”茶番”

Last-modified: 2015-10-21 (水) 15:00:39

「――だから!!何度言えばわかるんだっての!!!」

 

怒号一閃。雑木林はその声量に木々を揺らし、鳥達は飛び立つ。
今さっき大音量の文句を垂れたのは他ならぬ魔王三人衆の一人、光尚天子その人である。
それに対峙する巨漢はこれまた三人衆の一人のカクゴ。鬼の形相を浮かべる天子とは異なり荘厳とした雰囲気を醸す。
そのやり取りを少し離れた場所で眺めているのが最後の一人、ラスボス見習いの少女。
口を尖らせ、二人の魔王を睨む双眸は明確な呆れが存在していた。

 

「人の集まる所に行って、そんでもって協力者を集めるた方がいいじゃねぇかっ!!
 それなら同時にテメェの強者との闘いって願望も叶えられるし、一石二鳥だろ!!!」
「貴殿が申す人の集まる所とは一体何処だ?
 地図は予め支給されている。先ずは己らの拠点を捜索するのが得策であろう」
「はぁ!?拠点だぁ……?女々しいこと言ってんじゃねぇぞゴラァ!!
 デカいのは図体だけで、肝っ玉は小せぇ乙女ならぬ漢女ってかこのやろう!!」

 

先程から数十分続くこの論争、一向に終わりを迎える気配はなくラスボス少女は静かに溜息を吐く。
先の会話から察せるであろうが、これからの方針を決める際にこの二人の意見が見事に割れたのだ。
当然、この二人は自分の意見を曲げる事はしない―――どうにも面倒臭い性格だ。
やれやれと、ラスボス少女は肩を竦め首を振る。自分は何時も傍観者っす……

 
 
 

「……ああそーかい!!
 おっさん、テメェがそこまで頑なに従わねぇならよぉ……拳で分からせるしかねぇよなぁ!!?」

 

不意に天子が発したその言葉、それにより傍観を決めていた少女も流石に視線を天子へ集中させる。
目に映ったのは黒髪を靡かせながら戦闘態勢に入る天子の姿。対するカクゴは変わらず仁王立ち。

 

「―――やめろ。このような茶番で振るう拳は無い……」

 

山の如く聳え立つカクゴ、此処一帯を丸々包み込んでしまうのではないかという程の圧力(プレッシャー)。
流石の天子も多少たじろぐも、ギアを入れた彼女はブレーキを知らない。
寧ろ其に感化されたかのように、天子も負けじと膨大な量の殺気を放ち、ぎろりとカクゴを睨みつける。
常人ではそれだけで失神ものであろうそれを、カクゴはまるで何も感じていないかのような表情で受け流す。
それが決め手となった―――天子は完全にカクゴを殺す態勢に入り、鉄拳を固く握り締める。

 

「茶番……?茶番だぁ!?
 てめぇ!舐めんのもいい加減にしやがれ―――!!」

 

轟音と共に振るわれる拳。それは確かに肉を貫いた。
宙を描く血飛沫、漏れる空気音。放たれた拳は確かに『光尚天子』の胸を抉りとっていた。

 
 
 
 

「――――は……?」

 
 
 
 

疑問符を残し、ゆっくりと崩れ落ちる天子の肉体。
ドクドクと流れ出る血液は明らかに致死量を超え、彼女がもう助からない事を悟る。
一体誰が――?彼女が死に際に覚えた疑問に、答えてくれるものは居ない――。
天子の双眸に映りこんでいたのは、無表情を貫き通していた巨漢の喫驚とした顔立ちであった―――

 
 
 

――――
―――

 
 
 

―――あーあ、やっぱり「破綻」しちゃったっすねぇ。
ま、こうなる事は予め分かってたっす。所詮私たちは寄せ集めで作った形だけのチーム……
あの犬山って人は仲良しチームなんて抜かしてたっすけど、そんな事はないっす。
何時裏切られるか分からない、裏切るかも分からない。騙し合いのゲームキャラっすよ。
ま、だからこうして「邪魔者」を排除したんすけど……

 
 

「――――貴様……ッ!!」

 
 

あら?あらら?もしかしてカクゴさん、メッチャ怒ってるっぽい?
どうしてっすか?自分は寧ろカクゴさんを助けてあげたのに……チームの崩壊を招く邪魔者を殺してやったんすよ?
ここは感謝して欲しいところっすよ、ラスボス少女さんありがとうございます!素敵!ってな感じで……
って、そんな冗談も通じないみたいっすね……奴さん、かなり憤慨してる様子っす。

 
 

「…や、やだなぁ~カクゴさん
 どうしてそんなに怒ってるんすかぁ?」
「――巫山戯るな、貴様…何故天子殿を殺した?
 チームを崩壊に招くのを嫌っていたのは貴様であろう…あの言葉は偽りだったのかッ!!」
「ひっ――!?」

 
 

ひぇぇ…相変わらずすんごい気迫っす……どうして怒ってるのかは未だに分からないっすが。
この様子じゃあ私が何か言っても刺激するだけっすね、わざわざ虎の尾を踏むようなことはしないっす。
それに、「これ」とマトモにやり合うのは流石にリスクが大きすぎるっすね―――仕方ない、チームは「崩壊」っすね。
元々私にチームだなんて期待してなかったっすし、一人の方が色々気楽っす。
一人でも私にはご自慢の『商売』があるっす、ここは一旦退いた方が後のためっすね―――

