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Last-modified: 2007-06-14 (木) 22:20:37

ぴっ、ぴっ、ぴっ、ぽーん♪(時報)

セーラ 「はーい、お茶の間の皆さんこんばんは。今週もやって参りました、セーラ!」
ドロシー「(うわあテンション高いなこの人)ど、ドロシーの!」
二人  「かしまし! となりの晩御飯!」
セーラ 「って、何でドロシー? クラリーネとラーチェルは?」
ドロシー「いえ、なんだか『キャラが被ってる』とかで喧嘩になったらしくて、代わりにわたしが」
セーラ 「チッ、これだからお貴族様は……まあいいわ。今日の予定を話してちょうだい」
ドロシー「あっ、はい。えーと、本日は、任天都炎区紋章町にお住まいの、歴代主人公一家さんをご
     紹介したいと思います」
セーラ 「各所で話題のこの一家、なんと総勢15人!」
ドロシー「しかも兄弟だけでこの人数だそうで」
セーラ 「頑張りすぎねご両親」
ドロシー(セ、セーラさん、下品な言動は困りますよ)
セーラ (何言ってんの。近頃のアイドルは下ネタの一つも言えなきゃ大成できないのよ?)
ドロシー(いえ別にわたしはアイドルとかそういうのでは……)
セーラ 「それはともかく、今日はこの主人公一家さんの家に突撃しちゃいたいと思いまーす」
ドロシー「ええと、こちらは特別ゲストの」
セリス 「セリスです。皆さんよろしくお願いしますね」
セーラ (うっ、男のくせになんて可愛い笑顔……負けてらんないわね)
ドロシー「と、隣で激しく対抗心を燃やしてらっしゃるセーラさんのことは置いておいて」
セリス 「あはは、意外と厳しいですねドロシーさん」
ドロシー「こういうはっちゃけた聖職者の扱いには慣れているもので。
     で、セリスさんは……えーと、ご兄弟の中では何番目になるんでしたっけ?」
セリス 「んーと、ちょっと分からないですねー」
ドロシー「は? 分からないって言うと……」
セリス 「(指折りつつ)シグルド兄さんとエリウッド兄さん、ヘクトル兄さん、アイク兄さん。そ
     れにミカヤ姉さん、エリンシア姉さん。この辺りよりは年下だと思うんですけど、マルス
     やリーフ辺りになると曖昧になってしまって」
ドロシー「えーと、つまり、兄弟の誰がお兄さんで誰がお姉さんなのか、正確には分からないと?」
セリス 「そうです。シグルド兄さんとミカヤ姉さんが一番上だっていうのははっきりしてますけど」
ドロシー「そ、そうなんですか。噂以上にすごいご家庭のようですね」
セリス 「そうですか? 兄弟の順番なんて大した問題じゃないと思いますよ」
ドロシー(……あの、セーラさん?)
セーラ (何よ)
ドロシー(なんだかわたし、この家の中に入るのが怖くなってきたんですけど……)
セーラ 「甘いわねドロシー。こんなんでビビッてちゃトップアイドルになんて到底なれっこないわよ」
ドロシー「いやだからわたしは別にアイドルとかでは……ああもうどうでもいいや! さっさと突撃
     してさっさと終わらせましょう」
セリス 「あはは、ドロシーさんもなかなか元気な方なんですね」
ドロシー「ええまあ。面倒な神父……じゃなかった、面倒なことは早目に片付けておくのが癖なもので」
セリス 「そうですか。あ、だけどウチの皆って、知らない人の前だと本性隠したり三桁単位で年齢
     誤魔化したりするんですよ」
ドロシー(本性!? いや、それより三桁ってなに!?)
セリス 「だから、出来れば家に入らないで家の中を観察した方がいつもの生活を見せられると思い
     ますね」
ドロシー「はあ。だけど、家に入らないで家の中を観察するっていうのはどういうことですか?」
セリス 「これを使うんです」
ドロシー「綺麗な水晶玉ですね。これは?」
セリス 「僕の友達が作ってくれたんです。これを使えばいろんなものを受信して『セリス、ユリウ
     スと戦ってはなりません』ってなもんですよ」
ドロシー「よく分かりませんけど」
セーラ 「つまり、ここにいながらにして家の中を覗き見できるって訳ね」
セリス 「ご名答です」
ドロシー「なんで今の説明で分かるんですかセーラさん!?」
セーラ 「ふふん。この程度で驚いてちゃアイドルには(ry」
ドロシー「あーはいはい。それじゃセリスさん、早速お願いしますね」
セリス 「分かりました。えーと、とりあえず居間の様子を……」
ドロシー「あ、テーブルの前で頭を抱えてる人がいますね。何だか具合が悪そうですけど」
セリス 「あれはエリウッド兄さん。死にそうな顔色なのはいつものことですから気にしないでくだ
     さい」
ドロシー(いつものことなの!?)
セーラ 「で、エリウッドさんは何を……家計簿つけてるのかしら?」
セリス 「あー、今月もまた赤字かあ」

エリウッド「ふう……」
リン   「どうしたのエリウッド、ため息なんか吐いて」
エリウッド「ああリン。今月も我が家の家計はフォルブレイズなんだよ」
リン   「昨日まではボルガノンじゃなかったっけ?」
エリウッド「家計簿の武器レベルがUPしたのさ。赤ペンを使いすぎるのも考え物だね」

ドロシー「あの、なんか会話変じゃありませんか?」
セリス 「いえ、いつもどおりですけど?」
ドロシー(……やっぱこの家、なんか変)
エリウッド「フフフ……ただでさえ就学人数が多くて授業料が凄いってのに、エフラムは喧嘩して学
      校のガラス割りまくりの器物破損しまくり、挙句に盗んだバイクで走り出すし、シグル
      ド兄さんは考えなしに給料寄付しまくったり結婚詐欺に引っかかったり。僕の体はボロ
      ボロだよ」
リン   「あはは、大丈夫よそんなに心配しなくたって。今までだって何とかなってきたんだし、
      気楽に行きましょ、気楽に」
エリウッド(いや何とかなってきたんじゃなくて何とかしてきたんだけどね。主に僕が。でも折角励
      ましてくれるリンにそんなこと言うのは悪いし……)

