~あらすじ~
これは,起こるかもしれない未来の可能性の一つ…
ソラたちはシャララボーグを浄化することに成功し、シャララを救うことができた。しかし,シャララにはアンダーグエナジーがまだ残っており,当のシャララが再び行方不明になってしまった。
時は経ち,アンダーグ帝国の皇帝"アンダーグ"がプリンセス・エルを誘拐し,とある目的のために"約束の地"へ向かった。
ソラ達もあとを追い,"約束の地"の入り口の扉の前まで来た。しかし,その扉を開けて"約束の地"までたどり着くためには,1人分の命に匹敵する量のアンダーグエナジーか,それを浄化してできるキラキラエナジーで作った橋が必要だということを知る。
「この"命の橋"をどうやって作ろうか…」
悩むソラたちの前に,アンダーグエナジーで覆われたシャララ隊長が現れる・・・
ソラ「やっと,"約束の地"の扉の前まで来れたのに、これではエルちゃんを助けに行けません…」
ましろ「でも,おばあちゃんの話によると,ここから"約束の地"に行くためには1人分の命のアンダーグエナジーかキラキラエナジーを使って,橋を作らなきゃいけないって…そんなの出来ないよ…」
あげは「もしかしたら,ミラーパッドに1人分の命の量のキラキラエナジーを集められれば、誰かの命を犠牲にしなくて済むかもしれないよ。」
ツバサ「そうですよ,まだ希望を捨ててはいけません!」
ソラ「でも,今から集めて間に合うのでしょうか?
それに、1人分のアンダーグエナジーを見つける必要があります。」
ましろ「そうだよね…」
4人に暗い雰囲気が漂う中,意を決してソラが口をひらいた。
ソラ「確かヨヨさんは,プリキュアは大量のキラキラエナジーを体内に宿していると言っていましたよね。いざとなれば、私が…」
ましろ「だめだよ!ソラちゃんの命で…誰かの命で橋を作らなきゃいけないなんて…そんなの嫌だよ…」
ツバサ「ソラさん,それは絶対ダメです!」
あげは「ソラちゃんにそんなことさせられるわけないでしょ!!」
覚悟を決めた表情で言うソラに対して、手で顔を覆い声を振るわせ訴えるましろ、ツバサとあげはも必死にソラに止めるよう促した。
しかし,この場にいる誰もが"いざとなれば自分が…"と考えていた。
ソラたちが扉の前でたたずんでいると,突然不穏な風が吹いた。そして,後ろからゆっくりと,とてつもなく邪悪なエネルギーが近づいてきた。
ツバサ「わぁ!?なんなんですか、この気配は…」
あげは「わからない、けど…」
ましろ「なんか、やばくない?」
ソラ「みなさん,来ます!」
ソラたちが振り向くと、そこにはアンダーグエナジーに包まれた人影があった。
ソラ達はいつでも変身できるようにミラージュペンを構え、その人影を見る。すると、
???「そこにいるのは,ソラたちか…」
微かに聞こえたその声は、4人にとってどこか聞き馴染みのある声だった。
ソラ「あなたは,シャララ隊長!?」
ソラが呼びかけた瞬間,人影を包んでいたアンダーグエナジーが徐々に弱くなっていき、そこには長い間行方不明だったシャララの姿があった。
ソラ「うっ…ヒック…探しましたよ…シャララ隊長…」
シャララ「心配かけたな、ソラ」
ソラは大粒の涙を流して泣き、シャララに抱きついた。シャララもそれに答えるように、お城でソラと再開した時のように優しく声をかけた。ましろとツバサも、シャララに再び会うことができ、瞳を指で拭いながら微笑んでいた。あげはも3人の嬉しそうな姿を見て,少し安心したような表情をした。
