「ねえ,メグ。ちょっと公園寄っていかない?」
2人で学校から帰る途中,マヤちゃんから声がかかる。
「うん,少し寄り道しよう」
特に深く考えずに答える。寄り道位珍しくはないから。
でもこの日のマヤちゃんはどこかソワソワしてる気がしてた。
見慣れた公園の中,2人でベンチに座るとマヤちゃんは鞄から贈り物用の箱を取り出して
「これ,シャロから貰ったんだけどさ」
箱を開けると現れたのは2つの陶器製のネックレス。
青色リボンと赤色のリボンの形をしていた。
「かわいい~。でもどうしてシャロさんが?」
すると少し目を逸らしてマヤちゃんが言う。
「シャロに可愛いペアの小物欲しいなって何気なく言っちゃってさ」
「そうなんだ~シャロさん太っ腹」
「いや,フルールでバイトさせられたけどね」
とマヤちゃん。
シャロさんのお父さんは陶器職人でこういった小物も最近は特注限定で作っているんだとか。
「ありがとうマヤちゃん,シャロさんにもお礼言わないとね」
「え? まあ……」
私は赤色の方を受け取る。
ただ陶器製なので雑には扱えない,何かケースみたいなものに入れようかな?
でもそれだとネックレスの意味がないよね。
「えっと,そのネックレスなんだけどさ」
「なあにマヤちゃん?」
「2人でいる時だけつけてくれたら嬉しいかなとか思ったり」
そう言うマヤちゃんに私は察してこう言う。
「うん,デートの時にしていくね」
マヤちゃんの顔が赤くなる,このわかりやすさも私にとっては好きな所。
「いやあのさ,デートというか,2人だけの歩みというか道のりというか」
私は少し笑ってしまう。勿論マヤちゃんのかわいさで。
「笑うなよー。真面目に言ってるんだから」
「うん,ゴメンねマヤちゃん」
とはいえ急にこんなプレゼント、最近何かあったかな? と思いつつ。
そういえば最近私に気を使ってくれてる感じがしてた。
でも私は気を使わせずむしろもっともっと距離縮めたい位なんだけどな。
でもマヤちゃんがくれた宝物だもん。
大切にするから,絶対。
「今つけてみようかな,どうマヤちゃん?」
「うん、つけてみよう」
ふたり揃って同じタイミングでネックレスを付ける。
「似合ってるかな?」
と私は言う。マヤちゃんはじっと私を見て
「似合ってると思う……あの、気に入ってくれた?」
「勿論だよマヤちゃん,お揃いだもん!」
と私は返す。
昔、小さい頃は宝物と称した壊れた玩具の剣とかよくわからないものを貰ってたな。
そんなことを思い出してちょっとにやけてしまった。
「お二人とも,盛り上がっている所ごめんなさいね」
と聞き慣れた声,いつの間にかシャロさんが私達の前に立っていた。
そうだ、シャロさんにもお礼言わないとね。
「シャロさん、ありがとう素敵なネックレス」
「いいのよ、良かったわねマヤちゃん。気に入って貰えたみたいよ」
なぜかマヤちゃんはそっぽを向いている、少し俯き加減で。
「マヤちゃんね、メグちゃんにあげたイヤーカフのことを頻りに聞いてきて」
「あっ、シャロそれはちょっと!」
マヤちゃんが慌てて会話を遮る、なる程……なんとなくわかっちゃった。
「いいわよね、やきもちって。青春よ」
「いや、待ってお願いシャロ先輩。やめてってば!」
シャロさんが意地悪げに言うと、マヤちゃんはシャロさんを軽くポカポカ叩いて止めようとしてる。
「リボンのデザインもマヤちゃんの案よ、メグちゃんリボン好きだからって」
「黙っててって言ったろー!」
「ダメよ、メグちゃんにその気持ち含めてプレゼントしなさい!」
なんだか私も恥ずかしくなってきちゃった。
でもマヤちゃんのやきもちは素直に嬉しい。
「お返し何がいいかな~」
私はそう言ってマヤちゃんの考えを探る。
フルールかブラバで食事とかがいいかな?
「あのさ,今度またその……」
マヤちゃんが、モジモジマヤちゃんモードになって私に話かける。
「なあに?」
「映画、見に行かない? 面白そうな映画でさ」
意外な言葉,勿論構わないけど私からすればお返しにはならないよ。
「どんな映画なの?」
とりあえず聞いてみる。探検ものかな?
「勇者に憧れた女の子が、天使の女の子と出逢って守りながら成長する話」
「へ~面白そうだね」
「そう? 青山さん原作なんだよね」
なんとここでも青山さん、売れっ子作家だよね。
「でもそれじゃお返しにならないから、何かほかに欲しいものとかないかな?」
そう言うと真面目な顔をして
「もう貰ったよ、とっくの昔に」
「マヤちゃん?」
どういう意味なんだろう、でもそれじゃ私の気持ちが収まらない。
「私、本当に嬉しいよ! いつかマヤちゃんにちゃんと……」
そう言うとマヤちゃんはちょっと涙ぐんでいることに気がついた。
「隣に居てくれるだけで十分だって」
私はようやく気づいた、最近ちょっと気を使っている感じがしてた理由。
高校生になって、新しい友達も出来てしっかりしなきゃ! って気持ちばかり先走ってたのかもしれない。
一緒にペース合わせて歩こうって約束したのにね。
勿論私はマヤちゃんを置いて行ってるつもりなど全くない。
でもマヤちゃんがどう捉えているか──
置いていかれる立場の寂しさ、想像しただけでとても苦しく感じる。
私はマヤちゃんの気持ちにもっと向かい合わなきゃいけない。
「不安にさせちゃってた?」
マヤちゃんは黙ったままだった。
私はマヤちゃんの頬にそっと唇を当てた。
「メグ!?」
マヤちゃんは驚いて、そして私に続けてこう言う。
「メグに気を使わせてばかりだよね私」
私は首を軽く振って否定する。
気を使っているのはマヤちゃんだから。
「嫌だった?」
私は敢えて尋ねる、マヤちゃんにもっと素直になって欲しい。
そして私もマヤちゃんに私の気持ち全部を見せたい。
私達はこれからもずっと一緒。
そうだよね? マヤちゃん。
「嬉しいに決まってるじゃん!」
その言葉を聞いた私はマヤちゃんの手を握る。
後は心を通わせるだけだと思ったから。
「えっとあの……私バイトだから失礼するわね!」
シャロさんのこと忘れてた,ごめんなさいシャロさん。
「またねー、シャロ!」
元気に言うマヤちゃん。
「今日はどうもありがとうシャロさん」
考えてみればシャロさんのおかげだもんね。
「メグ,私達も帰ろうか」
「そうだね~マヤちゃん」
私達は帰路に就く。
勿論歩くスピードは同じペースで,ちゃんと手も握って。
これからも沢山2人の思い出積み重ね合えるといいな。