エリウッド「うんその通りだねリン。ありがとう、何だか元気が出てきたよ」
リン   「どういたしまして。でもなんかその割に顔色悪いけど」
エリウッド「はははは、僕がひどい顔色なのはいつものことじゃないか」
リン   「いやいつも以上に……いつもどおりかしらね? まあいいわ。とにかく、あんまり無理
      しないでよ?」
エリウッド「もちろんだよリン。ははははははは、はは、はぁーっ……」

ドロシー(……なんだか見てて可哀想になってきたなあ)
セリス 「エリウッド兄さんって心配性なんですよねー。おかげで胃薬が欠かせないんですよ。で、
     その胃薬代でまた家計を圧迫するのを心苦しく思ってまた胃を痛めて」
セーラ 「なにその見事な悪循環」
ドロシー「あ、誰か帰ってきたみたいですよ」

ロイ   「ただいまー」
エリウッド「ああお帰りロイ。どこ行ってたんだい?」
ロイ   「リン姉さんに頼まれて、夕飯の食材の買出しに」
エリウッド「そうか。偉いねえロイは。全く、マルスやリーフやエフラムも少しはロイを見習って
      ……はぁーっ」
リン   「どうしてまたため息なんか吐いてるのよエリウッド……ああロイ、お帰り。ちゃんと
      買ってきてくれたわよね?」
ロイ   「うん、もちろん。お釣りは僕のお小遣いにしてよかったんだよね?」
リン   「ええ。何か買ったの?」
ロイ   「まあ、ちょっとね。さ、夕飯の支度しようよ。僕も手伝うから」
リン   「そうね。早く作らないと皆帰ってきちゃって、また鳥の雛みたいに騒ぎ出すし」
ロイ   「そうそう」
リン   「じゃ、わたしは台所で準備してるから」
ロイ   「はーい。……エリウッド兄さん、これ」
エリウッド「ん、何だいロイ……こ、これは!」

 胃薬を手に入れた!

ロイ   「お釣りで買ってきたんだよ」
エリウッド「でもこの胃薬かなり高いはずじゃ」
ロイ   「出来る限りお釣りが多くなるように、いろんなスーパー回って安いところ探して、タイ
      ムサービスも狙ったからね。ギリギリ間に合ったよ」
エリウッド「ロイ……うぅ、君の優しさが胃に染みるよ」
ロイ   「体は大切にしなくちゃ駄目だよ兄さん。それじゃ、僕はリン姉さんを手伝うから」
エリウッド「うんうん。ああ、僕はいい弟を持って幸せだなあ(ざーっ)」

ドロシー 「ってあの人瓶ごと胃薬流し込んでますけど!?」
セリス  「胃薬ジャンキーですからね兄さん」
ドロシー 「大丈夫なんですかあんなことして」
セリス  「大丈夫ですよ。まあたまに『オクレ兄さん!』とか言ってますけど」
ドロシー 「全然大丈夫じゃねぇーっ(ガビーン!)」
セーラ  (薬、か……案外使える手かもしれないわね)
ドロシー 「って何メモってんですかセーラさん!」
セーラ  「明日のために~アイドルになる百の方法~メモだけど?」
ドロシー 「アイドルってそういうものでしたっけ!?」
セーラ  「そういうもんでしょ。しっかし、あのロイって子もずいぶんいい子ちゃんみたいねえ。
      なんか裏がありそう」
ドロシー 「そんな。人間皆が皆セーラさんみたいな訳じゃないんですから」
セーラ  「あんたって何気に失礼よね」
セリス  「でも、ロイは本当にいい子ですよ」
セーラ  「えー、何それつまんなーい」
セリス  「まあ確かに面白くないですけどね。でも安心してください、腹黒な人は他にもいますから」
セーラ  「それを聞いて安心したわ」
ドロシー 「いや安心しないでくださいよ……それはそうと、ここで一旦CMでーす」

セーラ  「だからね、最近そのルセアとかいう娘がむかつくのよ」
セリス  「へえ、そうなんですか」
セーラ  「ちょっと綺麗だからっていい気になって清純ぶって愛想振りまいちゃって。いやよね男
      に媚びてる女って」
ドロシー 「あのセーラさん、もうカメラ回ってますけど」
セーラ  「……と、いう訳で、お待たせしましたお茶の間の皆様、引き続いて当局No1アイドル
      セーラちゃんが、主人公一家さんのご紹介をしちゃいまーす! みゃは☆」
ドロシー 「(疲れるなあホント)ええと、ただ今リンさんが夕飯の支度をなさっているところで…
      …あのー、セリスさん?」
セリス  「なんでしょう」
ドロシー 「なんか、居間のテーブル前のエリウッドさん白目剥いて泡吹いてますけど大丈夫なんで
      すか」
セリス  「ああ、胃薬の飲みすぎですね。大丈夫ですよいつものことですから」
ドロシー 「いつものことなんだ……」
セリス  「『スリープ 5』みたいなもので、放置していれば治りますから」
ドロシー 「え、でもそれならレストぐらいかけてあげても」
セリス  「そういうの使うと逆に怒るんですよエリウッド兄さん。『杖代がもったいないじゃない
      か』って」
セーラ  「ふーん。やっぱり貧乏臭いお家なのね」
ドロシー 「セーラさん、少しは自重という言葉をですね」
セーラ  「あ、また誰か帰ってきたみたいよ」
セリス  「ああ、あれはマルスですね。ちなみに第一部で生足晒してるヴァージョンですので」
ドロシー (何の話なんだろう……)

