出動!ちびっこ自警団 (2)

Last-modified: 2021-09-08 (水) 18:38:12

PREV:出動!ちびっこ自警団 (1)

925 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:30:17 [ LaCVn4Ks ]
ちびモナは再び双木刀を取り出し、パニック状態のしぃに歩み寄る。3人がそれに続く。
そして、ちびモナはちびモラ、ちびしぃに指示を出した。

「腕、押さえて欲しいモナ。あ、ちびしぃちゃんはもう1匹を見張っててモナ」

「ガッテン!」

「了解!」

ちびモラはハニャハニャ言ってる(元)親しぃの左腕を掴むと、左手で手首、右腕で肩の辺りを押さえた。腕を伸ばさせるような形だ。
ちびしぃは未だにのたうっているしぃ(目を射抜かれた奴)の元へ。

「ハニャァァァ・・・ハニャァァァ・・・オミミィ・・・ベビチャン・・・」

瞳孔が開ききった目で呟くしぃ。
ちびモナはその肉片と血液で汚れた顔を一瞥すると、右手を振り上げ・・・

ドゴッ!!

――その瞬間。

「シィィィィィィィィィィ!!?」

左腕に叩きつけられた木刀の衝撃と激痛に、今までの病人のような状態からは想像出来ないような声量でしぃが叫んだ。
ちびモナは特にリアクションせず、そのまま連打。

バキッ!ドガッ!ズガッ!

「ハギャッ!ウギャッ!ジィィィィ!!イダイヨゥゥゥゥゥ!!」

ちびモラが思わず顔を背けながら言う。

「ひぇぇ・・・間違って僕の顔を殴らないで欲しいからな・・・」

「大っ・・・丈っ・・・夫っ・・・モナッ!」

木刀の連打と同じリズムで返事をするちびモナ。
そのまま数分間は誰も喋らず、ひたすらに腕を砕いてゆく音としぃの悲鳴だけが響いた。
そして数分後―――。

「ふぃ~、こんな所モナね。じゃ、お次は・・・」

ちびモナが額に滲んだ汗を手の甲で拭いながら呟いた。
しぃの両腕は足と同様にグシャグシャ。先程からプラプラと肩から垂れ下がっている状態だ。

「イタイヨゥ・・・オテテ・・・」

しぃが悲壮な顔をして呟く。どうやら、一連のショックで精神は安定したらしい。
肉体の方は腕、足共にまったくもって不安定だが。

「シィチャンノ オテテト アンヨト オミミヲ カエシナサイ!コノ アフォチビドモ!」

再び喚き始めるしぃ。ちびギコが思わず言葉を漏らした。

「ベビはもうどうでもいいデチか・・・」

そんなやり取りの間に、ちびモラがいつの間にかしぃの背後に回っていた。
その手には小指の長さほどしかない小さなポケットナイフ。
それに気づいたしぃが首を動かして言う。

「ナニスルキナノヨ!コレイジョウ コノ ウツクシク カツ カワイクt(ry)ナ シィチャンヲ キズツケタラ ヒドイワヨ!」

その状態で一体何が出来るのか。両腕、両足を砕かれているというのに。
そう小一時間問い詰めたくなるのを我慢し、ちびモラは無言でしぃの首に軽くナイフを突き立てる。本当に軽く、切っ先だけを、だ。

「ハギャ!」

痛みで短い悲鳴を漏らすしぃ。
ちびモラはそのまま首周りでナイフを、頚動脈等を切らないように慎重に一周させ、ナイフを抜いた。
するとちびギコがその首に手を伸ばし、ナイフによって出来た皮膚と皮の隙間に指を無理矢理突っ込み、押し広げる。
そしてその指で皮の端を掴んで――

バリィッ!!!

「シギャァァァァァァ!!!」

926 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:31:00 [ LaCVn4Ks ]
「う~ん!綺麗に剥けたデチ!」

ちびギコが満足そうに頷いた。
しぃは体の前半分、首から腰辺りまでの皮が綺麗に剥がれていた。
すると再びバリバリという音としぃの悲鳴が。
見れば、ちびモナが皮を持ってこっちにやって来る所だった。

「モナにも出来たモナ!」

誇らしげに皮を突き出すちびモナ。
しぃは胴体の皮膚が完全に露出し、少しだが血が流れている。

「イタイヨゥ・・・ヒリヒリスルヨゥ・・・」

涙を浮かべて呟くしぃ。まあ、皮を剥がれりゃ痛いに決まっている。
これだけでも十分な破壊力なのだが・・・

「しかぁ~し!これで終わらないのがちびモナクオリティ!!」

ちびモナはそんな事を大声で言いながら、ある物を取り出した。
中になみなみと液体が詰まった、プラスチック製の箱のような物。
しぃはそれを見ると、いきなり元気を取り戻した。

「ハニャーン!ヤッパリ コイツラハ タダノ ヴァカヨ!ソンナモノデ シィチャンガ キズツケラレルワケ ナイデショ!ツイニ クルッタワネ!!」

自分の姿を鏡で見てから言って欲しい。
今までそう言いながら、ここまでズタボロにやられたというのに。
都合の悪い事は全て忘れる、これぞアフォしぃクオリティ―――か?
だがまあ、そう言いたくなるのも解るかもしれない。
何故なら、ちびモナが取り出した物は、何の変哲も無い―――

―――水鉄砲なのだから。
青いプラスチックのボディ、トリガーは白。銃口付近はオレンジのカバーが付いている。
恐れるに足らない、ただの玩具。
―――ただそれは、中身がただの『水』なら、の話。
当然、そんな物を入れてある筈が無い。

