倒置反復法

Last-modified: 2025-10-01 (水) 21:26:27

概要

 ある一文の中で、特定のフレーズが繰り返され(反復)、かつ言葉の入れ換え(倒置)がおこなわれる表現法。

 英名である antimetabole は、ギリシャ語のanti(反対)とmetabole(ひっくり返る)の合成語に由来する。意見の強調もしくは皮肉などの効果をもたらすレトリックとして説明される。

実例

発言・信条

「この子らに世の光を」ではなく「この子らを世の光に」

 障害福祉の父と称された糸賀一雄の言葉。

Mankind must put an end to war or war will put an end to mankind.

 1961年、当時の米国大統領ジョン・F・ケネディによる国連での演説の一説。「人類が戦争を終わらせなければ、戦争が人類を終わらせるだろう」の意味。ケネディの演説には、こうした倒置反復法が他にもみられる。

かっこいいはかっこわるい かっこわるいはかっこいい

 お笑い芸人・江頭2:50のポリシー。彼の芸人としての見解がよく表れている。

文献・フレーズ

健全なる精神は、健全なる身体に宿ると云ふのは消極的な考へです。(中略)

健全なる身体は、健全なる精神に宿ると云つてこそ、始めて私達の考へが満足されます。

 霊術家・星天学の著書『神霊術講義録 第一巻』の「精神統一法及気合術」に記載されている。星は、戦前に帝国神霊学院という超能力者育成学校の校長を務めていたと言われている。

人を愛して命を知り 人を殺して命を知る

命を愛して人を知り 命を殺して人を知る

 小説家・西尾維新の『匂宮出夢との関係』のカバーに記載されている。

One for All, All for One

 作家アレキサンドル・ディマの『三銃士』にて、主人公ダルタニアンと三銃士の誓いの言葉として有名。「一人はみんなのために、みんなは一人のために」と訳されがちだが、本来のニュアンスは「一人はみんなのために、みんなは一つの"目標"のために」が正しいとされている。単語表記では倒置及び反復が成立しているため、倒置反復法の範疇にある。

色即是空 空即是色

 形あるもの(色)は実態がない(空)ゆえに存在し、実体がない(空)ことを体得することで万物(色)を成立させる。般若心経の一節。多くの倒置反復法が「A→B:B→A」でそれぞれが別の意味合いを有する一方で、この一節は「A=B:B=A」となり少々趣を異にしているが、先述と同様に表記上は倒置反復が成立しているものと見なせる。

応用

 特定の文字あるいは言葉が入れ換えられて別の文を創る技法として、カトルストンパイや、ロシア的倒置法といったものがある。倒置反復法の応用は、そうした個別の項目に譲る。

備考

参考・引用