マルス  「ただいまー」
ロイ   「(とたとた)お帰りマルス兄さん」
マルス  「やあロイ、お出迎えご苦労。君は実に立場というものをよく分かってるね。ご褒美にエ
      リウッド兄さんのデュランダルをあげよう」
ロイ   「やっぱりマルス兄さんが持ち出してたんだ……いらないよそんな重い剣。そんなことよ
      り、気をつけた方がいいよ」
マルス  「なにが?」
ロイ   「エリウッド兄さんだよ。マルス兄さん、また何かやったでしょ。怒ってたよ」
マルス  「うーん、どれかな」
ロイ   「何個か候補があるんだ」
マルス  「まあ大丈夫だよ、エリウッド兄さんなら誤魔化すのも容易いって」

ドロシー 「……腹黒ってこの人ですか」
セリス  「まあ言うほどじゃないですけどね」
ドロシー 「いや十分……あ、居間に入った途端早速エリウッドさんに捕まってますね」 エリウッド「待ちなさい、マルス」
マルス  「何ですかエリウッド兄さん」
エリウッド「とぼけても無駄です。また竜王さん家のメディウスお爺さんを苛めましたね」
マルス  「苛めただなんてそんな、人聞きの悪い。悪い暗黒竜退治ごっこをしてただけですよ」
エリウッド「黙りなさい。ひどいでしょう、あんな体の弱ったお年寄りをファルシオンで小突き回す
      だなんて。可哀想に、すっかり目を赤くしておられましたよメディウスお爺さん」
マルス  「あのお爺さんの目が赤いのは昔からですよ」
エリウッド「またそうやって言い訳を。しかも最近ではメディウスお爺さんのお孫さんたちまでけし
      かけているそうじゃないですか」
マルス  「やだなあ。大丈夫ですよ、チキもファもお爺さんにブレスを浴びせかける遊びだと認識
      してますから。お爺さんが泣いているのは君たちに付き合って嘘泣きをしてくれている
      んだよと言い聞かせれば喜んで必殺霧のブレスを乱射して」
エリウッド「だからこそなおさら問題なんです! 少しは毎度毎度ヤアンさんに頭を下げる僕の身に
      もなりなさい。いいかいマルス、お年寄りには敬意と労りを持ってだね」
マルス  「(うるうる)ごめんなさい!」
エリウッド「クッ、またそうやって嘘泣きを……今日という今日はいくら僕と言えども」
マルス  「違うんです、話を聞いてくださいエリウッド兄さん」
エリウッド「いーや、今度という今度は」
マルス  「そんな、ひどい! 兄さんは模範的な騎士なんでしょう。弁解も聞かずに無実の人に冤
      罪を着せるのが騎士のやることなんですか。そんなのマチスやマカロフ以下じゃないで
      すか。僕には見える、兄さんの心で闇のオーブが怪しいオーラを放つのが!」
エリウッド「あのねマルス、君はいつもそうやって」
マルス  「ネルガル以下」
エリウッド「!!」
マルス  「あーあ、ニニアンさんも幻滅するだろうなあ」
エリウッド「……そこまで言うなら、話ぐらいは聞いても」

ドロシー 「ニニアンさんって誰ですか?」
セリス  「エリウッド兄さんの恋人ですよ。儚げな外見に似合わずめきめきと力が成長中のご婦人で」
ドロシー (想像がつかない……)
セーラ  「ふーん。じゃ、エリウッドさんはいつもあのマルスって子に丸め込まれてるのね」
セリス  「ところがそうでもないんですよね」

 ゴンッ!!

マルス  「いたっ! こ、この一切加減なしの拳骨は……」
リン   「こらマルス! またエリウッドを口先三寸で丸め込もうとしてるわね!」
マルス  「(ぼそっ)出やがったよ太股お化けが」
リン   「何か言った?」
マルス  「いえ何も言っておりませんお姉様。いやあ今日もお美しい。眩しいばかりのセクスィー
      な太股にラスさんもメロメロだろうなあ。それじゃ僕はこれで」
リン   「待ちなさい」
マルス  「何するんですか姉さん。僕学校の宿題があるんですよ。『史上最も悲惨な国について理
      由も挙げて考察せよ』っていう歴史の課題でですね」
リン   「そんなの適当に書いておけばいいでしょ。国名:ドズル、理由:スワンチカ(笑)とか
      なんとか」
マルス  「そうですか? 僕は国名:デイン、理由:緑風(笑)も捨て難いと思うんですけど」
リン   「どうでもいいのよそんなことは。全くもうあんたって奴は。毎度毎度表面的には優等生
      のくせに裏ではえげつないことばっかりやってるんだから」
マルス  「ひどいなあ。それは僕の意思じゃないですよ」
リン   「じゃあ誰の意思だってのよ」
マルス  「そうですね、具体的に言えば神の御指が操る十字のボタンと赤青緑黄の丸ボタンと言い
      ますか」
リン   「訳の分かんないこと言わないの。今回の悪事を正直に白状しなさい。ここで全部明かさ
      ないなら、今夜あなたの部屋にビラクとドルカスさんが現れることになるわよ」
マルス  「うわ、それは嫌だなあ。……本当に白状したら許してくれるんですよね?」
リン   「少なくとも罪は軽くなるわね」
マルス  「仕方ないなあ。白状します」
リン   「よろしい。で、メディウスお爺さんをイジめて、他には?」
マルス  「えーと。確か、喉が渇いたからマリーシアのシーフの杖で自動販売機の中身盗んで、山
      岳を飛行中のドラゴンナイトに上から大岩落として微妙な斧を強奪して、リフ和尚に大
      量の傷薬を送りつけて。そうそう、オグマの目の前でシーダといちゃついたりも」
リン   「前言撤回お仕置き決定」
マルス  「えーっ!?」
エリウッド(また謝罪の旅に出かけなくちゃ……ああ、胃が、胃が……)
リン   「やっぱあんたは体に覚えさせなくちゃ分からないみたいね」
マルス  「いやらしいですよ姉さん」
リン   「お黙り。家族皆の前で罪状読み上げながらお尻百叩きの刑に処してあげるから覚悟しな
      さいよ」
マルス  「セクハラじゃないですかそれは」
リン   「何とでも言いなさい。あんたに何言われたってわたしは絶対」
マルス  「若年増」
リン   「……」
マルス  「太股デブ」
リン   「……(ぷちんっ♪)」

 ばちんっ、ばちんっ、ばちんっ、ばちんっ!!