「ふっふっふ・・・覚悟するモナよ?」

ちびモナが笑いながら、銃口をしぃに向ける。
しぃもハニャハニャと笑う。

「アーア、セイシンイジョウヲ オコシタ クソチビノ アイテモ ツカレルワネ。マ、クラッテアゲルワ!シィチャン、ヤッサシィ!!」

完全に油断しきった体だ。―――ある意味、幸せ者なのだろうか。
無論―――この後に待つ、煉獄の如き苦しみを予測することもしなかったし、出来なかった。

「食らうモナ!」

ちびモナは遂に、その引き金を引いた。
銃口から細い液体が飛び出す。余裕の表情のしぃ。固唾を呑むちび達。
そして――付着。

別に、煙が出て皮膚が溶けたわけじゃない。
恐ろしい温度まで熱せられた、熱湯だったわけでもない。
水の勢いが、岩を砕くほど強かったわけでも無かった。
だが―――



「ヴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!???」



しぃの魂の叫びが、大地を揺るがした。

927 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:31:31 [ LaCVn4Ks ]
「ううう、凄い悲鳴デチねぇ・・・」

「本日最大の大音量だからな・・・」

耳を塞いだ2人が呟く。だが、それすらも互いには全く聞こえない。
それほどまでに大きな悲鳴だった。

「ジギャァァァァァ!!イダイイダイィィィィィィィィ!!」

しぃは悲鳴を上げながら地面を転がり、のた打ち回っている。
その表情はまさに生き地獄、この世の終わりといった感じだ。本当に苦しそうだ。

「ねぇ、あの水鉄砲の中身って何デチ?僕は何も聞いてないデチよ」

ちびギコの質問に、ちびモナが胸を張って答えた。

「よくぞ聞いてくれたモナ。あの中身は・・・

 ぬるま湯に唐辛子とカレー粉と辛子味噌とわさびとラー油とマスタード、ついでに激辛最終兵器たる『THE SOURCE』

 これらを溶いた液体、モナ!」

ちびモナの朗らかな声に、ちびモラはうんうんと頷き、ちびギコは身を震わせた。

「うへぇ、えげつないデチ」

「褒めても何も出ないモナよ・・・っと。まだまだモナ」

ちびモナは言いながら、さらにその激辛水鉄砲をしぃに撃ち込んだ。
液体が剥き出しの皮膚に触れるたび、しぃは叫びを上げる。

「ギョァァァァァァァッッ!!ウギィィィィィィィ!!」

―――さて、何故ここまでしぃが苦しんでいるのか。
その理由は上記の辛い調味料達の成分に隠されている。
『カプサイシン』―――と言えば、聞き覚えがあるだろうか。
唐辛子などの辛い物にはほぼ必ず含まれており、その辛さの素となる成分だ。この物質は新陳代謝を促し、脂肪の燃焼を助けるのでダイエットにも効果的だ。
その為健康に良いとされ、テレビでもさかんに取り上げられた。
しかし、カプサイシンのもう1つの作用をご存知だろうか?
それは―――

―――痛覚の直接刺激―――。

人の皮膚は熱さ、冷たさ、痛み、圧力の4つを感じ取ることが出来る。
カプサイシンはこの内、痛覚のみを刺激するのだ。
皮を剥がれて神経が剥き出しの所に、痛覚の直接刺激。これはもう耐え難い、今すぐ気が狂ったっておかしくない程の激痛が走ること請け合いだ。
さらに、それだけでは終わらない。
前述した通り、カプサイシンは新陳代謝を促すが、それ以外にも血管を拡張する作用があるのだ(辛い物を食べると暑くなるのはこれらの作用の為)。
結果、傷口からは凄まじい勢いで血がドクドクと流れ出し、新陳代謝促進によって体が熱くなる。それがまたさらに痛みを倍増させる。まさに激痛の坩堝(るつぼ)。
さらにさらに。カプサイシンは化学物質であるという事も忘れてはならない。
例えば木刀による打撃なら、痛みは一応一瞬で済む。だが、カプサイシンならどうか。
化学物質であるという事は、その物質がそこにある限り作用し続けるという事だ。
つまり、その液体が皮膚に付着し続けている限り、痛みは永遠に続く。
痛覚の直接刺激×新陳代謝促進&血管拡張作用による出血過多+発熱×それらに伴う激痛の上乗せ×それらが塗布されている限りず~っと。
地獄の責め苦だってここまで苦しくは無いのではなかろうか。

説明が長くなったが、そろそろ戻ろう。
しぃの体からは血がドクドクと流れ出ている。新陳代謝が促され、さらに血管が拡がった結果だろう。

「ほれほれ、まだまだモナ~♪」

ちびモナの容赦無い放水。しぃの暴れようはいよいよ激しさを増す。
液体に含まれる多量のカプサイシンが、激痛の束となってしぃに襲い掛かる。

「オギャァァァァァァ!!!ジュィィィィァァァァァェェェェェ!!?」

最早どこの言語だか。さらに痛みによるショックか、まだ体内に残っていたらしい糞尿を垂れ流しまくっている有様。もうとても見てられない。
ちびギコもそう思ったのか、鼻を摘みながらちびモナに声を掛ける。

「流石に見苦しいデチよ。もう終わらせようデチ」

「そう?わかったモナ」

ちびモナはこの世の苦しみを全て集めたかのような形相でごろごろと転げまわるしぃに近づくと、水鉄砲をひっくり返して、パカン、とグリップの底部を開けた。
通常はここから水を補給するらしい。
ちびモナは水鉄砲をしぃの上で再びひっくり返し、給水口から残りの激辛液体Xをしぃにぶちまけた。
と、その瞬間である。

