
このゲームでは、Half-Lifeのようにキャラクターを前面に押し出したストーリーを持っていて、しかもCounter-StrikeやTeam Fortress 2のように大勢で何度もプレイできるゲームを目指したんだ。
ゾンビの大群も出てくるし、協力モードもある。気に入ってもらえると思うよ。
解説を聴くには、吹き出しのアイコンに照準を合わせて「使う」キーを押す。
解説を中止するには、回転しているシンボルに照準を合わせて、「使う」キーをもう一度押す。
解説によっては、プレイヤーに何かを見せるためにゲームが制御されてしまう場合がある。そんなときは、「使う」キーを押せば解説を中止できる。Left 4 Deadをプレイした後は、ぜひ感想を聞かせてほしい。
宛先はgaben at valvesoftware.comだ。新しいゲームをリリースするたびに、10,000通もの電子メールを受け取っている。その全部に返信することはできないけど、受け取ったメールはすべて読んでいるよ。
それじゃ、楽しんでくれ!

しゃがみ動作の自動化

[Brandon Idol]
パニックの中逃げながら、それでも何とかチームメイトと協力しようとしているプレイヤーに、「通気孔に潜り込むためにしゃがむにはどうしたらいいんだろう?」なんてことは絶対に考えて欲しくなかったんだ。
このゲームの開発中、僕たちは操作方法をできるだけ単純にするよう努めたんだ。 操作方法のせいでイライラすることなく、純粋にゲームの「怖さ」を楽しんで欲しかったからね。通気孔や障害物の前に来ると、生存者は自動的に身をかがめるようになっている。ゲーム中のこういった操作をプレイヤーに意識させないように注意したよ。恐怖に満ちた世界を、操作方法なんか意識しないで思い通りに動けるようにね。

車の防犯アラーム

[Brenda Kennedy]
車の防犯アラームは「パニックイベント」がどんなものなのかを示す例なの。 長くは持続しないけど激しくて、でも時には注意すれば回避できるイベントのね。世界の終わりを扱った映画には、よくアラームの音が無人の街に虚しく響くシーンがあるけど、そういうシーンだと、防犯アラームがすべてが崩壊したことを強調する手段として使われてるでしょう。
わたしたちも最初は、作品の世界観を盛り上げるためだけに防犯アラームの音を入れようと考えたんだけど。でもしばらくしてから、アラームの音で感染者の群れが集まってきたらどうだろうって思いついたのよ。Left 4 Deadにぴったりのアイデアだって確信したわ。車の防犯アラームみたいな古典的な要素がゲーム要素として機能するなんて素敵よね。

建設中の階

[Chris Ashton]
最初期のバージョンでは、壁面には開口部が一つもなかったんです。端から端まで壁っていう感じで。
でも、せっかく病院の上階にいるんだし、建物の下に特に何かを用意してある訳でもないので、窓を追加して3Dスカイボックスを使い、街の眺望を楽しめるようにしたんです。 こうすることで、Hunterに攻撃された生存者が時々窓から落ちるようになり、窓に近づくという行為がスリリングになりました。
その後テストを進めてみると、危険な場所に近づくという行為自体が面白いことに気付いたんです。 そこで、どうせならできるだけ広げてやろう、と決めたんです。最終的に、この階の壁は完全に取っ払ってしまいました。支柱や瓦礫のせいで、ギリギリのところを歩かなきゃいかない場所もたくさんあるんですよ。

布で覆われた死体

[Jaime Sue]
このステージにある布で覆われた死体は、言葉とか説明なしでゲームの世界観を伝える方法のひとつなんだ。ここでは、生存者はプレイヤーだけじゃないってことを表したくてね。でも生存者のほとんどはそう長くは生き延びられないだろうから、あちこちに死体がないとおかしい。 しかも普通の死体だと感染者の死骸と区別しにくいので、うまい方法を考える必要があったんだ。
そこで、彼の死を悲しんだ仲間が遺体に布をかけたんだ、彼には仲間がいたんだってことを明確に示せるように、死体に毛布やシーツをかぶせてみた。 これだと、残った仲間が彼の死体を外に埋葬できるような状況でなかったことも同時に伝えることができるから。 残った仲間にしても、安易に外に出て感染者に見つかるわけにはいかないし。 だから、布をかぶせるだけでその場に放置したんだ。
生存者の死体は、時にはチェックポイントのすぐ外にもあったりする。 きっとその生存者は安全地帯にいたけれども、夜のうちに傷か何かが原因で亡くなってしまったんだ。 そして翌朝、他の生存者が死体と同じ部屋にいることに耐えられなくなって、死体を部屋の外に引きずり出した、と。 だから、布を掛けるのが彼らにできる精一杯だったんだ。

ハシゴ

[Jerry Bennett]
 開発の初期段階からずっと、このハシゴの場面はステージで最も盛り上がる場面のひとつだったんだ。 少しの間とはいえ、他のチームメイトと距離が開くことになるし、ハシゴをのぼっている最中は攻撃できないから。 チームメイト全員がピンピンしていれば特に問題はないかもしれないけど、全員が傷を負っているような場合には、だいたい立ち止まって顔を見合わせることになる。 だれがいちばん元気だろうってね。 普通はいちばん怪我の少ない人が最初にハシゴをのぼることになる。 のぼった先で感染者に襲われるかもしれないからね。 必ず襲われるというわけではないけれど、最初にのぼる人は多少痛めつけられる覚悟をしておいたほうが良いね。

ぶら下がり

[Khanh Nguyen]
初期の段階では、生存者が屋根の上を歩いていると落ちてしまうことが多かった。 でも落ちるのは特に楽しいことじゃないよね。 チェックポイントを目指して高い場所まで上ってきたのに、突然現れた感染者にビックリして足を滑らせてしまう、みたいに。 そんな風にゲームの流れが止まってしまうのは不本意だったし、僕らが目指していた「助け合う」ゲームプレイの要素も取り入れたかった。 そこで、足を踏み外した生存者は建物のへりにしがみついて、チームメイトの助けを待つっていうアイデアにたどり着いたんだ。
このアイデアのおかげで、場面に緊張感を加えることもできた。 落ちそうになったプレイヤーがへりにしがみつくと、カウントダウンが始まるんだ。 最初は両手でしがみついているけど、それが片手になり、最終的には手が滑って落下してしまう。 変更前のバージョンでは、ただ落ちるだけで、落ちてしまえば終わりだったんだけどね。
ゲームデザイン上の問題を解決する過程で、チームプレイ要素と緊張感まで高めることができたよ。

破滅した世界とライティング

[Matt Campbell]
破滅した世界の街並みを描く時には、光源をどうするか?という問題が常につきまとう。 最初は、まだ電力供給が止まっていないという設定にしようと思っていたんだけど、そうすると町中の窓に明かりがついていて、街灯もすべて灯っている状態になってしまうから、求めている雰囲気を出せなかったんだ。でも一方で、それぐらいの光源は必要だということも感じてた。だからアートとライティングを合わせる段階にきて、窓の明かりや街灯の大部分を消すことに決めた。
これはシーンの光源をどうすればいいのか考え直すいい機会になったよ。 照明を全部取り除いてみて気付いたことは、照明が消えると街の「普通さ」みたいなモノも同時に消えるってことだった。 窓の明かりや店先のネオンが消えたことで、街の風景がよそよそしく感じられるようになったんだ。 地面に近い位置にある車のヘッドライトや火のついた燃料タンクなんかを光源に使うことで、街に不気味さや退廃的な雰囲気を与え、絶望的な雰囲気を演出できたと思うよ。 見慣れた街の景色が、見たこともないような様相を呈する。 それは何かがおかしいような、何かが欠けているような感じなんだ。

クレッシェンドイベント

[Miles Estes]
「クレッシェンドイベント」は、プレイテストの積み重ねから生まれたイベントなんだ。 もともとフィナーレはうちのプレイテスターのお気に入りイベントだったんだけど、たどり着くまでには通常1時間ほどかかるから、彼らは途中にも何か山場が欲しいと感じていた。
フィナーレでは、一息ついて、作戦を立て、感染者に対して罠を仕掛ける。 ここがプレイテスターが気に入ってくれた点だったんだけど、フィナーレにたどり着くまでは、どうしても逃げ続けながら襲いくる感染者と戦い、前進するだけになってしまう。 クレッシェンドイベントは、チームで作戦を立て、戦略を持って戦える機会を増やしてほしいという要望から生まれたんだ。 もちろんチームワークを醸成する役にも立つし。
例えばミニガン。 このイベントではミニガンは非常に重要なんだ。 チームの誰かがミニガンについてなければ、あまりよい戦果は期待できないからね。 でもミニガンの使用者は視界が限定されるし、後方を見ることもできないので、敵からの攻撃に弱い。 だから戦果を挙げるには、どうしてもチームメイトの援護が必要になる。
キャンペーンの途中にクレッシェンドイベントを設けることで、ゲームの流れに緩急をつけるだけでなく、フィナーレに待ち受ける過酷な戦いに勝利するためのスキルを磨き、チームワークを育むことができるようになったんじゃないかな。

ラウンドのリスタート

[Phil Robb]
プレイヤーが何かミスをしたら、何をミスしたのかをできるだけ早く理解してもらう必要がある。 Left 4 Deadの初期のバージョンでは、キャンペーンの途中で生存者が死ぬと、最初からやり直しだったんだ。
例えばキャンペーンの最後のレベルで死亡すると、そこまで戻って違うやり方を試すまでに45分もかかってしまう。 でもこれだと、どこで何をミスしたのか正確に覚えておくことが難しくなってしまい、前回ミスした場所まで戻って別のやり方を試すのが難しかった。 そこで、チームが全滅した場合は死亡したレベルの最初の地点に復活するようにしたんだ。 これなら、難しい場面でも柔軟に考えて自由な行動を取ることができるからね。

