手錠ストーリーズ 異世界転生編 14話

Last-modified: 2025-08-04 (月) 20:46:44

手錠ストーリーズ 異世界転生編 14話

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手錠ストーリーズ 異世界転生編

某国・・・
とある家にて天音の葬式が行われていた・・・
棺に入れられた変わり果てた天音の亡骸を見てただ嘆き悲しむ遺族・・・
その光景を見て、かける声が見つからない己の無力さに打ちひしがれる弔問客達・・・
弔問客1「陸君達だけじゃなくて天音ちゃんも殺されちゃうなんて・・・」
弔問客2「聞いた話によると殺された瞬間の動画が延々とテレビで流れたらしいぜ・・・本当に酷い世の中だぜ」
・・・
その悲しみに包まれた家を小高い丘から遠目に見ていた剛太・・・
社長を殺されてしまった責任を取って会社を辞めた後、陸と天音を手にかけた犯人をありとあらゆる手段を用いて追っていた・・・
自身にその資格がないとことを自覚しつつも、つい、最期の姿を見ようと訪れていたが、寸前で踏みとどまっていた。
ふと、立ち去ろうとするも、同じように家を虎視眈々と見つめている3人組の姿が目に入る。
いろいろな機材や武器を置いてある。
その内の2人によく見覚えがあった。
剛太「見つけたぞ・・・」
3人組の内、2人は世直しテラシと葵で、もう1人、見知らぬ子どもがいた。
剛太の方を見る3人。
世直しテラシ「ん? なんだお前? もしかして動画仲間か?」
剛太「まぁ、そんなところだ。で、早速で悪いんだが、お前の屍を撮らせてくれ」
世直しテラシこそが剛太がついに見つけた2人の親友の仇であった。
目にもとまらぬ速さでテラシを殴り倒す。
地面にたたきつけられ、恐怖を抱くテラシ。
さらに追撃するため、テラシへと近づく剛太。
しかし、もう1人の子どもが近くにあったダガーを手に取り、それを葵へと放り投げる。
その行動に反応してしまい、わずかに隙を見せてしまった剛太。
剛太へと飛び掛かり、受け取ったダガーを突き刺す葵。
振り払おうと目を向けると、葵の憎しみと悲しみで歪んだ顔が目に入る。
剛太「あお・・・い・・・ちゃん・・・」
ただ1人、生き残っていた親友の娘の凶行に剛太のありとあらゆる感情が上書きされていく。
テラシ「な、何をしている! こいつを殺せぇ! 俺を助けろぉ!」
テラシの叫びに反応して、さらに何度もダガーを突き刺す葵。
もう1人の子どもも近くにあった武器の中から弓矢をとり、構える。
そのまま、矢を放ち、剛太の胸元を貫く。
思わぬ攻撃に怯むも、せめてテラシだけでも道連れにと拳を構えてにじり寄る。
テラシ「ま、まだだぁ! まだ、まだぁ!」
残りの弓矢も放たれ、葵も連続で剛太の首元を切り刻む・・・
しかし、それでも動きは止まらず、テラシの顔面にこぶしが炸裂していた・・・
・・・
しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻した天音の家族達・・・
天音と陸の父が集まってくれた弔問客に御礼の言葉を述べようとした瞬間、子どもの泣き叫ぶ声が鳴り響く。
父「な、なんじゃ!?」
その後、次々と大人たちの悲鳴がこだまする。
戸惑う人々。
弔問客1「な、なに!? うっ!」
様子を見に行こうと、振り向いて立ち上がった瞬間、胸を火のついた矢で貫かれて倒れる弔問客。
それを見て駆け寄った弔問客も同じように矢で貫かれる。
生き残った人々が矢が飛んできた方を見ると、家のあちこちに火のついた矢が刺さり、先ほどのテラシ達3人が現れる。
武器を構える葵ともう1人の子ども、それを撮影しているテラシ。
テラシ「さぁ、今日は上級国民の人肉バーベキュー大会です・・・」
弔問客2「な、なんだてめぇらは!? うっ!」
詰め寄ろうとした弔問客も弓の一撃を受けて倒れる。
悲鳴を上げ、パニックを起こす人々をダガーを構えた葵が次々と仕留めていく・・・
2人が暴れている間も火の手もどんどん強くなる。
父「お、お主は・・・!」
愛する孫の変わり果てた姿を見て驚愕する父。
目の前で自身の孫の手によって家族を次々と殺され、ついに正気を失ってしまい、天音の棺に縋りつく。
弔問客3「い、いかん! 早く逃げるんだ!」
父「い、いやじゃ! 最後まで、最期まで一緒じゃ!」
弔問客3「ぐわ!」
弔問客を一突きで殺害し、そのまま、祖父に刃を向ける葵・・・
その光景を見て、先ほどまでの命の危機も忘れ、大興奮の渦に巻き込まれるテラシ・・・
・・・
椅子が並んだ乗り物の中・・・
まばらに様々な人々が座っているが、周囲には武器を持った多数の人間族の強盗団がにやけながら闊歩していた。
怯える人々に時折、武器を向けて反応を楽しむものもいた。
その内の1人がうなされながら眠っている陸の頭に銃口を向けて揺らしている。