「bヘウオボウ;hシhヅエオ;イェtヴァギョスフデh;アジィdswユエ;hbp!!??!!!!!??」

もうこの星の―――いや、この世に生けとし生ける者の声とは到底思えない奇声を発した。
そして、しばらくはピクピクと痙攣していたのだが―――やがて動かなくなった。

「2匹目、討伐完了・・・モナ♪」

ちびモナが静かに、だが嬉しそうに呟いた。

928 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:32:02 [ LaCVn4Ks ]
「なかなか壮絶な最期だったデチねぇ・・・」

ちびギコが感心した様子で呟く。

「『激辛水鉄砲』、思いのほか効果覿面、だからなっ!」

ちびモラも嬉しそうだ。自分のアイディアが非常に役に立ったのだから、それは嬉しいだろう。
だが、歓喜に浸っている3人の耳に、ちびしぃの慌てた声が届いた。

「みんな、大変!」

その声につられてちびしぃの方を向くと、なんともう1匹がいない。
彼女が指差す方向を見ると、残されたアフォしぃ(目を射抜かれた奴)が、砂場の方へ向かって猛ダッシュしていた。
いつの間にか復活したのか、どうやらちびしぃが一瞬目を離した隙に逃げられたらしい。
出口ではなく砂場に向かっているのは、目が見えなくて闇雲に走っているからだろう。
とにかく、このままでは面倒な事になりそうだ。

「走ってもなかなか追いつけるかどうか・・・そうだ!ちびしぃちゃん、『アレ』で足を止めるモナ!」

ふと思いついた様子でちびモナが提案する。

「う、うん・・・本当はあまり使いたくなかったんだけど、しょうがないよね」

ちびしぃも承諾したらしい。
すると彼女は、胸の前で両手を組み、祈りのような体制をとった。
すると、その周りに青白い魔方陣のような物が出現する。
そしてちびしぃは、そのまま両手を前に差し出した。
学校の集会の時にやる『前習え』を縮めたような感じだ。
やがて、その『前習え』の両手の間に青い光がちらつき始めた。
それはだんだん大きくなり、手と同じくらいの大きさになる。
ちびしぃはゆっくりと息を吸い込み、訳も分からずドタドタと走り回るしぃに狙いを定めて―――

――刹那、蒼い閃光が迸った。

伝わってきたのは小さな爆音、肉の焼け焦げた臭い、それから・・・

「ハギャァァァァァァァ!!シィチャンノ アンヨガーー!!」

お決まりの悲鳴だった。
ここまでの描写を見ていただければお分かりだろうが、彼女が放ったのはご存知『httpレーザー』だ。
ちびしぃの中でも、よほど練習した者しか使えないとか。しかもいちいち上記のような手順を踏まないと撃てないようだ。
ちなみに「あまり使いたくない」と言ったのは、その気になれば苦しむ間も与えずに一瞬で葬ることも出来てしまうから、らしい。
まあ、今回は片足を吹き飛ばすだけに留めたようである。

「アンヨガー!アンヨガー!シィチャンノ カワイイ アンヨー!ハニャハニャハニャァァァァン!!」

しぃはというと無くなった右足を押さえるようにしてうずくまり、のた打つだけのようだ。
ちびモナはそれを見ると、皆を見渡して言った。

「みんな、これでラストモナ!頑張るモナ!」

「おおーっ!!」

公園に、ちび達の鬨の声が響き渡った。

929 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:32:41 [ LaCVn4Ks ]
さっきからハニャハニャ喚いているアフォしぃを、ちび達が取り囲んだ。

「さーてと、後はお前だけモナ」

「公園を散々汚した上に、色んな人に迷惑を掛けた罪、その命で償ってもらうデチ」

ちびモナとちびギコが早速、挑発とも取れるような言葉を投げかけた。挑発とはいえ、本心なのだが。
だがしぃはそれらを気にした様子も無く、

「ナニヨ!サッサト シィチャンノ オメメト アンヨヲ カエシナサイヨ!ゴミクズドモ!ソレカラ、イシャリョウトシテ ダッコ ヒャクマンカイヨ!」

欠片ほどの進歩も伺えない台詞を吐くばかりである。アフォしぃに皮肉や挑発は無駄なようだ。
もううんざりだ、といった様子でちびモラが首を振った。

「ああ、もう・・・ちびしぃちゃん、お待たせだからな。思う存分どうぞ~」

「了解~♪」

ちびしぃはさも楽しげに頷くと、しぃに歩み寄った。
それを気配で感じ取ったらしく、しぃは、

「シィィィィィィ!オナジ シィゾクノ クセニ ギャクサツチュウノ ミカタヲ スルナンテ!コノキケイ!ノウナシ!ゴミ(以下、同じような罵倒が続いた為割愛w)」

お得意の暴言マシンガン。
しかしちびしぃは意に介した様子も見せず、黙って先程のようなレーザーのチャージ体制に入る。

「ゴミ!ゴミ!ゴミクズ!アンタナンカ イッショウ マターリデキズニ ナマゴミドウゼンノ ジンセイヲ アユムノガ オニアイナノヨ!ハニャハニャハニャーン!
ドウセ トモダチダッテ イナイクセニ!ゴミハ ゴミラシク ソノヘンノ ゴミステバデ クタバッテナサイヨ!」

ちびしぃが何も言い返さないのを『完全に言い負かしている』と勘違いしたしぃが、嘲笑。
それを聞いたちびしぃが、ピク、と反応した。

「―――悪いけど。私、あんた達のような社会の廃棄物に、ゴミなんて言われる筋合いは無いから」

「ハニャッ!?ナニヨ、ホコリタカキ シィチャンヲ バカニスルノォ!?ゴミヲ ゴミトイッテ ナニガ ワルイノヨ!」

険悪な雰囲気の会話。ちびギコ達は、背中に何か冷たいものを感じた。
そもそも、ちびしぃがこんなに饒舌になるのも珍しかった。普段はおとなしいのに。

「じゃああんたは、そのゴミとやらに頃された、ゴミ以下の存在という事になるわね」

「ハニャァァァァァァァ!?コノ ゴミクズガッ!マダ コノ カワイクテ マターリノ ショウチョウタル シィチャンヲ ブジョクスルノ!?アンタナンカ」

「五月蝿い」

その時、なお喚きたてるしぃを、ちびしぃがピシャリと一言で黙らせた。
彼女はそのまま、レーザーのチャージが完了した両手を、至近距離からしぃの残された右足に向ける。
そこで、ちびギコは気が付いた。慌てて傍らの2人に声を掛ける。
ただ一言、こう告げた。