建物の輪郭

[Sean Keegan]
建物の形といったら、普通は四角だ。 でも照明のしっかり当たったビルの背景に夜空を持ってくると、エアコンの送風機や煙突が飛び出ていたり、屋根におもしろい形をした突起物があったりしても、建物の四角い輪郭だけが強調されてしまうんだ。
なので、ここでは典型的なライティング手法を使わず、暗い建物と明るい空という組み合わせを試してみた。 そうしたら、パイプや煙突の形が見事に建物のシルエットに溶け込んだんだ。 おかげで、送風機なんかを詳細に描きこむことなく、建物の輪郭に複雑で生き物のような雰囲気を与えることができたよ。 当たり前だけど、「このオブジェクトは部分的にだけ詳細に描き込まれているんだろう」なんて思いながらゲームをプレイする人はあまりいない。だから、建物の暗い部分を見たプレイヤーは、無意識にディテールを想像して想像力で補完してくれるんだ。

屋上のフィナーレ

[Chris Ashton]
病院の屋上でのフィナーレは、プレイテスターが一番繰り返しプレイしていたイベントだったんだ。 そしてここは、最初に完成したフィナーレでもあった。
初期の段階では、生存者は建物の中、ヘリポートは屋外というデザインだったんだよ。 救助が到着するまでは建物の内で戦闘して、脱出する瞬間にだけ外へ出てヘリに救助される、という感じでね。 でもプレイテストを重ねるうち、狭い部屋の中に立てこもってドアから侵入してくる感染者を撃ち続け、ヘリが到着したら脱出する、という流れでは簡単すぎるということに気付いた。 せっかく何百体もの感染者が押し寄せてきているのに、プレイヤーが実際に目にするのが狭いドアから押し入ろうとしてくる感染者だけでは盛り上がらないし。
そこで僕らは、プレイテストの結果から分かっていた「生存者はより高い所に行こうとする」傾向を利用することにした。 プレイヤーは感染者が来ると、まるで洪水でも来たみたいに高所へ逃げようとする傾向があったんだよ。 その傾向を逆に利用しようということになり、ビルの屋上に簡単に行けるようにして、別の建物の屋上にも移動できるようにしたんだ。 生存者が高い場所を好む傾向を把握することで、プレイヤーの攻略方法を予測し、それに合わせてゲームデザインを調整することができたんだね。
例えば、感染者は壁をよじ登れるので、屋上の隅に逃げ込んでも安全ではないんだ。 屋上では遠くにいる感染者がこちらに走ってくるのも見えるから、ドアから押し入ってくる相手を撃ち続けるよりも盛り上がるしね。

Left 4 Deadのアイデアの源

[Mike Booth]
Counterstrike: SourceのBOTを開発していた時、オートマチックウェポンで完全武装した仲間何人かで、ナイフを装備した30体のBOTに挑むとすごく面白いことを発見したんだ。 その後2004年の後半にCounter-Strike: Sourceの開発が終わってから、新しいゲームのプロトタイプ作成に着手した僕らは、構想を練っている間「友人ばかりの少人数チームで大量の敵と戦う」というアイデアについて何度も話し合うことになった。 そうして、このアイデアの持つすごい可能性に気付いたんだ。
Left 4 Deadの原案には2005年の初めから取り組みはじめたんだけど、 だいたい1週間後にはプレイアブルなプロトタイプが完成していたよ。 その時は大まかな枠組みしかできていなかったけど、面白いものになっていた。
それから3年間、ウチのいつものサイクル、つまりプレイテスト、ディスカッション、変更を繰り返してきたんだ。 Left 4 Deadはこのデザインプロセスが生み出したゲームなんだよ。

進化したゾンビAI

[Matt Campbell]
ゾンビとAIなんて妙な取り合わせだけど、感染者の群れを制御するAIシステムには膨大な時間を費やしたよ。 最初にして最大の課題は、感染者の進む方向を制御する部分だった。
Left 4 Deadの環境は地形が複雑で、 しかも破壊したり動かしたりできるオブジェクトがたくさんある。 AIを設計する上での目標の一つに、生存者は行けるのに感染者は行けない場所を完全になくすというものがあったんだけど、そのためにはAIが目的地までの経路を発見するコードだけでなく、他者の経路の追跡アルゴリズムも強化する必要があったんだ。経路を追跡する感染者は、常に周囲の地形を評価するようにして、それに応じてしゃがんだり、立ったり、ジャンプしたり、登ったり、いろいろな障害物を越えていくようにしなければならなかったからね。

感染者:動きのリアルさ

[Phil Robb]
僕たちは、「感染者の群れ」はゲームの主要登場人物だと思っている。 だから動きを本物っぽくするために膨大な時間をつぎ込んだよ。 感染者が周辺の環境に応じたリアルな動作を取るように、モーションキャプチャーを利用した何百ものアニメーションと物理演算システムとをアルゴリズムに沿って組み合わせたりもしたんだ。
感染者たちはよろめきながら歩きまわり、咳をしたり、ゲロを吐いたり、時には感染者同士でケンカをしたりもする。 ひとくちに「徘徊」するといっても、壁に寄りかかったり、地べたに座り込んだり、寝転がったりもするんだ。 感染者はなにかの刺激で覚醒すると、「警戒」状態になり、刺激の発生源を探し始める。 そして生存者を見つけると激昂し、生存者を「捕獲」ターゲットと認識するんだ。 グルンとターゲットのほうを向き、目の前にある障害物を乗り越え飛び越えて、 ターゲットめがけて突撃してくる。
僕らとしては、このときの表情も激昂した顔にしたかったから、 感染者の群れ一人ひとりの表情を効率的に変化させる方法を考えたんだよ。 それから、感染者の目は不均一な乳白色で統一した。 そのほうが薄気味悪いし、すべての感染者の目玉を描画して動かす、 っていうのは消費リソースが大きすぎるからね。

感染者:死亡時の動き

[Miles Estes]
Left 4 Deadは感染者を倒すゲームだから、 感染者の最期をよりドラマチックに演出するために様々な工夫を施したよ。 プロのスタントマンに依頼して、モーションキャプチャーステージの上で各種武器で撃たれた場合のパターンや様々な方向から撃たれるパターンなど、百通りほどの死に方を演じてもらい、記録したモーションキャプチャーのアニメーションを物理駆動のラグドールと組み合わせたんだ。 このおかげで、仕上がりはとても映画的になったと思う。 感染者が数歩よろけて壁にぶつかり、そのまま崩れ落ちて死んだりするんだ。 ゲームと映画のいいとこ取りだよね。

Boomer

[Sean Keegan]
「ボス」感染者のデザイン時には、プレイテストで判明した「ゲームに不足しているもの」を直接反映させたんだ。 例えば、初期のバージョンには普通の感染者しか登場しなかったんだけど、これだと生存者は「動くものはすべて撃つ」という単純なルールに沿ってゲームを進めてしまっていた。 これはこれで楽しかったんだけど、やはり戦術的な要素や変化に乏しい。
Boomerはこの単純なルールにちょっとした色をつけるために登場するんだ。 Boomerは撃ちたくない相手だからね。 最初の設定は、撃たれると爆発して周囲の生存者に大ダメージを与えるというもので、Boomerとの接近戦で誰かがヘマをすれば、チーム全員が大ダメージを受けることもあった。ただこの時点では、ゲロ攻撃で感染者の群れを引きつける能力は持ってなかったんだ。 感染者を引きつけるのはScreamerの能力だったから。 その後ゲームの開発が進んでScreamerがカットされたので、感染者をひきつける能力はBoomerに移されたんだ。 Boomerのグロテスクでブヨブヨした見た目にピッタリの攻撃だよね。
Boomerにゲロ攻撃を追加して気付いたことは、ゲロ攻撃がゲームシステムを面白くしている、ということだったんだ。 そこで、自爆の部分も変更して、撃たれるとゲロをまき散らすようにしたんだよ。 ゲームのしくみの上では、Boomerのゲロ吐きには面白い点が2つある。
まず1つ目が、目にゲロが入ることで視界が悪くなり、 さらに襲い来る感染者に集中攻撃を受ける点だ。 こうなると、ゲロを浴びた生存者は、必然的にチームメイトからの援護を期待することになるし、 チームメイトたちは、新たな状況にどう対処するのかを迅速に判断する必要に迫られるからね。
2つ目はゲロ攻撃にダメージが無い点だ。初期バージョンの爆発ダメージ型能力とは大きく違う点だね。 ただダメージは無いものの、浴びてからの数秒間は恐怖と緊張に満ちたものになった。
プレイヤーとしては感染者の群れが押し寄せてくるのは分かっているから襲撃に備えるんだけど、 その結果どんな展開になってしまうのかは予想がつかないからね。 この数秒間のドキドキ効果は絶大だった。 Left 4 Deadというゲーム全体の雰囲気や プレイヤーの緊張感を盛り上げていると思うな。

