手錠ストーリーズ 異世界転生編 最終話(仮)

Last-modified: 2025-01-01 (水) 05:40:43

手錠ストーリーズ 最終話(仮)

FrontPage
手錠ストーリーズ 異世界転生編

陸「こんなくだらない戦いも・・・これで終わりだ! 行くぞ!」
ブレイドの横に構えた大剣を勢いよく踏み、そのまま一気に弾き飛ばされる陸。
炎に包まれ、暴れまわる触手の間を器用にすり抜けて満身創痍のテラシの眼前まで迫る。
テラシ「うそぉ!?」
マグ「ようし!」
思わずガッツポーズをとるマグと戦いの終わりを予見し、剣をしまって腕を組むブレイド。
テラシ「うわぁぁぁぁぁ!」
構えられた陸の右拳で顔面を粉砕されるテラシ・・・
テラシの足を固定していた触手が引きちぎれ、派手に吹き飛ぶ。
テラシ「ほがぁほがぁ・・・」
瀕死の状態でなんとか顔を上げると、眼前に陸が立っていた。
テラシ「うわぁぁぁぁぁ・・・」
左手でテラシの顔をわしづかみにする陸・・・
陸「痛いか?」
段階的に力が込められていく・・・
自身が瀕死であることも忘れてただ叫ぶテラシ・・・
テラシ「いてぇ!? いってぇー!!!!!」
陸「苦しいか?」
テラシ「苦し!!! 苦しぃー!!!!!」
陸「お前に与えられた痛みも。苦しも。こんなもんじゃないぞぉ!」
限界まで力を籠め、さらに明確な殺意の感情を流し込む。
テラシ「ぎゃあ!!! 死ぬ、死ぬ! しぬぅ!」
陸「この世界から、僕の目の前から・・・消えろ! 消え失せろぉぉぉ!」
痛みと苦しみで断末魔すら上げずにわずかな塵だけ残して消滅したテラシ・・・
その塵が陸の左腕の中に入り込む・・・
わずかながら穏やかな顔に戻り、戦意を失うように立ち尽くす陸の元にマグとブレイドが駆け寄ってくる。
マグ「やりましたなぁ! リク殿! これで死んでいった者たちも少しは・・・うう・・・」
泣き出すマグ。
陸「いえ・・・まだです・・・」
陸の左腕にごく小さなテラシの顔が現れる。
テラシ「ば・・・か・・・め・・・こ・・・のまま・・・お、おまえ・・・の・・・から・・・だ」
テラシの姿に驚愕するマグと剣を抜こうとするブレイド。
マグ「なんと! こやつ、あれだけの一撃を食らってもまだ! 己、我が炎にて今度こそ!」
陸「いえ・・・元はといえばすべては私が招いたこと・・・」
テラシの宿る左腕を自分の胸に当てる陸・・・
何かに気づくマグ。
陸「だから。今度こそ。己の責を果たす!」
テラシ「や・・・やめ」
マグ「な、なりませぬ! なりませぬぞ! そんなことはこのマグめが」
飛び出そうとするマグを制止するブレイド・・・
マグ「ぼ、坊ちゃま?」
マグがブレイドの顔を見ると必死にこらえている涙がほほを伝っているのが見える・・・
改めて陸の方を見るマグ。
マグ「リク殿・・・」
陸「ありがとうございました。では」
自分の胸に殺意の感情を打ち込む陸・・・
テラシ「ぎゃあ」
陸の左腕ごと消し飛ぶテラシ・・・
陸の体も胸元からだんだんと消え去っていく。
その光景をただ目に己の脳裏に焼き付けるブレイドとマグ・・・
・・・
完全に消え去った後、また意識を取り戻す陸。
最初に目に映ったのはいつか見た漆黒の闇の中・・・
陸「ここは・・・」
体を起こし、再び目にした光景を思い出していると、目の前に光に包まれた謎の存在が現れる。
うっすらと目に見えるのは人の姿をしており、両手を四角い枷のようなもので拘束されている・・・
存在「園森陸様・・・聞こえますか?」
陸「あなたは?」
存在「わたくしはこの世界を見守る存在、時の神クロノ・・・あなた様が目を開けるのを心待ちにしておりました」
クロノと名乗った存在から事のあらましを聞く陸・・・
テラシの手により、陸の仲間たちを含め、無数の命が失われた事にショックを受ける・・・
クロノ「世界を見守る存在として世界の滅亡を防いだ園森陸様に御礼がしたいのです。何か望みはりませんか?」
陸「あっ、いえ・・・世界の滅亡の危機は元は私が招いたこと・・・私にそのような資格など・・・」
クロノ「罪を犯したのは何もできなかったわたくしの方です。せめて・・・償いを」
陸「分かりました・・・」
クロノの心情を察し、必死に願いを考える陸・・・
ふと、何かが頭の中をよぎる。
陸「そういえばクロノ様は時の神・・・でしたよね?」
クロノ「はい」
陸「例えば・・・誰かを過去の世界に飛ばし、これから起こりうる未来を変えることもできるのですか?」
クロノ「可能ですが・・・?」
陸「では・・・」
陸から説明を受けるクロノ。
クロノ「なるほど」
陸「次こそは責を果たします。お願いします」
クロノ「いえ。願い出るべきはこちらです。園森陸様、世界を、世界に生きる全ての未来をお願いします」
祈るように手を合わせるクロノ・・・
陸の体が光に包まれ、消滅する・・・
