第二次妖怪大戦

アンナ

ヒエンさん、妖怪の総大将ぬらりひょんは
まだ見当たりませんか？
ずいぶんと奥まで来ましたが……。

ヒエン

アンナ殿、お気を抜かぬように。
いつ遭遇するやも分かりませぬ。
この洞窟の奥には、昔封じられた凶悪な妖怪が――

――ッ！？
そこにいるのは分かっているぞ！
出てこい、妖怪総大将ぬらりひょん！

ぬらりひょん

ヒョッヒョッ。もう嗅ぎつけて来おったか。
だが遅い、遅いのう！
既に封印は解かせて貰ったわッ！

アンナ

封印……！？
貴方は一体ここで何をしていたのですか？

ぬらりひょん

この国の者ならば、一度は耳にした事があろう？
鬼の頭領酒呑童子と四天王の昔話をのう……。
わしは、その封印を解いたまでよ。ヒョッヒョッ。

ヒエン

酒呑童子と四天王、だと……。
やはり伝承は本当でござったか！
そのようなものを解き放つとは！ 覚悟せよ！

ぬらりひょん

ヒョッヒョッ。怖や怖や。
……さて、わしは酒呑童子に
四天王が復活したことを伝えに行くかのう。

妖怪共よ、こやつらを足止めしておくのじゃ！

アンナ

王子！ 妖怪がこちらに向かってきます！
戦いの準備をお願いします！

アンナ

妖怪達を全て退けたようですね。

？？？

……間に合わなかったか！
くそっ……。
全ての封印が解かれてしまったわ……。

ヒエン

ぬらりひょんの気配は消えたか……。
して、其方は？

ヒバリ

私の名はヒバリよ。まさか私以外にも
妖怪達と戦う者がいるとはね……。
妖怪達を退治してくれたこと、感謝するわ。

アンナ

そんな、当然のことをしたまでです。
ヒバリさん、ぬらりひょんが解いた封印について
何かご存じなのでしょうか？

ヒバリ

大体のことはね……。
けど、いいの？
知ってしまえば、貴方たちも一緒に戦う事になるわ。

ケイティ

覚悟は出来ています！
それに私達は、これまで何度も
ぬらりひょんや妖怪達と戦ってきましたから。

アンナ

きっとヒバリさんのお力になれるはずです。
是非とも協力させて下さい。

ヒバリ

助力の申し出、感謝するわ。
……分かった、貴方達に全てを話してあげる。
みんな、私についてきて。

ヒバリ

改めて自己紹介するわ。私はヒバリ。
鬼を退治することを使命とする、
名刀「鬼切」を受け継ぐ者よ。

先程、ぬらりひょんが解いてしまった封印は、
鬼の頭領酒呑童子の配下である四天王の一人、
水の力を操る鬼を封印していたものなの。

まずは酒呑童子の事から話さないといけないわね。
酒呑童子は、千年戦争の頃に突然現れ、
絶大な力で各地の鬼を配下にしていった鬼の頭領よ。

けどね、酒呑童子の天下はそう長くは続かなかったわ。

なぜなら、当時の「鬼切」の使い手が、
酒呑童子を倒して封印したからよ。

でも、封印される前に、
酒呑童子は力を5つに分け、
自分の配下に与えていたの。

どうやら、酒呑童子は
その力で自分の封印を解かせるつもりだったみたい。

だけど、力を与えられた鬼達も、
「鬼切」の前に敗北し封印されたの。
戦いはとても激しいものだったと聞いている……。

それからは、平和な日々が続いてたのだけど、
魔物が復活して、ぬらりひょんが
鬼達を仲間にし始めてしまって……。

事もあろうに酒呑童子を復活させてしまい、
部下になった酒呑童子の力を取り戻すために、
四天王の封印さえも、解いてしまったの……。

四天王全員が復活した今、
酒呑童子はかつての力を取り戻しつつある。

このままでは、
東の国だけの問題ではなくなってしまう……。

でも、手が無いわけじゃないの。

四天王を封印していた『封印の札』を鬼から取り戻して、
再び封印を施せば、酒呑童子も力を取り戻せなくなるわ。

札は破壊出来ないように呪文が込められているから、
鬼達がまだ持っているはずよ。

だから、ぬらりひょんを追ってさえいれば、