ドロシー 「うわっ、情け容赦ない往復ビンタの嵐!」
セーラ  「診てるだけでほっぺたが痛くなるわね……」
セリス  「あはは、いつもあれを喰らうせいでマルスは『紅顔の美少年』なんて呼ばれてるんですよ」
ドロシー 「うまいこと言ってる場合じゃないですよセリスさん。ああ、マルスさんがさっきのエリ
      ウッドさんとは別の理由で白目剥いて泡吹いて……」

 ばちんっ、ばちんっ、ばちんっ、ばちんっ!!

エリウッド「も、もう止めるんだリン。マルスのHPはとっくにゼロになってるぞ!」
リン   「何勘違いしてるの。わたしのお仕置きタイムはまだ終了してないわよ」
エリウッド「えぇ!?」
リン   「アイテム交換、勇者の剣! スキル・追撃! 乱数判定、スキル・連続! 乱数判定、
      スキル・流星剣!」
エリウッド「ああ、そんな、僕らがスキルを使うのは本来不可能なはずなのに」
リン   「さらに♪再行動! さらにどこかから聞こえるバードの笛の音! さらにどこかからア
      ゲインの杖!」
エリウッド「ずっとリンのターン!?」

ドロシー 「ちょ、何でアゲインの杖使ってるんですかセーラさん!?」
セーラ  「いや、なんかこうするのが礼儀じゃないかなあって」
ドロシー 「あああ、お茶の間がどんどん血みどろに……!」
セリス  「ここで一旦CMでーす」
ドロシー 「ナイスフォローセリスさん!」

セーラ  「うわ、もうCM終わっちゃったんだけど」
ドロシー 「ええと、セリスさん、惨劇の後片付けはもう終わったんでしょうか」
セリス  「ええ何とか。相変わらずエリウッド兄さんとロイのコンビネーションは素晴らしいですね。
      居間はすっかり元通りですよ」
ドロシー 「あれ、マルスさんの姿も消えてますけど……」
セリス  「部屋に戻ったんじゃないですか」
ドロシー 「え、でもあんなに怪我してたのに」
セリス  「部屋に戻ったんじゃないですか」
ドロシー 「……ええと」
セリス  「部屋に戻ったんじゃないですか」
ドロシー 「……そうなんですか」
セーラ  「っと、そんなことより、また一人帰ってきたみたいよ。何だかくらぁーい顔した子ね」
セリス  「ああ、リーフですね。僕とも年が近い、兄弟一の庶民派ですよ」
ドロシー 「庶民派って……要するに地味っていうことですよね」
セリス  「そうとも言いますね。髪の色も兄弟で唯一茶色で普通っぽいし」
セーラ  「にしては、両隣に女の子連れてるみたいだけど……え、なに、あんな地味なのにプレイ
      ボーイ?」
ドロシー 「身の程知らずな女ったらし……最低ですね」
セーラ  「うわっ、ドロシー恐っ! なに、なんかトラウマ持ち?」
ドロシー 「あ、いえいえ、別に何も」
セリス  「あははは、二人とも誤解してますよ。あれは女の子を連れてるんじゃなくて、連れられ
      てるんです」
ドロシー 「どういうことなんでしょう」
セリス  「まあ、見ていれば分かりますよ」

ナンナ  「あのー、すみませーん」
ミランダ 「リーフ君を引きずって……じゃなくて送ってきたんですけどー」
サラ   「……送ってきたわ」
エリウッド「はーい。ああ、ごめんね皆。今日もウチのリーフが迷惑かけたみたいで」
ナンナ  「いえ。さあリーフ様、お家に着きましたよ」
リーフ  「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ……」
エリウッド「ああ、今日もまたひどい落ち込みぶりだ。一体何があったのかな?」
ミランダ 「まあ、何と言うかいつもどおりのパターンで」
サラ   「……リーフは根性なし」
エリウッド「ってことは、また馬鹿にされた訳か。こらリーフ、駄目じゃないかそんなことでいちい
      ち落ち込んでいちゃあ」
リーフ  「……エリウッド兄さんに僕の気持ちが分かるもんか」
エリウッド「やれやれ……とりあえずありがとうね皆。本当にいつもいつも……」
ナンナ  「いいえ。リーフ様を慰めるのはもうずっと私の役目ですし……」
ミランダ 「私はただ、陰気な奴がそばにいると気分が悪くなるから、さっさとご退場願いたかった
      だけで」
サラ   「……いつものことだし」

セーラ  「え、なに、あの子結構モテるの?」
ドロシー 「母性本能をくすぐるんじゃないでしょうか」
セーラ  「えー、わたしだったら嫌だなあ、あんな根暗君」
ドロシー 「大丈夫ですよ、誰もセーラさんに母性なんか期待してませんから」
セーラ  「……ん? わたしひょっとして今公共の場で思いっきり侮辱された?」
セリス  「違いますよセーラさん。セーラさんに期待されてるのは母性じゃなくて可愛らしさだっ
      てことですよ、きっと」
セーラ  「あー、なるほどね。いやん、よく分かってんじゃないドロシーちゃんったら♪」
ドロシー 「聖職者って皆こんなのばっかりなのかな……さて、リーフさんが落ち込んでいる理由や
      如何に?」
セリス  「まー、大体想像つきますけどね。あ、エリウッド兄さんがリーフを慰めながら居間に
      入っていきますよ」

