相反する月

Last-modified: 2015-10-21 (水) 15:02:45

磯の香り漂う海辺の草原。
絶景の広がるその地に、二人の青年が会話を進めていた。
片や能力者高校にて無冠の英雄と囁かれ、虚無を操る時の神権限執行代理人。
片や世界中の戦争に参加し、『護る意味があるもの』を探し求めている天穹院家令嬢の護衛官。
容姿も経歴も全く異なるように見える二人の青年、そんな彼らにも少なからず共通点があって
その内の一つが―――同じ血が流れていることだ。

 
 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 
 

「どうだい兵護、首輪について何かわかったか?」
「んー……ごめん兄さん、やっぱりある程度のサンプルがないと詳しいことは分からないかな」

 
 

やっぱりか。落胆というわけではないが、多少期待していただけに少しショックを受けた。
懸命に僕の首に嵌められた首輪を調査しているのが、僕の弟である伊月兵護。
多くの組織に所属して、様々な肩書きや実業を持つ兵護の方がこういう類には強いだろうと思ったが、如何せん犬山も本気らしい。
僕が「もう大丈夫だよ」と声を掛ければ、兵護は少し不満そうな顔を見せるもすぐに僕の首輪から手を離した。
兵護、お前は気付いていないかもしれないけど首輪を触られている間僕はずっとヒヤヒヤものだったんだよ。
だからそんな顔するなよ、おい、やめてくれよ。ガチで凹むのは………

 

ごめんよ兄さん、ごめんよ…と呟く弟の肩にとりあえず手を置き慰めれば、少しだけ溜息を吐く。
正直言ってこの状況、尋常じゃないぐらいにヤバイ。それこそ銃弾飛び交う戦争へ出向いた方が数段マシだと思える程に。
他の参加者が未知数ということもあるが何よりも僕の『起源』が使えない事だ。
先程首輪を「異能」と判断し消滅させようとしたが、対する首輪は「それが何か?」といった具合で僕の首を締め付ける。
これには流石に驚いた。ある程度能力の制限は予想していたがまさか無かった事にできる程とは……
この調子だと時間制御と固有結界もある程度制限下の状態にあるだろう。

 
 

「……兄さん、どうかしたの?」
「あぁいや、少し考え込んでただけさ。
 なぁ、兵護はこの首輪についてどう思う?」

 

「そうだね……僕は、この首輪は単に参加者の自由を奪う爆弾ってだけじゃあないと思う。
 もっと複雑な機能が内部に搭載されていると思うよ、それこそ参加者の動向を記録する集積回路だとか。
 参加者が死んだ際、体温の変化等を感知して自動に首謀者側にデータが送られるようになっているとか……
 断定は出来ないけど、この首輪は本当の意味で参加者を縛り付けるものだろうね。
 というか、僕が主催者側だったらそうするよ」
「へぇ……」

 
 

最後に恐ろしい呟きが聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。
というか、兵護も兵護なりにちゃんと分析してたんだな……嬉しいけど、兄としての立場が危うい気がする。
許してくれ兵護!お兄ちゃんは弟相手に嫉妬してしまう情けない奴です……

 

――なんて、漫才やってる場合じゃない。僕たちはずっと首輪の事にしか目が行ってないんだ。
これからの方針だとか、そういうのをほっぽり出して兵護に首輪を任せてしまったから。

 
 
 

「弟弟、我が弟よ」
「なにさそのキャラ……分かってるよ、これからの方針でしょ?」
「流石僕の弟だな、そうその通りさ。
 僕はなるべく人の多いところを避けて、僕たちのように一人二人で行動している人を見つけたい。
 大人数のところは後回しだ。相手が多いとその分こっち側に誘う事も手間取るし、何よりマーダーの可能性もある」
「え……でも兄さん、それは―――」

 
 

――積極的に行動できないじゃないか
そんな私情塗れの言葉を紡ごうとして、慌てて呑み込んだ。
ここでの圭一の意見は、おおっぴらに動くのではなくどちらかといえば消極的な意見だ。
圭一の意見は最もだろう、人数が二人という点を考慮しても下手に集団に突っ込んでいく事は無謀すぎる。
反して兵護の意見は逆で、むしろ積極的に動きたいというのが本音だ。
人の多いところに行けば、その分弱い人も集まるかも知れない。だとしたらこの行為はその人たちを見捨てると同義なのでは?
そう心の中では反発するも、それを言葉にしてごねる程兵護も子供ではない、少しだけ躊躇いつつも頷き、賛同を送る。
それを見た圭一が満足気な表情を浮かべれば、下ろしていたデイパックを背負い直し高らかに口を開いた。

 

「……よし、そうと決まれば移動だ移動!
 地図によるとここは海辺らしい……まずは海沿いを歩いて、そこから湖畔に向かおう」
「ああ、了解兄さん!」

 