Screamer

[Jaime Sue]
Screamerは攻撃手段のないボスになるはずだったんだ。 拘束服を着ていてね。 当初は、近くにScreamerがいると甲高くて狂気に満ちた声が聞こえるって設定だった。 Screamerはこちらを発見すると逃げ出すんだけど、仕留めるチャンスはある。 ただし逃がしてしまうと隠れ場所に戻って絶叫し、感染者の大群を覚醒させてしまうんだ。
これはこれでおもしろいアイデアだったんだけど、プレイヤーにはScreamerの行動パターンがわかりづらかったし、感染者に紛れているのを見つけるのも難しかった。 だから結局カットして、感染者の群れを覚醒させる能力はBoomerに移行させたんだ。

Smoker

[Khanh Nguyen]
連携が取れた熟練プレイヤーのチームは、分散することなく協力して全周を警戒する。 でもこれだとゲームを盛り上げるカオスやパニックが発生しにくい。 Smokerはこういう強固なチームを無理やり引き離すキャラクターなんだ。
カオスな状態を復活させるには、こいつの舌で生存者を1人遠くへ投げ飛ばすだけで十分だってことは、プレイテストでも確認できたよ。

Witch

[Jerry Bennett]
Boomerと比べるとWitchの出番は少ないけど、彼女を刺激してしまうとチームはかなりの被害を負うことになるんだ。 Witchを撃ってしまうと、撃った生存者はほとんどの場合殺されてしまうからね。
Witchには2つの役割があるんだ。 まず、動くものはとりあえず撃てばOKというゲームになるのを防ぐこと。 でも、もっと大切なのは、こいつが出るとプレイのスタイルを大きく変えなくてはいけないということだ。 行く手にWitchを発見した場合、フラッシュライトを消して気づかれないようにそこを通り過ぎなくちゃいけない。 バンバン撃ちまくる他のシーンとは非常に対照的だよね。
初期のバージョンでは、Witchはもっと危険な敵で、 一度キレたら、死ぬまで無差別に生存者を攻撃し続けてたんだ。 でもこれはちょっと厳しすぎた。 特に初心者にとってはね。 流れ弾1発でもWitchはキレるし、そうなると確実にチームは全滅、ゲームオーバーだから。
それで、自分を刺激した生存者だけを攻撃するように変更したんだ。 自分を撃った生存者を殺すと、最初にいた場所に引き上げていくようにね。

パイプ爆弾

[Brandon Idol]
Left 4 Deadには手作りっぽい武器も必要だと思っていたんだけど、 パイプ爆弾はそれにうってつけに見えた。 でも、実際に取り入れてみると、いまいちぱっとしなかったんだ。 なんとか使えないかといろいろやってみた。 Tankを倒せるようにしてみたりね。 確かにこれでパイプ爆弾は貴重な武器になった。 だがそのかわり、Tankとの対決がつまらなくなった。 爆発半径を広げてみたりもしたんだが、すぐに爆発するから、押し寄せてくる感染者にタイミングを合わせるのが難しすぎた。
開発も最終段階に入ったころ、アニメーターの1人が提案してくれたんだ。 「音と光で感染者を引きつけるオトリにしてみたらどうかな?」ってね。 これでようやく面白みが出せたんだ。 パイプ爆弾にしか追加できない特徴だし、戦略の幅も広がるしね。
新しいパイプ爆弾をゲームに組み込んだら、成果は一目瞭然だった。 ここは絶対に火炎瓶が欲しい!という状況はあるけど、パイプ爆弾も使える武器になったから悩むよね。

チームメイト同士の協力

[Matt Campbell]
Left 4 Deadは最初から、協力がプレイの鍵となるゲームとして開発してきた。 協力プレイを謳い文句にするゲームは他にもあるけど、絶対に協力が必要なものはほとんどない。
Left 4 Deadにはチームメイト同士が協力しないと切り抜けられない場面がたくさんある。 その1つは、ヘルスがゼロになった生存者が地面に倒れこむ場面だ。 この状態に陥ると攻撃はおろか動くこともできない。 倒れこんだ状態でもヘルスは減少するし、感染者も容赦なく攻撃してくる。 戦闘不能になってしまったら、仲間が助け起こしてくれない限り死ぬしかないんだ。 戦闘不能状態の仲間を助けるには5秒かかる。 この間、救助作業に当たる生存者は自分の身を守ることもできずに感染者の攻撃にさらされることになる。 つまり救助は、助けるほうにとっても危険な賭けなんだ。

なぜチャンスは3回なのか?

[Sean Keegan]
社内で実施したプレイテストで、 頻繁にミスするプレイヤーが数分間で5回も6回も戦闘不能になり、 そのたびに仲間に救助されるという状況が発生したんだ。 こうなると、チームメイトもイライラしてしまう。
そこでこの「チャンスは3回」ルールを加えてみたんだ。 結果的に、このルールは2つの面から問題を解決してくれたよ。 第一に、頻繁に行動不能になってしまうプレイヤーが一時的にいなくなることで、 残りのメンバーは先へ進めるようになった。 第二に、死亡したプレイヤーは復活までの間に上手なプレイヤーの動きを観察することになるので、 上手なプレイヤーの戦い方を参考にして次の戦闘に役立てることができるようになったんだ。 また観戦している間に落ち着きを取り戻し、復活に向けて準備を整えることもできるようになったしね。

レスキュークローゼット

[Chris Ashton]
「レスキュークローゼット」を採用する前は、キャンペーンの途中で死んだプレイヤーがいても次のチェックポイントまで復活できなかったんだ。 でもゲームの完成が近づくにつれ、チェックポイント間の移動時間は10~15分にまで伸びてしまい、死んだプレイヤーが観戦者として待つには長すぎる時間になってしまった。
今となっては何を悩んでいたんだろうとすら思うけど、開発している当時は死んだプレイヤーを簡単かつ不自然でない方法で復活させるいい方法がなかなか思いつかなかったんだ。 考え抜いた末に、クローゼットに閉じ込められた生存者を救助するというアイデアにたどり着いて、ようやく解決することができた。
これは実にLeft 4 Dead的なしくみだったと思う。 閉じ込められた生存者の助けを求める声はドラマチックな効果を生むし、生き残ったチームメイトにはすぐに対処しなければならない目標もできるしね。 それに、孤立した生存者を探して仲間にするというのはホラー映画の王道だし。 こうして、最終的にはステージを通して死んだ仲間を繰り返し復活させることができるようになったんだ。

ゲームデザイン:プロシージャルVSスクリプテッド

[Mike Booth]
Left 4 Deadの元となるゲームの開発に着手したのは2004年の暮れだったんだ。 当時の名称はTerror-strikeだったけどね。 開発チームはごく小規模だったけど、僕らにはいくつか他にはない強みがあった。 そのひとつが「AI」だったんだ。 AIは言い換えれば、「高度に知的な行動を生み出すソフトウェア」だからね。 いろいろな場面で活用できる。
当時僕たちは、プロシージャルなコンテンツ生成がやりたいと思っていたんだ。 プレイヤーが楽しめるコンテンツを無限に生成するAIアルゴリズムを作りたかった。このアイデアには様々な長所があるんだ。 いつまででも繰り返し遊べるゲームが開発できるわけだし、理論的には、優れたプログラミング技術さえあれば少人数チームでゲームが開発できるわけだからね。
「人類VSゾンビの群れ」というモチーフを採用したのは、「ゾンビの群れを撃ちまくる」という、このゲームの核となる要素が面白いのは既に分かっていたからなんだ。 だからこそ僕らは、「ゾンビワールドのプロシージャルな生成」というリスクを取ることができた。 それに、ゲームの盛り上げ方まで操作するプロシージャルなシステムを試すこともね。
今のところ、リスクを冒したかいはあったと思うよ。 かれこれ3年もやっているのに、開発チームの誰もこのゲームに飽きていないし、プロシージャル生成システムのおかげで開発自体もずいぶん効率化できたからね。 プロシージャル生成プログラムを使うことで、ゲーム要素に修正を加える場合もひとつのコードをいじるだけで20あるマップのすべてが自動で書き換えられるんだ。 もちろん今ある公式マップだけでなく、将来出てくるファン作成のマップにも対応するよ。

ゲームのヒントシステム

[Jeep Barnett]
プレイテストを重ねていくうちに、このゲーム独自の連携要素は腕の立つゲーマーでもすぐに慣れることができないことが分かってきたんだ。 ルールがよく分からないせいでゲームが上手くいかないなんて、誰だって楽しくない。 そこでプレイヤーにできるだけ早くコツをつかんでもらえるように、ゲームのヒントシステムを設計したんだ。
このゲームでは、初めてゲームを遊ぶプレイヤーが進行中のゲームに途中から参加することもありえる。 だから動的にゲーム内のイベントについて解説するヒントシステムが必要だったんだ。 このシステムは、現在の状況に合わせてヒント項目のリストを検索し、最も重要なヒントを表示する。 それに、表示したヒントをプレイヤーが正しく行えたかどうかも記録していくので、 プレイヤーが覚えたと判断したヒントはそれ以降表示されなくなるんだ。

ネットワークの帯域幅

[Zoid Kirsch]
このゲームでは、プレイ中のネットワーク使用帯域幅が大きな懸案事項だった。だから僕たちは、サーバーから各プレイヤーに送信されるデータ量を削減する方法について検討を重ねた。
他のマルチプレイヤーゲームでは、対戦相手と武器弾薬についてだけ考えていれば良かったけれど、このゲームでは対戦相手の動きだけでなく、感染者の群れの動きについても逐一更新しなければならないからね。 病院のキャンペーンでは、廊下や道路などマップの多くの要素が平面で構成されていたから、 感染者の垂直方向の座標は変化しない限り送信しないように設定したんだ。 おかげで、サーバーの使用帯域幅を10%減らすことができたんだよ。

