ハクノカミ
なんじゃここは。まったく、 狭苦しすぎて尻尾も伸ばせんぞ。
……ふむ、まぁよい。改めて名乗る必要があるかは 知らぬが、わらわはハクノカミ。そうじゃ、おぬしらが 古代龍と呼ぶその龍じゃ。
先ほどの戦いぶりは見せて貰った。人の身でありながら 中々やるようじゃが、こうして近くによって納得したわ。 おぬし、あの者の子孫か何かか。
わらわが眠りにつく前、人間と魔物共が 小競りあってた頃じゃが……どんくらい昔じゃったかの。
千年前? ……なんじゃ、たったそれだけしか 経っておらんかったのか。まぁその頃じゃ、おぬしの 気によく似た奴が人を率いとったのを憶えておる。
種族間での争いなんぞ茶飯事、どーでも 良くて放っといたんじゃが、その頃どっかの神が 人を滅ぼすのに参加しろだのうるさくてのぉ。
あんまりうるさいもんじゃから、なんも 聞こえぬよう結界を張って寝ておったわけじゃ。
まぁ、どういう訳かその結界は破られ こうして目覚めてしまった訳じゃが。 一体何事じゃ。
……なるほどの、神の奴、また性懲りもなく 人間を滅ぼすなどというておるのか……。
……よし、決めたわい。 おぬしら人間に力を貸してやろう。
何をきょとんとした顔をしておる? もっと嬉しそうな顔をせんかい。
神だの人間だの悪魔だのにはさほど興味はない。 じゃがまぁ、わらわの分身でもあった龍玉、 その欠片を集めた礼くらいしてやろうということじゃ。
わらわの力の大部分を龍玉に封じておった故、 それが破壊されてしまった今、使える力なぞ この人の身で振るえる力程度にはなるがの。
なに、欠片が集まれば、 そのうち力も自然に戻るじゃろうて。 わらわの事は心配するでない。
各地で降り続く雨は欠片の力の暴走が原因じゃ。 それに関しても欠片を集めさえすれば、 わらわの方でコントロール出来よう。安心せい。
それではよろしく頼むぞ。 さぁ、まずは寝床を用意せい。わらわはまだ眠り足りん。 用事がある時は起こすがよい。