リン   「お帰りリーフ。まーた落ち込んでるのね」
リーフ  「……ほっといてよ」
リン   「そうもいかないわよ。ほら、今日はどうしたの。お姉ちゃんに話してごらん」
リーフ  「……またそうやって子供扱いして。僕は」
リン   「子供じゃないのなら、きちんと事情の説明はできるわよね?」
リーフ  「う」
リン   「それとも、夕飯の席でもそんな暗い顔してるつもりかしら?」
エリウッド「ああ、それは止めた方がいいと思うなあ。シグルド兄さんがどれだけ狼狽するか、想像
      するだけで胃が重くなってくるよ」
リーフ  「……分かった、話すよ」
リン   「よしよし。で、今日は誰に、どんな風に馬鹿にされたの?」
リーフ  「ブリアンとユリウスがさ、僕に言うんだよ」
リン   「なんて?」
リーフ  「バルド(笑)、ノヴァ(笑)って……」

セリス  「つまり(笑)と(小)をかけてる訳ですね」
ドロシー 「的確な解説ありがとうございますセリスさん」

リーフ  「ちくしょうあいつらめ。揃いも揃って変な髪のくせに。あれでカッコイイと思ってるの
      かよ。イケてるつもりなのかよ。ユリウスなんて額に変なかさぶたまでこさえてるのに」
エリウッド「かさぶたなんだあれ」
リーフ  「大体それ言ったらブリアンはスワンチカ(笑)だしユリウスなんか兄妹喧嘩で一度も
      勝ったことないくせにさ」
リン   「まあ相性最悪だしねユリウス君にユリアちゃんは。でも、そう思うんなら言い返してや
      れば良かったのに」
リーフ  「駄目なんだよ。僕じゃ非力すぎてスワンチカ(笑)の防壁だって打ち破れないし、ロプ
      トウス相手に力半減されたら手も足も出ないよ。やるだけ無駄だよ、無駄。例えるなら
      初回プレイ総合評価SSS達成を目指すようなものさ」
エリウッド「相変わらず負けに至る理屈だけは瞬時に考えつくんだな……」
リーフ  「その上便乗したユングとメイベルに『えー、マジ神器なし!?』『子世代男キャラなの
      に!?』『キモーイ!』『神器なしが許されるのはデルムッドまでだよねー!』とか笑
      われるし! なんでそこでデルムッドが出て来るんだよ意味分かんないよその基準!」
エリウッド「まあ確かにそれは意味不明だなあ」
リーフ  「しかもテストでは珍しくそこそこいい点取ったのに、しかめ面のアウグスト先生が『こ
      れは……困りましたな。今だから申し上げますが、私は最初、君がこの点数を取るのは
      無理だと思っていたのです』とか疑り深い目で見てくるし。何でいつも六十点ぐらいの
      テストで七十点取ったぐらいでカンニングを疑われなくちゃいけないんだよ! そりゃ
      八十点ぐらい取っちゃったら僕だって『採点ミスじゃないのか?』って疑うだろうけど」
リン   「実力で八十点取る自信ないんだあんた……」
エリウッド「と言うか七十点取れない子だと認識されてるんだ……」
リーフ  「体育ではオーシンに『もやしは引っ込んでろ』と蹴倒され、給食では『はぁ? 肉なん
      て生意気だぜリーフ。葉っぱでも食ってろ』と糞まずいサラダを山盛りにされ、数学で
      はドリアス先生に『ここまでヒントを出せばリーフ君にはもうお分かりでしょう』って
      分かんないよそんなの! おかげで三分間ぐらい立ちっ放しの晒し者じゃないか!」
エリウッド「いや最後のは明らかに答えられないお前が悪いよ」
リーフ  「へん。何とでもいいなよ。どうせ僕は落ちこぼれの葉っぱ君さ。兄さんたちとは元々の
      出来が違うんだ、出来が」
エリウッド「リーフ。いいかい、確かに個々人で持っている才能が違うのも事実だが、人間はいくら
      でも努力して能力を伸ばすことがだね」
リーフ  「じゃあ兄さんが努力すればデュランダル振り回して大活躍できるんだ?」
エリウッド「う、それはその……」
リーフ  「ほら無理なんじゃないですか。人間には能力の限界値ってやつがあるんだ。僕なんかい
      くら努力したって何の足しにも」

 ばちーんっ!!

ドロシー 「ああ、またリンさんのビンタが!」
セーラ  「つくづくビンタ好きねあの人」
セリス  「喰らうのはリーフかマルスぐらいのものですけどね」

リン   「いい加減にしなさいリーフ! あんたはいつもそうやって情けないことばっかり言って!」
リーフ  「ふん、殴られたぐらいで人格が変わったら苦労しませんよ」
リン   「どうしてそんな風に不貞腐れるの。そういういじけた態度が自分の価値をさらに下げて
      るんだってことが、何で分からないの」
リーフ  「僕の価値? 笑っちゃうよ全く。こんな落ちこぼれの葉っぱ君にどんな価値があるって
      いうんですか」
リン   「探せばいくらだって出てくるわよそんなの。ほら、あんたは剣と弓ぐらいがせいぜいの
      わたしと違って魔法だって使えるし」
???  「でもパラメーターがパッとしないからいまいち使いどころがないんだよね」
リン   「他の皆と違って敵の武器だって奪えるし」
???  「最初からお金持ってれば、そもそもそんなことする必要もないんじゃない?」
リン   「エフラムやヘクトルに比べれば全然問題起こさないいい子だし」
???  「要するに人として面白みがないってことなんじゃないかなあ」
リーフ  「……やっぱり僕は駄目だ」
リン   「マルスゥゥゥ! あんたって子は!」
エリウッド「って言うかいつ復活したんだマルス」
マルス  「はははっ、甘いねリン姉さん。ファルシオンには使用することで傷を癒す効果もあるの
      ですよ。僕はもちろんプレイヤーも忘れがちだけどねっ!」
リン   「どうやらもう一度往復ビンタ地獄に叩き落されたいみたいね!」
マルス  「だから甘いのさリン姉さん! こんなこともあろうかとレスキューは手配済みだからね! 
      そういう訳でよろしくユミナちゃん!」
リン   「待てコラァ!」
マルス  「心配しなくても夕飯までには帰りますともお姉様。それではごきげんよう」