チームメイトとの連携

[Dave Kircher]
初期の段階では、上手なプレイヤーなら単独で行動しても死亡するリスクが少なくて、感染者が反応する前にわきをすり抜けるなんてことが可能だった。 だから、プレイヤーが感染者の群れを突っ切ったりできないように、感染者に攻撃されるとプレイヤーの動きが遅くなるように調整したんだ。 Hunterの飛び乗り攻撃やSmokerの締め上げ攻撃の存在もうまく機能してくれた。 単独行動中にやられたら死ぬしかないからね。
これらの調整は全部、FPSゲームの腕に関係なく単独行動は危険なんだと理解してもらい、チームワークの大切さを改めて認識してもらうためだったんだ。

導入部のムービー

[Doug Wood]
開発中は、キャンペーンごとに色々な導入部ムービーを作ってみたよ。 「ノー・マーシィ」の導入部には当初、長さ40秒くらいの、ヘリが飛来する映画のワンシーンみたいなムービーを作成したりもしたんだ。 でも最終的には、長いムービーは「繰り返しプレイするゲーム」というコンセプトにそぐわないという結論に達した。 プレイテスターのみんなも、とにかく早くプレイしたがっていたしね。 それでこの簡潔なムービーに行き着いたんだ。

出現場所のランダム化:アイテム

[Phil Co]
このゲームでは、メインルートから外れた場所にも感染者の出現ポイントを作る必要があった。 そういうポイントがあると、プレイヤーがそこに行きたがることが分かっていたからね。
そこで、開発も終盤に入った頃に、あえてそういう場所に入り込むプレイヤーのためにボーナスアイテムを用意することにしたんだ。 出現位置は毎回変わるけど、鎮痛剤、火炎瓶、パイプ爆弾、ピストルなんかを手に入れられるんだよ。

クレッシェンドイベント:シザーリフト

[Phil Co]
この商品積み下ろし場もクレッシェンドイベントの発生エリアだ。 ただこのシーンでは、生存者が防衛に回るのではなく、リフトに乗って感染者の群れが待つ屋上に乗り込むようにしたんだ。

出現場所のランダム化:武器

[Steve Kalning]
このゲームはプレイするたびに新しい体験が待っているようにしたかったから、鎮痛剤やパイプ爆弾などのボーナスアイテムの位置をランダムにするだけでなく、オートショットガン、アサルトライフル、ハンティングライフルのような強力な武器が置いてある位置も変化させることにしたんだ。
強力な武器はメインルートのどこかに出現するようにしてある。 例えば地下鉄の駅なら、出現ポイントは4箇所ある。 だからプレイヤーは前回と同じ場所に行っても武器を見つけることができないんだ。 強力な武器を手に入れるには、常に周囲を注意して見てないとダメってことだね。

クレッシェンドイベント

[Dario Casali]
ゲームの開発中、複数のプレイテスターから「フィナーレ以外は同じことの繰り返しで盛り上がりに欠ける」というコメントが出た。 そこで、キャンペーンの途中に「クレッシェンドイベント」を挿入して、ゲームを盛り上げることにしたんだ。 例えばこの発電室は最初にクレッシェンドイベントを挿入したポイントのひとつだ。 この部屋から先へ進むには、電源を入れて自動ドアを開けなければならない。 でも、そうすると感染者の群れを引きつけてしまう。 こういうクレッシェンドイベントはキャンペーンの流れに緩急をつけるだけでなく、フィナーレに向けてキャンペーンを盛り上げてくれるんだ。

クレッシェンドイベント:エレベーターの待ち時間

[Matt Scott]
このエレベーターのところで発生するクレッシェンドイベントの仕組みは、「エレベーターが到着するまで生き延びる」という非常にシンプルなものだ。 ただここでは、他のクレッシェンドイベントとの差別化を図るために、感染者の群れは壁を突き破ってくるようにしてある。 生存者を驚かせる効果もあるし、全方位から攻撃されるスリリングな場面になるからね。

無線連絡

[Kim Swift]
初期の屋上シナリオでは、誰かが無線機のスイッチを押すと、すぐにフィナーレが開始される設定だったの。 でもこの設定だと、屋上に駆け上がってきたプレイヤーがすぐにスイッチを押してしまうので、フィナーレの戦闘に向けて体勢を整える時間がなかった。 そこで、プレイヤーが戦闘の準備をしたほうが良さそうだと気付いて戦闘の準備をするように、ヘリのパイロットに「準備ができたら教えてくれ」と言わせるように変更してみたの。

ヘリポート

[Jess Cliffe] 当初、病院のキャンペーンにはもう一つストーリー要素を用意していたんだ。 ヘリのパイロットが生存者を救出した後に「ついさっき路上で生存者を救助してから気分が悪い」って言うことになってた。 そのときパイロットは明らかに感染してしまっていて、 そしてヘリは墜落しそうになる...っていう筋書きで。 でも、このシナリオは厳しいキャンペーンを戦い抜いたばかりのプレイヤーをガッカリさせることがわかった。 だからパイロットのセリフをカットして、高揚した状態のままキャンペーンを終わることにしたんだ。 やっぱりプレイヤーには達成感を感じてほしかったから。

チームワークに対するフィードバック

[Jeremy Stone]
このゲームはチームワークをとても重要視しているから、メンバーがチームにどう貢献したかを評価したいと思った。 最初はプレイヤーに「賞」を与えようと考えたんだ。 チームのプラスになるような行為とマイナスになる行為を定義しておいて、対象アクションが発生したら表示する、功罪評価システムみたいな感じでね。 だから最初は、全員に見えるようにHUDに賞のアイコンを表示するようにしてみた。 でも、この方法だと複雑すぎてプレイヤーが混乱してしまったんだ。 アイコンの意味をいちいちよく見て理解するのも大変だし、新人プレイヤーは悪い賞をもらうと落ち込んでしまって、期待していたような学習効果も得られなかったし。 しかもゲームの展開が目まぐるしいから、見事なチームワークを発揮したとしてもアイコンの出現に気づかないこともあった。 だから次のバージョンでは思い切って評価する行為を限定し、アイコンを短いテキストに変えた。 さらにHUDに表示されているプレイヤーのアイコンを光らせるようにしたんだ。 これで期待した効果が得られた。 チームワークが発揮された瞬間がわかりやすくなったし、プレイヤーの貢献をチームメイトに印象づけることができるようになったんじゃないかな。

音楽を消さないで

[Kelly Thornton]
マルチプレイヤーゲームでは、音楽はたいてい邪魔者扱いだ。 でも、このゲームにおいては、ホラーゲーム特有の恐怖感を音楽でも盛り上げたいと思ったんだ。 すべてのゲーム内要素はゲームを盛り上げるためにあるわけだからね。 そこで僕らは、プレイヤーが消音してしまわないような音楽を作ろう、というシンプルな目標を設定したんだ。 最終的には、曲自体や曲が流れるタイミングにゲーム上のヒントを込めることにしたんだ。 だから恐怖感を高めるのと同時に、プレイヤーが上手く立ち回るためのヒントにもなるんだよ。

聞き飽きない音楽を

[Tim Larkin]
このゲームの音楽を作るにあたっては、音楽を聴きたいと思ってもらえるように様々な工夫をしたよ。 プレイヤーを飽きさせないよう、常に音楽が変化するようにしたんだ。 最終的には、AI Directorと連動するミュージックディレクターを開発して、プレイヤーの心の状態よりも経験を記録するようにしたんだ。 このゲームではプレイヤーの現在置かれている状況に合った音楽が流れるから、聞こえてくる音楽はプレイヤーごとに変わるんだよ。 Left 4 Deadのミュージックエンジンは、クライアント管理のマルチトラックシステムを採用している。 だから流れる音楽はプレイヤー単位で違うし、そのプレイヤーの動きを観戦しているプレイヤーも同じ音楽を聞くことができるんだ。 自分のキャラクターが死んだあとに仲間のプレイを観察するのもこのゲームの面白さのひとつだから、 観戦者も同じ音楽を聴けるようにする必要があると思ってね。 これはLeft 4 Dead独自の機能だよ。

動的な選曲:シンプルイズベスト

[Mike Morasky]
多くのダイナミックミュージックシステムでは、音という表現力豊かな芸術をやっきになって管理しようとする。 でもその結果は完璧に「制御」された、つまらないものになることが多い。 Left 4 Deadのミュージックディレクター作成時の目標は、「管理された偶発性」だった。 音楽とそのルールセットをデザインすることで、シチュエーションに見事にフィットした曲が選ばれる確率を高め、状況にそぐわない音楽が流れる確率を最小化したんだ。 このシステムの調整を重ねた結果、高確率でイベントの意図に完全に沿った選曲をし、それなりに状況に合った選曲をする確率を中程度に抑え、完全な選曲ミスはほとんど起こさないようにできたよ。 音楽をきっちり管理しすぎると新鮮さが失われるし、そうなるとプレイヤーもすぐに飽きてしまうからね。 このシステムだと、複雑にすればするほど上手く機能しないようになり、音楽とマッチしないシーンが増えてしまうんだ。 皮肉なものだよね。 で、逆にすべての事項をできるだけシンプルにすることで狙い通りの効果が得られるんだよ