「ちびしぃちゃんが・・・キレてるデチ・・・」

ちび達は初めて見た。ちびしぃが本気で『キレている』所を。
その証拠に、彼女の額には、怒りのあまり青筋が浮かんでピクピクと動いていた。
普段滅多に怒らない彼女を怒らせるとは―――このアフォしぃ、ある意味大物かもしれない。

「あんたには、もう・・・」

ちびしぃの目にギラリと光が宿った。
それは、普段の彼女からは到底想像出来ない、まさに『虐殺者』の目だった。

「――反論する権利すら、残されて無いのよ・・・!」

その瞬間。

ブシュウゥゥゥゥゥ・・・

何かを焦がす音が響き始めた。それから一拍遅れて

「ハギャァァァァァァ!!アツイヨゥゥゥゥゥゥ!!」

しぃの悲鳴。
ちびしぃの手からは、先程と同じくレーザーが放たれていたが、今放っているレーザーは先程のものよりもかなり細く、出力が弱いようだ。
先刻のものは足を一撃で吹き飛ばすために出力を強くしていたが、こんどはじりじりと焼き切るために弱くしているらしい。
高熱のレーザーが足をじりじりと、少しずつ焼いてゆく・・・当然、苦痛は相当なものだろう。
見れば、すでにレーザーを当てている方の皮膚は完全に焼け焦げ、骨が露出し、それもまた少しずつ炭になっていく。

「ジィィィィィィィ!!オナガイ ヤメテェェェェェェェ!!」

しぃが懇願するが、ちびしぃは全く聞く耳を持たない。
やがて骨も炭化して崩れ落ち、反対側の皮膚も殆ど消し炭。そして―――

ポトリ。

完全に焼き切れた足が、乾いた砂の上に転がった。
切り口は完全に炭と化し、白煙がたなびいている。

930 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:33:16 [ LaCVn4Ks ]
「シィィィィィ・・・シィノ アンヨ・・・アツイ・・・イタイヨゥ・・・」

ぶつぶつと呟くしぃに向かって、ちびしぃが吐き捨てる。

「あらあら、先程までの態度はどこへ逝っちゃったのかしら?みっともなく懇願までして・・・哀れね」

するとしぃは再び怒り顔になり、

「シィィィィィィ!シィチャンノ アンヨヲ カエシナサイヨ!モウ アンタナンカ コワク ナインダカラ!」

などと騒ぎ立てた。苦痛から開放された安堵からか、気が大きくなっているらしい。
だがそれも、ちびしぃが発した次の台詞を聞くまでだった。

「何を言っているの?これで終わりな筈、無いでしょう・・・?」

「ハニャッ!?」

しぃの表情が凍りついた。見れば、既に彼女の手の間には蒼い光が渦巻いている。
そして・・・

ジュゥゥゥゥゥゥゥ・・・

「ハギャァァァァァン!!アツイヨォォォォォォ!!!」

またも悲鳴。
本日3度目のhttpレーザーは右腕の付け根を焼いていた。
そして先程足を焼き切った時と同じように、少しずつ、少しずつ焼いていく。

ジリジリジリジリ・・・

「アギャァァァァァ!!ギャッ、ジギャァァァァァ!!」

聞くに堪えない悲鳴を発し、何とか苦痛から逃れようとするしぃ。
しかし、その体はちびモラ、ちびギコ両名に押さえつけられていて身動きが殆ど取れない。
脱出、不可能。

ジジジジジ、ジリジリジリ・・・

「ジョギャァァァァァ!!アアアァァァァァ!!イギィィィィィ!!」

ジジジジジ・・・ポトッ。

先程と全く同じような感覚で、切り口の焼け焦げた右腕が落ちる。
焼け焦げた事によって傷口が塞がったのか、血は殆ど流れなかった。

「シィィィィィ・・・オテテ・・・ヒドイヨゥ・・・シィガ、ナニヲシタッテイウノ・・・?」

ぽつりと呟くしぃ。
すると、それを聞きとがめたちびしぃが、怒りを押し殺した声で言った。

「何をした、ですって?自分の胸に手を当てて考えてみたら?もっとも、当てる手ももう半分しか無いけどね」

そして冷笑。その笑みは、普段の彼女の愛らしい笑顔とはまるで対極の物で、見る者全てを凍りつかせるような微笑みだった。
するとしぃは、僅かに残っていた欠片ほどの気力を振り絞り、怒鳴った。

「シィチャンハネ、コノ ギャクサツコウエンカラ アフォナ カトウセイブツドモヲ オイダシテ、ソノウエ トッテモキレイデ マターリナ コウエンニ シテヤッタノヨ!
カンシャサレテ トウゼンナノヨ!シィチャンヲ アガメナサイ!カンシャ シナサイ!ダッコ シナサイヨ!コノギャクサチュウ!クソチビ!」

その瞬間―――ちびしぃの顔から、笑みが消え失せた。

931 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:34:09 [ LaCVn4Ks ]
「何ですって・・・?」

わなわなと震えながら、ちびしぃがしぃに問う。
するとしぃは「フン!」と鼻で笑った後、自己中の権化と言えるような言葉を放った。

「ナニ?ギャクサツコウエンヲ シィチャンガ マターリスルタメニ ツクリカエテ ナニガワルイノ?
コノヨハ シィチャンヲ マターリサセルタメニ ソンザイシテルノ!シィチャンイガイノ ヤシラナンカ ゴミナノ!ワカル?ゴ・ミ!
ア、アンタミタイナ チショウニ シィチャンノ コウトウナ コトバナンカ ワカラナイワヨネ(プ
アーア、ヤッパリ カトウセイブツノ アイテナンカ ヤッテラレナ」

ガッ!!