 シーン……

マルス  「……あれ? お、おかしいな? ユミナちゃん、ユミナちゃーん?」

ユミナ  「ねーオグマ、急にどうしたの、レスキューの杖を点検したいなんて言い出して」
オグマ  「いや、別に大した理由はない。本当に。何かの仕返しだとか、そんなことは全くない」
ユミナ  「変なの。大体、あなた傭兵なんだから杖のことなんて分からないでしょうに」

マルス  「ク、クソッ、計算外だぞこんな事態は……!」
リン   「(ボキッ、ボキッ)覚悟はいいわねマルス」
マルス  「お、落ち着いてくださいよリン姉さん。そんなに怖い顔すると小皺が増えぶげぇ!」
リン   「わたしはそんなに老けてない!」
リーフ  「……はぁ」
エリウッド「あ、リーフ、どこへ」
リーフ  「夕飯まで不貞寝するよ……うふふ、夢の世界って素晴らしいんだよ。チートコードを使
      えば僕だってティルフィングとゲイボルグ振り回して大活躍さ……」
エリウッド「夢の中ですらチートコード使わなきゃ活躍できないのか……」
リーフ  「もうほっといてよ……それじゃお休み……」
リン   「……」
エリウッド「……」

セーラ  「……」
ドロシー (ふ、雰囲気が重過ぎる……!)
セリス  「あははは、ちょっとタイミングが悪かったかなあ」
セーラ  「いっつもあんな感じなのあの子?」
セリス  「いえいえ。いつもはもうちょっとだけマシですよ」
ドロシー 「ちょっとだけなんだ……」
セリス  「でも落ち込んでいなければ落ち込んでいないで全く目立たなくなるんですよね」
ドロシー 「ふ、不憫すぎる……」
セーラ  「えーと、全国の皆様、リーフ君への励ましのお便り待ってまーすっ!」
ドロシー 「無理矢理まとめたところでまたCMですね」

 (この時点での便乗ネタ 1-243

セーラ  「ねえなんかCM多くない今回」
ドロシー 「いろいろとあるらしいですよ番組上の都合っていうのが」
セーラ  「ふーん。ま、いいわ。さて、リーフ君が二階で不貞寝して重い雰囲気垂れ込めっぱなし
      の一階ですが」
ドロシー 「マルスさんが二度目の退場を喰らって、現在はまた最初の状況に逆戻り。リンさんが台
      所でお食事の支度を、エリウッドさんがまた家計簿と格闘を……」
セーラ  「おっと、また誰か帰ってきたみたいね……あ、見覚えあると思ったらヘクトル様だわあれ」
ドロシー 「あれ、あの大きな人をご存知なんですかセーラさん」
セーラ  「まあちょっとね。で、エリウッドさんが玄関の方に出迎えに行って……」
ドロシー 「あ、今度はリンさんが何かに気付いたみたいですね。裏口の方に向かっていきますけど……」
セーラ  「あら、裏口にも誰かいるみたいね。セッちゃん、この水晶球って画面ニ分割して同時中
      継とか出来ないの」
ドロシー 「注文細かすぎるんじゃ」
セリス  「もちろん出来ますよ」
ドロシー (……もうあんまり細かいことは考えないようにしよう)
セーラ  「うん、これで両方の状況がいっぺんに確認できるわね。ナイスよセッちゃん」
ドロシー (しかもなんかもうあだ名で呼んでるし)
セーラ  「で、誰かしらこの裏口に現れたワイルドなお兄さんは。なんか血みどろだけど」
セリス  「あー、これはエフラム兄さんですね。血みどろってことは、またどこかで喧嘩してきた
      のかな」
ドロシー 「危ない人なんですね。一方のヘクトルさんの方はずいぶん泥まみれですけど」
セーラ  「また何かの試合の助っ人に行ってきたんじゃないの」
ドロシー 「よくご存知ですねセーラさん」
セーラ  「そういう人なのよ。なんてーの、体力馬鹿っつーか。脳味噌が足りない代わりに筋肉が
      有り余ってる感じ」
ドロシー 「へー……」
セーラ  「むっ。な、何よその目は。別にあんな筋肉ダルマのことなんて何とも思ってないんだか
      らね! わたしはもっとこう、渋めのおじ様か美形のお兄様が……」
ドロシー 「いや誰も聞いてませんってそんなの」
セーラ  「あ、でもでも、顔がいいだけじゃ駄目よ。やっぱりお金もたくさん持ってないと」
ドロシー 「もっと聞いてませんからそんなの。えーと、セリスさん?」
セリス  「なんでしょうかドロリン」
ドロシー 「……あの、なんですかそのドロリンって」
セリス  「ドロシーさんのあだ名ですよ。可愛いでしょうドロリン。ドロシーさんにはぴったりですよ」
ドロシー 「ピッタリって……なんか泥まみれみたいなんですけど。ひょっとして馬鹿にされてる?」
セリス  (にこにこ)
ドロシー (どうも苦手だなあこの人。どっかのエロ神父みたいに分かりやすすぎるのも困るけど)
セリス  「それで、なんでしたっけドロリン」
ドロシー 「……あの、ヘクトルさんもエフラムさんも、お二方ともかなり汚れてますけど、リンさ
      んやエリウッドさんは怒らないんですか?」
セリス  「あの二人に関しては諦めてるみたいですよ。でも良かったですねドロリン。二人が同時
      に帰ってきたとなったら、きっと絵的に面白いものが撮れますよ」

