スキャナー

Last-modified: 2012-03-12 (月) 11:55:33

概要

色が判明している物(カラーチャートや白帯)をスキャンし、そのスキャンデータと正しい色のデータとを比較して、そのスキャナーの出力データの精度を高めるのに役立てる。

IT8キャリブレーション

スキャナーの場合、正しくは、キャリブレーションではなくデバイスプロファイリング(キャラクターライゼーション)である。
「IT8ターゲット」という、国際標準規格*1に準拠したカラーチャートを用いる。
IT8ターゲットには、プリントされている各色の実測データがセットで付いている。

IT8ターゲットの購入

プロファイル作成ソフトにIT8ターゲットが添付されていない場合、次のサイトから購入するのが一般的である。

  • Wolf Faust
    http://www.targets.coloraid.de/
    反射原稿用は、Use with(用途)がreflective (flatbed) scanner[反射原稿用(フラットベッド)スキャナー]である、R1又はRFを購入する。R1はコダック製の紙にプリントされていて、RFは富士フイルム製の紙にプリントされている。経年変化の少ない紙、プリントの発色ムラの少ない紙が良いのだが、どちらの紙が良いのかは不明。
    価格はいずれも10ドル*2で、これに送料10ドル*3を足して、支払総額は20ドル(=二千円ぐらい)である。
    フィルム用は、Itemを見て、自分が用いているフィルムと同じ物を購入する。
    代金の支払いは、クレジットカードがあれば、PayPalを利用するのが最も簡単で手数料もかからない。
    代金を支払ってから10日間ぐらいで届く。

IT8キャリブレーションの手順

  1. IT8ターゲットを「色補正なし」(48bitカラー)の設定でスキャンする。設定方法は後述(2.色(カラー)の設定)。
  2. プロファイル作成ソフトが、そのスキャンデータとIT8ターゲットに付いてきた実測データとを比較し、そのスキャナーの色空間の特性を記述したICCカラープロファイルを作成する。
  3. 作成したICCカラープロファイルを次のフォルダに置く。そうすると、スキャナドライバの入力プロファイル(ソースプロファイル)のプルダウンメニューやPhotoshopの「編集/プロファイルの指定」のプルダウンメニューにおいて、作成したICCカラープロファイルが選択できるようになる。
  • Windows 7、Windows Vista、Windows XPの場合
    C:\WINDOWS\system32\spool\drivers\color
  • Windows 2000の場合
    C:\WINNT\spool\drivers\color
  • Windows NTの場合
    C:\WinNT\System32\Color
  • Windows 98、98SE、Windows MEの場合
    C:\Windows\System\Color
  • OSX 10.3 / 10.4の場合
    Library/Application Support/Adobe/Color/Profiles
  • OSX 10.5 (Leopard)の場合
    Library/ColorSync/Profiles

プロファイルを作成できるソフト

例えば次のようなものがある。IT8ターゲットの限られた色数からそのスキャナーが扱える全ての色についてどのような特性であるかを推測してプロファイルを作成するので、推測の仕方によりできあがるプロファイルの精度は異なるが、各ソフトのプロファイルの精度がそれぞれどの程度なのかは不明。

  • CoCa(Color Camera Calibratorの略)
    http://www.nla.gov.au/dohm/color-camera-calibrator
    SIPC(後述)の後継らしいソフト。
    使い方はSIPCとほぼ同じだが、設定項目が少し増えた。
    「4. Corrections」は、ターゲット画像が歪んでいる場合にチェックする。
    「5.Tweaks」のWhite Point設定は、1.0よりも上にすると明るくなり、1.0よりも下にすると暗くなる。White Point設定1.0で作成したプロファイルは、スキャンした原稿画像内の全てのピクセルのRGB値がIT8ターゲット画像のGS0のRGB値以下の場合にだけ正確に働く。IT8ターゲット画像のGS0のRGB値を上回るRGB値のピクセルがあると、それらは全て同一輝度(上限輝度)のピクセルとして、明暗差なしになってしまう。これにより、紙の凸凹した質感や薄いスクリーントーン描写などが消える場合がある。
    この現象を回避したい場合は、White Point設定を1.2~1.3としたプロファイルを作成し、用いる。
    1.2で問題はほぼ解消するが、原稿画像に極めて高いRGB値のピクセルがあった場合、それらは明暗差がなくなる。
    1.3にすると完全に解消するが、White Point設定が1.0から離れるほどプロファイルの精度が落ちるかもしれない。
  • EZcolor(イージーカラー)
    http://www.xrite.com/product_overview.aspx?ID=1320
    エックスライト社製。
    エプソン製スキャナーGT-X970に添付されている。
    エックスライト社では、かなり以前に販売を終了している。その後、エプソン販売がGT-X970用のパーツとしてEZcolorインストール用CD及びIT8ターゲットのパッケージを8,463円(代引き送料込み)で販売していたが、現在はIT8ターゲットのみ販売している。
    反射原稿用IT8ターゲットは8,000円ぐらい。
    他社製IT8ターゲットが使用できるのかは不明。
    ソフトはエックスライト社のホームページからダウンロードできるが、インストール時にシリアルが必要である。
  • VueScan
    http://www.hamrick.com/
    ハムリック・ソフトウエア製。
    「プロ版」が79.95ドルで、IT8キャリブレーションに対応しているとのこと。
    ソフトとは別にIT8ターゲットの購入が必要である。
  • i1XTreme
    http://www.i1color.jp/prd03.html
    エックスライト社製。
    販売を終了している。
    スキャナーのキャリブレーション専用ではなく、ディスプレイやプリンターなどもキャリブレートできるオールインワンパッケージで、非常に高価である。
  • SCARSE(Scanner CAlibration ReaSonably Easyの略)
    http://www.scarse.org/
    フリーウェアだが、IT8ターゲットの購入が必要である。
  • IPhotoMinusICC
    http://www.photographical.net/scanner_profiling2_2.html
    フリーウェアだが、IT8ターゲットの購入が必要である。
  • LPROF
    http://lprof.sourceforge.net/
    フリーウェアだが、IT8ターゲットの購入が必要である。
  • Profile Prism
    http://www.ddisoftware.com/prism/
    ddisoftware製。
    79.00ドル(IT8ターゲットを含む。)