宣言する兄に同調する弟、彼らの足取りも歩調も、行き先も同じ。
志は違えど、互の目的は合致。だがしかし、あえてひとつ違う点を挙げるとすれば―――

 
 

(―――デイパックの中身にあった黒い果実…
 あれは出来るだけ、誰にも見せないほうがいいな……人間が扱うには危険すぎる)

 
 

伊月圭一のデイパックの奥底に眠る漆黒の果実。
その邪悪に塗れた果実の存在を把握しているか、していないか。
たったそれだけの違いでも、これからの展開は大きく揺らぎ始めるであろう――――

 
 

【現在地:海辺の草原】
【伊月圭一@能力者高校】
[状態]:健康 
[装備]:手錠×2@学園都市 木の棒@現地調達
[道具]:基本支給品 邪樹の実@能力者
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームには乗らず、バトルロワイヤルを破壊する
1.なるべく人の多いところは避け、少人数のチームから協力を呼びかける
2.虚無の力が使えないことに僅かな苛立ち
3.邪樹の実は誰の手にも渡らない場所に保管したい
4.刀剣類の武器が欲しい。

 

※制限により虚無の力を扱うことができません
※他にも時間制御、固有結界の能力もある程度制限されている可能性が高いです
※虚無の使用不可による弊害などは後の書き手さんにお任せします

 
 

【伊月兵護@能力者高校】
[状態]:健康
[装備]:ブルークリムゾン@俺能
[道具]:基本支給品 
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームには乗らず、バトルロワイヤルを破壊する
1.兄さんに着いて行き、自分の存在意義を見つける
2.兄さんはああ言うけど、やっぱり積極的に救える存在を救いにいきたいな
3.この銃、見たことのない形状だ……

 

※圭一と同様、時間制御、宝石魔術の能力がある程度制限されている可能性が高いです
※参戦時期は少なくとも天穹院家令嬢の美弥子の護衛官として働いている時期です

 

【手錠】
学園都市の緒里谷依織が所持する拘束道具。
その名の通り、警察や保安官が犯人や悪党を拘束する際に使用される捕具である。
しかしこの手錠は携帯性を考慮して拘束部分のみ金属製で、鎖部分を30cm程の縄で代用している
その為形状は手錠というよりは足錠に近い
本来の用途通り捕縛に使うほか、戦闘時は相手の武器を絡め取ったり補助防具として利用する

 
 

【ブルークリムゾン】
俺能の工藤鮮花が装備している二丁拳銃。
この拳銃はスイッチがついており、スイッチを切り替えることで二種類のエネルギー弾を撃つことが出来る。
スイッチを切り替えると拳銃の色が変わる。
赤色は熱気の弾を撃つことが出来、着弾すると炎が上がる。この炎は燃え移ることはない。
青色は冷気の弾を撃つことが出来、着弾するとその箇所が凍りつく
エネルギー弾は反動が強く、1発ごとの発射に間隔がある。
このロワでは制限対象で、一発撃つたびに使用者の精神力を消費していく為過剰な使用は厳禁。

 
 

【邪樹の実】
カノッサ機関のナンバーズ、No.17スワンプマンが造りだした、新たなるアイテム
形状は林檎ともザクロとも無花果ともつかない〝黒い果実〟であり、口にすることによって効果を発揮する
そして口にして数秒足らずで、肉体に変化が訪れ、その後口にした者は異形の〝魔人〟へと変貌する
〝魔人〟として変貌した後の姿は個人差があり、完全に異形と化すもの、人型を維持したまま〝魔人〟となる者と様々である。
〝魔人〟となった場合、戦闘力は数倍に膨れ上がり能力者であれば、能力の規模も数倍に増幅する
無能力者であっても何かしらの能力を獲得する可能性も高い。
使用前に下記に提示された〝副作用〟を熟読すべし

 

《副作用》
まず、異能保持者や特殊な訓練を受けた者、頑丈な体質を持つ者以外の一般人は
10人に1人いる程度の〝適性体〟以外は、〝魔人〟の力に耐えられず、肉体が内部から破裂する
〝適性体〟であっても、理性は消滅し、〝魔人化〟の十数分後に、肉体が限界に達し、消滅する
異能保持者や特殊な訓練を受けた者や、元々〝個〟として強力であった者ならば、〝魔人〟の力に耐えられ、理性も維持できるケースが多いが
それでも長時間に及ぶ戦闘行為、それに伴うダメージの蓄積は危険であり、死亡のリスクも伴う
〝魔人〟の力を完全に制御できれば、理性も損なわず、また〝自由に変身〟出来るようになるが、それは本当に〝ごく一部〟である

 
 
 

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