携帯電獣テレファング スピード・バージョン/パワー・バージョン

Last-modified: 2024-04-20 (土) 00:52:53
ジャンルRPG
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対応機種ゲームボーイカラー(シリーズ共通)
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発売元スマイルソフト
開発元ナツメ
発売日2000年11月3日
定価4,700円
プレイ人数1人~2人
攻略本ある
判定なし
ポイント携帯電話という特色を活かしたポケモンフォロワー

概要

小型・高性能化、翌年(2001年)の3G(第3世代携帯電話)サービス開始によるインターネット全体の高速化など、若年層でも関心を寄せるようになった携帯電話をモチーフに、

1996年に大ヒットした『[ポケットモンスターシリーズ]]』を参考にしたポケモンフォロワーの一つ。

現・イマジニアのロケットカンパニー社に吸収合併されたスマイルソフト社が発売し、開発は『[[メダロットシリーズ』で有名なナツメ社が担当した。

キャラクター/モンスターデザインは後に小説『吸血鬼ハンターD』の漫画版の作画を担当した鷹木骰子氏。


あらすじ

西暦2020年、携帯電話を使って「電獣界」へ行き、「電獣」と友達になり、電話番号を教えてもらう事が流行った。

主人公シゲキはそんな「電獣ブーム」とは関係ない生活を送っていたが、一匹の電獣の登場によって電獣界行きを決意する。

電獣界で新しい仲間を作るために。

(公式サイトより)

電獣界はサナエバグループが発見したアクセス方法で人間界と繋がり、

行き来を自由とする携帯電話「Dショット」が伝わったことで人間界と電獣界双方で大ヒット。

力至上主義だった電獣界ではバトルに勝つと相手の番号を教えて貰えるという力の証明に使われているのであった。

一方の人間界に住んでいる少年,シゲキは携帯電話を持っていない子供であったが,

大樹の根本に落ちていたDショットという特別な携帯を拾ってしまったことで電獣界のアクセス権を得て冒険することになる。

特徴

  • 携帯電話周りのシステム
  • 携帯電話がゲームの重要なキーパーツとなっており、モンスターとの通話,戦闘呼び出し,セーブ機能などが集約されている。
    • モンスターとの通話ではシナリオの感想や進化のヒントが教えて貰える他,友好度が上がる。
  • 連れ歩くモンスター一体と電話で呼び出すモンスターを選び、最大3体同士のバトルを行うRPG方式。
    • 電波の本数によって呼び出し可能数が変わる。三本立っていると2匹、二本立っている場所では1匹まで呼べる。
    • 場にいるモンスターが全滅すると戦闘に敗北となる。
      • 電話で呼び出すモンスターが到着する前に、連れ歩いているモンスターがやられても全滅となる。
  • 連れ歩きモンスターは、連れ歩いているモンスターのHPが満タンであれば入れ替えが可能。
  • モンスターの加入は電話番号を教えてもらうことで成立する。
    • 戦闘終了後、一定確率で電話番号を教えてもらうことができる。最大240枠。
      • 仲間になっていないモンスターほど教えてもらえる確率が高くなっている。
    • モンスターを使役している人間、通称Tファンガー"}のモンスターでも電話番号を教えてもらえる。
      • 所有権が変わるのではなく、友達となった相手が増えるだけなので問題はないのだろう。
  • モンスターを呼び出す際、戦闘場所とモンスターの生息地域との距離で,到着までの時間が変わる}。
    • 地元のモンスターならターンを経ずに戦闘に参加するが、生息域が離れていると戦闘参加までに1ターンから5ターンまでの時間がかかる。
  • 戦闘システムはATBとなっており、スピードの早いモンスターほど行動順が回って来やすいシステム。
    • メダロットシリーズと同じ仕組みであり、そちらも触っている人ならわかりやすいだろう。
  • その他システム
  • モンスターの総数は174。その全てを仲間にすることが出来る上、進化パターンも多彩。
    • 規定レベルによる進化、改造証を所持している状態でアイテムを付与することで出来る改造進化、実験証を所持している状態でDNAを付与することで出来る実験進化が存在する。
  • バージョンによる違い
    • 登場するモンスター、シナリオの順番、それに伴うギミックと細部は異なるが、大筋の話は同じなので登場するモンスターの好みで選ぶことになるだろう。
  • リアルタイム進行
    • 時計の自動調整機能があるわけではないが、ゲーム内の1秒と現実の1秒が同じ長さで経過する。
  • ダッシュで草刈りが可能
    • エンカウント率の高い草を刈ることが出来る。時々その場使い切りのアイテムも出てくる。
      • ダッシュ中はエンカウント率が上がるため痛し痒し。
  • すぐ回復するHP
    • 回復アイテムがないためか、呼び出したモンスターのHPは戦闘終了後に全回復するようになっている。
      • 連れ歩きモンスターは一定時間で回復する他、その場でBボタンを押しっぱなしにすることで素早く回復する。

