住宅街。時間は深夜。そこに月光に煌めく参加者が居た。
きょろきょろと周囲を見渡し、困った顔をしている彼の名はダイヤモンド。
人類が古代に滅び、唯一地上に残った島で仲間たちと暮らす宝石の一体である。
「ここは何処かしら。島じゃない……わよね」
夜間に文字通り宝石の輝きを放つダイヤモンドは、周囲の光景に物珍しさを感じていた。
記憶DISCによると、自分はこの場に拉致されたらしい。その事を理解したとき、ダイヤモンドは一つの疑問が思い浮かぶ。
「殺し合い…。うーん、月人みたいに戦えってことよね。でも、彼らは何なのかしら」
ダイヤモンドの抱く疑問。それはあの記憶に出てきた人物たちが何者かである。
自分達宝石と似てはいるが、赤い液体を流し、同じ言葉を話す存在など見たことも聞いたこともない。
数百年も少数社会で過ごしてきたダイヤモンドからしてみれば、人間という存在はまさに未知そのものなのだ。
「……こういう場合、どうしたら良いんだろう」
自分がどう動くべきか、ダイヤモンドは悩んでいる。ここが戦場であるという理解はあるのだ。
しかし、その様子はどこか能天気で、幾分か口調も軽く、どうも命懸けの状況に置かれている実感が薄い。
そもそもダイヤモンドを含めた宝石たちは基本的に不老不死。動物は砕けば腐る、という知識はあるものの『死』という感覚は浅い。
ダイヤモンドもその外見とは裏腹に気の遠くなるような年月を過ごしている。
宝石たちにとって唯一『死』に近いものは月人による誘拐だが、なまじダイヤモンド属は戦闘に長けているため、それらは充分に対処可能な危機だった。
つまり彼には、それ以上の危険に対処する経験が絶望的に足りないのだ。
「でも……さすがにあんな風になっちゃったら動けなくなるかも」
ダイヤモンドの脳裏に、無惨に砕けて動かなくなった少女のイメージが浮かぶ。
基本的に自分たち宝石も、頭を破壊されると動けなくなる。
復元してもらえれば話は別だろうが、周囲に仲間がいない状況では危険すぎる。医療担当のルチルが居れば別だが、望みは薄い。
この場で下手に損傷したら、きっと月人に連れ去られるよりも困難な状態になる。そういう危機感はあった。
「ボルツならこんな状況でもへっちゃらなんでしょうけど……でも、自分で何とかしなきゃいけないわよね」
ダイヤモンドは戦う意思を決める。しかし、月人と戦うための武装は全て没収されている。戦闘担当なので体術でも戦えなくはないが、少々心許ない。
そういえば、とダイヤモンドはプッチの語っていた言葉を思い出す。
スタンド、意味は解らないが、そういう名前の何かを与えると言っていた。
何か手がかりがないか、側に落ちていたバックを開けてみる。
島では見たことの無い作り。職人によって仕立てられたような高級感のある立派な鞄だ。開けてみると、中には色々な道具が入っている。
それらを取り出すため、ダイヤモンドは中身に手を入れた。
「ーーーえ」
瞬間、指先の感覚が無くなった。
慌てて引き抜くと、右手の人差し指から小指までが綺麗さっぱり無くなっていた。
まるで元からそこに無かったかのように、綺麗な切断面がキラリと輝いている。
「う、嘘。どういうことなの……? どこ? 何処に行ったの!?」
慌てて鞄を引っくり返す。コンパス、食料、時計。名前もわからないそれらが地面にぶちまけられるが、指はない。
混乱するダイヤモンドは、やがてその鞄に一枚のメモが貼り付けられている事に気がついた。
そこに書かれている文を読んだダイヤモンドは表情を曇らせた。
『貴方のスタンドはこのグッチのバックです。このバッグに価値のある物を入れると消えてしまいますが、後々「危機に陥った」ときに金額分の「等価交換」によって助けてくれます』
メモにはそう書かれていた。
「え……じゃ、じゃあ、僕の指……交換されちゃったの?」
途方にくれたダイヤモンドの呟きに答える者は、誰も居なかった。
【名前】ダイヤモンド
【出典】宝石の国
【性別】ー
【人物背景】
宝石の国に登場する宝石の一人。ダイヤモンド属。白く虹色に輝く髪を持ち、長い睫毛と太眉が特徴。
ボルツのペアであり、同じ属性として兄弟でもある。
心優しい性格である一方、悩みやすく抱え込みがち。恋愛偏重主義と言われており、恋話が好き。可愛いものや綺麗なものも好き。
人望の無い節があるフォスとも仲が良く、彼の兄的な存在ともなっている。
とはいえ素の性格と、中の人がお姉さん役に定評のある茅野愛衣女史が演じているだけあって、宝石の中では非常に女性的で、もはや兄ではなく姉といって差し支えない。
実際に女言葉を使うシーンがあってその特色はますます強い。
美形揃いの宝石たちの中でもトップクラスの美形であるらしく、よく服のモデルにされている。
【能力・技能】
・宝石
人型をした宝石生命体のような存在。それぞれ宝石の特徴を備え、一個体の髪も肌に当たる部分も中も同色で成り立っている。
ダイヤモンドは身体は金剛石で硬度は高いが靱性が低く、劈開があり割れやすいため、強い衝撃には弱い体をしている。
共通の特徴として性別がなく無性であり、男女の概念自体もない。
体内に微小生物がインクルージョンとして内在されており、割れたり砕けたりしても破片が揃えばインクルージョンの働きで元に戻ることができるが、身体部位を欠損するとその部位に存在していたインクルージョンが保持していた記憶を失う。
欠損した場合はインクルージョンを内在していない元の身体に近い構成の鉱物によって補うことも可能だが、接合が上手くいくかどうかはインクルージョンが補った部位にうまく馴染むかによる。
砂粒程度に細かくなっても相応量が集まれば接合可能で、人型で復活できるため、死の概念がなく非常に長寿。
【スタンド】グッチのバック(正式名称不明)
【破壊力:?/スピード:?/射程距離:?/持続力:?/精密動作性:?/成長性:?】(詳細不明)
【能力詳細】
グッチのバッグに宿ったスタンド。
このバッグに価値のある物を入れると消えてしまうが、後々持ち主が「危機に陥った」ときに、金額分の「等価交換」をして助けてくれる能力がある。
バックを修理(もしくは破損)した場合、この能力は消滅するが、直前に等価交換していた場合はしっかり効果を発揮する。
ダイヤモンドの場合、全身が宝石なので交換対象になるようだ。
【備考】
デイパックの代わりにスタンドそのものが入れ物として支給されています。
ダイヤモンドの右手の指を等価交換として取り込みました。取り出せるかどうかは不明です。
【方針】
この催しから脱出し、先生の元に帰る。
指が……!?