あなたが風浦可符香さんですか?

Last-modified: 2020-06-20 (土) 22:07:08

 「嫌だなぁ、殺し合いなんて現実に起こるわけないじゃないですかぁ」

 

 一人、女性がいます。年の頃は若くまだ女子高生ほどの年齢でありました。
声は甘く、瞳は澄んでいます。容貌は可愛らしい女学生の域を超えるものではありませんが、
それは返って、彼女から伝わってくる暖かな気持ち、安心感のような、何か心の隙間を埋めてくれるような感覚を強調していました。
ポロロッカ星人が地球との交渉役に選択するとしたら、彼女みたいな人にするのではないでしょうか。

 

 そう、もしかしたら、プッチ神父はポロロッカ星の教皇であり、この殺し合いの儀式はポロロッカ星への入国試験。
彼女は宗教的権威から授かった聖なる精神的御霊力を用いて、他の皆様方を現実に返して上げなければならない。
使命感は電波のように彼女の身体を行きわたり、今衆生への救済に向けて持てる限りの力を振るったり……、
初めの彼女は、こんな感じのいい子でした。

 

 「そんなことはありません! これは殺し合いです! でも、殺し合いだって悪いことばかりではないのです!」

 

 テセウス船のパラドクス、という思考実験があります。
どうにもこういう代物はSNSの発展した近年で比喩に用いると陳腐になる気がしますがそれはおいといて。
壊れた船を少しずつ修理していって、そしてついにすべてが違う材料と入れ替わった時に、それは果たして同じ船だと呼べるのかという……
人間の細胞は毎日少しづつ入れ替わっていて、おおよそ一年で入れ替わってしまうそうです。(私立白蛇ロワ(有)高校調べ)
思考ならばなおさらそう、書留でもしない限り、過程を忘れ、根拠を忘れ、しまいには結論を忘れます。
出力される幻想が、はじめに共有していたものから大きく姿を変えてしまう、そんなことはざらにあることです。

 

 で、殺し合いです、互いに授けられた守護霊、おそらく肺胞の中の空気を激しくポロロッカさせることによって発生する精神エネルギー。
人によって異なる姿を持つポロロッカ力は、戦いと対話を通して切磋琢磨することにより、人間の次元を一つ上に上昇させます。
つまり、儀式の参加者はすでに教皇たちにより選ばれた者たちであり、結果としての生死は問題ではありません。
彼女はより多くの人々が高次元世界に至るためのお手伝いに尽力していくに違いありません。

 

 私たちと共に過ごした彼女は、こういう風ないい子でした。

 

 「いいえ、殺し合いではありません! これは試練です。

 

 私たちは死線を通じて共に生き残ることにより、内面のつながりを感覚する時が来たのです!」

 

 超自我は、自我を律する監督者や裁判官の役割を担います。しかし、形あるものというわけではなく、当時の社会規範や共同幻想によって枠さえも変わってしまうものです。
世間とすり合わせることは、どんな人にとっても多かれ少なかれ苦痛が伴うものです。ときには、耐えられずに脱落してしまう人が出ます。
ですが絶望することはありません。どんな人にだって生きたいと思う気持ちがあります。それはポジティブ遺伝子。誰だって持っているものです。
彼女は皆に楽しく学校を過ごしてほしかったのです。皆と生活と思い出を分かち合いたかったのです。

 

 初めは誰にも理解されない極端な曲解から、少しずつ人の心に漬け込む小憎らしい奸計へ。彼女がとる手法もまた変わって行きました。
それは私たちが少しづつ成長していたから……、他人を理解しようと少しづつ変わって行ったからではないでしょうか。
だから私たちが演じる彼女も、誰にもとどかない神の国から、現実的に皆が理解できる領域に降りてきたのです。
言い換えれば、私たちは彼女という天使から、超然とした何かを奪い、交流し分かり合える女子高生に堕天させたのかもしれません。
ですが、それが普通です。誰もが共有できるものです。皆が他人と過ごすために分かり合える基準、それが普通だったのです。

 
 

 私たちの知っている風浦可符香は、天使みたいないい子でした。

 
 

 
 

 そこには、たくさんの風浦可符香がいる。立ったまま動かない彼女もいれば、寝そべっている彼女もいる。とにかく、たくさん存在する。
ただ──

 

 ──あなたが風浦可符香さんですか?

 

 ──いいえ、皆さんです。皆さんがすべてです。……私は幸せでした。

 
 

 人格たる風浦可符香は一人だ。

 
 
 
 

【名前】風浦可符香(P.N)
【出典】さよなら絶望先生
【性別】女性
【人物背景】
さよなら絶望先生の登場人物。超ポジティブで人の心の隙間に入り込むのがうまい。絶望少女たちの共有人格。
【能力・技能】
・超ポジティブ少女
あらゆる物事を好意的に解釈する。しかし、曲解がすぎて電波じみた発想に行きつくこともしばしば。
人格と人心掌握術も併せ持って、とにかく人の心に取り入るのがうまい。

 

【スタンド】ペーパー・ムーン・キング
【破壊力-E / スピード-E / 射程距離-C / 持続力-C / 精密動作性-B / 成長性-E】
【能力詳細】
折り紙、または折り紙のように折り込んだ物体と一体化するスタンド。
触れた相手に人相やデザインなどの区別をつかなくさせる能力を持つ。
そこにある物を別のものに認識させたり、人物の区別をつかなくせることができるほか、
物体を特定の人物のように認識させることも出来る。(作中ではバスを人間と認識させていた)

 

【備考】
・参戦時期はさよなら絶望先生最終話時点です。
・絶望少女の誰かです。
【方針】
 共に生き残る。