社会調査

Last-modified: 2009-10-08 (木) 14:38:46

社会調査とは
人々の意識や行動などの実態をとらえるための調査である。社会からデータをとる方法は、調査、実験、観察など各種ある。文章や映像等の内容分析、既に集計された統計データ(マクロデータ)の利用などの手法も用いられる。それらの中でも、社会調査は主に社会学においてよく用いられる。観察はとくに質問をせず、幼児や外国人など言葉が通じない対象に対しても可能な場合がある。それに対し社会調査は、何らかの質問を対象者に行うことが普通である。統計的社会調査を質的データを集める調査(量的調査)、事例的社会調査を量的データを集める調査(質的調査)と呼ぶことがある。ただし、質的調査とは、インタビュー、内容分析(content analysis, textual analysis)、会話分析、観察など多様な手法を指す概念であり、観察など調査と異なるものも含むため、調査という言葉で表すのは不適切という批判もある。た、調査票(または質問紙)を用いた社会調査をアンケートと呼ぶこともあるが、フランス語でenqueteは英語のinvestigationの意味、つまり、研究、探求、取り調べという意味である。調査用語でアンケートとは、少数の専門家に意見をきくことであり、調査票を用いた調査のことではない。

 

社会福祉調査の歴史―貧困調査の開始― 

★社会調査の源流として、次の調査を挙げる場合が多い。
・ジョン・ハワード(ホワード) 1770年からの監獄調査。 
 監獄の非人道的状態の放置を、イギリス、イタリア、ロシア、フランス等の現地の踏査により明らかにし、改善を訴えた。 
・ル・プレイ(プレー) (フランス) 『ヨーロッパの労働者』」
 労働者家族調査、家族を調査単位に金銭出納簿調査。1829年から。
・メイヒュー。貧民調査。貧民の状態を記述した。
・エンゲルス
 1845年『イギリスにおける労働者階級の状態』 Condition of the Working Class in England in 1844
 都市の貧困者の調査、、都市の人口やその状態の詳細などを考察した。

 

注意点

社会調査法は、ひとつの方法論を指すのではなく、社会学や人類学を中心に行われている様々な方法論や手続き、調査態度の総称です。どの方法を用いるかによって得られる情報は異なるため、調査を行う前に、まず自分が「知りたい」ことに迫るにはどの方法がより相応しいかをよく考えることが重要です。
社会調査は個人のプライバシーに関わるものである。回答者の個人情報を保護し、人権に配慮することが、社会調査の実施には極めて重要である。調査前には、調査内容を説明した上で、丁寧に協力依頼をすることが必要である。調査後には、個人情報の的確な廃棄などを行わなくてはならない。

 

社会調査の手法

結果の分析法により2つに大別すると、大量のデータをとり社会の全体像を把握することを目的とする統計的社会調査と、少人数へのインタビューや参与観察(特定の社会集団に自ら入り込み、人々の行動の変容までを見聞きし理解することによって、その社会集団についての深い理解を得る)などの事例的社会調査の2つに大別される。前者は無作為抽出を伴うことが普通であるが、国勢調査のように全数調査を行うこともある。

 

定量的手法(統計的社会調査=量的調査)

  • アンケート法(質問紙法)
    ⇒質問紙を用いた調査で、データを統計的に分析します。
    A 悉皆調査(全数調査)
    :母集団(「知りたい」集団)の全数を対象とします。
    B 標本調査(部分調査)
    :母集団から抽出(サンプリング)された集合を対象とし、その結果から母集団 を推計します。効率よく偏りのないサンプルを得られるよう注意が必要。
     

定性的手法(事例的社会調査=質的調査)

  • 面接法(インタビュー法)
    ⇒調査対象者と対面し、直接その人の話をうかがい、記録します。グループ・インタビューなどの方法もあります。
    :指示的面接(質問や選択肢を予め用意)と非指示的面接(回答を規定しない)
  • 観察法
    ⇒調査対象を、まさに「観察」する方法です。対象は必ずしも会話が成立しやすい人間だけではありません。収集した情報を定量的に分析することもあります。他に、実験的観察法なども。
    :参与観察(調査対象の内側から)と非参与観察(外側から)
  • 資料探索法
    ⇒あらゆる調査・研究の基礎といってもいいでしょう。文献・雑誌検索、新聞記事 検索、議事録や既存調査の利用など、まずは資料探索をする習慣を身につけましょう。
  • フィールドワーク
    ⇒実際にフィールドに身を置いて、面接や観察、資料探索などを実践します。手法というよりも、むしろ研究態度そのものを指す場合もあります。
  • その他
    ドキュメント分析、ビジュアル分析、インターネットのログ分析、音像の分析など…
     

傾向と問題点

日本では社会学において全国規模の社会調査も存在するが、2003年頃から、振り込め詐欺などのため、調査依頼はかなり警戒されるようになり、回答拒否が増え調査の回収率は低下傾向にある。また、2003年施行の個人情報保護法の影響による意識の高まりで、個人情報を含む調査も忌避されやすくなっている。2005年の国勢調査は、調査拒否が問題となり全国で4%ほどが未回収だった。とくに東京や大阪の中心部では約30%が未回収となり大きな問題となっている。
日本国内で政府による大規模な調査を請け負う調査会社は、時事通信社系の中央調査社と、新情報センターの2社であった。その他の調査会社は、自前の調査員を持たず、調査自体は小規模な会社に外注することが多い。2005年に、新情報センターの調査員による虚偽回答が大きな問題となり、政府は新情報センターの代わりに日経リサーチへ調査を発注することとなった。だが、日経リサーチは独自の調査員を持たないため、今後、調査能力や調査員の信頼性について十分な体制を構築できるのかという点について、調査関連学会から不安を指摘する声が出ている。

 

調査例

対象項目
 人口統計、経済統計、社会統計(狭義)、その他
対象主体
 個人、世帯、企業(組織)、地域
調査目的
 学術、政策、実利
一例として市場調査=市場に参加している供給者または消費者の供給・購入動向についての調査
1)消費者はどのような商品をどのような理由で購入しているか。
2)消費者はどのような商品を望んでいるか。
3)いくつかの商品のうち、消費者はどれを好むか。
など

 

関連ワード

  • 社会調査士(しゃかいちょうさし)とは
    社会調査士は、調査票を作成し、質的・量的調査を行い、様々な観点からその問題となる事象を調査・分析できる能力を有すると認められる者に対し、社会調査士資格認定機構が与える資格である。なお、社会調査士資格認定機構は、日本教育社会学会、日本行動計量学会、日本社会学会によって2003年11月29日に設立された機構である。資格取得には、規定されている大学で必要なカリキュラムを修了する必要がある。そのカリキュラムでは、体系的に調査方法を学び、フィールドワークを通じて体感的に能力を身に付けていくことが求められている。
     
  • 専門社会調査士とは
    高度な調査能力を身につけたプロの社会調査士です。
    調査の問題点や妥当性等の指摘はもちろんのこと、多様な調査手法を用いた調査企画能力、実際の調査を運営管理する能力、高度な分析手法による報告書執筆などの実践能力を有しています。大学院でより上位の、専門社会調査士の資格を得ることができる。 社会調査士資格それ自体がとても若いもので、資格取得者は大変少ない。