ソラたちはシャララとの束の間の再会を喜んだ。どうやら、シャララは自身のアンダーグエナジーが抑えきれずに暴走する危険性があり、ソラたちに黙って行方をくらませていたらしい。
ソラたちはシャララに"命の橋"の話をした。話を聞いたシャララは、少し考える素振りを見せた後、少し引き締まった表情になりながら重い口をひらいた。
シャララ「それならば,私のアンダーグエナジーを使え。」
4人「え…」
4人の表情が一瞬にして固まった。4人とも、まさかシャララからこんな提案が出るとは思わず、声が出なくなってしまった。
ソラ「なんで…そんなこと出来るわけないじゃないですか!!隊長の…シャララ隊長の命を使えだなんて…」
ましろ「そんなの、できないですよ!」
ツバサ「まだ他に方法があるかもしれません!」
あげは「そうだ、シャララ隊長のアンダーグエナジーを浄化して"命の橋"を作って、身体の足りない部分をキラキラエナジーで補うのはどう!?」
シャララ「いや、今の私にはプリキュアの浄化技に耐えきれないだろう。それに、私の身体はもう時期力尽きてしまうだろう。恐らく、持ってあと数日…」
シャララは立ち上がって言った。
シャララ「時間がない。私を浄化して、そのキラキラエナジーで"命の橋"を作るんだ。」
ソラ「そんなの絶対にイヤです!!私は反対です。目的のためにシャララ隊長の命を使うだなんて…いくら隊長のお願いでも、そんなの絶対出来ません!」
シャララ「そうか、出来ればソラに私を浄化してほしかったが…あげは、君が代わりにやってくれないか?」
あげは「えっ…」
あげはは少し驚いた表情になったが、すぐに答えた。
あげは「わかりました。でも、他に方法がないか試してからにしませんか?やれるだけのことをやってからでないと、みんな後悔すると思うから…」
シャララ「そうか,ではその時になったら頼む。私は扉の様子を見てくるから、その間に方法を考えてくれ。」
そう言うと、シャララは扉の方へ歩きだそうとした。
その時、突如としてシャララの身体から大量のアンダーグエナジーが溢れ出した。シャララ身体を抑え、悲痛な叫び声をあげながらしゃがみ込んだ。
ソラ「シャララ隊長!!」
ソラはすぐさまシャララの元に駆け寄ったが、シャララは腰に持っていた剣をソラに向けて振りかざした。
ソラ「きゃあ!!」
ましろ「ソラちゃん!危ない!!」
ましろがソラを押し倒してなんとか剣の切先を避けることができた。すぐにツバサとあげはも駆け寄ってきたところで、シャララが剣を構えながら言った。
シャララ「全く、もう少しで切れそうだったのに…」
ソラ「シャララ隊長…まさか、アンダーグエナジーが…」
シャララ「ふふ、その通り。残念ながらこの身体は乗っ取らせてもらった。」
シャララはアンダーグエナジーに意識を取り込まれてしまい、"アンダーグシャララ"になってしまった。
ソラは呆然と立ち尽くしてしまい、まるでシャララボーグと初めて対峙した時のようにショックを受けた。しかし、すぐにましろがソラに近づき、肩を揺らした。
ましろ「ソラちゃん、しっかりして!」
ソラ「はっ!ましろさん…またシャララ隊長が…私は…どうしたら…」
今にも泣き出しそうな表情のソラに、ましろは強い口調で言った。
ましろ「大丈夫だよ、ソラちゃん!前にシャララ隊長がランボーグにされた時を思い出して。あの時、みんなでシャララ隊長を救う方法を諦めずに考えて、救うことができたよね!今だって、もしかしたらシャララ隊長をなんとか出来る方法があるかもしれないよ!
