七巻

Last-modified: 2007-12-24 (月) 03:17:33

もう駄目だ 俺たちはもうおしまいだ

うるせえ!! 馬鹿野郎!!

もう化け物の相手なんかいやだ!! もう限界だ! インテグラもアーカードも俺たちを見捨てやがった!!
何いってんだおめえは どこにも出れねぇしどこにも行かさねぇぞ

俺は帰る!! もういやだ!!
どこに行く気だ? おまえの墓穴はここだぞ
墓標はこの馬鹿でかい館 墓守りはあのおっかねぇインテグラ嬢だ

碑文にはこうだ
「すごく格好良い傭兵達が 悪いナチスをやっつけて すごく格好良くここに眠る」

だがおまえのせいで変わっちまう おまえがメソメソしてるから
「ヘタレの根性無し 女の様に泣きながら 虫の様にくたばる」

冗談じゃねえ おまえには無理矢理でもカッチョ良く死んでもらうぞ!!
好き好んで金もらって好き好んで戦争やってんだろが!! おい兵隊!!
だったら好き好んで戦って死ねや!!

糞・・・ッ くそォ 畜生(ファック) 畜生(ファック)!!

それにな まだ死ぬときまったワケじゃねえよ 俺達ゃディフェンスだ
ホレ!!さっさとバリ(バリケード)を組むんだよ!! オフェンスが今 点数をひっくり返すさ


「!! そんな馬鹿な…ッ 俺の…俺の家!?」

「お父さん」 「!!」

「お父さん お帰りなさい!!」

「ミ…ミシェル…!!そんな…そんな馬鹿な
おまえは……死んでしまった!!死んでしまったじゃあないか!!」

「どうしたのお父さん こわい顔して」

「幻覚…ッ 幻覚だッ!! これも…これも幻だッ!!
畜生!!畜生ッ!! これも幻術だってのか ミシェル!!おまえも幻なのかッ」

「ウッ ソッ でえーーーーすぅ」

ボッ

「全部ウソ♪ 全くのウソ♪ アホは死ななきゃなおらねぇ♪」


「弾をくれ!! 弾だ!! 弾をよこせ!!」
「弾だ!! 弾をくれ!!」 「伏せてろ!! 狙い撃ちされるぞ!!」
「そいつは死んでる」 「動くな 今止血する 死んじまうぞ」

「隊長!! こいつを!! こいつでカンバンです」
「もうお終いだ」 「黙ってろ」
「降伏したって全員なぶり殺されるぞ!! 相手は化け物だ!! 喰われちまう!!」

「まるであの時と一緒です ウガンダ・ジャン・グ・ワイデ!! 飛行場右翼陣地!!
 あの時は救援が間に合いました 今回は… クソ 駄目ですか」
「バカ抜かせ副長!! あいつは来る!! 必ずやって来る!! そういう女だ!!」

ドッ ボゴォォォォォ

「ゲホッ」 「ゲホッ」 「ゲホ」 「ゲホッ」

「畜生ッ ロケットかッ くそッ 連中まだあんな物を」
「ぐッ」 ズキ ギチ・・・・ッ ギチュ・・・

「全員!! 報告しろ!! 副長!! 被害報告を… 副長!! 副…ッ」 「!!」

「副長!! おい!! 副長!!」

「もう つかれました 先に休んで いいですか」
「ああ ゆっくり休め」

「じゃあな」


バカ 泣くなっていってんじゃねーか
おまえ 目ん玉えぐられてんだぞ バカだなぁ
腕だってちぎられてんだ ボロボロじゃん
バカな女だなぁ

ああ畜生 畜生め
いい女だな こいつ

こいつ守って死ぬんなら
べつにいい


なんだ!? なんだこれは
兵士共が怯えている あの吸血鬼兵達(ヴァンパイア)
戦場を跋扈し 砲下を疾駆した 百戦錬磨の武装親衛隊(WAFFEN SS)
眼前の一人の少女におびえている 満身創痍の一人の少女におびえている!?
こいつは 一体何だ?


ひゃあは ひゃはははは 奥ッおッ奥へッ
奥へッ もっと奥へッ!! もっと奥ッ!! もっと奥へッ!!

 ぞ る ッ

な…何だ 誰だこれは 何だこれは!! 違う!! こいつは こいつじゃない
記憶」が…ッ 「」が…ッ 混ざり合って
何だ!! 誰だ!! 誰の心だ!?
あいつか!! 私が虫けらと呼んだあの男か!!

