午前八時。太陽が完全に上りきった会場内に、突如として音楽が流れ始めた。
イギリスの作曲家であるヘンデルが作曲したオラトリオ、メサイアのイントロだ。
イントロを奏で終わると、音楽は音声へと切り替わる。
その声は、ちょうど八時間前に参加者全員が聞いたことのあるものだった。
――エンリコ・プッチ。
そう、あのアルカイックスマイルを浮かべた、浅黒い肌の神父の声だ。
◆ ◆ ◆
――やあ、私だ。
エンリコ・プッチだ。
これより、第一回放送を始める。
まずは、このゲームで尊い犠牲となった者の名前を読み上げよう。
支給品の中にある名簿でも眺めながら聞いてくれたまえ。
伊藤誠
霍青娥
コラッタ
佐々木哲平
フローレンス・ナイチンゲール
鷲巣巌
以上の6名がゲーム開始からこの放送までに脱落したことになる。
――つまり、残りの生存者は35名ということだな。
オイオイ、ちょっと少なすぎるんじゃあないか?
このままじゃいつまでたっても終わらないぞ。
……まあいい、私たちも特にやることはないんだ。
のんびりと見物させてもらうことにするよ。
そして次に、禁止エリアの発表だが、「D-1」を指定することにする。
もし、D-1に誰かいるんだったら即座に退出することをおすすめする。
この放送終了後から十分以上滞在した場合は、八時間前に見たように頭が爆発してしまうからね。
それと最後に一つ、二つ――いや、やっぱり三つほど君たちにこの殺し合いを生き抜くためのヒントを伝えておこうか。
一つ。強さは弱さ、だ。異常なまでの強さを誇るものは、意外な弱点を抱えているという。
たとえば、紫外線に当たりたくなかったり、背中を見られるのを気にしたりと、ね。
二つ。もう既に気づいているものもいるだろうが、同じスタンドを支給されている参加者もいる。
これは決して私が無精して適当に選んだ――というわけではない。理由を探ってみるのも面白かもしれないな。
三つ。さきほどなんとなく天気予報を見たのだが、「にわか雨に注意」とのことだそうだ。
それでは、ここでこの放送を終わりにすることにしよう。
君たちの健闘を祈る。
◆ ◆ ◆
最後にもう一度メサイアのイントロが流れた後、神父による放送は終了した。
周囲には静寂が戻り、再び殺し合いが始まろうとしていた。
【一日目・午前八時】
【残り35人】
【禁止エリア:D-1】