megadoomingir氏作/StopMe/05

Last-modified: 2021-08-18 (水) 17:27:45

Chapter 5: Operation: Breakdown

MECHが罠を仕掛けるまで6時間を切った。奴らはバルクヘッドとブレークダウンを仕留め、後者を持ち帰り、生涯癒えない傷を残していった。連中が彼をどこへ連れていくかはおおよそ知っていたが、万が一に予定通りに進まなかった時に備えておかねばならなかった。

スタースクリームはエネルギースクランブラーで敵の察知を防ぎつつ、目的地周辺を数度巡回していた。
「これくらいなら簡単にやれるな。座標は正確、タイミングもばっちり、そして奴らが目的地に到着するまで車で20分程度……」
呟きつつ、ついでにもう1周だけ確認をする。

その時、暗色で塗装された車両の行列が、廃トンネルから現れる瞬間を目撃した。物々しさからしてMECHで間違いないだろう。

「準備に向かったな。」
スタースクリームは少し離れた地点にトランスフォームし、着地した。
「必ず成功させねえと。でなきゃブレークダウンはオプティックどころの問題じゃなくなっちまう……。」

音を立てないようにトンネルに向かって這い上がり、施設の屋上を歩きながら配線を辿った。やがてジャンクションボックスを見つけた。ちょうどMECHの小さな小さな研究施設の真上だった。正直こんな矮小な人類たちがサイバトロンの科学を利用せんとするさまには感心した。害さえなければ「かわいらしい」で片付けたことだろう。

スタースクリームは腰に取り付けてきた小さなデバイスを取り出した。数時間前、このために即興で組み立ててきた代物だ。
「うまくいってくれよ。」
慈しむように囁きながら、ジャンクションボックスの中に接続した。

ひと通り作業を完了し、いったんトンネルの入り口に振り返った。
「奴らがブレークダウンを連れてきてラボに運べば、あいつのエネルギー反応によってコイツが起動して、5分後には施設のシステムダウンを引き起こす。これだけしとけば、バルクヘッドがいかにノロマだろうがたっぷり時間があるわけだ。俺はなんもしなくていい!楽勝!……」

両手をあげて喜びかけて、ふと立ち上がり、顎に手を添えた。
「……いや待て。その後に俺様が登場するわけで……それまでに何かあったらどうすりゃいい?備えとかねえとダメだし……別に数分くらい早まっても問題はないよな?だよな?」
その思いつきにうんうんと頷いた。
「よし!いいアイデア、名案!こいつはいい!……絶対成功させねえとな……」

飛び上がり、ジェットモードに変わって最速で飛翔した。見晴らしのいい場所を見つけて、展開がどう転ぼうと、そこでいかなる状況にも備えておかねばならなかった。

まもなく時間だ。準備はできた。遠くで金属質の衝突音が響き出すと、翼がぴんと立ち上がった。ブレークダウンとバルクヘッドの戦闘の音だ。ならばそう時間もかからないだろう。

空気は振動し、打撃音が響き続け、やがてひときわ強烈な音がした。決着だ。ブレークダウンが勝利し、数秒後には彼も同じく倒れ伏す。風から全部感じ取れた。

時間だ。

行動開始──不本意だが、ことはなるべく早く済ませねばならない。計画は既に動き出しているのだ。

まず無線を起動し、なるべく切羽詰まった語調を演じて通話を開始した。
「メガトロンさま、ブレークダウンが無線に応答しません。偵察任務の定期報告があるはずでしたが、いまだに反応なしです。どうやら周辺に人間の組織『MECH』がうろついているようで、連中がブレークダウンの失踪と関連すると思われます。至急救助隊を要請します!」

返答はわかりきっていたが、2度目だとしてもその言葉に衝撃を感じずにはいられなかった。
「放っておけ。人間どもに捕まるならばその程度ということ。あとは奴自身の問題だ。」

やはりそうなるか。

いずれにしろ、できることはやった。どうせメガトロンがブレークダウンを見捨てることは確定事項だった。問題はここから──オートボットらを迅速に呼び出さねばならない。どうせ悪いことが起こるなら、未然に防いで損はないはずだ。

数回、深く吸気し、顔面に塵や土埃を塗り込んだ。そしてオートボットの無線周波数に合わせて映像通信を展開した。ここが重要だ──映像を全てのチャンネルに対してオープンリンクにする。