『封印の札』を持っている鬼達に出会うはずだわ。

王子……私に協力してくれるのであれば、
貴方達はぬらりひょんを追ってほしい。
代わりに私は酒呑童子を探すわ。

……ありがとう！
貴方達となら、きっと上手くいく気がする……。
何としてもぬらりひょんの野望を打ち砕くわよ！

足軽

いいが！女子供は先に逃げんろ！
しんがりは、オイラたちでしっかり支えんど！！

ヨジロウ

おまんら、気合入れんとやられっぞ。
俺たちがやられたら終わりだかんな！

アンナ

王子！ 村が妖怪に襲われています！
加勢しましょう！

足軽

どなたか知らんが助かった！
村に、まだ人が取り残されとるんじゃ！
救助するまで、まだ下がるわけにはいがねえ。

ヨジロウ

見たところ、随分腕の立つ方々とお見受けする！
おまんらに妖怪共を任せてもいいが？

アンナ

お任せください！
王子、村の人を守りながら戦いましょう。

アンナ

村を襲っていた妖怪は
全て退治できたみたいですね。

ヨジロウ

ありがとうございます。
村のやつらも無事でした。
なんとお礼ばしたらいいか……。

アンナ

いえいえ、礼には及びません。
それより、妖怪が何故この村を？

足軽

わがんねえ……妖怪が軍団で襲って来て、
オイラたちは村人を逃がす事だけで
精一杯だったんだ。

ヒエン

――話途中に御免。
ご報告にござる。ぬらりひょん率いる
妖怪軍団が、都へ進軍しているとのこと。

別の報によれば都には酒呑童子がいるとのこと。
合流すれば大事になるのは
火を見るより明らかかと。

アンナ

ヒエンさん、偵察ありがとうございます。
王子、急いで都へ向かいましょう。

ぬらりひょん

ヒョッヒョッ。
もうすぐ酒呑童子がおる都につくわい。
こうもうまく鬼の頭領を部下にできるとはのう。

ヒバリ

――待て、ぬらりひょん！

ぬらりひょん

誰じゃお主は……んっ？
その刀はまさか……「鬼切」！？

ヒバリ

ふ、こんな場所で鉢合わせるとはね……。
酒呑童子を追っていたけれど、
まずは貴方から仕留めさせてもらう！

ぬらりひょん

その出で立ち、その覇気……成る程。
鬼退治の童というわけか。
邪魔くさいのが増えたのう……。

ヒバリ

邪なる鬼達の封印を解いた罪は重いわよ！
覚悟しなさい！

ぬらりひょん

ヒョッヒョッ。妖怪総大将のわしが
相手にしてもよいが、ヌシの宿敵は鬼であろう？
奴ならばこの先の都におるぞい。

ヒバリ

……ッ！

敵に塩を送るとはいい度胸ですね。
だけど、貴方の罪は後で裁いてやるわ。
私は使命を優先しなければ……。都に向かう！

ぬらりひょん

ヒョッヒョッ。あっさり騙されよってからに。
このわしが「鬼切」を放っておくと思ったか？
妖怪達！ あの童を追い、滅するのじゃ。

アンナ

――ぬらりひょん、逃がしませんよ！

ぬらりひょん

なんじゃ？
鬼切の童の次はお主たちか。

次から次へと、うるさい奴らじゃ。
先程の童は妖怪達に任せるかのう。
まずは貴様等を滅してくれるわ！

ぬらりひょんがいる間は
全ての妖怪の攻撃力と防御力が
アップします。

ぬらりひょん

ヒョーヒョッヒョッ。
さすがに強いのぅ……。
本気を出せば倒せるが、ここは退散するかのう。

格下にはもったいないが、酒呑童子を使い、
童と王子を一網打尽にしてやろうかのう。
わしは慎重で頭脳派なんじゃ。ヒョッヒョッ。

ユリアン

待て！ くそっ……。
王子！ 一刻も早く、ぬらりひょんを
追いかけよう！

アンナ

都へ急ぎましょう、王子。

酒呑童子

ようやくお会いできましたな、ぬらりひょん殿。
我ら鬼の一族、みな一日千秋の思いにて
この時を待ち望んでおりましたぞ。

ぬらりひょん

(ヒョッヒョッ。
鬼の頭領たる酒呑童子側が我が元に下るとは
これほどまでに心地がいいものか。)

