2024年9月3日に近鉄8000系L83が、そして9月16日に8600系X67が西大寺検車区から塩浜検修車庫まで昼間に回送されました。
いずれも10月7日デビュー予定の新型車両8A系に代替される形での廃車のためと思われ、通常なら高安検修センターに廃車回送されるところですが、新車搬入や車両リニューアル工事が重なり余裕がないためか塩浜に回送されたものです。
L83については既に解体のために車体を二分割して塩浜検修車庫から搬出済みとなっています。
まずは3日の8000系L83の回送の様子を紹介します。



回送列車は西大寺から橿原線、新ノ口短絡線、大阪線、名古屋線を通って塩浜まで運転され、中川短絡線は通らなかったため伊勢中川駅で折り返して名古屋線に入線という運転経路でした。
伊勢中川駅では1番線に入線するようでしたので、撮影しやすい駅改札外から撮ることに。
ちなみにL83は今年7月頃に検査期限に達していたはずですが、1ヶ月以上西大寺検車区で休車となっていたため9月に入ってからの回送運転が可能だったようです。
しかしながら8A系のデビュー前に廃車、そして8000系4両編成車としては2008年のL82以来久しぶりの廃車編成となってしまいました。
【参考】
8000系が三重県内の大阪線や名古屋線を走行するのは極めて異例ですが、実は初めてではなく、1989年頃まで一時的に京都線系統で増結車として活躍していた1600系モ1652、1654をそれぞれモワ50形52、高安検修センター入換車に用途変更する際の方向転換のための回送で、伴走のモ1651と8000系モ8069、ク8574を含めた5両編成が大阪線、中川短絡線、名古屋線を走行していたようです。



L83については大阪線の青山峠を越えて伊勢中川駅に姿を現すのは恐らく今回の塩浜回送が最初で最後だったはずなので貴重な光景には違いありませんね。
伊勢中川駅を発車し、名古屋線に入線していくシーンの動画です。
L83についてはこれで撮り納めとしたので、ここから先は16日の8600系X67の回送の様子を紹介します。


X67も回送ルートはL83と同様で、今回はまず名古屋線の津新町駅で狙ってみました。
8600系の廃車は今年4月に落雷事故からの復旧が困難なために不運にも廃車となったX61に続いて編成単位では2本目です。
また、8600系の名古屋線入線は今回が初めての可能性が高そうです。
この編成もL83と同時期に検査期限切れになるはずでしたが、昨年の一時期に休車で延命され、回送前日である15日の2045列車まで運用されていました。

この編成の特徴はなんといっても中間付随車のサ8177です。
そもそもX67は2両編成として落成後、やや遅れて中間電動車モ8667の新製と爆破事件の被害を受けた8000系E59のモ8059を電装解除の上でサ8167として編入が行われ、2014年に車両リニューアル工事(2回目)を受けることとなった際には老朽化したサ8167は鈴鹿線で二度の出火事故を起こした1010系T12のモ1062を電装解除したサ8177に振り替えられました。
1010系は名古屋線系統用でしたが、元は京都線系統用の920系で車体形状も似ていますが、平らな屋根や車両の向きの関係で車端部の二連窓がモ8667と隣接していないなどの特徴があります。
今回は8600系としてですが、元モ1062であるサ8177は約11年ぶりに名古屋線を走行することとなりました。


後部のク8117の車掌台付近にはよく見ると花が添えられているのが分かるかと思います。
これは西大寺出発時点でもあったようで、"異端児"として有名なこの編成が愛されていたことの証と言えるでしょう。

津新町駅で見送った回送列車ですが、後続の急行に乗車して楠駅で追い越すことができました。
上はその時の動画と切り抜き画像です。

塩浜駅に先回りして4番線に到着する回送列車を撮影。
この日は祝日ということもあって他にも多くの撮影者が待ち構えていました。

サ8177にとっては京都線系統、名古屋線系統、奈良線系統で長年活躍し、結果として最期を名古屋線の塩浜で迎えることになったというのはまさに波乱万丈ですね。
同車だけを抜いて3両編成化するような噂もかねてから聞かれますが、X67の車齢を考えればあまり現実的ではなく、少なからず改造も必要になるため可能性は低いと思われます。


一旦引き上げ線に入り、名古屋行き普通としてやってきた1010系T15と顔を合わせました。
T15も元は920系なので感動の再会シーンといったところでしょうか。


その後は塩浜検修車庫内に入っていきました。
電気機関車は現在は通電が不可能な状態で留置されている同検修車庫の入換車です。

モ8617については落成当初の2両編成時代には先頭寄りにもパンタグラフが設置されていました。
現在は撤去跡が目立っており、冷房装置はその部分に設置されていないためこれも他の8600系にはない大きな特徴の一つです。

X67はこの記事を書いている時点ではまだ塩浜検修車庫内にいますが、今後L83の後を追って車体を二分割した上での搬出が見込まれます。
塩浜では2008年頃を最後に近鉄車両の解体は行われていないようで、その後養老鉄道の車両を周辺環境への配慮のためか車庫の解体線で解体せずに車体を分割して搬出した事例についても2019年が最後であり、今年になって久々の廃車車両の受け入れ、しかも近鉄の奈良線車両という異例づくしでした。
8A系投入により押し出されて廃車となる編成は今後も多く発生すると思われ、また塩浜への回送が運転されるのか注目です。