IT8キャリブレーションを行う頻度

スキャナーの状態に何か変化があったときに行う。頻繁に行う必要はない。

IT8ターゲットの寿命

IT8ターゲットの色が経年変化して実測データとのズレが大きくなると、そのIT8ターゲットは寿命ということになる。保存状態にもよるが、寿命の目安は1年程度とのこと。

測色器を使ったキャリブレーション

非常に簡易なキャリブレーション

キヤノン製スキャナー

スキャナドライバ「ScanGear」→[拡張モード]→[画像設定]右側の∨を押すか、スライダーを下までドラッグする。下の方にキャリブレーション[実行]ボタンがある。
筺体内部に貼ってある白帯を基準として、正しい白色になるように自動的に調整する。

色(カラー)の設定

基礎知識

スキャナドライバの設定方法

  • キヤノン製スキャナーの場合
    スキャナドライバ「ScanGear」→[拡張モード]→[詳細設定]→[色の設定]
  • エプソン製スキャナーの場合
    スキャナドライバ「EPSON Scan」→[ホームモード]又は[プロフェッショナルモード]→[環境設定]→[カラー]

スキャナドライバの設定項目

  • 初期設定(キヤノン製スキャナーの「推奨」、エプソン製スキャナーの「ドライバによる色補正」)
    「原稿の色合いを、画面上であざやかに再現」(キヤノン製スキャナーマニュアル)するとのことだが、カラーマネージメントの詳細不明。IT8キャリブレーションを行った場合は、これを選択しないこと。
  • ICCプロファイルを使ったカラーマネージメント
    キヤノン製スキャナーの場合、「カラーマッチング」を選択する。エプソン製スキャナーの場合、[ICM](Windows)/[ColorSync](Mac OS X)を選択する。なお、スキャナドライバでカラーマネージメントを行うよりも、スキャナドライバでは色補正なし(後述)としてPhotoshopによりカラーマネージメントを行う方が処理速度が速いとの情報あり。
    • 入力プロファイル(ソースプロファイル)
      IT8キャリブレーションを行って、それにより作成したプロファイルを選択することが望ましい。IT8キャリブレーションを行っていない場合は、メーカーがそのスキャナー機種の標準的状態に基づいて作成したプロファイルを選択する。
    • 出力プロファイル(ターゲットプロファイル)
      通常、sRGBかAdobeRGBのいずれかを選択する。Windowsの場合、以前はカラーマネージメントシステムに対応したビューワーがほとんどなかったためAdobeRGBはあまり使用されていなかったが、カラーマネージメントシステムに対応したデジタル画像編集ソフト(PhotoshopやGIMPなど)で補正を行い、カラーマネージメント代行Susie Plug-in(参考:スキマ産業 ≫ Susie Plug-in)に対応しているビューワー(マンガミーヤ、Leeyesなど)を常用している場合はAdobeRGBを使用して問題がない。今後、広色域ディスプレイを使用する可能性があると思うならば、sRGBよりもAdobeRGBにしておく方がよい。
      • sRGB
        多くのディスプレイの色域はsRGBの色域に近いため、カラーマネージメントシステムに対応していないデジタル画像編集ソフトやビューワーで画像を開いても、色がそれほどずれずに済む。しかし、印刷物が使用できる色域にはsRGBの色域を超えた部分があり、そのような色を用いている印刷物についてsRGBへ変換すると、sRGBの色域を超えた色についてはsRGB内のなるべく近い色へと画像データが劣化してしまう。
      • AdobeRGB
        sRGBよりも色域が広く、印刷物の色域をほぼ満たす。しかし、それを活かすためには、カラーマネージメントシステムに対応したOS、デジタル画像編集ソフト(PhotoshopやGIMPなど)、ビューワー、広色域ディスプレイが必要である。カラーマネージメントシステムに対応していないデジタル画像編集ソフトやビューワーで画像を開いて、sRGBに近い色域のディスプレイに表示すると、色がずれて、地味な映りになってしまう。カラーマネージメントシステムに対応したデジタル画像編集ソフトやビューワーで画像を開いて、sRGBに近い色域のディスプレイに表示した場合も、ディスプレイの色域を超えた色が表示できるわけではないため、レタッチを行う場合には脳内補正が必要となる。
  • 色補正なし
    スキャナドライバが用いる色変換エンジン以外の色変換エンジン(ACE*4など)を使って、色変換を行いたい場合に選択する。48bitカラーで出力すること。そうしないと、スキャナドライバで色変換する場合と比べて不利になる。