・・・
再び目を開くと、またも記憶に焼き付いた光景が目に映る。
陸たちが住まうマンションの部屋の前・・・
陸と家族が最初に殺されたあの日、その直前であった。
陸「クロノ様・・・必ずご期待にお答えします・・・」
意識を集中し、これから自身の命を奪うダガーが飛んでくる方へと目を向ける。
あの日のように飛んでくる凶刃。
しかし、ユトピアにて命を懸けた戦いを制した陸に恐れることではなかった。
回転しながら飛んで来たダガーの刃を2本の指で掴む。
殺意を籠めた一撃を受け止められ、衝撃を受けるテラシ。
陸「これはお前に返そう」
同じようにテラシに向けてダガーを投げるける陸。
足に刺さるごくわずか手前の地面に突き刺さる。
思わず尻もちをついて腰を痛め、そのまま這いずるように逃げようとするテラシ。
それを追うように足を進める陸。
テラシ「ひょえー! ば、化け物ー! 殺されるー!」
命の危機に本気で叫ぶテラシの頭を掴む。
テラシ「いってぇぇぇ!!!!!」
陸「喜べ。お前は今この時、生まれ変わる」
陸の手に力が宿る。
テラシ「たたた助けてくれー!!!!! 俺は死にたくねぇぇぇー!!!!!」
陸「悪いな・・・私は悪党の命乞いを聞くほど立派な人間ではない」
テラシ「ぎょへぇぇぇ!!!!!」
脳内に大量の力が注ぎ込まれ、自らの顔面を地面にたたきつけるテラシ。
手を放し、勝ち誇るような穏やかな顔で立ちすくむ陸・・・
テラシの叫びを聞いた水麗達や近所の人々が出てきて陸とテラシの姿を見る。
水麗「あ、あなた? これは・・・」
紫苑「あっ! 父さま!」
葵「お帰りなさい!」
家族の生きている姿を見て息をのむ陸。
3人に近づいた後、水麗を抱きしめる。
水麗「きゃっ! 急になんなんですか?」
葵「あっ! 母さまずるい!」
水麗「え!? 私の方!?」
陸とテラシを交互に見て状況に混乱する紫苑たち・・・
・・・
その日の夜・・・
世直しテラシは陸への殺人未遂の現行犯として警察に逮捕された。
警官「ところで・・・あの刺さった刃物は・・・」
陸「いやぁ。掴んだまではよかったんですが、うっかり手を滑らせてしまって・・・」
警官「なるほど。うっかり手を滑らせたなら仕方ないですね。では、犯人逮捕のご協力、感謝いたします」
陸「お疲れさまでした・・・」
帰っていく警察官を見送る陸。
陸「ふぅ・・・」
ドアを開いて部屋にへと入り、中で待っていた家族の元へと向かう・・・
現実では仕事から帰ってきたばかりだが、異世界にいた陸にとっては本当に久しぶりの再会となった・・・
紫苑「父さま!」
葵「お帰りなさい」
水麗「お帰りなさい、お疲れさまでした」
陸「ただいま・・・」
家族の姿を見て今までことを思い出し、今にも泣き出しそうになってしまう陸・・・
陸「う・・・うぅ・・・」
水麗「あ、あなた!?」
陸の姿に戸惑う家族たち・・・
・・・
その日の夜・・・
明日から始まる夏休みに備え、今日の分の宿題を終わらせて早く寝る葵。
葵「父さま、母さま、おやすみなさい」
紫苑「おやすみなさい・・・」
陸・水麗「おやすみなさい」
未知の体験に遭遇して頭に疲れがたまった紫苑も連れて寝室へと向かう・・・
子どもたちが部屋から出て少し立った時、社長から貰った箱の事を思い出す。
陸「ああ、そうだ。これの中身を見せろと姉さんに言われて・・・」
水麗「義姉さまから・・・ですか?」
陸「うむ・・・」
早速、箱を開けてみる陸。
中に入っていたのは手錠であった・・・
陸「こ、これは・・・」
水麗「あ、あらぁ・・・」
一緒に入っていたメッセージカードを読んで呆れる陸。
陸「あの姉は・・・本当に・・・」
水麗「でも、せっかくだから早速使ってみましょう」
思わず水麗の方に顔を向ける陸。
陸「え?」
陸の方を見ながら同じ反応を返す水麗。
水麗「え?」
陸「え?」
水麗「使わないんですか・・・?」
陸「いや・・・その・・・」
改めて水麗のじっと顔を見る陸・・・
陸「使います・・・」
水麗「分かりました・・・」
そっと拳を握った両手を陸に差し出す水麗・・・
水麗「お願いします・・・」
手錠を手に取り、優しく水麗の両手を繋ぐ。
再びかけられた手錠の感覚に思いをはせる水麗・・・
陸「大丈夫?」
水麗「はい・・・」
両手の自由を奪われた妻を抱きしめる陸・・・
そんな2人の様子を少しだけ開いたドアから見ている葵と紫苑・・・
葵「あっ! 母さま! また! ずるい!」
紫苑「ね、姉さま! 声が・・・」
ドアが完全に開き、部屋の明かりが2人を指す・・・
・・・
一方、その頃・・・
テラシによって失われたはずの命が次々と元通りになっていく様子を見ているクロノ・・・
クロノ「陸様・・・成し遂げられたのですね・・・ありがとう・・・」
それと同時にある異変に気付く・・・
クロノ「いや・・・これは・・・」