――だが、しぃはその性根の腐りきった演説を、最後まで続ける事が出来なかった。
ちびしぃが不意に、その喉を鷲掴みにしたからである。

「ナ・・・ナニスルノヨ!コレイジョウ シィチャンヲ キズツケタラ」

「・・・もう何も言わない」

暗い、ひたすらに暗い声でちびしぃが呟いた。
そして、ちびモラからナイフを受け取った。
それは、ちびモラが先刻、故・親しぃの首の皮を切り裂いた際に使用したポケットナイフだった。
そのまましぃの喉を押さえていた手を、黙ってしぃの残された左腕に動かす。
左手でしぃの手首を掴み、そっとナイフの刃を腕に這わせる。

「マ、マサカ・・・ヤメナサイ!ギャクサ」

「黙って。耳が腐りそう」

ザクッ!!

――一瞬の静寂。そして――

「ジィィィィィ!!シィチャンノ オテテガー!イタイヨォォォォォォ!!」

ちびしぃは、右手のナイフでしぃの腕をざっくりと切り裂いていた。
刃は腕のかなり深いところまで到達しているようだ。ひょっとしたら骨まで届いているかもしれない。
ちびしぃは一旦ナイフを抜くと、もう一度腕に這わせるようにした。

「イタイヨゥ!オテテガ、オテテガァァァァ!!」

悲痛な叫びも無視し、ちびしぃは腕に力を込めた。
ナイフを動かす直前、彼女は呟いた。

「――許さない」

ザシュッ!

「ジギャァァァァァァ!!」

今度は深々と切り裂くのでは無く、まるで表面をこそげ落とすかのようにナイフを動かした。
スライスされて切れたしぃの腕の皮膚が、ポトリと地面に落下した。
そしてそのまま――

「――許さない」

ザッ!

「アギィィィィィィィ!!」

またもスライス。落下する薄切りの肉、飛び散る鮮血。
ちびしぃはもう、止め処無く溢れる憎悪を隠そうとはしなかった。
最早、普段の彼女を連想させる要素は欠片も残っていない。
そのままちびしぃは、怒りに任せてひたすらにしぃの腕を牛蒡をささがきするが如くスライスしていった。

「――許さない!」

ザシュッ!

「ギョァァァァァァァ!!」

「許さない!許さない!!」

ザクッ!ズシャッ!

「ンギュゥゥゥゥ!!アァァァァァァァァァ!!」

「許さないっ!許さないっ!!許さないっっ!!!」

ズリュッ!グシャッ!ブシュゥッ!

「フギィィィィィィィ!!!ア゙ア゙ァァァァァァァァァ!!オナガイ ダッゴズルカラ ヤメテェェェェェ!!」

しぃが何を喚いても、
鮮血がちびしぃの全身を染め上げても、
肉片がいくら積み重なろうとも、
彼女は切ることをやめなかった。

932 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:34:56 [ LaCVn4Ks ]
幼い頃から引っ込み思案で弱気だった彼女は、その性格からか友達と呼べる人も無く、それ故毎日をつまらなく感じていた。
そんな彼女は、時々この公園に来ていた。
いつも賑やかなこの場所に居れば、少しは寂しさが紛れるかもしれない・・・そう考えたから。
でも実際は、友達と楽しそうに遊ぶ同じ子供達を前に、ただただ寂しさが募るばかりであった。
月日は流れ、今から4年前―――。
小学校の入学式の帰り道、彼女は何ともなしに公園に来ていた。
周りから聞こえて来る、同じ学校の子供達の楽しげな声。
それを聞いた彼女は、ますます暗い気持ちになるのだった。
―――つまらないな―――。
そう心の中で呟きながら、ぺたりと砂場の淵に腰を下ろした。
思わず漏れる、深い深いため息。

どれくらいそうしていただろうか。
不意に、頭上から声が掛かった。

「―――ねぇ。一緒に遊ばないモナ?」

その声が、自分に向けられたものと気付くまでに若干の時間を要した。
それに気付いた瞬間、彼女はガバッと顔をあげた。
2人の少年が、自分の顔をまじまじと見つめていた。年は、多分同じだ。

「そんなにつまらなさそうな顔しないで、こっち来て一緒に遊ぼうデチ!」

ギコ族であろう少年が、励ますような声で言った。
横に居たモナー族の少年も、声を掛ける。

「もちろん、君が嫌じゃなけりゃ、だけど・・・」

それを聞いた彼女は、暫くの間、それらの言葉を噛みしめていた。

―――一緒に遊ぼう?―――

――――この私と?――――

――――本当に?―――――

次の瞬間、彼女は自分でも出したことの無いような大きな声で言っていた。

「い、嫌なんかじゃないよっ!全然!ぜんっぜん!!」

その大声にやや気圧された感のあった2人だが、すぐに明るい表情を取り戻した。

「本当に!?じゃあ、早くあっち行って遊ぶデチ!」

「もう1人待ってるモナ!」

言いながらモナーの方は彼女の手を引き、ギコの方は背中を押す。
その先には、モララー族の少年がぶんぶんと手を振っている。

お互い、名を名乗りあうこともしなかった。
実際、それをしたのは翌日に学校で会ってからだった。
けれど、彼女は確信を抱いていた。これだけは絶対に否定されたくない。いや、させない。