Photoshopの設定

編集/カラー設定を選択し、作業用スペースのカラーのプルダウンメニューをクリックして開く。

  • スキャナドライバの設定項目が初期設定の場合
    sRGBを選択する。
  • スキャナドライバの設定項目がICCプロファイルを使ったカラーマネージメントの場合
    出力プロファイル(ターゲットプロファイル)と同じものを選択する。
  • スキャナドライバの設定項目が色補正なしの場合
    カラー設定は、何を選択しておいても構わない。
    色補正なしの場合は、編集/プロファイルの指定でスキャナーのプロファイルを指定する。そして、編集/プロファイルの変換でsRGBかAdobeRGBのいずれかへ変換する。スキャナーのプロファイルとしてSIPCにより作成したプロファイルを指定した場合は、変換オプションのマッチング方式において、「知覚的」を選択した場合と「絶対的な色域を維持」を選択した場合とで、かなりの違いがある。
    変換せずに、そのまま作業するという選択肢もある。変換しない場合で、かつ、SIPCにより作成したプロファイルを指定した場合は、カラー設定の詳細オプションのマッチング方式で、「知覚的」を選択した場合と「絶対的な色域を維持」を選択した場合とで、かなりディスプレイの映りが変わることに留意する必要がある。

レンダリング(色空間変換)

設定方法

Photoshopの場合は、前述のとおり。
WindowsVista及びWindows7の場合は、次のとおり
①コントロールパネルの「色の管理」を開く。
②詳細設定タブを選択する。
③「WCS色域マッピングへのICCレンダリング目的」の「既定のレンダリング目的」のプルダウンメニューをクリックして開き、好みのものを選択する。

選択の目安

(参考:レンダリングインテント « 色の話 « プロフェッショナル情報 | 彩り工房)
SIPCにより作成したプロファイルを使用する場合は、基本的に「絶対的な色域を維持」(絶対カラー メトリック)を選択する。ただし、特に広色域な原稿の場合は、好みにより「知覚的」又は「絶対的な色域を維持」のいずれかを選択する。

参考

レンダリングは、プロファイルの中にあるタグを用いる。
A2B0及びB2A0が「知覚的(Peceptual)」のためのタグ、A2B1及びB2A1が「相対的な色域を保持(Relative Colorimetric)」のためのタグ、A2B2及びB2A2が「彩度(Satulation)」のためのタグである。
A2Bとは、AtoB(AからBへ)ということである。Aは入力側(変換元)プロファイルで、Bは出力側(変換先)プロファイルである。A2Bはそのプロファイルが入力側(変換元)プロファイルである場合に使用され、B2Aはそのプロファイルが出力側(変換先)プロファイルである場合に使用される。末尾の0、1及び2は、レンダリングインテント(色空間変換の方法)を表す。
ICC Profile Inspectorを使って、AdobeRGB1998.iccやsRGB Color Space Profile.icmを開いてみると、これらのタグがない。そのため、Photoshopを使って、AdobeRGBからsRGBへ、あるいはsRGBからAdobeRGBへ変換する場合、マッチング方式が「知覚的」、「彩度」、「相対的な色域を保持」、「絶対的な色域を維持」のいずれであっても同一の結果となる。
また、キヤノン製スキャナーやエプソン製スキャナーのメーカー純正プロファイルを開いてみると、A2B0、A2B1、A2B2があるものの、それらの内容は全て同一であり、かつ、入出力チャンネルが無補正である。そのため、マッチング方式が「知覚的」、「彩度」、「相対的な色域を保持」、「絶対的な色域を維持」のいずれであっても同一の結果となる。
SIPCにより作成したプロファイルを開いてみると、A2B0及びB2A0はあるが、A2B1及びB2A1並びにA2B2及びB2A2はない。A2B0には「知覚的」として補正するための入出力チャンネル用補正カーブがある。WindowsやPhotoshopの設定が初期設定のままだと、「知覚的」として処理される。「彩度」又は「相対的な色域を保持」を選択した場合、それらのためのタグがないため、「知覚的」として処理される。「絶対的な色域を維持」を選択した場合、A2B0のうち「知覚的」として補正する過程は飛ばされる。


*1 IS0 12641
*2 購入数量が1-4 Targetsの場合
*3 Shipping Costs(送料)のWorldwide / Outside EU(EU外の世界中どこでも)
*4 ACEはAdobe Color Engineの略で、アドビシステムズ社製ソフトに搭載されているカラーマネージメントシステム