エリウッド「やあお帰りヘクトル。今日もどこかの部活の助っ人かい?」
ヘクトル 「おうよ。今日はラグビー部だ。数人ほど軽く吹っ飛ばしてきたぜ」
エリウッド「相変わらず凄いねヘクトルは。昨日はサッカー部じゃなかったっけ?」
ヘクトル 「ああ。一昨日はバレーで先週は野球、それに剣道もやったっけかな。思いっきり面打っ
      たら竹刀がぶっ壊れちまってよ。参ったぜホント」
エリウッド「スポーツなら何やらせてもレギュラークラスだものねヘクトルは」
ヘクトル 「任しとけよ。ま、卓球とかああいうチマチマしたのは駄目だけどな。テニスなら相手選
      手にボールぶつけて客席まで吹っ飛ばせるんだが」
エリウッド「ははは、それはもうテニスじゃないよ」
ヘクトル 「そうか? 俺はそういうスポーツだと認識してるんだが」
エリウッド「危なすぎるよそんなの。まあヘクトルのパワーが凄いのは分かるけど」
ヘクトル 「やー、しかし腹減ったな。今日の飯何よ、飯」
エリウッド「その前に泥を落としなよ。今ロイがお風呂を沸かしてるから」
ヘクトル 「いらねえよ。湯船を汚す訳にはいかねえしな。水で適当に流せばいいって」
エリウッド「風邪引くよそんなことすると」
ヘクトル 「大丈夫だって、俺は生まれてこの方夏以外は風邪を引かない体質なんだぜ?」
エリウッド「まあそうだろうけど」

リン   「お帰りエフラム。今日もまた誰かと喧嘩してきたのね」
エフラム 「ああ。今日は3丁目のゲーセンにたむろしてた連中を根こそぎ吹っ飛ばしてきた」
リン   「相変わらず酷いわねエフラムは。昨日は4丁目って言ってなかったっけ?」
エフラム 「ああ。一昨日は2丁目で先週は隣町、それに暴走族も潰した。思いっきりマンホールを
      投げたらバイクの群が宙を舞っていた。壮観だったな、本当に」
リン   「喧嘩ならどんな相手とやってもチャンピオンクラスだものねエフラムは」
エフラム 「任せてくれ。まあ、顔を隠しておくとかそういうチマチマしたのは面倒だがな。それさ
      え出来ればどんな奴でも遠慮なく半殺しに出来る」
リン   「はぁ……それはもう一般市民のやることじゃないわよ」
エフラム 「そうか? 俺は市民の義務だと認識してるんだが」
リン   「危ないでしょそんなの。まああんたの戦闘技術が凄いのは分かるけど」
エフラム 「そんなことより腹が減った。夕飯はもう出来てるのか」
リン   「その前に返り血を落とす。今ロイがお風呂を沸かしてるから」
エフラム 「いらん。湯船を汚す訳にはいかないしな。水で適当に流す」
リン   「風邪引くわよそんなことすると」
エフラム 「大丈夫だ。俺は生まれてこの方夏以外は風邪を引かない体質だからな」
リン   「まあそうだろうけど」

セーラ  「……似てるようで」
ドロシー 「全然似てないですね実際」
セリス  「二人ともかなりの体力派なのは一緒ですけどね。やってることは全然違って面白いでしょう」
ドロシー 「ヘクトルさんは決まった部活には入っていないんですか?」
セリス  「まだ道を決めかねてるらしくて。自由にいろいろな運動部に出入りしてるみたいですよ」
セーラ  「あのエフラムってのはいつも喧嘩ばっかりしてるわけ?」
セリス  「まだ戦い足りないらしくて。自由にいろいろな団体を潰してるみたいですよ」
ドロシー 「偉いような迷惑なような」
セリス  「一応、いろいろな人からの通報を受けて動いてるみたいですけどね。どこどこでカツア
      ゲされたとかどこどこで不良がたむろしてて怖いとか、そういうの」
ドロシー 「顔を隠してるって言ってましたけど」
セリス  「カツラを被ってヒーニアスと名乗るそうです」
セーラ  「誰それ」
セリス  「さあ。実はいい人。としか聞いてませんね」
セーラ  「よく分かんないわね。あー、でも残念。あのエフラムって子、顔は結構かっこいいのになあ」
ドロシー 「え、セーラさんああいう過激な人って好きそうですけど」
セーラ  「冗談。わたしはもっと安定感のあるタイプがいいわね」
ドロシー 「へえ。何だか意外」
セーラ  「年は八十以上、安定した財産を持ってて、結婚後予定どおりにぽっくり逝ってくれれば
      言うことなしなんだけど」
ドロシー 「さて、そんなことを話してる内にお二人が同時に居間に入りそうですね」

ヘクトル 「……」
リン   「あ、お帰りヘクトル……」
エフラム 「……」
エリウッド「あ、お帰りエフラム……」
ヘクトル 「……ケッ」
エフラム 「……チッ」

ドロシー 「あ、あれ、なんだか雰囲気悪い?」
セリス  「仲悪いですからねヘクトル兄さんとエフラム兄さん」
ドロシー 「え、でも結構似てるとこあるのに」
セリス  「似てるところがあるからこそ、相手に自分と違う部分があるのが気に入らないんじゃな
      いかと思いますね。お互いの美意識みたいなものもかなり違うみたいですし」
ドロシー 「ははあ、なるほど」