―――これが、友達―――


だが、これはどうしたことだ。
初めての『友達』と出会った公園が、それも初めて会話を交わした砂場が、こんな汚らわしい連中の汚物で汚された。
『友達』の素晴らしさ、大切さを教えてくれた、大切な公園。
それを、こんな奴らが―――
果てしなく自己中心的な、本当にどうしようもない理由で―――
―――汚した。
滅茶苦茶にした。
絶対に―――

―――許 さ な い !―――

933 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:35:45 [ LaCVn4Ks ]
ふと、ちびしぃは我に返った。
その手には、自分の握った手首から先の肉が殆ど削ぎ落とされて骨が剥き出しになっているしぃの左腕。
足元には、しぃのスライスされた腕の皮膚が山盛り。そして多量の鮮血が、太陽光を反射して光っていた。

「シヒィィィィィ・・・シヒィィィィィ・・・」

息も絶え絶えのしぃを見て、ちびしぃは急速に、全身の血が冷めていくような感覚を覚えた。
――私は今まで、何をしていたのだろう?
目の前の、皮膚が8割方無くなったしぃの腕を見る。
――怒りに任せて、こんな事を――?
どうやら、ちびしぃは完全に正気に戻ったらしい。先程までの自らの行為や言動は、あまり覚えていないようだ。
彼女はそのまま、腕を離した。そして、未だに口をあんぐりと開けて呆然自失状態の3人の元へ駆け寄る。

「ご、ごめんね・・・私、何てことをしてたのか・・・怒りに任せて何か言ってたような気もするんだけど」

「い、いや、気にすることはないモナよ。誰だってあれくらいやりたくなるモナ」

ちびモナが俯くちびしぃに声を掛けるが、その声色は、先程までちびしぃが見せていた憎悪と、それに伴う行動に対する恐怖を完全に拭い切れてはいなかった。
それを見たちびモラは、空気を変えようと明るく言った。

「ま、まあまあ・・・ちびしぃちゃんのお陰であいつに大ダメージ!だからな。後はもう、トドメを刺すだけだからな!」

その言葉通り、しぃの命がそう長くないのは子供目でも明らかだった。
いや、今すぐ病院に担ぎ込めば助かるかもしれないだろうが、無論そんなつもりは毛頭無い。
レーザーで切断された部分は焼かれたせいか傷口が塞がっている(ただし炭化している)が、今しがた皮膚を削ぎ落とされた左腕からの出血は凄まじかった。
また、戦闘開始直後に撃ち抜かれた両目からの出血も止まった訳では無い。
今やこのアフォしぃは、両目、両足、片手を失ってもう片手も使い物にならないという、ほぼ達磨とも言えるズタボロの状態であった。

「シィチャンノ・・・オメメ・・・アンヨ・・・オテテ・・・ハニャーン・・・ハニャーン・・・」

既に意識を手放しかけているしぃを前に、ちびしぃが言った。

「私はもういいや。流石に疲れちゃったし・・・ちびギコ君、後をお願いしてもいいかな?」

ちびギコは胸をドン!と叩いて答えた。

「お任せデチ!みんなは休んでていいデチよ~♪」

そして、くるりとアフォしぃに向き直った。
その背中に、ちびモナがからかうような調子で言った。

「いいな~。トップバッターとシメを担当なんて・・・おいしいとこ取りモナ!」

そう言うちびモナに、ちびギコは振り返らずに答えた。

「そんな事言われても・・・ここまで譲ったら、僕の出番がほとんど無しになっちゃうデチ!」

ちびモナは苦笑しながら、「わかってるモナよ」と返した。
虐殺は、いよいよ最終局面へと向かっていた―――。

934 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:36:35 [ LaCVn4Ks ]
「さて、と」

ちびギコは言いながら、最初にしぃの目を撃ち抜いたエアーガンを取り出した。
しぃはというと、全くそれに気付かずに「ハニャーン・・・ハニャーン・・・」とぼやいている。
まあ、目が見えないので気付きようも無いわけだが・・・。
ちびギコはガチャリ、という音を鳴らして、エアーガンに空気を送り込む。
すると、その音を聞きつけたしぃが、急に叫びだした。

「ハニャッ!?マタ コノカワイイ シィチャンヲ ウツキナノ!?ヤメナサイッ!コノ ギャクサツチュウ!」

どうやら、ちびギコが再び自分をエアーガンで撃とうとしている事に気付いたようだ。
しかし、両手も両足も使い物にならないしぃに、逃れる術などある筈も無く。

「今度はどこを撃とうかなぁ?選ばせてあげるデチよ?」

ちびギコもそれがわかっていたので、わざと煽るように言ってみた。
すると、

「ヤメナサイ!ヤメナサイヨ!ヤメテ!オナガイ ヤメテェェェ!!ダッコ スルカラ!」

しぃの口調が、いつの間にか懇願口調に変わっていた。
しかし、当然その懇願も、馬の耳に念仏を聞かせたが如く無視された。
ちびギコがエアーガンを構える。片目を瞑り、狙いを定めた。

「もういいデチ、僕が自分で決めたデチ」

「ハニャーン!ハニャーン!オナガイ ヤメテヨゥ!!!!ハニャハニャハニ」

バシュッ!!

本日三度目の空気音。
そして即座に聞こえてくる、

バチュン!

ゴムを引き千切ったかのような鋭い音と、

「シィィィィィィィィ!!シィノ オミミィィィ!!」

定番とも言える悲鳴。
ちびギコの放ったBB弾は、しぃの右耳を吹き飛ばした。
そのままちびギコは、その狙う方向を少し右に持っていった。

「オミミガァァァ!!シィチャンノ カワイイ オミ」

バシュッ!!