血液とは魂の通貨 意志の銀板 血を吸う事 血を与える事とはこういう事
お元気? まだ生きてる?
シュレディンガー!!
そんなにおどろかないでよ 僕はどこにでもいるし どこにもいない
中尉(ゾーリン)少佐からの伝言をお伝えしま―――――す
「抜け駆け先討ちは(つわもの)の華」「ああ、やっぱり」「ならばそして
「命令を反しあたら兵を失った 無能な部下(おまえ)処断するのもまた 指揮者の華」だってさー
本当ならとっくにもうボーボー燃えカスになってる所なんだけど
少佐も博士(ドク)も 今 ものすごい面白いおもちゃを手に入れて
そっちに夢中でおまえにかまってるヒマ無いんだってさー
この怪物はもう セラス・ヴィクトリアであってセラス・ヴィクトリアじゃない
おまえの処刑はこの吸血鬼がやってくれる!!
じゃあね


いってきます

!!
いってきます………って……ッ
ど ど どこに!?

約束したんです 隊長と
あいつらをやっちまおうって
だからあいつらを やっつけちまいに征ってきます

あ…

[ああ そっか 隊長
あんたはここおっ死んだ ここで
でもあんたは そこにもいるのか]

待ってくれ!!

(クッ カッ ザガッ ザッ)

Yes Sir! Sir


夜が 白み始めた 夜が明ける
もはや陽の光すら意に介さず 引き絞られた矢弓の様に

飛んでいく 死都に向かって
暁の出撃!!


これだ!! これが見たかった!! ああ すごくいい

ゾーリン死んじゃったよ少佐 虫みたいに

ははは やっぱりな 馬鹿な小娘だ
敗北(ほろび)が始まったのだ 心が踊るな

非道い人だ あなたは
何奴(どいつ)此奴(こいつ)も連れて回して 一人残らず地獄に向かって進撃させる気だ

戦争とはそれだ 地獄はここだ
私は無限に奪い 無限に奪われるのだ 無限に亡ぼし 無限に亡ぼされるのだ
そのために私は野心の昼と諦観の夜を越え今ここに立っている

見ろ 敗北が来るぞ 勝利と共に


天使…!
天使だ 天使だ!!

その通り我らは死の天使の代行人である!
これより宗教裁判の判決を行う!
被告!! 「英国」!!
被告!! 「化け物」!!
判決は 死刑!
死刑だ!!
死刑死刑死刑死刑死刑死刑!!

おまえたちは哀れだ だが許せぬ!!
実を結ばぬ烈花の様に死ね!!
蝶の様に舞い 蜂の様に死ね!!

なんだ!!
あの小僧 やればできる子だったのじゃあないか


大隊総員傾注!!
対紫外線装備!!
集結!!

集結!!

装面ッ 大隊 集結!!
大隊 集結!!


はッ はあ はあ はあ
こッ こんなところにッ 危険です 中にお入りください!!
博士(ドク) あれはもう使えるのか

はあ はあ はあ
え ええ ですけど
非常に不安定です
ですが はあ はあ 危険ですが おっしゃる通りに致しました

それは重畳。
いいだろう あれ

はい ええ 確かに素晴らしい素体です
ですが大変だったんですから。
何分時間がありませんでしたので 少々手荒な施術をしてしまいましたよ


おつかれドクー

おまえも少しは働けバーカ

働いたっつーの
ヘルシングん家までいって ゾーリン見てきたっつーの

あっそ フーン


そこを見張れ! あそこを見張れ!
我らの敵を根絶やしにせよ!!
目標「前方」!
死  刑  執  行!!!

うわ ひゃあぁぁぁ
中にッ 中にお入りをッ
艦も退避させなければッ
この艦の特殊軽金装甲とてこの攻撃では 長く保ちません!
少佐! 少…
…ッ!!

音楽を奏でている 戦場音楽を
誰も 邪魔できない


指揮を…しておられる!!
戦争音楽…!!
我々は楽器だ!!
音色を上げて咆えて這いずる一個の楽器だ

敵総帥ッ!! 視認ッ!!
飛行船上です!!
何をやっていやがるんだ…!?
狂人め 狂人め 狂った戦争の 亡霊め
死ッ…ッ …ねッ!!

しょッ 少佐殿!!

ザンッ
カッ

あ……ッ!! ……ッ ああッ

いい仕事だ 執事(バトラー)


半世紀前にもう決めていた
死神には髑髏の印がふさわしい


ドドドドドドドドド
         ドドドド

AAH! AAA! (ガッ ガン ガン)

な…あ… ああ!?

