落差
角川文庫
著者―松本清張

友人のチェロを聴いて感動してました。あまりにハイレベル……。
人間以上に人間らしい、といえば良いのでしょうか。まず主人公の島地がもう清々しいくらいの傍若無人っぷり。とにかくでかい顔をし続ける。権力と力を手にした者はすべからく暴君となる、と言いますがその典型とも言える人物です。最早あまりにも生々しくて腹も立たない。でもそれが、常人と一線を画した「悪役」といった人物ではなくて、まさに普通の人間なんですよね。とにかくどこを読んでも島地と彼に翻弄される人々の関係は変わらず、むしろエスカレートしていく。欲望の赴くまま生きる人間の恐ろしさ、そしてそれが必ずしも「盛者必衰」ではない世間の残忍さを端的に伝えるものであるのかもしれない。
読後のすっきりは感じられないが、教科書検定問題などやダム開発等、執筆当時の社会問題にも多く触れられている。私は教科書検定の話が講義で出た際に教授がこの本を取り上げたことが読むきっかけだったりする。