評価点

システム面

  • フィールド画面でその場セーブが出来る。
    • これにより直前でセーブし、ボスが強かったら引き返すという作戦の練り直しが可能。
  • 仲間を増やす意義が存在する。
    • 戦闘地域と同じ地域に住んでいるモンスターほどすぐに駆けつけてくれるという都合で、

      地元のモンスターとどんどん友達になって交流することが戦闘の有利に繋がる。
  • 着メロの数が豊富
    • モンスター別に着メロを設定することが出来る。
    • プリセットが70曲、自作曲登録が8枠あり、作曲は最大240音まで入力出来る大ボリューム。
      • モンスターの種族毎に設定出来る着メロは決まっているものの、全ての仲間のモンスターに自由に割り振れる。
  • モンスターとの会話
    • 着信をに応対するとシナリオ中のヒントや設定の解説、またモンスターの進化条件について教えてくれることがある。
      • 電話に出ると友好度が上がり、性格によるデメリットの発生確率が下がる。
  • エンカウント抑制が可能
    • 携帯が着信している間、エンカウントは発生しない。マップが切り替わるか着信が切れるまで有効。
  • 戦闘以外でレベル上げが可能なシステム
    • 進化出来ない改造アイテムを付与することで、経験値に変換して加算される。
      • 経験値が貰えるアイテムは電獣により固定。

        また最大999までで自動的にレベルは上がらず、一回戦闘勝利を挟むことでレベル上がる。

シナリオ面

  • 王道のシナリオ
    • シナリオの最終的な悪役となるサナエバグループが人間の作ったシステムを用いて支配しようと暗躍するストーリーとして悪役然としており、

      主人公が勧善懲悪のために世界を駆け巡るという冒険譚として成立している。
  • イベント一枚絵が存在する
    • 特定のゲームのフォロワー作品では存在しない事もあるカットだが、この作品には何カットも存在し作品の雰囲気を盛り立てている。
  • エンディング後、平和な世界を歩ける。
    • エンディングを見たらそれで終わりのゲームが多い中、エンディング後感謝されながら世界を遊べるのは評価点。
      • 隠しボスやイベントなども追加されている。

戦闘面

  • 強力な状態異常
    • 回復施設、回復アイテムがない事で状態異常の優位性が高い。
      • 1回休みのひるみ、防御が半分以上下がるしもやけ、スピードが落ちる麻痺、攻撃力の下がる火傷など、付与できると有利に戦闘が運べる。
      • なお別の状態異常を打つと相互上書き。
  • 何度か行動回数が回ってくると異常状態が自動回復するシステムになっている。
    • 回復時間は行動回数に依存するため、素早いモンスターほど異常状態にかかってもすぐに復帰できる。
  • 溜め技の電魔攻撃。
    • ほとんどのモンスターが持っている4番目の攻撃技。
      • 一定ターンDPをチャージし、溜まったターンに大ダメージを与える。電攻・防で計算する。
  • バリエーション豊富な技
    • 攻撃技の他、バフ、回復、溜め技などいくつもバリエーションが存在する。

その他

  • BGMは一級品
    • ナツメに在籍していた水谷郁、渡辺哲存、水谷寿子の三名が作曲を行っている。

      ゲームボーイレベルではあるが雰囲気もよく聴きごたえがある。

問題点

システム面

  • 図鑑を完成させ辛い
    • 最大で3回進化するモンスターもいるが,進化の途上で分岐進化するルートがある
      これに伴い図鑑のコンプリートを目指そうとすると、最小でも同じモンスターが3匹必要で,交換が必須。
      • よりにもよって最終盤に仲間になる一匹限定モンスターも同じ成長ルートを取る。
  • 消えてしまう電話番号
    • 全滅した際、連れ歩きモンスター以外の,番号がランダムで一つ消滅する}。
      • 電獣界は力至上主義であり、自分より強い相手でなければ相手をしないという観念で生きているのだが、

        それにしても1回の全滅でランダムに消えてしまうのは厳しい。
  • よりにもよって通信対戦でも負けると番号がランダムで一つ消える。
    • せっかく育てたモンスターが、ということにも成りかねない。
  • 何故か通信交換でも出した番号は消えてしまう。
  • パワーバージョンとスピードバージョンの格差
    • 最初に仲間になるモンスターは、スピードバージョンではスピードが高く攻撃力が低い。