悠長に構えてる暇はないぞ、酒呑童子よ。
今からお前の宿敵「鬼切」の使い手と
王子軍がここに来るぞい。

酒呑童子

「鬼切」の使い手だと……ッ！？
我ら鬼の一族をあのような場所に封じた、
忌々しい輩が未だこの世に在るとは……！

ぬらりひょん

ヒョッヒョッ。解っておる解っておる。
長年封印されておったからのぅ。
思う存分、恨みを晴らすがいい。

今回はわしが、おとりとなってやる。
その代わりお主らは、奴らの裏を取れ。
挟み撃ちにして壊滅させるのじゃ。

酒呑童子

……了解致した。
鬼共！ 出陣するぞ！
(チッ、おいぼれが偉そうにしやがって。)

ぬらりひょん

頼んだぞ、酒呑童子よ。
……と、早速来たようじゃぞ。

ヒバリ

やけに静かね……。
都に妖怪が集まっているのは
間違いないのに……。

ぬらりひょん

飛んで火にいる夏の虫……。
まさに、お前たちのことだと思わんか？
のう、王子と「鬼切」の童よ。

覚悟しておけェ！！
全員まとめて切り刻んでくれるわ！！
出ろ！ 妖怪共！ 百鬼夜行じゃあああ！！

アンナ

王子！ 妖怪が向かってきます！
戦いの準備を！

ぬらりひょん

ぐっ……鬼の奴らは何をしておるんじゃ？
これ以上はさすがのわしも……！

四天王

どうした、ぬらりひょん？
まだ助けがくるとも思っておるのか？

ぬらりひょん

――なッ、ど、どういうことじゃ！？

四天王

オマエはここで死ぬんだよ、ぬらりひょん。
そうすれば酒呑童子様が妖怪の頂点に君臨される。
ククク……最初からこうなる運命だったのよ。

我ら四天王が復活を果たした今、
お前はもう用済みなのじゃ！
ガーッハッハッハッハ！

ぬらりひょん

な……、裏切っただと……だと？
おのれ……。

おのれェェェェェェェェェェェェェぇええ！！

アンナ

妖怪を全部倒したようですね。

ぬらりひょん

くちおしや……。くちおしや……。
妖怪の総大将たるわしが……。
鬼なんぞに……。裏切られるとは……。

ヒエン

力を使い果たしたか。
これではもう助からぬ。
年貢の納め時でござるな。

ぬらりひょん

人間ふぜいが……畜生……
妖怪の……理想郷が……
わしの夢も……ここで終わり……か……。

……。

ヒバリ

……息絶えたか。

ヒエン

酒呑童子の気配はもう、ここにはござらぬ。
拙者は酒呑童子を追う。
王子は、報せを待っていてくだされ。

アンナ

ヒエンさん、お任せします。
王子、それでは一旦帰還して
酒呑童子の対策を立てましょう。

忍者

あいつです！
間違いありません、
名刀「鬼切」を所持しています。

鬼刃衆

でかしたぞ！
「鬼切」を鬼刃姫様に捧げれば、
我ら鬼刃姫様の、積年の恨みが果たせる！

行くぞ！
我ら鬼刃衆の本気を見せつけてやれ！

アンナ

王子！！
鬼刃衆がヒバリさんを狙っています！！

ヒバリ

大丈夫よ。
こんな輩は巨万と相手をしてきたわ。

私の使命の邪魔をするやつは……
神仏だって斬ってみせる！

鬼刃衆

この人数を以ってしても倒せぬとは……。

鬼刃姫

くそっ、伝説の名刀「鬼切」さえあれば、
あいつを倒せるのに……。

鬼刃衆！ 次の手を使う、引き上げるぞ。

鬼刃衆

「アレ」を使うのですね！
総員、引き上げじゃあ！

アンナ

鬼刃衆は全員撤退していったようですね。
お疲れ様です王子、ヒバリさん。

ヒバリ

鬼刃姫か、あいつも鬼の一族に見えたけど、
鬼が「鬼切」を欲して、何をしようと言うの……？

アンナ

また何か仕掛けてくるかもしれませんね。
十分に注意しておきましょう。

イロハ

なんて、綺麗なのでしょう……。
ここがサクヤさんの、
思い出の場所なのですね……。

サクヤ

はい。
春になれば、桜の雅が更にここを美しく彩ります。
いつか、その美景を皆さんにも……。

(ヒバリ……かつて共に目にしたこの蒼天……。
今もなお、私たちは同じ空を見ているのでしょうか。
……あなたの身が、心配でなりません……。

イロハ

サクヤさん……？
あの……どうしたのですか？

サクヤ

思いが口をついていたとは……お恥ずかしい。
実は、私には妹がいるのです。
少々おてんばですが、芯の強き侍にございます。

……彼女には、果たすべき使命があり、
今はこうして私と行動を別にしていますが、
その性分ゆえ無茶をしていないか心配で……。

イロハ

果たすべき使命？
サクヤさんがそれほどまでに身を案じるとは、
よほど危険な責務を負っているのですね……？

サクヤ

はい……。
妹は、由緒ある「鬼切」という刀を受け継ぎ、
そして同時に、鬼と戦う使命を背負ったのです。

落ち武者

……オオォォオオ……。
……人間……にん、げぇぇん……オォォォオ……。
我らと共にぃぃ……死んでくれぇぇぇ……。

サクヤ

――ッ！？
あれは……死んだ武士達が物の怪の仕業で
魔物へと変えられてしまった者たちの様ですね。

サイゾウ

つまりは、『アンデッド』と同じ魔物か……。
死んでも尚、闘わせようとするとは、許せぬ！

イロハ

サクヤさんの思い出の地を守るためにも、
そして魔物化してしまった武士たちの魂の為にも、
魔物を討ちましょう……皆さん！

落ち武者

か、感謝……いた、す……。
これで、我らも…………
愛する……家族の、もと……へ……。

イロハ

討伐、完了しました……。
ですが、やり切れないですね……。

サクヤ

かつては平和だった地が、
このような参事の温床になるとは……。

(ヒバリよ……あなたもきっと
このような想いをしているのでしょうね……)

