11月20日 読書会

Last-modified: 2009-12-15 (火) 13:33:13

※『殺人方程式 切断された死体の問題』および『十角館の殺人』のネタばれを含みます。
未読の方は是非読破後にまたお越しください。

 

大谷ミス研11月20日読書会 まとめ

 

課題本『殺人方程式 切断された死体の問題』 綾辻行人著

 

前回の『十角館の殺人』読書会と同様に、12月6日に行われる関ミス総会内の綾辻行人先生の講演会に合わせて
先生の著作である『殺人方程式 切断された死体の問題』の読書会を行った。
『殺人方程式 切断された死体の問題』は『十角館の殺人』とは一味違った作品である。
どのような感想が出たのか、前回の内容との対比も合わせてお楽しみください。

 
 

はじめに
「綾辻作品」の中でこの作品を読んだのはいつかという前回との比較を考察できる質問が出た。
前回『十角館の殺人』では、『十角館』が最初の「綾辻作品」だというメンバーが多かったが、
『殺人方程式』から「綾辻作品」に入って行ったメンバーは1人もいなかった。

 
 

トリック
『十角館の殺人』では、叙述トリックがメインであったが、『殺人方定式』では物理トリックが用いられている。
それについて、本当にうまくいくのか? という物理トリックにはつきものの指摘が出たが、
「方程式」通りならきっと成功するのだろう。
また、別々の人物がそれぞれ行ったことが1つの事件を形作っていることが偶然過ぎるのでは、という意見もあった。
偶然と言ってしまえばそれでお終いだが、その偶然が起こった背景がきちんと描かれているので違和感はなかったように思う。

 
 

ストーリー
この作品は、初出がカッパ・ノベルスということで、なんというかそれらしい作品だ、という感想が多かった
(おじさまとかが読む感じ?)
しいて言うなら、「普通」のミステリだと言えるかもしれない。
また、登場人物のキャラが立ちすぎているという意見が出た半面、登場人物の書き分けがうまいという意見も出た。
さらに、時代背景は古いが、あまりそれを感じないという声も多く、読みやすい作品であると考えられる。
ただ、『十角館の殺人』ほどのインパクトは無く、時間が経つとあまり頭に残らない人も……。

 

『十角館の殺人』がミステリファン向けだったように感じられたのに対し、
『殺人方程式』は「ミステリ入門」的な感じがする。
また、「綾辻テイスト」は薄く「綾辻入門」には不適切かもしれない。
綾辻作品によく見られる、「事件に一応の答えを出しつつ、さらにその奥に真相がある」という特徴は、
この作品でも見られるものの、そのせいでラストの真相が突然過ぎると感じてしまう場合もあるかもしれない。

 
 

最後に
  この作品と『十角館の殺人』を比べ考察した結果、「ミステリ入門」には『殺人方程式』、
「綾辻入門」には『十角館の殺人』が適していると考えられる。
しかし裏を返せば、ミステリ初心者には最初に「綾辻作品」らしい作品を勧めづらいことになるので、
「綾辻作品」はミステリファンが真に楽しめる、ある意味敷居の高い作品なのかもしれない。

 
 

参考文献
『殺人方程式 切断された死体の問題』 綾辻行人著