だから、諦めちゃダメ!!」
ソラ「ましろさん…」
ツバサ「そうですよ!僕たちもついていますよ。」
あげは「またシャララ隊長を救っちゃお!ソラちゃん!」
4人はミラージュペンを握りしめ、シャララの方を向いた。しかし、ソラだけは何か覚悟を決めた表情をした。
あげは「どうする?バラバラに動いてもやられるから、4人で連携して戦わない?まずは私が…」
ソラ「いえ、ここは私1人で行かせてください。」
3人「えっ!?」
ましろ「ソラちゃん、どうして!?」
ツバサ「そうですよ!ここはあげはさんの言う通り、4人で連携して…」
ソラ「私が、私がやらなきゃいけないんです。シャララ隊長は、私が浄化します。隊長も私に浄化してほしいって、それで"命の橋"を作ってほしいって…」
3人は驚いた。まさかソラが自らシャララを浄化すると言うと思わず、ましろは慌てて口をひらいた。
ましろ「だからって…本当に助けなくて良いの!?
シャララ隊長の命を使うだよ!?それに、ソラちゃん1人で抱え込まなくても…」
ソラはましろの言葉を背に聞きながら、歯を食い縛り、拳を握りしめた。
4人に少しの沈黙が流れた後、あげはが口を開いた。
あげは「ソラちゃんは、もう覚悟出来てるんだね。わかった。そのかわり、少しでもヤバいと思ったら、すぐに私たちも戦うからね。」
ソラ「ありがとうございます。では、行ってきます。」
ソラはそう言うと、剣構えるシャララの前に立った。
シャララ「はぁ、待ちくたびれたぞ。」
ソラ「シャララ隊長、今あなたを浄化しますからね。ヒーローの出番です!!」
ソラはスカイミラージュにスカイトーンを差し込み、キュアスカイに変身した。
シャララ「一人でかかってくるか!ならば、この戦いはお前にとって最後の戦いになるだろう!!お前ごとき稽古をつけるくらいの力で十分だろう。」
スカイ「それ以上、シャララ隊長の声で好き勝手言うな!!」
スカイはシャララに接近し、振りかざされた剣を避けてシャララを攻撃した。
ソラ「やはりアンダーグエナジーに操られていても、シャララ隊長の太刀筋はすごい。でも、当たらなければタダで済む!」
続いて、シャララが上に大きく振りかざした。スカイは瞬時にシャララの懐に入り、攻撃を繰り出した。
スカイ「懐に入ってしまえば、剣は当たらない!」
シャララ「がはっ!やるな。」
スカイはシャララの剣を避けては攻撃、避けては攻撃をひたすら繰り返した。シャララは負けじと剣を振るスピードを上げるが、スカイもそれに合わせてどんどんかわしていく。
ましろ「すごい…」
スカイのあまりにも凄まじい攻撃に、ましろたちは呆気に取られていた。
そして、ついにシャララは剣を地面に刺し、膝をついた。すぐに立ちあがるが、息が上がり、身体が怯んで動けなくなっている。
スカイ「"シャララ隊長…"」
スカイの脳裏に一瞬よぎったが、すかさず左足に力を入れ、拳を握りしめた。
ソラ「ヒーローガール、スカイパーンチ!!」
スカイは勢いよくシャララのもとへ跳んでいき、右手の拳を振りかざそうとした。
その瞬間、シャララはふと笑みを浮かべた。まるで、"ありがとう"と言わんばかりに…
それを見たスカイは、今までのシャララの行動が全て演技だったことに気づいた。
"この戦いはお前にとって最後の戦いになるだろう"
"お前ごとき稽古をつけるくらいの力で十分だろう"
シャララは最初から言っていた。この戦いはソラとシャララの最後の戦いになると、最後の稽古であると。そして、ソラに自身を浄化させるための口実だったことに。
スカイは拳を振り上げた勢いそのままに、シャララの身体を貫くようなスカイパンチを当てた。
スカイ「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
