イレニカスの最初の日記

Last-modified: 2012-03-19 (月) 19:42:02

イレニカスの最初の日記 (MISC9I)

このような文が後世に残るのは恥ずべきことなのだろうが、書くことで考えを整理しなければ、この呪われた頭から溢れ出てしまうだろう。

スペルホールドは今や私の手中にある。痺れから回復すると、手早く抵抗を排除した。微々たるものであった。監督官のワネフは私の魔法に予定外の反応を示し、好都合にも心を失したようだ。その呪文が何だったのかは思い出せないが…おそらくサルダネッセラーの寺院で耳にしたものか何かであろう。…今となってはどうでも良いことだ。

私の病は確実に進んでおり、「故郷」についての記憶もほとんど残っていない。家族らしき顔が思い浮かぶが、名前が思い出せず、夢に見る感情も色褪せてしまっている。母なる自然の胸にずっと抱かれていたかのように思えることもあるが、これも滅多にない。若きエルフの力と怒りがみなぎりつつも、精神だけが老いてしまったようで、腹立たしく思える。

ボーディは今の私よりもよく呪いに耐えていたが、彼女の方が精神が堅固であり、ましてやアンデッドだったのだ。彼女は今や-それが死の呪いを食い止められなかったにもかかわらず-ヴァンパイアであることに陶酔しきっている。死ぬべき運命を受け止め、それ故の緊迫感に酔いしれていたが、今の彼女は混乱しているようだ。イモエンの魂によって回復した今も、その欲するものは明白で、単純とすら言える。欲に溺れつつも、怪物と化してしまったことをエルフとしての自分が軽蔑しているのだ。

「妹」を哀れに思うところなのだろうが、心をよぎるのは爆発的な怒りでしかない。エレシームの手によって感情を失い、人間-か何か、低俗な蛆虫のごとき低俗な心しか、私には残されていないのだ。この体たらくに甘んじたままでいるものか。

スペルホールドにはなかなか利用価値がありそうだ。原始的ながら、ここではかなりの間、囚人を使って実験を繰り返していたようだ。器材を私の手で改良し、儀式の準備は既に終わらせてある。イモエンはもはや用済みだが、おとりとしてならまだ役立つこともあろう。遅かれ早かれ、<CHARNAME>がここに現れるはずだ。

ボーディは私が頼んだ以上に多くのアサシン共を送り届けてくれた。前もって何人かは処分したが、勿体のない話だ。彼女も半ば、意図的にそうしたのであろう。余った者を地下の迷宮内に放ち、狩りを楽しんでいたからだ。あの貪欲さと、アンデッドにもかかわらず非常に「活き活き」としている様には目を見張るものがある。イモエンの魂の為せるところなのだろうか。じきに、私にもわかるであろう。早く来い、<CHARNAME>。