動的な選曲:体験中のできごとをなぞる

[Mike Morasky]
Left 4 Deadでは、プレイヤーに経験してほしいことじゃなくて、今経験していることに基づいて流す曲が選曲されるようにしたんだ。 本作には、擬似生命の分野でロード・オブ・ザ・リングやマトリックスの続編を手がけた経験を持つValveのオーディオデザイナー達の手により、プレイヤーが置かれている状況を即座に分析するシンプルなシステムが実装されている。 Left 4 Deadの音楽とボリュームは、システムに状況に一致する場合に反応するスカラルールセットを追加して管理しているんだ。 だからゲームのヒントになるような音楽が流れるシーンはほとんどの場合、システムの分析結果、つまりプレイヤーが現在置かれている状況にルールセットが反応して選曲、出力されたものになる。 それぞれのプレイヤーが置かれている状況に一番合った音楽が流れるようにね。 このシステムはLeft 4 Dead独自機能のひとつであるダイナミックミックスシステムも制御しているんだよ。

オーディオの輪郭づけとプレイテスト結果

[Tobin Buttram]
プレイテスターは最初、ゲーム内イベントやゲーム要素がうまく理解できずに混同してしまうことが多かった。 そこでイベントの区別をつけやすくするオーディオ(オーディオの輪郭)を追加してみたところ、プレイヤーはすんなりと理解してくれるようになったんだ。 これは、様々なものが画面せましと動き回る状況で生存者キャラクターを視認しやすくするためにシルエットを光らせたのとよく似た手法だった。 オーディオの輪郭は意識することなく受け入れられるので、わざとらしい印象を与えることもほとんどないしね。

ビジュアルデザイン

[Randy Lundeen]
Left 4 Deadのゲーム全体で映像の質感を統一するためには、まず非常に暗い環境でプレイしやすくするための工夫をする必要があったんだ。 プレイヤーを一箇所にまとめて連携を促すために、暗闇は欠かせない要素だったから。 暗く、混沌とした状況で各キャラクターの視認性を高める手法については、前作のTeam Fortress 2で培ったノウハウを活かすことができた。 それと同時に今作では、暗所での撮影に用いられている映像技術も研究して取り入れたんだ。 極めて動的なゲーム環境におけるキャラクターの視認性向上という新しい課題に取り組むチャンスとしてね。 友達と一緒にゾンビ映画の世界に飛び込んで、さまよう感染者のあいだを突き進んでいくような臨場感を与えたかったので、Sourceエンジンに様々なフィルム効果を追加したんだよ。 色補正やフィルム粒子、コントラストやビネット補正などを利用することで、今作ではドラマチックな視覚効果とクリアな視認性を両立した、映画のような画質を実現させることができたと思う

フィルム効果:色補正

[Thorsten Scheuermann]
今作でよく使用した映像技術のひとつに、色補正がある。 これを使うと色彩を簡素化するだけでなく統一感も出せるからね。 また、ヘルスパックや血のような重要な意味を持つオブジェクトを常に明るく目立つように表示できるようにするため、特定の値を超えると色をグレイ方向に戻す飽和しきい値を設定してあるんだ。 また色補正は、エリアによっても変えてあるんだよ。 例えばセーフルームは暖かい色彩で安心感を喚起するようになっている。 屋外の冷たく、恐ろしい色彩とは対象的にね。

フィルム効果:ビネット補正

[Gary McTaggart] ビネット補正というのは背景をやや暗くする手法のことで、もともとは写真撮影の用語なんだ。 Left 4 Deadでは、画面の上部と四隅を暗くするために使用した。 この効果のおかげで、圧迫感や閉塞感を演出しながらプレイヤーの注意を画面中央に集めることができたと思うよ。 これは視覚効果ひとつでプレイヤーのゲーム体験が向上することを示す良い例じゃないかな

フィルム効果:ローカルコントラスト

[Matt Wright]
ローカルコントラスト調整もLeft 4 Deadに取り入れたフィルム効果のひとつだ。 本作ではコントラスト調整が動的に行われる。 ゲームの山場を予感させる時なんかにね。 突然画面がシャープになるビジュアル効果は、アドレナリンが大量に分泌とされる瞬間を模したものなんだ。 プレイヤーの意識が高まっていく感じを、コントラストの変化で表現したくてね。 プレイヤーが実際にコントラストの変化に意識的に気付くことはないかもしれないけど、ゲームの緊迫感が高まると画質がかすかに変化するってことは無意識に感じてくれるんじゃないかな。

ライティング

[Chris Chin]
本作のライティングレベル調節にはかなり苦労したよ。 演出効果を高めつつも、プレイヤーがイライラしたり、フェアじゃないと感じたりしないような明るさに調整しなければならなかったからね。 光源を配置する際には、ゲームの世界観を盛り上げてゲームプレイを快適にするように、やれる事は全部やったと思う。 プレイテストの結果からプレイヤーは画面が暗いと光源に集まる傾向があることがわかっていたので、光源の設置ポイントは特に重要なポイントにしぼったんだ。 こうすることで、まるで光に寄ってくる虫のようにポイントに向かってきてくれるようになった。 また、光源の設置場所をシンプルにできたから、シルエットでキャラクターを識別しやすくなり、生存者と感染者も簡単に区別できるようになったと思う。 あと、車のヘッドライトは特に使いやすい光源だった。 ヘッドライトが作り出すドラマチックで長い影は荒廃した世界の雰囲気をうまく演出してくれたし、生存者の進行方向を指し示すガイドとしても使いやすかったから

スモーキング

[Lars Jensvold]
スモーキングは前景と背景の要素を明確に区別するために使われる、一般的な映像手法だ。 本作では、パーティクル効果と距離に応じたフォグ効果を使用してスモーキングを実現してあるんだ。 スモーキングを導入した当初は、この特殊効果がプレイヤーをイライラさせる原因になってしまっていた。 当初はリアルさを追求して黒っぽいフォグを使っていたんだけど、これがキャラクターのシルエットを曖昧にして、周辺の空間の広がりも殺してしまっていたんだ。 そこでフォグを明るくしてみたところ、背景の広がりが感じられるようになって、キャラクターの視認性も格段に向上した。 プレイヤーも敵と味方を判別しやすくなったし。 これ以外にも、遠くのフェンスをよじ登る感染者など、重要な状況の変化を発見しやすくなった。 このビジュアルデザインの変更が、マップの見栄えを改善するだけでなく、チームメイト同士が敵の襲撃に備える手助けにまでなったんだ。

フラッシュライト

[Jason Mitchell]
Left 4 Deadのプレイヤーは照明としてフラッシュライトを携行するけど、 このフラッシュライトは、オブジェクトの表面をよりリアルに見せる効果や距離感を視覚的に表現する効果だけでなく、ゲームプレイにも密接に関連しているんだ。 例えば、フラッシュライトは武器に取り付けられているので、リロード中や敵を押しのけている時は目の前を照らすことができなくなる。 真っ暗な場所でリロードや押しのけを行うと、プレイヤーの視界は真っ暗になる。
Left 4 Deadの他のゲーム要素にも共通することけど、これはチームワークの重要性を高める要素なんだ。 リロードするタイミングを間違えると、視界が真っ暗になる可能性があるということだからね。

Tank

[Kerry Davis]
Boomerと同様、Tankも初期段階で開発されたボスだ。 Boomerの役割が「動くものすべてを撃つ」ことを抑制することだとすると、Tankの役割は単体で強力なボスとして、迅速なチームの連携を促すことだった。 チーム全員が落ち着いてTankと戦うことができれば問題ないけど、 パニックに陥ってバラけたり、誰かが単独行動したりすれば、チームが全滅する可能性もある。 Tankのキャラクターデザインで苦労した点の一つは、その驚異的な耐久力の代償として動きをゆっくりにしたために、屋外の広い場所での戦闘でまったく力を発揮できなくなってしまったことだった。 連携の取れたチームだと、Tankが接近して大暴れする前に簡単に倒せてしまったんだ。 Tankの「ブン投げ」能力は、この致命的な弱点を補うために追加されたものなんだよ。 これで、生存者が離れたところにいても地面を剥がして投げつけられるようになったので遠くにいるときも十分戦えるようになった。

Tankのキャラクター設定を守るために

[Jamaal Bradley]
初期のプレイテスト段階で、プレイヤーがTankを操作すると彼のキャラクター設定が完全に無視されてしまうという大きな問題が発生したんだ。 Tankが強すぎてゲームバランスが崩壊し、何回やってもTankの一人舞台になってしまってね。 問題は、Tankはとにかく突撃してすべてを破壊する怒れるバーサーカーという設定なのに、プレイヤーは戦略を練って勝利を目指すということだった。 驚異的な耐久力と圧倒的な近接戦闘力を備えたTankが、生存者プレイヤーと同じように狭い通路に潜んで待ち伏せするような巧妙さを持ち合わせていたら生存者側には打つ手がないからね。 1つの解決策としては、TankをCOM専用クラスにしてしまうという方法があったけど、そのアイデアは最後の手段としてとっておくことにした。 そして、Tankのキャラクター設定に沿った動きをせざるを得ない制約を作って、プレイヤーがTankを操作できるようにするという方向で検討を重ねたんだ。 その解決策はとってもシンプルなものだった。 それが「自制心タイマー」だったんだ。 Tankを操作するプレイヤーのHUDには、自制心メーターが表示される。 このメーターは、Tankが生存者を視認できない状態だと減少していくんだ。 メーターがゼロになると、Tankはコンピューター操作に切り替わってしまい、プレイヤーは観戦するしかなくなる。 プレイヤーにはどうやって敵に近づくかを選ぶ自由があるけど、メーターがカラになる前に姿を見せて暴れないといけない。 こうやってTankの行動基準を明確にすることで、Tankのキャラクター設定を維持することができたし、同時にプレイヤーには最強最悪のボスキャラクターを操って生存者をメチャクチャにする楽しみを残すことができたと思う。