 
 

「カクゴさん、正直私はアンタがどうしてそんなに怒ってるのか分からないっすが……
 チームの崩壊を招いたのはカクゴさんの責任でもあるんすよ?
 天子さんの提案に無駄に反発しなければ、こんな事にはならなかったんすから――じゃ、さよならっすね」

 

「――っ―待てッ!!!」

 
 

当然ながら少女は魔王の制止など耳にも留めず、疾風の速さで雑木林を駆け抜けてゆく。
数瞬として掛からずに姿が見えなくなる少女。それを追うのがどんなに無謀なことかはカクゴも理解している。
無論、今から追えば間に合うかも知れぬが―――――追いついたところで、自分はどうするつもりなのか?

 

天子の仇討ちと名を掲げ少女を殺すか?
……否、カクゴとて単なる仇討ちという言葉程度で片付けられるものではないことぐらい分かる。
少女の去り際の捨て台詞、少女にとっては単なる挑発でしかないそれは意外にもカクゴの胸に言葉の槍となり突き刺さった。
そう、なにもチームを崩壊に招いたのは少女だけでなく、ましてや天子だけでなく、己自身もその一因に過ぎぬのだ。
故に、一方的に少女を咎める権利などカクゴに存在しない――巨漢は静かに瞳を閉ざし、天子へと黙祷を捧げる。
このような殺し合いに集わせる状況を見るに、神の存在さえも怪しくなってくるが、やらぬよりはマシだろう。
胸を抉られ天子の姿に依然の活気は非ず。唇は真っ青に染まり、健康的であった肌色は雪の如く白かった―――

 
 
 

一人残されたカクゴは静寂を打ち破り、地へ掛けていた腰を上げ立ち上がる。
チームは壊滅、現状は己一人、武器は非ず。参加者の中で最も危機的状況であるにも関わらずカクゴの瞳には闘志の炎。
共に運営を打倒する仲間は死んだ。ならば自分に出来ることとは何か、それは自分らしく生きる事。
もし天子の最後が天子らしさを貫いたものだったとしたのならば、自分も自分らしく生きよう。
孤独を背負う魔王は一人、己を貫くため歩を進めた――――

 
 
 

【現在地:雑木林】
【カクゴ@俺能】
[状態]:健康 ラスボス少女への憤慨
[装備]:なし
[道具]:追加食料3日分
[思考・状況]
基本行動方針:対主催を目指していたが……
1.強者と闘う、そのためにはまず人の集まる場所へ。
2.対主催側につくかマーダーとなるかはこの先の行動次第。
3.あの少女(ラスボス少女)は追わない、しかし次に会ったら……

 

※参戦時期は本スレで死を迎えた直後です。

 
 
 
 
 
 
 

――一方、疾風と化し雑木林を駆け抜けたもう一人の魔王は、既に別エリアへと侵入していた。
やっとの思いで雑木林を抜けたかと思えば、視界一杯に広がっていたのは巨大な森林公園。
必要最低限の遊具しか揃っていない其処は朝方だというのに酷く不気味な雰囲気を醸し出している。
まるで行きたくもないお化け屋敷に無理やり放り込まれた感覚だ―――

 

「―――ま、気にしない気にしない。
 まずは呼びかけっすよねぇ……うーんと、今は看板は持ってないから……あ、そだ」

 

ぽんっ。と、閃いた!というように大きく開いた掌に拳を落とし、ニヤリと少女は笑みを浮かべる。
道具がないのならば自分の体一つで解決すればいい。人間も一昔前までは身一つで猛獣と闘ってきたのだから。
スゥゥ…と、大気中全てを吸い込むかの勢いで酸素を肺へ送る。
そして刹那、溜まった空気は一気に放出、ドバァッと放たれたそれは一筋の音霊と化し弾丸の勢いで島を駆走。

 
 
 

           ――――――――ラスボス戦いかがっすかー?――――――――

 
 
 

何時も通りの宣伝言葉が、遥か彼方まで木霊した。

 
 
 

【現在地:森林公園】
【ラスボス見習いの少女@俺能】
[状態]:健康 僅かな焦燥感
[装備]:津山涼のゴーグル@魔法少女
[道具]:
[思考・状況]
基本行動方針:生き残り、商売をする。
1.「契約」が破綻したため、商売に生きる。
2.カクゴさんとはもう会いたくないっすね……

 

※ラスボス少女の声がどの範囲まで届いたかは不明です。

 
 

【商売】
俺能のラスボス見習い少女が行う"戦闘行為"の事。
要はラスボス戦体験販売、という謎の商売。
相手の金品と交換に己が相手と戦闘する。という内容だ。
最もこのロワにて、金品を払ってくれる者が居るかどうか謎だが。

 
 
 

【光尚天子@俺能 死亡確認】
【現死亡者3名】

 

※光尚天子の支給品は遺体とともにその場に放置されています。

 
 
 

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