イロハ

サクヤさん……。

サクヤ

申し訳ありません。
皆さんに、心配をかけてしまっていますね……。
ですが、大丈夫です。

私はひとりではありません。
頼れる仲間と、信じるべき主君が居ます。
だから、私の心が迷うことはありません。

さあ、行きましょう。
王子と共に、復活してしまった酒呑童子を倒し、
この地に安寧を取り戻しましょう！

ヒエン

報告にござる！
新たなる敵の軍勢が、こちらへ向かっている模様！
恐らくは鬼の一族による――。

重水の四天王

――ついにぬらりひょんが逝きましたか。
妖怪総大将の末路が、ああも滑稽とは……。
げに現は無情なるかな……くっくっくっく……。

ユリアン

お前はいったい誰だッ！？

重水の四天王

申し遅れました。
私は重水の四天王にして、
酒呑童子様の忠実な僕にございます……。

我ら鬼の一族にとって目障りだった、
ぬらりひょんを見事討ち果たした人間たちに、
感謝の意を表すために、こうして参上した訳ですよ。

ヒバリ

そんな戯言を私たちが信じると思ってるの？

重水の四天王

くっくっく、私は其方の相手はいたしませんよ。
酒呑童子様と「鬼切」を受け継ぐ者の因縁に、
割り込む様な無粋な真似はしませぬゆえ……。

ヒバリ

酒呑童子……！？ ここにいるの！？

重水の四天王

酒呑童子様はこの先におられますよ。
今頃、我等四天王の力を
受け取っておられるのではないかな？

早く止めねば、手がつけられぬ様になりますぞ。
くっくっ。

ヒバリ

……くそっ。アンナさん、ここはお任せいたします。
私は急ぎ酒呑童子の元へ向かい、
力を取り戻す前に、奴を討ちます。

アンナ

分かりました。
どうかお気をつけて下さい。
四天王を倒したら、私達もすぐに向かいます！

重水の四天王

くっくっくっ……。
ぬらりひょんとの闘いで疲弊した、
貴方らの首を落とすなどたやすいこと。

さあ、死出のお覚悟を……くっくっくっく……！

重水の四天王

――ぐはぁッ！？
そ、そんな……ばか、な……。
この私が……圧倒されている……！？

ユリアン

戦い続きで疲れ切ってる俺たちを襲っておいて
その程度とはな……。
へっ、四天王が聞いて呆れるぜ！

重水の四天王

ぐ、ぬぬぬ……人間如きが……、
図に乗りよってぇ……なんという屈辱ッ……！

……ここは、一度酒呑童子様の許に……、
我等四天王の力を……結集させ……、
必ずや……貴様ら人間を…………！

イロハ

……気配が、消えた！？

ヒエン

いや、まだ微かに邪気を感じる……！
主、拙者は先行して彼奴の後を追うでござる！

イロハ

ヒエンさん、あんまり無茶をしないでください！
貴方だって、闘いの傷は浅くないのですから！

ヒエン

心配ご無用でござる！
それよりも、主達も気を緩めぬよう注意されよ！
では、御免ッ！！

