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Last-modified: 2007-12-26 (水) 16:53:51

 あどけないルックスと、濁りの無い歌声を携えてシーンに登場したYUl。心の震
えをそのまま歌にした、あまりにもストレートで無防備な音楽。それは、一瞬で崩れ
そうな儚さを感じさせると同時に、何が起きても揺らぐことはないとも思える、不思
議な無垢さと強靭さを持っていた。メジャー・デビュー前のYUlに会った時に感じた
印象は、その音楽から感じた印象と、まったく一緒だった。大きく変化する状況の
中で不安と緊張に揺れながらも、あらゆる騒音を遮断しようとしているかのよう
な、澄んだ瞳と凛とした表情をたたえていた。この17歳の女の子は、一体何を信
じてこんなにもまっすぐな眼差しをしているのだろうか?そして、なぜこんなにも大き
な悲しみから抜け出てきたような、一筋の光を求める音楽を生み出すのか?とい
う、疑問に駆られたことを覚えている。その思いは、YUlが次々と発表していく楽
曲によって、どんどん確かな輪郭を帯びていった。等身大の気持ちを、一切の虚
飾のない言葉にした歌詞、美しいメロディとシンプルなギター・サウンドで形作られ
た普遍性の高い音楽。それは、YUl自身の呼吸のようで、聴き手にとっても、どんな
に悲しいことが起きたとしても、確かに流れ続ける血液のようにリアルで生命力
のあるものだ。
 メジャー・デビューから約2年。ファースト・アルバム『FROM ME TO YOU』、全
国ツアー、映画『タイヨウのうた』など、怒涛の出来事を経て生まれたセカンド・ア
ルバム『CAN'T BUY MY LOVE』。今作は、たくさんの人に受け入れられ、大き
な光の当たる確かな場所を手に入れたことにより、豊かな歌と音楽性が息づいて
いる。表現の核である音楽を信じる気持ちを強めつつも、他者に向かう優しさや、
懐の深さも生まれている。音楽によって救われてきた季節に別れを告げ、ただ良い
音楽を作ることに深く向き合った、ひとりの表現者として大きくステージを上げた
作品だ。ここからYUlは、自由に翼を羽ばたかせて血の通った音楽を生み出し続
けていくのだろう。晴れやかな空気が漂う、10代の集大成となる作品だ。
 なぜYUlは、何度も何度も「自分は音楽でしか表せない」と口にし、どんな状況
にも飲み込まれずに、希望に向かう強い音楽を生み続けることができたのか?ここ
に掲載された20000字に及ぶ19年間のライフ・ストーリーは、YUlの音楽と驚く
ほどぴたりと重なる、とてつもなくリアルなドキュメントだ。

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