ヘクトル 「相変わらず喧嘩ばっかしてやがるんだな、エフラム」
エフラム 「相変わらずフラフラとして自分の道を定めずにいるんだな、ヘクトル」
ヘクトル 「……」
エフラム 「……」
リン   (あっちゃー……)
エリウッド(タイミング悪かったなあ……また胃が痛いよ……)
ヘクトル 「テメェは修行の一環とか言いながら誰彼構わず喧嘩しやがってよ。ちったあ謝りに行く
      エリウッドの気持ちを考えろっての」
エフラム 「お前こそいつまでも他人の手助けばかりしてるじゃないか。早目に自分の道を決めてお
      かないと、何をやっても中途半端な男になるぞ」
ヘクトル 「俺は何を目指すか吟味してる最中なんだよ。いろんな可能性を試して、ダチの助けにも
      なれるんだ。一石二鳥だろうが」
エフラム 「俺だって自分の都合で戦ったことは一度もない。友人を助けながら槍の修行もできる。
      一石二鳥だろう」
ヘクトル 「相変わらず、頭の出来は悪いくせに屁理屈ばっかり達者な奴だぜ。要するにダチを助け
      るのにかこつけて鬱憤晴らしてるだけだろうが、お前は」
エフラム 「そっちこそ、頭の出来は悪いくせに言い訳だけはうまいんだな。要するに道を一本に絞
      りきれない男が、中途半端な実力で周りにチヤホヤされていい気になっているだけだろうが」
ヘクトル 「ろくに周りを見もしねえ猪野郎が」
エフラム 「持ち上げられていい気になってるサル山のボス猿め」
ヘクトル 「……」
エフラム 「……」

セーラ  「うわ、一触即発。ホントに仲悪いわね」
ドロシー 「止めなくていいんですかセリスさん。二人とも斧と槍持ち出してますけど」
セリス  「ははは、大丈夫ですよそんなに慌てなくても。我が家の恒例行事みたいなものですし。
      それに」
セーラ  「それに?」
セリス  「場を収めてくれる人が、ちょうど帰ってきたみたいですしね」

ヘクトル 「……」
エフラム 「……」

 タッタッタ(誰かが居間に入ってきた足音)

ヘクトル 「……?」
エフラム 「……?」

 ドサッ (誰かが二人の間に何かを投げ落とした音)

ヘクトル 「……!」
エフラム 「……!」
アイク  「……ただいま」

セーラ  「え、なにあれゴリラ?」
セリス  「ははは、人の兄を捕まえてゴリラはひどいですよセーラさん」
ドロシー (……私もそう思ったのは黙っておこう)

リン   「お、お帰りアイク兄さん。十日ぶりね……」
アイク  「ああ。久しぶりだな皆」
エリウッド「……というか兄さん。これ、なに?」
アイク  「熊だが」
エリウッド「いや、それは見れば分かるんだけど」
アイク  「晩飯にしてくれ。出来るな、リン?」
リン   「いや、そりゃまあ何とか出来なくはないけどね」
エリウッド「僕が聞きたいのはそういうことじゃなくて……」
アイク  「じゃあ何だ? ああ、何故熊を持ってきたのかと聞きたいんだな?」
エリウッド「うん、まあね」
アイク  「いや、そろそろ家に帰ろうかと思ったとき、土産が何もないことに気付いてな。ちょう
      ど腹を空かせた熊が襲いかかってきたから」
リン   「襲い掛かってきたから?」
アイク  「眉間のところを、こう」
エリウッド「殴り殺したの!?」
アイク  「ああ……どうした、何をそんなに驚いている?」
エリウッド「いや、ちょっと想像の範疇を超えていて……」
アイク  「そうか? コツさえつかめば誰でも出来ると思うけどな」

セーラ  「できねーよ!」
ドロシー 「と、思わず突っ込みたくなるお兄さんですね」

リン   「で、今回は一体どこに行ってきたの、兄さん?」
アイク  「山っぽいところだ」
リン   「いや、それじゃ一体どこなんだかさっぱり……」
セネリオ 「では僕が」
リン   「きゃあ!」
エリウッド「い、いたのかセネリオ……」
セネリオ 「軍師ですから」
リン   「いや、微妙に説明になってないっていうか……」
セネリオ 「お気になさらず。アイクは今回、竜の祭壇と呼ばれる場所に赴いていたのです」
ヘクトル 「!!」
エフラム 「竜の祭壇、だと?」
アイク  「そういう名前だったな、確か」
セネリオ 「ええ。飛竜が飛び交い魔竜が蠢き、人が登れば息が切れひどく喉が渇く、あの竜の祭壇です」
アイク  「なかなかいい修行になった。時折あそこの飛竜が里に下りてきて人を襲うというから、
      人助けにもなっただろう」
セネリオ 「他にもオープスやガーゴイルなど、多数の魔物を撃破。もちろんアイク単独の戦果です。
      さすがアイク、見事な戦いぶりです」
アイク  「いや、まだまだだ。まだ、先はある」

セーラ  「ねーよ!」
ドロシー 「と、思わず突っ込みたくなるお兄さんですね」

アイク  「……ところでヘクトルにエフラム。何か話をしていたんじゃないか? 邪魔をして悪
      かったな。続けてくれ」
ヘクトル 「……いや、なんか、なあ?」
エフラム 「……ああ」
アイク  「? どうした?」
ヘクトル 「いろいろと、馬鹿馬鹿しくなったぜ」
エフラム 「やはり俺もまだまだだな……もっと腕を磨かなければ」

セネリオ 「ひどい有様です」
アイク  「……行ってしまったな。何かあったのか、二人とも?」
エリウッド「あったというか、なかったというか……」
リン   「……やっぱり兄さんは偉大ね、いろんな意味で」
アイク  「意味が分からん」
リン   「分かんなくていいと思う」
アイク  「……そうか、熊じゃなくて竜の肉の方がよかったということか」

セーラ  「ちげーよ!」
ドロシー 「と、思わず突っ込んでしまったところでCMですね」
セリス  「ははは、相変わらずアイク兄さんは型破りな人だなあ」
セーラ  (型破りとかそういう次元じゃないっつーの)
ドロシー (そんなアイクさんの後ろに平然とついていっているセネリオさんの方が
       気になるのは私だけなのかな……)

(未完)