AI Directorと感染者の発生場所

[Charlie Brown]
当初、各マップの感染者の出現場所は固定だったんだ。 でも繰返しプレイテストしてもらうと、上手な生存者は敵の出現位置を覚えてしまって不安や危機感を抱かなくなることがわかった。 これでは面白くないと思い、感染者の群れを出現させるポイントをいくつも作成して、ランダムに出現するようにしてみたんだ。 この方法はそれなりに効果があったんだけど、ゲームに慣れた生存者チームだと、知っている出現スポットを一つずつ見回ってしまうので結局意味がなくなってしまった。 Left 4 Deadというタイトルの第一目標は何度でも繰り返しプレイできるゲームを作ることだったから、ここで新しいアプローチを取る必要があった。 そこで、理想的ではあるもののリスクの高い方法を試してみることにしたんだ。 それが感染者の出現位置を完全にプロシージャルにする方法だった。 この方法では、ゲーム中に出現位置がその場で自動的に決定されるからね。 システムの構築には思ったよりも長い時間がかかったけど、その成果は期待以上のものだったよ。 どんなにゲームに慣れた生存者チームにも敵の出現位置を予測できなくなったし、おまけにマップに感染者を出現させるプロセスも大幅に簡略化できたからね。 これまでは、マップに変更が加わるたびに何週間もかけてアップデート作業をしなければならなかったところ、今は5分ですむ上にミスも少ないんだ。 おかげでマップの変更がかなり気楽にできるようになったよ。 プロシージャルアプローチの採用は大正解だったと思う。 実際、このアプローチなしにはLeft 4 Deadは作れなかったと言っても過言ではないと思うよ。 僕たちはその後、戦術判断の機会を増やしてゲームに変化をつけたいと思い、このシステムを拡張して徘徊する感染者を追加したんだけど、 追加すると決定してから、1人のプログラマーが午後一杯作業しただけで全マップに反映させることができたんだよ。 変更を決定したその日にプレイテストができたくらいだからね

声優

[Jay Pinkerton]
Valveでは、複数のゲームに同じ声優を起用することはけっこうよくある。 一番のメリットは、セリフを担当するスタッフが特定の声優の声域をイメージしながらスクリプトを書けるという点だろうね。 今回も、以前のゲームに登場してくれた何人かの声優に再登場してもらった。 Team Fortress 2でSpyとPyroを担当したデニス・ベイトマン、 Scout担当のネイサン・フェデライン、 Demo ManとHeavyのゲーリー・シュワルツ、 SniperとHalf-Lifeシリーズの端役男性キャラのほとんどを担当してくれたジョン・ローリー、 Half-Life 2でFather Grigoriを担当したジム・フレンチ、 さらに愛すべきGLaDOSを担当してくれた美声の持ち主、 エレン・マックレインだ。 彼女にはHalf-Life 2以降、Valveのすべてのゲームに出演してもらっているよ。

シーンのバリエーション

[Erik Wolpaw]
Left 4 Deadは繰り返しプレイすることを前提にデザインされたゲームだから、セリフにもできる限りのバリエーションを持たせるようにしたんだ。 例えばデス・トールのおかしな教会男に会うシーンなんかは、登場人物5人に対して130以上のセリフが用意されているから、合計約25通りのバージョンが楽しめるんだよ。 ここだと、最初にドアを開けようとする生存者と、その近くにいる生存者を基準にセリフのパターンがランダムに変わるから、 このシーンを繰り返しプレイしても、同じ会話を繰り返さずにすむんだ

一本道マップVS自由に動き回れるマップ

このゲームで最初に開発したマップは広大で、決まったルートも設けていなかった。
感染者だらけの街で、プレイヤー自身に進路を決めてもらおうと思ってね。
でもプレイテストをしてみるとすぐに、プレイヤーが他のチームメイトの後ろをついてまわり、感染者の群れを避けることばかりに気を取られることがわかった。 しかも組んだばかりのチームで毎回進路について話し合うとなると、テンポも悪くなってイライラしてしまうしね。 おまけに、一度お気に入りのルートができてしまうと話し合いの手間を省くためにそこばかり通ってしまうという重大な問題も浮かび上がってきた。 これらの問題は、主要ルートを設けて街を描いたことで解決することができたよ。 最小限の労力でディテールにこだわることもできたしね

Smokerの視覚効果

特殊効果というと、外見に多少の変化を与えるだけのように思われることが多いけど、実はゲームプレイに大きな影響を与える要素でもあるんだ。 例えばSmoker。 ゲームデザイン段階で練り上げた彼のキャラクター設定を活かすため、僕たちは様々な視覚効果を使用した。 Smokerには、屋上や木の上などの生存者から離れた目立たない場所から生存者を引き寄せることで、チームのフォーメーションを崩すという役割がある。 このため、他の感染者と違って生存者と距離をとって行動するんだ。 こういうキャラクターだから、暗闇の中にいるSmokerが遠くからでも視認できるよう、体のまわりに胞子の雲を漂わせるようにしたんだ。 どんな状況でもシルエットがはっきりするよう、Smokerの外見には細かなテクニックをたくさん使ってあるんだよ。 例えば、胞子は周囲の明かりを反射して光るけれど色は変わらないから、真っ暗な闇の中でもSmokerのシルエットは視認しやすいんだ。 さらに、胞子のサイズはどの距離から見ても最少サイズで表示されるようになっている。 血や衝撃のフィードバックと同じようにね。 だから遠くにいても空を背にしていてもSmokerははっきり視認できるし、接近しても胞子のサイズは小さいままなんだよ。 それから、Smokerは通常、遠方で角度のついた狙いにくい場所にいるから、倒したときにSmokerの死がはっきり分かるようにしないといけなかった。 この死亡時こそが、SmokerのSmokerたるゆえんなんだ。 Smokerを倒すと大量の煙が放出される 。演出として面白いし、倒したことも一目で理解できるよね。 しかもこの煙は、Smokerの最後の攻撃でもあり、近くにいるプレイヤーとその場に潜んでいる感染者の視界を奪うんだ

パイプ爆弾と火炎瓶

パイプ爆弾と火炎瓶のバランスについては、開発の初期段階から面白い要素を詰め込みたいと考えていた。 持っていけるのはどちらか一方だけという制限があったので、プレイヤーがどちらを使うか悩むような武器にしたかった。 でも初期段階では明らかに火炎瓶の方が有効だったんだ。 特にボスキャラに対して効果が高かったし、罠としても使える強力な武器だからね。 でも一方のパイプ爆弾は、激昂する感染者の群れに対抗できるようにと考案した武器だったんだけど、当初はあまりうまく機能しなかった。 Left 4 Deadに出てくる感染者の動きはかなり激しいのに、パイプ爆弾の接敵距離は大体1.5~3メートルだから、パイプ爆弾を有効活用するのはほとんど不可能だったんだ。 感染者の群れを見てからパイプ爆弾を取り出しても、プレイヤーが投げようとする頃には感染者に噛みつかれてるからね。 爆発の仕組みやタイミングを色々と変更してみたけれど問題は解決できず、しばらくは使い道がない武器のままだった。 感染者の群れにはもともと甲高い音に引きつけられるという特徴があるよね。 だからパイプ爆弾が既製品ではないという点に着目して、煙感知器の機能を追加してみたんだ。 この機能が、パイプ爆弾に足りなかった部分を見事に補ってくれた。 アラームのおかげで、感染者の群れをおびき寄せてから一網打尽にできる武器に化けたんだよ。 突撃してくる感染者の群れをピンチに陥ったチームメイトや自分からそらせるという戦略的な使い方ができるようになったし、上手く使えないと感じることもほとんどなくなった。 この調整のおかげで、プレイヤーがパイプ爆弾か火炎瓶かを選べる状況になった時に、それ以降の状況やチームメイトの装備を考慮して決めるようになったんだ。 最終的には、当初の目標を達成すると同時に、ゲームの世界感を豊かにしてくれる武器に仕上がったと思うよ。 大量の感染者が大爆発でベトベトの赤い霧になってしまうのもなかなか見応えがあるしね

TANKくじ

Tankってのは存在感あるよね。 何発も直撃食らって耐えられるのはコイツだけだし。 うまく力を合わせないと勝てないだろうね。 協力してもやられる可能性はかなり高い。 それだけ強力なクラスだから、Tankをプレイできるのはある種のご褒美みたいな要素でもあるんだ。 がんばったプレイヤーのためにご褒美みたいなものを用意して、自分は正当に評価されてる、って感じて欲しかった。 でも同時に、ずっと同じプレイヤーがTankをプレイするっていう状況も避けたかった。 こういうゲームデザインの課題を解決する時には、ゲーム以外の場所で似たような問題がどう解決されるかがヒントになることが多いんだ。 そのほうがプレイヤーにも直感的に理解しやすいし、現実世界にある楽しさをそのままゲームにも活用できるだろう? それで、Tankを作ったときにくじも作ったんだ。 おかげで感染者チームのプレイヤーにも大きな楽しみができたと思う

