Discord

Last-modified: 2020-06-22 (月) 21:04:38

深夜。
吹きさらしの草原に一本の薄汚れた鉄塔が立っていた。

 

その中には明治時代のモダンボーイのような出で立ちの男が一人。名を鬼舞辻無惨といった。
鬼舞辻無惨は鬼である。
鬼であるからして日光に弱い。陽の光に当たればたちまち全身の細胞が崩れ始める。

 

平素なら日の当たらぬ薄暗い屋敷に閉じこもって太陽をやりすごす無惨であったが、今回ばかりはそうもいかない理由があった。
それは、彼が今いる鉄塔のせいである。

 

鉄塔にも名前がある。『スーパーフライ』という名だ。
スーパーフライは『内部にいる一人を閉じ込める』という能力を持っていた。
外へ無理に出ようとすると身体が鉄塔と同化してしまうのだ。

 

ならば鉄塔を破壊すれば良いのではないか。
いや、それも不可能である。
攻撃は全て吸収されて鉄塔自体には傷ひとつつかず、攻撃したのとまったく同じ攻撃が跳ね返ってくるからだ。

 

要するに、ここから脱出するには他の誰かを一人鉄塔に閉じ込めねばならぬ。
閉じ込めるためには当然誰かがこちらに来なければいけないのだが、殺し合いが始まってから数時間経っても誰も訪れない。

 

「エンリコ・プッチとやら。私をここに閉じ込め、座して死を待つ状況に置くとはなかなかに味な真似をしてくれる……」

 

無惨は爪を噛んだ。

 

ただ、彼が気づいていないだけで鉄塔から脱出するためのヒントは既にあったのだ。
それは、鉄塔の上部に置かれたデイパックの中にある名簿が示していた。

 

名簿の上部にはこう書かれてある。

 

○鬼舞辻無惨/○黒死牟/○猗窩座

 

そう、無惨の部下たる上弦の鬼が二体もこの殺し合いの場に参加していたのだ。
無惨は鬼の首魁、始祖であるため、鬼に対してテレパシーのような念を送ることが可能であった。
それを使って黒死牟か猗窩座のどちらかを呼びつけ、代わりに中に入ってもらえば偶然に縋らずとも容易に脱出できたのだが、無惨はそれに気が付かない。

 

ただひたすらに苛立ち、憎しみ、怒りを燃やしていた。

 

「このスーパーフライは、何があっても私をここから出さぬ腹づもりか」

 

無惨は怒りに任せて鉄塔を何度も渾身の力で鉄塔を殴りつける。
それは岩を砕き、山を崩すほどの威力であったが、残念ながらスーパーフライには届かない。
ただその攻撃エネルギーは全て反射され、無惨自身の身体を傷つけるのみである。

 

「ゴンゴンゴンゴンうるさいわね。深夜は寝る時間でしょ、きっちり睡眠をとりなさい。」

 

すると少女の声が近くから聞こえてきた。
苛立ちによって気が付かなかったが、どうやら無惨が鉄塔を殴る音に惹かれてこちらまで来たようだ。

 

たちまち無惨の顔が喜色に歪む。

 

(これは千載一遇の機会だ。絶対に逃してなるものか……!)

 

暫くして闇の中から姿を現したのはスコップを携え、真ん中分けのロングヘアーをした女子高校生であった。
喰らえばそこそこ味が良さそうだが、今の無惨にとってはそんなことはどうでも良かった。

 

「やあ、お嬢さん。私の名前は月彦といいます。少し体調が悪くてここから動けないんですが、助けてはもらえないだろうか」

 

無惨は自身の言い訳を完璧だと思った。
まず名を名乗って警戒を解き、体調のせいで動けないという理由もきちんと説明した。
これならば必ずこちらに来てくれるはずである、とそう思った。

 

だが、少女は近づいては来なかった。
むしろ怪しんでいるようだった。

 

「……『月彦』、ねえ。そんな名前の人は名簿に載ってなかったですけど。」

 

(! しまった! つい擬態時の名前を名乗ってしまった! そういえば名簿があるとあの神父も言っていたな)

 

「いや、月彦というのは前の名前でした。今は……」

 

「今は?」

 

(どうする。今から名簿を確認している時間はない。どうにかこの女の警戒を解かなければ)

 

「鬼舞辻無惨と名乗って役者をしています」

 

散々苦慮した結果、無惨は嘘に嘘を重ねることにした。
たった一人の女にここまで頭を使わされるとは屈辱だったが、今度こそ完璧な理由付けだと思った。

 

しかし。

 

「どうしてそんな嘘をつくの?」

 

「ッ!!」

 

少女は無惨が考えに考えてついた嘘をあっさりと見抜いてみせた。

 

無惨は思い至るべきだったのだ。
自身に『スタンド』という特殊な能力が支給されているのだから、他の参加者も『スタンド』を持っているのではないか、と。

 

少女は木津千里という名前である。
彼女に支給されたスタンドは『アトゥム神』。
賭けに負けた相手から魂を抜き取る能力を持つ。

 

それだけであれば『賭け』を介さなくては意味のない、戦闘ではあまり役に立たない能力と言える。
真に恐ろしいのは他者の魂に質問することでYES/NO形式でその心を読む、という方の能力だろう。

 

千里はいま、その能力を以て無惨の嘘を見破ったのだった。

 

「それは――――」

 

「もういいです。嘘をついて他人を罠にかけようとするなんてきっちりしていない人には近づきません。」

 

それだけ告げると、千里は無惨を置いて行ってしまった。

 

「…………」

 

少女は去り、後には彼女が残したスコップを引きずった跡だけが続いていた。

 
 

【F-5/鉄塔/一日目・深夜】

 

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(小)、怒り(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[スタンド]:スーパーフライ
[思考・状況]基本行動方針:鉄塔から脱出する
1:……

 

[備考]
木津千里に逃げられました。

 

【木津千里@さよなら絶望先生】
[状態]:健康
[装備]:スコップ
[道具]:基本支給品
[スタンド]:アトゥム神
[思考・状況]基本行動方針:きっちり優勝する
1:鉄塔から去る

 

[備考]
鬼舞辻無惨を怪しんでいます。