      片やパワーバージョンでは攻撃力が高く、スピードが低い。
      • ゲームのシステム的に鈍足のモンスターは攻撃の的になりやすく、パワーバージョンは不利。
    • しかもライバルのモンスターと相性不利でもある。どうして。
  • キャラデザが全体的にダサい。
    • ライバルキャラ、友人キャラのデザインが2000年ということを考えても垢抜けておらずダサい。
  • モンスターデザインは全体的にクリーチャー色が強く、可愛さや格好良さといった要素が欠如している。
    • 作品の看板電獣をはじめ何匹かは格好良くデザインされているので、流石に全部がダメというわけではないが。
  • 基本的なアイテムがない。
    • 進化用アイテム以外、即ち回復アイテムや技を覚えさせられる類のアイテムが存在しない。

      なので戦闘中に体力が減ってもアイテムによる回復は出来ず、異常状態は自動回復を待つしかない。
    • エンカ抑制や移動用アイテムも無い。
  • アイテムが一度に一つずつしか買えない。
    • ショップにも経験値・進化用アイテムしか並んでおらず纏めて買う事を考慮にいれていないのだろうが、

      レベルを上げるためのまとめ買いを行うことが出来ずややストレス。
  • ファストトラベルがない
    • 『ゼルダの伝説シリーズ』の2D系列作品のようなマップになっているのだが、ファストトラベル機能がない。
      • 大樹同士で繋がりがあり行き来を可能とするが、特定のエリア同士しか繋いでおらず行き先は選べない。
      • シナリオ後半でマップを長距離行き来する時にとても不便。おまけに道の繋がりもわかりづらい。
  • 5分に1回の鬼電
    • モンスターからの電話はおよそ5分に1回かかってくる。
    • エンカウント抑制機能はあるが、都度ポップアップされるのは正直邪魔。
      • 着信回数が電話番号の数に比例せず、また電話に出ずとも特にデメリットがないのが幸いか。
  • 仲間をどんどん入れ替えざるをえないシステム。
    • 場にモンスターがいなくなると全滅、棲み家の遠いモンスターは中々駆けつけてくれない。

      この2つを解決するためには、連れ歩き以外は乗り換えて行く方が良く、結果的に育成するメリットが弱い。
      • 後半は野生の電獣ですら強いので、地元のモンスターを雇用してレベル上げという作業が一回挟まる。
  • 全部マイナス補正な性格の設定
    • 6種類の性格がモンスターに割り振られているが、そのうち5種類はマイナス補正。
      • のんびり、あわてもの:戦闘の呼び出しで到着が遅れることがある

        おこりんぼ:勝手に攻撃する

        わがまま:勝手に攻撃をサボる

        おくびょう:HPが減ると勝手に逃げ出す

        りちぎ:何も起きない
  • これに加え、おくびょう以外は発生確率の上がる「ちょー」がついて、全11パターンに分かれている。
    • なお「ちょーりちぎ」というのもあるが、何も起きないことに変わりはない。
  • 個体ごとにランダムに設定されているが、シナリオ上重要なモンスターの性格は固定されていることがある。
  • 電話に出る事で友好度ポイントこと「FD」が上がり問題行動の発生確率が下がるのだが、性格そのものにプラスになる仕組みも用意してほしかった。
    • しかもFDが上がったとて発生率は然程下がっていない。

シナリオ面

  • シナリオの矛盾点
    • 電話がある割に主人公へのお使いが多い。
      • 「とあるモンスターを探してほしい」「喧嘩の仲裁をしてほしい」など、「その程度なら電話でなんとかなるのでは?」という頼み事も主人公にお願いされ、その都度歩いていくことになる。

        便利な道具を導入したことで起きるシナリオの狭まり方だが、工夫の余地はあったのではないだろうか。
  • 「争っている競合会社双方の電波を遮断して、現地のモンスターに平穏を」という話なのに,主人公はモンスターを呼び出せる。
    シナリオ上使えないと不便になってしまうのはわかるが、細かいところでケチがつく。
  • 人間の友人の出番が少ない。
    • 一緒に電獣界に落っこちる友人はナビゲーター役として最後まで伴うが、幼馴染でTファンガーの師匠はシナリオでほんの数回しか登場しない。
      • しかもシナリオの都合のために出てくるような扱いであまり存在理由がない。
  • ライバルは友人ではなく、電獣界で初対面となる人間。
    • 話が進むといい人だとわかるのだが、プロローグには出てこないので誰だよと思わざるをえない。
  • 存在理由の弱い悪役
    • シナリオの前半には電獣界の支配を目論む「カクザとう」という集団が現れる。

      彼ら、彼女ら曰く、選挙で政府の上層に就任しようと目論んでいるのだが、

      その手段が正々堂々すぎる上、未遂のままメインストーリーから退場してしまうためインパクトが弱い。
      • また現地のモンスターに成す危害のレベルが低く、若干迷惑に思われている程度なのも悪役適正が低い。
  • 本当のボスであるサナエバグループとの関係性もないため、何のために悪役として登場したのかが謎。
    • サナエバグループが政界進出のために作った一グループという名目でも良かったはずなのだが。
  • 攻略の難しいダンジョンを振り回される。
    • 後半で訪れるマップは広くモンスターも強いのに、シナリオの都合でマップ全体をニ度行き来させられる。