助けが……ッ 来たんじゃ………ッ ないのかよ!?

ガガガ ガガガガ

死ね死ね死ね死ね 死ね!!
いいぞッ 皆殺しだ!!

これが我々の力だ!! 目で見よ!!
これがヴァチカンの力だ!! 虫けらどもめ!

はははは 見ろッ あの哀れな連中を!!
死んだプロテスタントだけが 良いプロテスタントだ!!


マクスウェル…ッ!!
裏切ったな マクスウェル!!

裏切り?
馬鹿をいえ
戦で騙撃 裏切りはあたりまえ
それどころか賞賛されてしかるべき だ
特に異教徒相手ならな

だが!
だがな!!

だがこいつは違う
気に入らぬ
マクスウェル おまえは酔っている 酔いしれている
権勢と権威と権力に だ

俺達(イスカリオテ)は ただの暴力装置のはずだ
俺は ただの人斬り包丁だ
神に司える ただの力だ

マクスウェル おまえは今 神に司える事をやめた
神の力に司えている!!

ええ?
そうだろう?
マクスウェル大司教様(アルキエビスコブス)よ?


神父アンデルセン
彼女(インテグラ)の送迎はもうやめです

マクスウェル司教 いや 大司教猊下よりの御命令です
「即刻 ヘルシング局長インテグラを拘束連行すべし!!」

気に入らねえな

気に入る 気に入らないの問題ではありません!!
アンデルセン!!

気に入らねえよ!!


セラス!! セラス…!! セラス ヴィクトリア!!

おけがはありませんか!!
インテグラ様

健在だ 
本部施設は?

中隊規模の敵の攻撃を受けました
敵はやっつけました

本部は…全滅です
ベルナドットさんも……

…そうか そうなのだな
セラス おまえベルナドットを吸ったな
吸血鬼になったのだな

…はッ はい!!

く…
くそォ……ッ!!

やめておけ ハインケル
その娘はもはや おまえたちが束になっても相手にならん

吸血鬼セラス ヴィクトリア!!
おそろしいものになってやってきたものだ

ええ そうです 神父アレクサンド アンデルセン
わたしはもう 何もおそろしくありません

まるで奈落の底の様な眼をしやがって
人の形をしているくせに なんて様だ

!!
!!

あの人が帰ってきます

黒禍が来るぞ 黒禍が来るぞ!!
こいつは素敵だ 全部台無しだ


戦列を組め!!
軍団(レギオーン)!! 軍団(レギオン)!! 軍団(レギオーン)!! 軍団(レギオン)!! 軍団(レギオン)!!

アンデルセンは何をしている!!
先遣武装神父隊はいずこにありや!?
武装ヘリ(ガンシップ)は何をしているのか!!
飛行船の攻撃を続けろ!!

総攻撃しろ!!
あんなデカブツにいつまで手間取る
総攻撃だ!!

兵員の降下と編成中です!!
総攻撃はいまだできません!!

やかましい!!信仰心があるならさっさとやれ!!
アンデルセンは!!アンデルセンはどこだ!!
インテグラの捕獲はまだか!!

マクスウェル大司教(アルキエビスコブス)猊下!!
ドーバー上空の空母監視機より連絡です!!

な…見ッ見失っただとう!?
馬鹿をいえ あんな巨大な代物が
幻の様に消え去ったとでもいうのか!?

海域全体が突然霧に被われたとの事で
きりは朝霧となってドーバー全体を被いつくしています

ふざけるな!!捜し出せ!!
あれはただの空母の残骸ではないんだぞ!!
アーカードだ!!アーカードが乗っているんだ!!

!!?
何事だ!?

テムズを何かがさかのぼってきます!! 何かが…!!

幽霊船だとお!?

幽霊船が……!!


かつてある吸血鬼が英国にやって来た
自らが渇望する一人の女を手に入れるために
その吸血鬼が乗りこんだ帆船は
霧の中を波から波へと飛び移りありえない速度で疾走した
乗組員を皆殺しにしながら
そして遂に死人と棺を満載した幽霊船はロンドンへ着港した

船の名はデメテル号
ロシア語でデミトリ号である
「キャスター作マモン平原会戦のウスター伯ヴィランデル図」
槍衾の絵の前で集った彼らは
今 こうして槍衾の前で再会した

かくして役者は全員演壇へと登り
暁の惨劇(ワルプルギス)は幕を上げる