またも鳴る、圧縮した空気を吐き出す音。

ビチュン!

これまた再び響く、肉が千切れる音。

「ジィィィィ!!シィチャンノ オミミガァァァ!!」

そしてやっぱり轟く、しぃの十八番とも言える悲鳴。吹き飛ぶ左耳、飛び散る鮮血。

「本日、撃ち漏らし無し!デチ!」

ちびギコが快哉を叫んだ。

「シィチャンノ オミミー!ナクナッチャッタヨゥ!!オミミ カエシテヨゥ!!ハニャァァァァン!」

一方、しぃはお決まりの台詞を叫んだ。
両目、両足、両手(厳密には片方は残ってるが)に続いて両耳までも失ったしぃは、暴れたくても暴れることが出来ず、ただひたすら喚くしか無かった。

「さあ、そろそろトドメデチよ・・・?」

ちびギコが、エアーガンをちびモナに預けた後、しぃに向かって歩き出した。
その手に、手術用のビニール手袋を装備して。

935 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:37:14 [ LaCVn4Ks ]
「さっき言った筈デチ。おまえに罪を償わせる、って・・・」

しぃに歩み寄りつつ、ちびギコが言う。

「オナガイ、モウヤメテェ・・・ダッコモ コウビモ スルカラ・・・ハニャーン・・・」

弱弱しく呟くしぃ。どうやら耳を吹き飛ばされた時に叫びまくったせいで、体力をかなり消耗したようだ。
ちびギコはしぃの正面に立つと、血の気が引いたしぃの顔に手を添えた。

「ナ、ナニヨ・・・ツグナワセル、ッテ・・・」

怯えた様子でしぃが訊く。もう、当初の強気な態度はどこを探したって見つかりそうに無い。

「それは・・・」

ちびギコは呟きつつ、何と、傍らに落ちていたしぃが生み出した汚物を手で大量に掴んだ。
そして、しぃを侮蔑と憎しみを込めた視線で一瞥した後、しぃの口をもう片手で抉じ開けて――

「―――こうデチっ!!」

グチュボッ!

手にしていた汚物を、しぃの口腔内へと捻じ込んだ。

「ギョブッ・・・!!?ゴボッ、グベェ・・・」

苦しそうに呻きながら、しぃは口いっぱいに広がる糞尿を何とか吐き出そうとする。
しかし、ちびギコがそれを許さなかった。
ちびギコは片手で口を抉じ開けさせたまま、もう片手で次々と、悪臭を放つ汚物を口に捻じ込んでいった。

グチュッ!ブチャッ!

粘着質な音が響くたびに、辺りを強い悪臭が通り抜け、残りの3人の顔をしかめさせた。

「オギュゥゥゥゥ・・・ジョェェェェ・・・」

最早喋る事など出来ず、しぃが唸るような声を漏らす。
それでもちびギコは手を止めない。

「ほらほら、自分が出した物は自分で片付けなきゃ・・・ダメデチよっ・・・!」

言いながらも手は休めずに、溢れるほどにしぃの口へ汚物を詰め込んだ。
『自分で出した物は自分で片付けろ』―――罪を償わせるとは、こういう事だったようだ。
気が付けば口の中はもちろんの事、喉まで完全にパンパンに膨らんでいた。
粘性が高い上に当然美味くも無い糞尿は、この上なく飲み下し難いようで、しぃは

「モギュゥゥゥゥゥゥ・・・ウッ、ゴウェェェェェェ・・・」

異質な呻きを漏らす。どうやら窒息しているようだ。
そこでちびギコはというと、

「ちびモナ!ガムテープ貸してデチ!」

ちびモナを呼んだ。
ちびモナは鼻を摘みながら、箱に入ってたらしいガムテープを丁度良い長さに切り、ちびギコに手渡す。
「ありがとデチ」とお礼を言いながら、ちびギコは受け取ったガムテープをしぃの口に貼った。
一番大きな『口』という穴を塞がれたしぃは、これでもう体外へ汚物を吐き出すことがほぼ不可能となった。
そこからちびギコは、固めた拳をそのアフォしぃの右頬に叩き込んだ。

ドガッ!

「ゴヴェッ!」

口からでは無く、喉から直接出ているような悲鳴、というか呻き。
ちびギコはそれから、何度も何度もしぃの顔に拳を叩き込み続けた。

バキッ!ドゴッ!ガッ!ベキィ!

「ン゙ン゙ーーーーッ!ヴォゥゥゥゥゥゥ・・・グヴェェェェ・・・」

何十回も顔を殴打されたしぃは、くぐもった悲鳴を上げ続けていたが、

ゴガッ!バキョッ!ズガッ!

「ヴォゥゥゥ・・・ア゙・・・・・・ゴォォォゥゥゥゥ・・・」

その声もだんだんと小さくなっていき、

ドッ!ボキッ!メキッ!

「ドゥ・・・・・ア゙・・・・・・・・・ゲ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゴブッ」

―――やがて、完全に聞こえなくなった。

936 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:37:41 [ LaCVn4Ks ]
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

殴り続けていて疲れたのか、ちびギコは暫く肩で息をしていたが、ふとしぃが静かになったことに気が付いた。
見ればしぃは、白目を剥いて鼻から口に詰め込んだ筈の汚物を垂れ流しており、何とも醜い有様であった。
ちびギコは試しにその動かないしぃを突き飛ばしてみた。
ベチャッ、と音を立てて汚物の山に突っ込んだしぃ。ちび達は少しの間観察していたが、遂に指一本動かなかった。