スカイは下を向きながら叫び声を上げた。ソラが少しでも辛い思いをしないで済むように、シャララの優しさに気づかずに浄化してしまったことを悔いるように叫んだ。
そんなスカイの悲しみを優しく包み込むように、シャララはスカイの顔を胸に引き寄せ、頭を撫でた。
シャララ「よく立ち止まらなかった、ソラ…」
スカイ「隊長…」
シャララの身体はみるみる消えていく。身体のほとんどがアンダーグエナジーで支えられていたため、浄化されて肉体が保てない状態になっていく。
スカイはシャララの顔を見上げた。スカイは今にも泣き出しそうな表情をしている。
シャララ「ソラ、辛い役目を背負わせてすまない…」
スカイ「いいんです、隊長…」
シャララ「さあ行くんだ、ソラ…ヒーローの…出番…だ…」
シャララは少し微笑みながら、最後の力を振り絞るように言葉を言い残した。そして、シャララの身体は完全に浄化され、キラキラエナジーの球体だけがそこに残った。
ソラ「シャララ…隊長…」
キュアスカイの変身が解け、ソラは膝をついた。そこにましろ達が駆け寄ってきた。
ましろ「ソラちゃん、ごめんね…ごめんね…」
ソラ「いいんです、ましろさん…」
ツバサ「ソラさん…」
あげは「ソラちゃん、本当にごめんね…一人で背負わせて…」
ソラ「大丈夫です、ツバサくん、あげはさん…
さあ、行きましょう!早くエルちゃんを助けに行かないと…」
ソラは少し笑みを浮かべながら3人に話した。そして、立ち上がり、足早に"約束の地"の扉の方に向かおうとした。
ましろ「待って、ソラちゃん!ソラちゃん、もし辛かったり、悲しかったら、泣いてもいいんだよ。私は…悲しいよ…」
ましろは泣きながらソラの手を掴み、そのまま後ろからそっと抱きしめた。ソラはましろの言葉を聞いて、張り詰めていた糸が切れた。そして、大粒の涙を流しながら声を出して泣いた。ツバサとあげはも2人につられて号泣した。
4人が泣き止むと、シャララのキラキラエナジーの球体が"約束の地"の扉へ向かい、そのまま吸い込まれていった。すると、重厚な扉がゆっくり開き、虹色の橋が扉の向こう側へ架けられた。
あげは「これが、"命の橋"」
ツバサ「とても、綺麗です。」
ましろ「すごい…」
ソラ「・・・みなさん、行きましょう。」
4人は"命の橋"に足を踏み入れ、"約束の地"へ歩き出した。扉の中は異空間が広がり、橋の下は暗く深い闇の世界への入り口のようになっていた。ここでは"命の橋"が唯一の道標だ。
ましろ「橋の下、全然底が見えないよ…」
あげは「落ちたらヤバそうだね。」
ツバサ「この深さ、僕でも助けられるかどうか…もしこの橋が消えたりしたら…」
ソラ「大丈夫ですよ。この橋はシャララ隊長が作ってくれたんです。私たちがエルちゃんを助けて帰ってくるまで、絶対に壊れたり、消えたりしません。」
ましろ「そうだね、シャララ隊長が支えてくれているんだもん。きっと大丈夫だよ!」
ツバサ「そうですね、僕たちでプリンセスを絶対助け出しましょう!」
あげは「よーし!みんな、アゲてくよー!」
4人「アゲー!!」
4人は再び歩き出した。宿敵アンダーグを倒しに、エルちゃんを助けに。
ソラは歩きながら、ふと橋から心地よく温かい雰囲気を感じ、シャララと過ごした時間を振り返った。最初に助けてもらった背中、再会した時の優しい声、幸運のジュエルを嬉しそうに見せてくれたあの表情、敵を前にヒーローを貫いた姿、勇気づけられた手紙と言葉、ランボーグからシャララを助けだせた瞬間、一つ一つがシャララとのかけがえのない思い出だ。
"立ち止まるなヒーローガール、また会おう。"
"さあ行くんだ,ソラ。ヒーローの出番だ。"
ソラはシャララの言葉を思い出し、一歩づつ、決して立ち止まることのないように、"シャララの命の橋"を進んだ。
~おわり~