戦闘面

  • あっという間にモンスターのレベルが上がる。
    • 世界が狭いからか、一回大きなシナリオが決着して次のマップへ行くとモンスターのレベルが5から10ぐらい跳ね上がる。
      • そのためのレベル上げ可能なアイテムの存在なのだろうが、もう少し調整してほしかった。
  • ステータスは全体的に低い
    • Lv50でもHP100そこそこと全体的に抑えめの調整で、攻撃や防御もそこまで伸びない。
    • 成長のパターンもS・A~Dの5段階で、同じ成長率ならばステータスも似たりよったりになる。
  • 鈍重モンスターが不利
    • 命中率、逃走率、行動回数にモンスター自身のスピードが参照されるため、足が遅いモンスターほど不利。
  • わりと外れる攻撃
    • 同速、格下相手でも8割から9割がいいところで、2戦に1回ぐらいは外す場面に出くわす。
      • 何故か自分への回復行動でも外す。回復アイテムがないシステムで辛い。
  • 逃げられない逃走
    • 同速ぐらいどころか、格上の速度になっても逃げられない事が多い。
  • 技が固定される電獣
    • 使用出来る技が,モンスター別で完全固定}。
    • 進化するとそれまで所持していた技が,リセットされ}、新たな技リストに変更される。
      • これにより,進化前より威力の低い技しか覚えられない進化後}という悲しき存在が存在する。
  • あまりに気長な電魔攻撃
    • チャージ時間が長く、いざ発動するタイミングでは戦闘が終わっていることが多い。
  • 分かりづらい相性関係。
    • 岩山、空、森林、水棲、砂漠、草原の6種類があるものの、見た目で分かりづらい。*1
      • おまけにどのモンスターがどこに属するかも一目で分かりづらく、初見の攻撃で不利を被りやすい。
    • なお技による属性相性はなく、電獣の属性のみが計算される。

その他

  • 鍵をあけてもドアのマップオブジェクトが消えない。
  • ダンジョンはあまり凝ったギミックがない。
    • 強いモンスターが大挙して襲いかかってくる中で存在しないのは有り難いのかもしれないが。

総評

ポケモンフォロワーの中でも携帯という機器に目をつけ、メダロッドのようなATBシステムでスピーディさを盛り込んだ意欲作。

友達になれるモンスターも見目が子供向け作品にしては怪物寄りのグラフィックであることが気になるが、

モンスターと直接交流出来る事も作品の特徴として珍しいものだろう。

電話に纏わるシステムと戦闘システム双方に詰めの甘さが見えるのが残念であるが、シナリオは王道な冒険譚で十分に楽しめる作品といえる。

余談

  • 周辺機器として「テレファング パワーアンテナ」というアイテムが初回生産分に同梱していた。

    通信コネクタに接続して、ゲームで電話がかかってくると光るというそれだけのものであったが、意外とゲームの雰囲気にマッチしていて楽しいアイテムであった。
  • 雑誌やテレビCM、グッズなどで、隠し電獣が仲間に出来る番号が配布されていた。

    手に入れる手段が限られていたからか、最終的には公式サイトに掲載されている。
  • 『コミックボンボン』という雑誌でゲームが絡んだ作品はネタバレ回避で結末が違ったり駆け足や途中終了が多いのだが、樹野こずえの漫画もその例外に漏れていない。
    • しかしこの作品は計3巻の単行本に纏まっており、比較的入手し易い部類だろう。
    • 序盤は比較的軽いノリで進むのだが、中盤のどんでん返しによって以降は一気に話の流れが変わり、ゲームに比べてかなりハードな展開となっている。同じくポケモンフォロワーでボンボン連載の『ロボットポンコッツ SUNバージョン/STARバージョン/MOONバージョン』『真・女神転生 デビルチルドレン 黒の書・赤の書]]』同様、ゲームとは異なる漫画独自の作風を展開した作品と言えるだろう。
      • 序盤の段階でも、主人公自身が電獣相手に積極的に肉弾戦を挑んだりと、既に異彩を放つ部分もあった。

続編

  • 本作から2年後の2002年、GBAで『テレファング2』が発売となった。
    • こちらはシンボルエンカウント、携帯機能の変更などいくつか改良が加わったが、その改良点がゲームのテンポに影響を与えている。
  • こちらもボンボンで漫画化されたが、作者は変わっている。

*1 岩山>空>森林>水棲>砂漠>草原>岩山