強盗団1「おいおっさん、さっきからなにのんびり寝てやがる」
隣に座っていたファングが止めようとする。
ファング「おい、やめろよ!」
急に覚醒したように目を開く陸。
強盗団1「あっ?」
強烈なアッパーが強盗団の顎に炸裂する。
そのまま、天井まで吹き飛んだ後、床にたたきつけられ、倒れる。
驚愕するファング。
強盗団2「な、なんだ!?」
その光景を他の強盗団たちが慌てて吹っ飛んだ強盗団の元に向かっていく。
椅子から立った陸を取り囲んで武器を向ける強盗団たち。
強盗団2「てめぇ、何しやがった」
我に返ったファングが慌てて立ち上がった瞬間、目に留まらぬ速さの回し蹴りで強盗団たちを一蹴する陸。
強盗団2「ぎゃあ!?」
他の強盗団たちも陸に注目せざる得なくなる。
強盗団3「や、野郎!」
銃器を構え、陸に向けるも、ある者は飛び込んでて来た陸に倒され、ある者はかがんだファングに気づかず、そのまま足払いで転ばされ、ある者は他の人々からの背後からの一撃で次々と倒されていく。
さすがの騒ぎに別の部屋から巨大な銃を持った強盗団のボスらしきひげ面の人間族が出てくる。
ボス「な、な、な」
部下が壊滅状態になっている地獄絵図を見せつけられ、恐怖するボス。
陸に吹っ飛ばされた強盗団の1人が顔面に直撃し、床にたたきつけられる。
強盗団をどかし、なんとか上半身を起こしていたボス。
しかし、すでに完全に殺意に飲み込まれた表情の陸が眼前まで迫っていた。
恐怖で思わず叫びだす。
ボス「ひゃあああ!」
陸「お前がこいつらの親玉か?」
ボス「ち、違います! あ、いや、そうです! 正確には違うんですが!」
ボスの顔面に足を押し付ける陸。
ボス「ぎゅー!」
陸「どっちだ?」
陸の姿を見て恐れと同時に憧れの感情を抱く人々。
人々の視線が集中したその隙に母親に抱きしめられていた子どもを無理やり連れ去れる清楚なドレス姿の人間族。
そのまま、スカートをたくし上げ、素早く銃を構える。
ボス「えー! あー! いやーうっ!」
鳴り響く銃声と同時に凶弾に倒れされたボス。
今度は既に別の扉の前まで移動していた先ほど銃を撃ったドレス姿の人間族の方に一斉に視線を向ける。
怯える子どもを人質のように腕に抱えている。
ドレス姿の人間族「随分と口の軽いこと・・・やっぱりゴミはゴミね」
銃口に息を吹きかける。
ドレス姿の人間族「お仕事は失敗したみたいだけど。私の知ったことではないわ」
ファング「何者だ!」
ファングに銃を向けるドレス姿の人間族。
ドレス姿の人間族「ただの傭兵、といったとこかしら」
言い終わると同時にファングの顔に向けて発砲する。
ギリギリで避けて銃弾が顔をかすめる。
ドレス姿の人間族「じゃあ、私はさっさと脱出させてもらうわ。じゃあね」
扉を蹴って開き、悠々と外に出ようとするドレス姿の人間族・・・
泣き叫ぶ子供の声とすがる母の声に反応して、猛スピードで人間族へと走り出す陸。
ドレス姿の人間族「死にたいみたいね」
それに反応して銃を向けるも、時すでに遅く、銃を蹴り上げられ、天井に向けて発砲してしまう。
ドレス姿の人間族「なっ」
陸「1つだけ悪い知らせがある。今の僕は・・・」
そのままドレス姿の人間族の顔面を掴む。
陸「最高に機嫌が悪い!」
ドレス姿の人間族に七星心拳が炸裂する・・・
戦意を失い、銃を床に落とし、子どもを降ろすドレス姿の人間族。
母の元へと駆け寄り、抱きしめられる子どもを見て、表情を和らげた後、ドレス姿の人間族に手錠をかける・・・
・・・
一部始終が終わり、乗物から降りる陸とファングを始めした人々。
乗り物は中型の飛行船であった。
その後、手錠をかけられたままの真のボスだったドレス姿の人間族率いる強盗団が法務騎士団によって連行されていた・・・
法務騎士団員から事情を聴くと大量殺戮兵器に改造するための飛行船を奪取するために着陸直後に乗り込んできたとのこと。
そのことを聞いて戦慄するも、恐るべき計画を阻止できたことに安堵する陸とファング。
法務騎士団員「ご協力感謝いたします。後は我々にお任せください」
ファング「お疲れさまです」
陸「よろしくお願いします」
法務騎士団員「では。報酬をお待ちください」
お互いに敬礼し、法務騎士団を見送る陸とファング・・・
・・・
乗務員や他の乗客達の感謝の挨拶を聞いた後、本来の目的地である王都へと歩みを進める。
ファング「リクさん。今日も格好良かったですよ。大分怖かったけど・・・」
陸「ご、ごめん・・・」
怖がらせてしまったことを素直に謝罪する陸・・・
ファング「でも、一体どんな夢見てたんです? ずっとうなされてたんですけど」
陸「いや、よくは覚えてはいないはずなんだが・・・見たことのあるあの男・・・それに・・・」
ファング「?」
陸「いや。このことはもう少し落ち着いてから話そう。さぁ。行こうか」
ファング「はい」