「・・・仕留めた、デチ」

暫く黙っていたちび達だったが、ちびギコの呟きがその静寂を破った。
するとそれを皮切りに、ちび達は歓声を上げるのだった。

「よっしゃぁーーー!任務完了モナ!!」

「完全勝利、だからなっ!」

「どうにか、ね。みんな、お疲れ様!」

「イヤッホゥ!」

それぞれ喜びを全員で表現するちび達。
喜び冷めやらぬ4人はハイタッチを交わそうとした―――のだが、ちびしぃが不意に叫ぶように言った。

「ちびギコ君、手!手!!」

ハッとしてちびギコは手を見る。その手にはまだビニール手袋が装着されており、アフォしぃ達の糞尿で汚れていた。

「あ、危なかったデチ・・・」

ちびギコは慌てて手袋を外した。その慌てぶりが妙に可笑しくて、3人はクスクスと笑った。

「じゃ、気を取り直して・・・」

ちびギコが戻って来たのを確認すると、ちびモナが言った。
せ~の、と4人はタイミングを合わせ、一斉に言いながら互いの手を叩いた。

「任務達成、お疲れちゃ~~~ん!!」

パチン!

今度こそちゃんと、乾いた音が公園に響き渡った。

937 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:40:06 [ LaCVn4Ks ]
―――あれから。
ちび達はモララーに電話を掛けた。任務達成の報告をする為だ。
ちびギコから、アフォしぃ達を全員討伐した事、4人とも怪我も無く無事だという事を告げると、モララーは、

「本当かい!みんな、ご苦労様。よくやってくれたよ。あ、今またおにぎり君を向かわせたからね」

そう言って、4人の労を労った。
電話を切って暫くの後、

ブロロロロロロロ・・・

再び聞こえてきたバイクの音。
バイクは先程と同じようにちび達の前で止まる。
ヘルメットを取ると、現れたのはやはりおにぎりの顔。

「やあ、ちびちゃん達。本当にご苦労様わしょーい」

おにぎりも4人に労いの言葉を掛けた。
それからおにぎりは、これからの事を4人に説明した。

「アフォしぃ達の死体とか汚れは、僕達が綺麗に片付けておくわっしょい。
 だから、今日は別にこのまま帰っていいわっしょい。
 そうそう、ギャラなんだけど・・・アフォしぃ2匹とベビ1匹、計3匹駆除で、1200円分ね。
 今すぐ使うかい?」

因みにギャラについてだが、相手が子供であるという事も考慮してか直接現金を渡すわけではない。
簡単に言えば、『ギャラの金額分好きな物を買ってあげるよ』という事である。
おにぎりが1200円『分』と言ったのはここに理由がある。
4人は少しの間思案した後、

「今日はやめて、明日にするからな」

結論を、代表してちびモラが告げた。
おにぎりは頷き、

「わかったわっしょい。それじゃあ、今日はもうお帰り。疲れてるでしょ」

そう言って帰宅を促した。
ちび達は揃って「はーい!」と元気に返事をすると、

「じゃあ、また明日モナ!」

「みんな、明日は遅刻しないようにね!」

「その言葉、僕らはともかくちびギコにはもっと言ってやった方がいいからな!」

「それどういう意味デチか!」

口々に言いながら、それぞれの家路に着くのだった。

938 名前:へびぃ 投稿日:2007/02/13(火) 20:40:57 [ LaCVn4Ks ]
―――翌日。
今日も短縮授業で学校は午前中のみ。
昼食をとった後、4人はまた『AA平和記念公園』に集合していた。
昨日、アフォしぃに汚されまくったとか、そいつらを虐殺したとか、そんな事など全く気付かせないほど、公園は綺麗に掃除されていた。
その為か、今日も公園は人が沢山いた。ちび達の同級生、丸耳モナも来ていた。もちろん、傍らには妹。遊具で楽しそうに遊んでいる。
昨日貰ったギャラの半分ほどを使って、お菓子を大量に購入したらしく、ちび達の手には大きめの袋。
集まった所で、ちびモナが言った。

「じゃあ・・・今日は何をして遊ぶモナ?」

そこで3人は、一斉に案を出し始めた。

「影踏み!」

「障害物競走!」

「棒上りは?」

その時、ちびギコが不意に言い出した。

「ここは鬼ごっこなんてどうデチか?昨日出来なかったし・・・」

すると、それを聞きつけたちびモナ、ちびモラ両名が、聞き捨てならんといった様子で口を挟んだ。

「ちょい待ち!だったらかくれんぼの方がいいからなっ!」

「何をぅ!サッカーの方が面白いに決まってるモナ!」

そしてぎゃあぎゃあと揉める3人。昨日と同じであった。その横で、クスクス笑うちびしぃ。
いつもと何ら変わらない光景。その様子はまさにどこにでもいる仲良しな小学生の子供達。
こんな子供達が虐殺をしていたなどと、誰が信じられるだろうか。
―――いや、これでいい。
こんな子供達が虐殺をする必要性など、無い方が良いに決まってるだろう。
少し悲しい事に子供達の虐殺には需要があるが、その時以外は、普通の子供で良い。そうであってほしい。

「こうなったら・・・勝負して決めるからなっ!」

暫く騒いでた3人だが、不意にちびモラがそう言った。
それを聞いたちびギコは、

「よ~し、受けてた・・・ちょっと待ったぁ!もう騙されないデチよ!」

途中で何とか気付いたらしかった。
それを見たちびモナは、

「いやあ、いくら単純なちびギコでも、流石に2回連続は・・・」

からかうような口調で言う。
それを聞いたちびギコは再び、

「誰が単純デチかっ!」

大声でまくし立てるのだった。
一連の騒動を横から見ていたちびしぃは、耐え切れなくなって大声で笑い出した。
その笑い声を聞いて、ちびモラも笑い出した。
ちびモナも、笑った。
遂にちびギコも、大きな声で笑い始めた。
午後の暖かい光が差し込む公園に、子供達の笑い声がはじけた。


―――この町は、今日も平和。






【完】