ほんの小さな願い…されども…それはとても大切な…

Last-modified: 2008-10-30 (木) 15:40:23

ほんの小さな願い…されども…それはとても大切な…

 

それは、ツグミの一言の嘘から始まった
ツグミ「実はねフェルナンド君…アイビスはこれから長期でテスラ研へ行かなくちゃならないの…」
フェルナンド「そうか、しばらくさびしくなるな。それで、いつごろ帰ってくる?」
ツグミ「それがね…テストの結果いかんではそのまま実地試験にうつらなきゃならないのよ…
だから…ここにはもう帰ってこられないかもしれないの…」
フェルナンド「なんだと…!?」
ツグミ「君には本当にすまないことなんだけど…これからアイビスには会わないであげて欲しいの…
あの子の夢のために…あなたに会えばそれだけあの子は思い切りがつかなくなってしまうから…」
フェルナンド「なんだ、そんなことか?わかった、約束しよう」
ツグミ「本当にいいの?」
フェルナンド「ああ、それはあいつの夢のためなんだろ?ならば俺が邪魔をしてやる理由はない
あいつはあいつの目標を、俺は俺の目標を目指す。それがあいつとの約束だからな」
ツグミ「フェルナンド君…ありがとう…」
―数時間後―
フェルナンド「そうか…あいつは旅立つのか…」
いつかこのときが来るのは解っていた…それがあいつの道だから。
今までも、俺は別れによって脆くも崩れ落ちていった者達を大勢見てきた。
それを腑抜けと笑うつもりは無い…俺とて辛いものは辛い…兄さんのときのように…。
けれども今回様な別れは、失ったり、奪ってしまうわけではない…ただ道が違えただけで、
さしあたって自分には関係は無い…素直にあいつを見送れるはず…そう思っていた。
フェルナンド「もう、あいつとすいーつは食えないのか…」
それは俺にとって、本当に特別な時間だった…いや…あいつといる時間は全て俺にとって特別だ…
あいつはどこかに行ってしまう、俺の手の届かないところに行ってしまう…
あいつと共にいる特別な時間はもうどこにも無くなってしまう…それが…たまらなく辛い…
アイタイ!!出来るならば、あって彼女を引き止めたい!!この手で奪い去ってしまいたい
でも…俺は…
フェルナンド「俺は、あいつを悲しませたくなど無い!!」
優しいあいつのことだ、俺がそんなことをすれば何とかしたいと思ってしまうだろう…
それがあいつの夢への障害になり…もし、あいつの夢を壊してしまうようなことになれば…
辛い…どうしようもなく辛い…例え心まで蝕まれたとしても…まだ足りぬほどに…
かつては誇りのために戦えさえすれば満足だった…阿修羅であることが自身の存在自体だった
けど今は…あいつの笑顔を守りたいと願ってしまっている…そのために生きていたいとさえ思っている
あいつを守り続けるための術もわからず…こんなに苦しいというのに…
フェルナンド「俺もどこかに修行の旅にでも出るか…」
もしかしたら、あの頃のようにただの修羅に戻ればこの苦しみは消えるかも知れない
あいつから貰ったものを捨て去ってしまうのは辛い…でも…この苦しさが消えるなら…
ならどこに行く?出来るならなるべく遠いところがいい
そうして壁に掛けてあった、この世界の地図に目をやる。
テスラ研は、確か地図の右上にある大陸にあったはずだ。ならば、最も遠いのは…
ラージ「言っておきますけど、アフリカ大陸は、北アメリカ大陸から最も遠い大陸じゃありませんよ?」
この男…俺の思考を読めるのか?その前に俺に気付かれずにいつの間にここに…?
ラージ「どこに行くのかは知りませんがその前にこの町を見て回ってはどうです?」
フェルナンド「そうだな、出かけてくる。あいつらにそう伝えておいてくれ」
どうせこの町にもう奴を倒しに来るとき以外に用はない。ならば、ここでの思い出を捨てに行くのもいい
―河原―
フェルナンド「現在では修羅の多くもこの町になじんでいる。ある意味で奴の思惑通り
修羅たちも戦い以外の生き方を見つけたと言うことなのだろう…
だが俺はもう変われない…あいつ無しで変わることなど出来ないと分かってしまったから…」
フェルナンド「くく…思い出を捨て去りに来たのに感傷に浸ってしまうとは、俺も女々しいな…」
アイビス「あれ?こんなとこでどうしたの?」
フェルナンド「!!?」
なぜここに?やめろ!近づかないでくれ!!俺はお前を…!!どうしてお前は平気なんだ?俺は辛い…
なぜそんな風にしていられる!!解らない!!俺はどうすればいい!?何がしたい!?何を考えている?
頼む!そんな目で見ないでくれ!!もう忘れさせてくれ!!嬉しい!だけど苦しい!!辛いのは…もう…
アイビス「なんだか様子が変だけど心配ごと?あたしでよければ相談にのるよ?」
さまざまな、感情が一斉に頭の中を通り過ぎもう何も考えることが出来なくなった…
気がつけば、いつの間にかアイビスを抱きしめ、その唇を奪っている。
触れるだけの軽さしか持たない…だがそこに込められた想いはどのキスよりも重く深い…
アイビスもはじめは呆然と成り行きに任せていたものの次第に意識を取り戻し、口を離すと
アイビス「ちょちょ、ちょっと!?いきなりどうしたのよ??」
しかし、返答は無い…
アイビス「ほら、言ってくれないとわからないよ?あたしも、訳を聞いてみたいしね?」
こんな事をしてしまってもなお、心配そうに見つめてくるその瞳を見ていると何もかも話したくなる…
フェルナンド「…どこにもいかないでくれ」
アイビス「えっ?」
フェルナンド「お前の行きたい未来がここに無いのは理解している…だから、今だけでいい…
今は、今だけは…ここにいてくれ…頼む…俺を…お前の側にいさせてくれ…」
少しの風で消えてしまいそうな声…普段ならこんなことは絶対に無い…
アイビス「大丈夫…あたしはここにいるから…どこへも行かないから…」
―数分後―
アイビス「えっ!!ツグミがそんなことを!?」
フェルナンド「ああ、お前のために必要なことだと言っていた」
アイビス「そんなことは無いから安心していいよ
今の情勢だと、行けたとしてもそんな遠くまではいけないからね」
フェルナンド「そうか…よかった…と、いっては駄目だな。お前の夢が遠いということなのだから」
アイビス「気にしないで、例え遠くても夢を諦めなければ必ずいつか叶えて見せるから!」
フェルナンド「そうだな…諦めなければいつか…
それから、さっきはすまなかったな…いきなりあんなことをして」
アイビス「え?ああ、あれね…//////」
フェルナンド「お前が旅立つ前に俺も必ずこの気持ちをどうにかする答えを見つけて見せる…
だから、できるなら俺の答えを待っていてくれ」
アイビス「それって…どういう…」
フェルナンド「俺は…」
ツグミ「もしなんだったら、俺と君で次の世代に夢を託してみないかってことね?」
フェルナンド「うおっ!!貴様か!?」
アイビス「ツグミ!!何であんな嘘ついたの!?」
ツグミ「いいじゃない、おかげでいろいろ進展したんでしょ?」
二人「そういう問題じゃない!!」