ゴーレムの檻 三月宇佐見のお茶の会

Last-modified: 2009-10-13 (火) 23:34:28
 

柄刀一 『ゴーレムの檻 三月宇佐見のお茶の会』 カッパ・ノベルス

 

現実と異世界との間を行き来する特異体質を持ってしまった宇佐見博士の<三月宇佐見のお茶の会>シリーズの
短編集2作目。

 

前作『アリア系銀河鉄道』ではふとした瞬間に異世界に迷い込んでしまい、
そこで起こった事件を解決していく話が多く印象的だったが、今回はそういった話は前作より少ない。
しかし「シュレディンガーDOOR」や「見えない人、宇佐見風」など、
現実世界と異世界との境をあいまいに描いている話が印象に残っている。

 

それを演出するための仕掛けも効果的に使われており、下敷きに使われている話にも『不思議の国のアリス』や
ユダヤ教の教典にあるゴーレムの話など夢想的で興味深い話が多く、それによって提示される謎だけでも楽しめた。

 

本書には詳細な解説が付いているのでこのレビューが役に立つかどうか甚だ疑問だが、
とにかく、お茶でも飲みながらゆっくりと楽しんで貰いたい一冊である。

 

担当者 - そうだ