プレイテスト

プレイアブルなビルドができたら、いくつかのポイントをピックアップしてこのゲームを全然知らない家族や友人にプレイしてもらったんだ。 知らない人にプレイしてもらうと、ゲームのうまく機能しているところとそうでないところについてフレッシュで客観的な意見がもらえるから、すごく助かる。 僕たちは、どういう時が楽しそうで、どういう時にストレスを感じているのかをじっと観察する。 それと、プレイテスト中には頭に浮かんだことや疑問なんかをどんどん口に出してくれるように頼んだんだ。 ただ、言ってもらっても質問には答えられないし、手助けもできない、というのは先に伝えていたけどね。 プレイテストを観察していると、初めてプレイするプレイヤーがゲームのしくみや基本的な進め方を理解してプレイできるかどうかがわかるし、それによって難易度やボーナスのバランスも調整できる。 プレイテストが終了したら、ゲームについてどう感じたかを質問した。 観察しているだけじゃ分からないこともいろいろ話してもらえたよ。 質問は例えば、一番おもしろかったところと一番つまらなかったところと、その理由とかだね。 こういうフィードバックを元にゲームの問題点を洗い出して対処していくんだ

感染者のバリエーション

Left4Deadでは、プレイヤーは常に感染者の群れに襲われてるから、彼らの顔を近くで見ることも多いと思う。 感染者の顔や服装にはバラエティーを持たせてあるんだけど、 そのへんはプレイテスターたちにも印象深かったみたいだね。 大規模感染のリアリティーも演出できたんじゃないかと思う。 ザコ敵にここまでのバラエティーを持たせたり、 場所に合わせて制服を着せたりして、 しかもそれを限られたメモリーでやらなきゃいけなかったんだ。 簡単じゃなかったよ。 だから、出現する感染者の種類をエリアごとにマークすることにしたんだ。 空港ではTSAエージェントがわらわら出てくるし、 病院では患者、道では警官、オフィスではサラリーマンとかね。 それと、プレイヤーは感染者の顔と上半身をよく見ていることがテストでわかっていたから、 その辺は特に力を入れたよ。 感染者の見た目は、最終的に1500種類以上も生成できるようになったんだけど、 これには大量の細かな頭部用テクスチャーを1枚のテクスチャーシートにまとめてランダムに選択して組み合わせたり、 服の素材につける色をランダムに変えたり、 体のパーツのグループをランダムに変えたりと様々な工夫を加えたんだよ

フランシス

Left4Deadの暗い世界観や恐怖をはねのけるために、一番力を入れたのが生存者キャラクターだ。 本当にいそうで、感情移入できるキャラにしたかったんだ。 フランシスをデザインするにあたっては、この地獄のような状況に自然に溶け込めるような、ガタイが大きくて威圧的な人物を目指した。 こういう場所にいてもウソ臭くないように、でっかいヤツである必要があったんだ。 混沌とした状況でも強いアピールを持ったキャラにしようと考えたとき、2 メートル近い身長にむき出しの腕、しみのついた白いシャツの上にレザージャケットというライダーっぽい服装はぴったりだった。 Left 4 Deadみたいにゲーム世界が暗い場合、主人公はパンチのあるグラフィックじゃなくちゃダメなんだ。 何百人も出てくる感染者たちの中でもかすんでしまわないようにね。 彼らがこの狂気を耐え抜く力と温かさを持った最後の希望なんだと、見た瞬間にわかるようにしたかった。 逆に感染者のグラフィックは彩度を押さえめにして、コントラストも低くしてあるんだよ。 生存者たちは4人で1つとしてデザインした。 だからそれぞれに個性はあるけど、周りの環境と比べると明らかに違うし、ひと目でチームだってわかるだろ。 4人の生存者たちは、プレイヤーが飛び込むこの恐怖の世界の中でも、プレイヤーが共鳴できる存在にしたかったんだ

パッケージデザイン

パッケージデザインにはずいぶん時間がかかったよ。 リリースの1年以上前から始めたんだ。 ゲーム内容が伝わりやすいようにいろいろと試行錯誤しながら、30種類以上考えてみたかな。 シリーズもののタイトルなら前作のファンがいるけど、新タイトルの場合にはそのゲームをあまりよく知らない人のハートをぐっとつかむようなデザインが必要だからね。 Left 4 Deadの場合、どんなゲームなのかがパッケージの前面を見ただけでダイレクトに伝わる必要があると考えた。 4人の生存者がチームとして感染者の群れと戦うイメージをいくつも描いてみた。 返り血とかも入れて、視覚的な魅力も高めるようにしてね。 でもタイトルロゴなんかも入るからごちゃごちゃしがちで... しっくり来るデザインがどうしてもできなかった。 ぎりぎりになって、このゲームのパッケージは従来の手法じゃ対応できないって気づいたんだ。 それでシンプルでありながらも、深いメッセージをはっきり伝えられるデザインを探し始めた。 それで考えたのが 4 本の指のイメージだ。 ダークなユーモアをビジュアルで表現したんだ。社内でも、ユーザーの反応を見るために持ち込んだショップでも大評判だった。 ゲーム内容をすごく的確に表現できたと思うよ

状況に合わせたダイアログ

Left4Deadでは、OrangeBoxで使ったボイステクノロジーをさらに発展させた。 セリフを格納した巨大なデータベースが生存者一人ひとりに用意されていて、状況、残りヘルス、ストレスレベル、遭遇した特殊感染者の種類などのさまざまな条件に合わせてそこからセリフが抽出されるんだ。 セリフによっては別のキャラクターの応答を自動的にトリガーするものもあるから、現在の状況やそれまでの行動に合わせたダイアログが自動で、動的に生成できるんだよ

会話の動的生成

Left4Deadのダイアログシステムのもうひとつの特徴は、キャラクターが動的にオブジェクトを認識して、それについてコメントすることだ。 Sourceエンジンを使った今までのゲームでは、特定の場面まで来たら支援キャラクターに指定したセリフを喋らせればよかったけれど、Left 4 Deadではどの時点で誰が生き残っているかが分からない。 だからLeft 4 Deadでは、誰が生き残っているか、どのような状況にあるのかを毎回確認して、状況に一番合うダイアログが自動生成されるようにしたんだ

プレイヤーデータのシステム

Valveはかなり昔から、収集したユーザーのプレイデータをゲームの改良に役立ててきた。 今回もプレイテストのデータが自動的に収集されるようにして、調整の参考にしたんだ。 データはあらゆる角度から確認する。 プレイヤー同士の協力度とか、それぞれの特殊感染者がゲームに与えている影響の強さとか、各武器の威力とか、どの武器が好まれたかとかね。 ゲームプレイのデータを分析すると、本当に多くのことがわかる。 おかげで僕らは事実を基に物事を決められるんだ。多分こうだ、っていう想像じゃなくてね。 リリースされた後もプレイヤーたちが実際にプレイしたデータを収集、分析して、ゲームをもっとチューンアップしていくつもりだよ。 もちろん他のゲームと同じように、データはコミュニティーでも見られるようにする予定だ

対戦モードのバランス

Left4Deadでは、開発終盤まで対戦モードしかなかったんだ。 でもバランスの問題から、ストーリーモードとは別モードにする必要が出てきた。 問題は、生存者が生き延びられる確率をある程度上げると、感染者プレイヤーは長時間ストレスばかり感じるようになってしまうことだったんだ。 感染者プレイヤーが楽しめるように調整してしまうと、今度は生存者チームが生き延びるのはほぼ不可能になってしまうし。 そこで対戦モードを分割してみたら、このジレンマを解決できたんだ。 新モードでは、生存者が脱出するか全滅するかじゃなく、むしろ生存者が全滅することを前提にした。 激烈な攻撃をくぐり抜けて、相手チームよりも遠くまで進めるかどうかを競うようにしたんだ。 こうすれば感染者プレイヤーは楽しめるし、キツい思いをした生存者プレイヤーも、チームを交代して感染者になったときには同じことをやってやれるからね

オブジェクトのモデリング

通常、ゲーム内の各モデルには固有のテクスチャーマップを用意する。 それがオブジェクトの表面を覆う色とディテールを表現するからね。 この方法だと、例えばたくさんの車を描画する必要がある場合に、車の数だけテクスチャーマップを用意する必要がある。 それに、重複するテクスチャーの色違いもね。 でもそれでは、限りあるテクスチャー用のメモリーをすぐに使い切ってしまう。 だからもっと効率よく同じことができるようにする必要があった。 例えばこの車のテクスチャーは、他の3種類の車のモデルと同じものを使っている。 モデルはゲーム全体に散らばっているんだ。 また、カラーテクスチャーの他に「マスク」テクスチャーも使っている。 このテクスチャーのおかげで、新しくテクスチャーを作らなくても様々な色表現ができるようになったんだ。 おかげで2種類のテクスチャーで4種類の車のモデルを作成して、いくらでも色違いの車を表現できるようになったんだよ

ゾーイ

ゾーイのキャラクターデザインには、他の3人よりも時間がかかったわ。 ゾーイみたいな背景を持った若い女性キャラクターをゾンビだらけの破滅した世界に自然になじませるのは簡単じゃなかった。 魅力的であると同時に陰の部分も必要だし、 時には恐怖にとらわれることもあるけど、タフで気丈な人物でもなきゃならなかったから。 それと、ひと目見てすぐにわかるようにもしたかった。 それは明るめの赤いジャケットで解決できたわ。 くすんだ色の感染者たちが暗がりの中で襲ってくる中で、ひときわ目立ってくれた。 それ以外の見た目については、設定が変更されるたびに少しずつ変化したわね。 でも最終的には、ゴールは達成できたんじゃないかな。 誰でも感情移入しやすい、どこかに本当にいそうな女の子になったと思う

