壺中の天国

Last-modified: 2009-10-14 (水) 00:06:46
 

倉知淳 『壺中の天国』 角川文庫

 

いつもは静かな地方都市を俄かに賑わす通り魔殺人事件。
そんななか、犯人の犯行声明とも取れる電波怪文書が発見される。
この電波怪文書は本当に通り魔殺人事件と関係があるのか。そして殺人犯のねらいは?

 

この小説では城とか館などの閉鎖空間で事件は起こらない。
そのため、容疑者を集めたり、犯人を名指したりして推理を進めたりすることはない。
開かれた空間で起こったこの殺人事件に対して、登場人物たちはあくまでも事件の外側にいる傍観者である。
それでも楽しく読めるのは伏線がしっかり張ってあるからであろう。
一度読み終えた後に再び読み返すと「こんなところにも伏線が張ってあったのか!」というところにも
伏線が張っており感心させられる。

 

これは事件とは直接関係ないが、この小説には一般的にオタクと呼ばれる人たちが登場する。
だからと言って構えて読む必要はない。彼らの言動はむしろ微笑ましいくらいである。
それに、何かひとつのことに打ち込めるのはとても幸せなことだと思う(それがお金になるなら最高ですね!)。

 

担当者 - そうだ