アンナ

ヒエンさん、お願いします。
それでは王子、準備ができ次第、
私たちも後を追いましょう！

カヨウ

もぅ、イナリちゃん急に呼び出してどうしたのよ。
それに……、妖怪も集めちゃって、どうしたの？

イナリ

ふっふっふ、カヨウさん！
あたしたちの時代が来たのよ！
この巻物を見て！

カヨウ

なぁに？
……妖怪の総大将は、総大将に認められた者か、
倒した者が次期総大将となり、受け継いでいく？

イナリ

そうなのよ！
妖怪の総大将ぬらりひょんを倒したのは
誰だと思う？ 王子なのよ！

カヨウ

あらぁ～♪
本当ね、イナリちゃん。私達が王子を倒して
認めさせれば妖怪の総大将じゃない。

イナリ

だから、こうして妖怪を集めて王子に
せんせんふこくをしたのよ！！！
そろそろ来ると思うわ！

アンナ

王子、どうやらここみたいですね。
イナリさんから、お祭りに誘って頂いた場所は。
……あ！ あちらにイナリさん達が――

――えぇ！？ よ、妖怪がいっぱい！？
ど、どういうことなのでしょうか？

イナリ

よく来たわね！ 妖怪の総大将「王子」！

あたしたち妖狐が次期妖怪の総大将になる為にも、
ここは全力でいかせてもらうからね♪
さぁ、覚悟しろ～、王子ぃ！

アンナ

理由はよく分かりませんが、
戦闘は避けられそうにないですね……。
王子、戦いの準備をお願いします！

イナリ

きゅぅ～。
やっぱり王子は強かったね、カヨウさん。

カヨウ

もぅ、ちゃんと準備しないからよイナリちゃん……。
今日のところは降参しておきましょ。

アンナ

イナリさんにカヨウさんまで……。
妖怪の総大将とは、
それほどまでになりたいものなのでしょうか？

イナリ

うん！ 妖怪の総大将になったら、
この世の全てを手にいれることが出来るって、
この巻物に書いてあるんだから！！

ケイティ

ちょっとその巻物を見せてください。

ん～？ ちょっと私には読めませんね。
ヒエンさん、読めますか？

ヒエン

巻物の解読ならば得意でござる！
え～何々……。

著作……偉大なる妖怪の総大将ぬらりひょん。
四項……総大将の特権。
うむ、ここでござるな。

「妖怪の総大将を自称しておけば、
のらりくらりとした単純な妖怪たちは意のままに操れる。
規模が大きくなれば、それだけで妖怪が慕ってくる」

アンナ

イナリさん……この巻物全部読みましたか？

イナリ

ううん！ 最初に書いてあったから、これだ！
って思って、妖怪の総大将の王子を
倒そうとしたの！

でも、これを見ると、妖怪総大将の肩書きには
そこまでの価値はなかったんだねぇ……はぁ～ぁ。

カヨウ

残念ねぇ。
イナリちゃんと、総大将になったら
王子を馬にして一生こきつかうって約束したのにね。

アンナ

王子……。
そんな事の為に倒されそうになっていたのですか。