ビル

4人の生存者は、雑多な背景を持った人たちの集まりにしたかった。 でも同時に、世界が破滅した後というストーリーラインに無理なくなじんで、 しかもヒロイックで魅力的なキャラクターにしたかったんだ。 ビルがなかなか難しいキャラだということがわかったのは、理想と現実のバランスを取ろうとしたときだった。 最初のデザインでは年をとりすぎてて、体格も感染者の群れと渡り合えそうになかった。 修正していくうちにだんだん若くてハンサムになっていったんだが、そうすると背景ストーリーと矛盾してしまう。 最終的にはストーリーとデザインのバランスがうまく取れて、年を重ねるとともに知恵を深め、しかもまだ実戦で活躍できる体力も維持している優秀な元軍人になったんだ

ルイス

ルイスの最大の特徴は、「ごく普通の男」だってことだろうね。 ビルやフランシスはいかにもアウトロー的だが、ルイスだけはこの悲劇的状況の中でも文明とか常識とか、そういったものにしがみつこうとする。 他のチームメイトとの差別化をはっきりさせたかったから、ルイスはスリムな体型にして、身に着けているものをデザイナーシューズ、ネクタイ、デザイナーウォッチにしたんだ。 こうすれば、プレイしながらでもルイスが正常な世界ではどんな男だったかがすんなり理解できると思ってね。

ミュージックデザイン

テーマからモチーフ、攻撃音、効果音まで、Left 4 Deadのすべての音楽はメインメニューのテーマで使った音階から派生してるんだ。 テーマでは、無線でしか連絡の取れない距離に孤立して、風前の灯となっている人々を暗示させた。 曲は次第に移調していきながらも、それまでに使われた音はまた使われる。 でもときどき音階からはずれた音が鳴って、不安をかき立てるんだ。 だが全部の曲でこの半音階を使ってるから、どの曲も似たような色調を帯びる。 そうして同じテーマを共有していることがはっきりするようにしたんだ。 最終的に、耳に残るけどうまくは歌えない、不思議に複雑な曲が出来上がったと思うよ。

スタート地点

最初、Left 4 Deadでは味方プレイヤーにちょっかいを出すことも可能だったんだ。 「グリーフィング」とも呼ばれるこの行動は、ゲームを一気につまらなくしてしまう。 特に初心者にとってはね。 例えばゲームが始まる前、このスタート地点で各プレイヤーが操作方法を覚えようとしているときに、他のプレイヤーを押して落下死させることもできた。 それじゃあんまりだからということで、生存者はお互いに相手を押せないようにしたんだ

生存者のモデル

プレイヤーに襲い掛かってくる感染者にはさまざまなタイプがいるけれど、生存者は4人しかいない。 だから長時間プレイしてもリアリティーが失せないように、モデルを使って写真を撮って、表情や服の資料にしたんだ。 まず、4人のキャラクター設定に合うモデルを探した。 そして彼らにターンテーブルの上に乗ってもらって、フラットな光源と変化する光源のもとで撮影したんだ。 モデラーとテクスチャー担当はそれを参考にしてデザインを進めた。 さらに、モデルには特注のミラーボックスに入ってもらって、1度にあらゆる方向から撮影したりもした。 それからある表情から別の表情へ、少しずつ変えていってもらったりもした。 これでいろんな表情のサンプルを撮ったんだ。 この写真はモデラーとアニメーターが3Dモデルを作るときに、ものすごく貴重な資料になったよ。

ガスポンプ

最初、生存者たちの通るルートはガソリンスタンドのコンビニを通ってこのガスポンプのそばに出ることになっていた。 ところがプレイテスト中に、近距離から間違ってこのポンプを撃ってしまい、そのまま全滅という、ある意味アンフェアなパターンが頻発した。 ガソリンスタンドの爆発というセンセーショナルなシーンは残しつつ、プレイヤーが死なないように、プレイテストと調整を重ねて、最終的にこのパターンに落ち着いたんだ。

フィルム効果-フィルムグレイン

Left4Deadで使った映像テクニックのひとつに、フィルムグレインがある。 これは特に暗いシーンで効果的だから、このゲームにはうってつけだった。 暗い場面でフィルムグレインをかけるとノイズが乗って、暗がりに質感が出るんだ。 しかし全体に均一にフィルムグレインをかけると、すぐにプレイヤーに飽きられてしまうことがプレイテストからわかった。 だから明るさによって効果の強さを変えることにしたんだ。 最終的には暗がりや影の中ではグレインをかけて、明るい場所ではまったく使わないことにしたよ

光るシルエット

プレイテストの早い段階で、プレイヤーは画面下部のステータス表示が赤になっても仲間の瀕死状態に気づきにくいことがわかった。 感染者たちに囲まれると、目の前の状況に対応するのに精一杯で、HUDや味方の状態にまで気が回らなくなってしまうんだ。 この問題を解決するために導入したのが、仲間のシルエットを光らせる要素だった。 シルエットは、助けが必要なときは赤く、壁の向こうや遠くにいるときには青く表示されるよ

Left4Deadのセリフ制作について

Left4Deadの開発目標のひとつに、 何度でも繰り返し遊べるゲームにする、というのがあった。 それはつまり、1度のセッションで何度も同じシーンを見るということだ。 だから同じセリフの繰り返しは避ける必要があった。 そのために僕らはいくつかの方法を考えたんだ。 まず、ほぼすべてのセリフにランダム性を持たせた。 こうすれば、アクションごとに必ず同じせりふを聞かされることがなくなるからね。 Team Fortress 2でうまく機能したこのシステムを、さらに改良して組み込んだんだ。 Left 4 Deadでは会話の最初のセリフだけでなく、後に続くセリフにもランダム性を持たせて、ダイアログに幅をもたせた。 それから、それぞれのセリフが使われる頻度も調整した。 どんなに面白いセリフでも、何十回も聞けば飽きるからね。 これを実現するために、それぞれのセリフから会話全体まで、どの程度の割合で再生されるか調整できるようにしたんだ。 例えばあるセリフは、プレイヤーがビルをプレイしていて、ゾーイがビルを治療していて、その少し前にもゾーイがビルを治療したという条件が揃った時にのみ再生される可能性があるようにした。 こういう風に条件設定とランダムピックアップ要素を組み合わせることで、自然なセリフ回しができるようになったから、同じセリフを何度も聞かなくてもすむようにできたと思うよ

AIDirectorとゲームの盛り上げ方

さまよい歩く敵や群れをうまく手続き的に生成できるようになった後は、じゃあ生存者のゲーム体験を必ず盛り上がるものにしよう、ということになった。 プレイテストでは、プレイヤーが状況を立て直して先に進むこともできないほどに末期的な状況に陥ることがあったんだ。 プレイヤーの判断ミスやスキルレベルの違いも原因ではあったけれど、システムが敵をランダムに生成する際の、いわゆる「引きの悪さ」も原因の一端を担っていた。 「引きが悪い」状態が続くのは、上級者チームなら盛り上がるかもしれないけど、チームの熟練度によってはそのまま死刑宣告となってしまう。 これを解決するため、受けているダメージや倒した感染者の数などを元に各生存者の「ストレスレベル」を計測するシステムを作成したんだ。 このシステムは、生存者のストレスレベルが一定値を超えると感染者の生成を管理するシステムに指示を出す。 すると生成される感染者の数が減り、生存者たちも一息つけるというわけだ。 こうした「間」が重要なのにはいくつか理由がある。 まず第一に、疲れてしまうということ。 戦闘は神経をすり減らすからね。 第二に、ずっと戦いっぱなしでは生存者たちがチームを立て直したり作戦を立てたりする暇がないということ。 そして最後に、不気味な静寂と緊張、そして戦いの予感がなければ、どんなにエキサイティングな戦闘でも盛り上がらないということ。 ゲームをより面白くするためには、こういう調整は欠かせないと思う。 その後システムをゲームに組み込んでみて、このシステムには生存者の戦局を示すすべての情報がつまっていることに気が付いた。 ゲームを盛り上げることを考えると、生存者がギリギリの状態でチェックポイントにたどり着くのが理想的だから、 そうなるように調整することにしたんだ。 プレイヤーには、 迫り来る感染者たちの目の前でドアを閉めて、 「助かった!」と安堵のため息をついて欲しかったからね

プレイヤーの行動が周囲に及ぼす影響

1人がミスをするとチーム全体に影響が及ぶ、というのはLeft 4 Deadの中心的なコンセプトの一つだった。 勝利にはチームメートが欠かせないこと、にもかかわらず自分のミスのせいでチームが危機に陥るというのは、かなりエモーショナルな体験だよね。 例えば...

  • Boomerを撃って爆発させる→味方がゲロを被って感染者の群れに集中攻撃される
  • Witchを刺激する→大抵の場合は誰かが死ぬ
  • 火炎瓶を誤って味方に投げつける→味方が黒コゲになる
  • 車のアラームを発動させてしまう→近くにいる感染者が津波のように押し寄せてくる
  • 戦闘能力を失った仲間を見捨てて逃げる
  • 感染者の群れに追われ、命からがらセーフハウスに飛び込もうというときに味方を背後から撃って戦闘不能にする

これでゲームオーバーになることはないかもしれないけど、一緒にプレイするフレンドたちはその後しっかりと「お礼」をしてくれるだろうね