「こちらディセプティコン副官スタースクリーム!MECHがブレークダウンを拉致し、指定座標にて拘束している!至急援軍を求む!」

雰囲気を出すために映像通信はすぐに切断した。必ずバルクヘッド……というより、オートボットの誰かが救出に来なければならなかった。自分自身はあくまでも最終手段だった。

スタースクリームは瓦礫や岩の転がる小さな丘の上にしゃがみ込んだ。ここなら遠くを見渡せる。それにちょうどMECHのアジトのトンネルのそばだった。
遠くから光が近づいてきていると気づいた。その上に積載されたブレークダウンの機体を見て、思わずため息が出た。これからあの巨体を研究室に運び込むまで2分ちょっとといったところか。取り付けた機器が起動するのはそれから少し後の予定だ。明かりが消えて30分後に起こるサプライズに奴らがどう反応するのか想像して、一人ほくそ笑んだ。

実に楽しみだった。せっかくなので連中を燃やし尽くす炎を見物といきたかったが、ブレークダウンを救助した後も決して楽はしていられないだろう。

トンネルの上に設置した機器からは高いビープ音が鳴ったのを聞き取り、ひとまずは安堵のため息をついた。あとは待つだけだ。

待ちながら、腕について汚れを払い、何度か地面に座り直して過ごす。体内時計がトンネル内部の電源消灯を知らせた辺りで、不安がこみ上がり出した。ここからが肝心だ。残り30分。

コンクリートの壁のカケラをいじりながら待つ。残り30分が、残り26分になった。思わず顔を顰めた。オートボットには十分な時間があるはずだ。不安はさらに深刻なものへと変化した。

身を隠していた瓦礫から飛び出して、トンネルの門扉に近づいた。
「いっそ門をぶっ壊しちまえば……」
しばらく考えて、すぐに下がった。
「いや、待て待て落ち着け、とりあえずもうちょっとだけ……」
ぼやきながら体内時計を確認したと同時に、飛び上がった。
「へっ、えぁ!?19分前!?この星の時間の流れどうなってんだよ!?」

もはや躊躇う余地もなく、腕のミサイルを門扉に発射した。鉄扉は煙と溶けた金属を噴きながら内側に凹み、ただの残骸と成り果てた。このままただ押しのけてしまうこともできるが、それでは面白くない。
登場シーンとは派手なほど印象に残るものだ。

スタースクリームは残骸を勢いよく蹴り飛ばし、腕のブラスターを展開した。足元では呆気に取られたMECH兵士たちが慌てて武器を向けてきたが、もはや手遅れだ。

「おせぇんだよ!」
トンネル内で高らかに吼えながら、動き出すもの全てにレーザーを撃った。

蹴り飛ばした門の残骸を拾い上げ、近接する兵士を片っ端から払った。とにかく恐怖を与えるべきだ。巨大で人間の手に負えないような恐ろしい怪物として、奴らを徹底的に叩きのめし、駆逐し、畏怖すべき存在としての印象を植え付ける。さらに今回はブレークダウンを解剖する前だから、サイバトロニアンの弱点も知らない。

トンネルの暗がりの奥で、MECH兵士たちが撤退するのが見えた。おそらくは無線機で(実に幼稚で厄介なおもちゃだ)命令を下されたのだろう。それでもスタースクリームは攻勢を緩めるどころか勢い付き、逃げ惑う兵士たちに銃撃を与え続けた。

「虫けらが!」
吐き捨て、奥へとどんどん駆けていった。

行き止まりで、1対の黄色いオプティックが──1「対」だ、1「個」じゃない──逆さまの状態でこちらを見つめていた。
「スクリーム?どうやって俺の居場所を?何が起きてんだ?」

声を聞いて安堵のため息を吐きかけたが、なんとか噛み殺し、緊迫した声を保った。
「時間がねぇ、まずはさっさとここから出るぞ、話はその後だ。」

ブレークダウンを縛り付ける拘束具を引っ張った。どうやら明かりが消える前につけられていたらしい。2人で必死に引き剥がそうとしていると、トンネルの入り口の方から何やら物音がした。

音を聞き、思わず目を見開いて小さくつぶやいた。
「嘘だろ、マジで来やがった……。」

「なんだって?誰が来たんだよ、オイ!」

ブレークダウンが不満げに声を上げるも、スタースクリームは聞こえてくる複数の足音に集中していた。しばらくすると4対の青いオプティックが暗いトンネルを照らし、やがて彩り豊かなチームプライムの面々の姿が見えた。

「やっちまった。」
翼を下げて、声に出した。