ロシアの閉鎖核燃料サイクルと第4世代原子炉

Last-modified: 2021-11-23 (火) 22:26:47

ソ連の高速炉

ソ連での高速増殖炉開発はBR-1、BR-2、BR-3、BR-5及びBR-5の拡張型であるBR-10と続き、BR-10で炭化物燃料と窒化物燃料を試験した。
実験炉BOR-60ののち原型炉BN-350がカザフスタンのアクタウに1964年から建設された。
原型炉BN-600がベロヤルスカヤ原発で1984年から建設。86年のチェルノブイリ原発事故を受けた中断期間を経て、2006年から建設が再開された。

ロシアの高速炉への移行

2020年から2025年にかけて高速中性子炉がロシアで増々重要になり、核燃料の大幅なリサイクルが見込まれている。高速炉は2030年までに約14GW、2050年までに34GWの容量になると予測されていた。
ロシアの新世代の核技術体系では熱核炉と高速炉のバランスが重視されるため、年間100トンの核廃棄物が地層処分へと送られることになる。
ナトリウム冷却炉であるBNシリーズ高速炉はMOX燃料の再処理とリサイクルを行い閉鎖核燃料サイクルを実現するロスアトムによる「Provy」計画の一端となる。ベロヤルスカヤ原発のBN-600原子炉は1980年から稼働。2020年にライセンスが与えられ、2025年までに商業運転を行う計画。同原発のBN-800は燃料やシステム設計のデモ機として2014年から稼働している。BN-1200は延期中。
当初はBREST-300鉛冷却高速炉による窒化物燃料製造と再処理計画とSVBR-100鉛ビスマス高速炉の2つが提案されていた。
・オブニンスク物理電気工学研究所の大型物理試験台

BN-600

BN-800

ナトリウム冷却型。
1983年に4基のBN-800原子炉を一括で建設することが計画され、1基をベロヤルスカヤ、3基を新規建設中の南ウラル原発(未完成)に設置する予定だった。86年のチェルノブイリ原発事故後に原子炉の新設は中止された。2000年代初頭に原子力業界などのイニシアチブによってベロヤルスカヤ原発4号機としてBN-800型炉を設置することが決まった。
 2014年2月BN-800型炉への燃料装荷が開始され、6月に運転が開始された。その後燃料の設計の近代化のため停止し、2015年7月末に再稼働した。2015年12月に電力網に接続された。
BN-800はより強力な商用炉となるBN-1200のプロトタイプとなる可能性があり、BN-1200はベロヤルスカヤ原発に新設される可能性がある。

2010年から2020年までの先進核技術に関する連邦ターゲットプログラム

ロスアトムは2つのオプションを提案し
・BREST型鉛冷却高速炉-1400億ルーブル
2014年までに第4世代原子炉と閉鎖核燃料サイクル技術の技術設計
2010年から2015年及び2020年までの新世代原子力エネルギー技術に関する連邦ターゲットプログラムを2010年1月に承認。高速炉に600億ルーブルを含む1100億ルーブル。
 BREST、SVBR(中止)、ナトリウム冷却炉に資金を割り当て。
高速炉の燃料製造の商業複合施設建設、閉鎖核燃料サイクル技術実証試験などが含まれていた。BREST-300原子炉は2026年に稼働予定。

MBIR 多目的高速中性子研究炉

1969年から国立原子炉科学研究所(RIAR)で稼働する高速実験炉BOR-60の後継炉と位置づけられる。2014年に承認され、2015年か9月から核イノベーション・クラスターの一部として建設された。プロジェクトの総費用は400~410億ルーブルと見積もられる。国際原子力機関IAEAが設置した「革新的原子炉及び燃料サイクル国際プロジェクト(INPRO)」の枠組みで開発され、MBIR国際研究センターの中核施設となる。ナトリウム、鉛、鉛ビスマスなどを冷却材に使用。ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料等を使用。2024年起動、2025年に100%出力。閉鎖核燃料サイクルの高速炉開発、新型核燃料の研究といった多目的な研究が行える。最初はナトリウムで冷却する予定。
 しかしプロジェクトは建設開始直後に建設中止に陥り、2020年11月ロスアトムはアトムエネルゴマシュ・テクノロジーからオルグエネルゴストロイに建設業者を変更して建設を再開した。2028年に試運転を予定する。

Provyプロジェクト

Provy(ブレークスルーの意)プロジェクトは高速炉を使用し、閉鎖核燃料サイクルに基づいた新世代原子力技術を開発するために、2020年までに原子力技術連邦ターゲットプログラムにおいて行われる。
プロジェクトの焦点には深刻な原子炉事故の排除、閉鎖核燃料サイクル、低放射性廃棄物、廃棄物の不拡散、高速炉の低コスト化、21世紀末までにロシアでの350GWの原子力発電容量を可能にすることがある。
 プロジェクトの一環としてBREST-OD-300実証炉(窒化ウラン・プルトニウム燃料/鉛冷却高速増殖炉)がトムスク州の閉鎖都市セヴェルスクに建設が開始された。(2021年6月)2027年の試運転を予定する。より高出力のBREST-1200への前段階と位置づけられている。

参照