800 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/06/17(火) 22:18:34.24 ID:3B9scFRL0
「わりぃ、まどか。また、明日な。」
「ごめん、まどか。今日は用事あって。」
「ううん。また、明日。さやかちゃん。杏子ちゃん。」
そう言って、二人は慌ただしく教室を去っていきました。
誰も居なくなった教室。
聞こえるのは、時計の秒針の音ひとつ。
日差しが夕焼けに変わり、段々と薄暗くなっていく。
--寂しい。
どうしようもない心細さが胸を満たし、なんだか泣きそうになってきました。
(…さやかちゃんも、杏子ちゃんも、しっかりしてるのに。)
(たまたま、私一人になっただけで、寂しいなんて…。)
(もっとしっかりしないといけないのに…。)
(…うぅ。私って、どうしてこんなに…。)
「まどか。」
「きゃっ!」
801 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/06/17(火) 22:19:08.25 ID:3B9scFRL0
いつの間にか、私の前に立っていたのは、転校初日にリボンをくれたほむらちゃんでした。
「ほ、ほむらちゃん? ど、どうしたの?」
「…まどか。」
「これ、食べて。」
そう言って、ほむらちゃんはポケットから飴玉を一つ取り出して-
-そのまま包装をはがし、私の口に、赤くて三角の飴を優しく押し込みました。
「ほ、ほむらちゃん?」
目を白黒させている私を、ほむらちゃんはそっと抱き寄せてー
「まどか。泣かないで。」
-私の耳元でそう囁きました。
「…ぁ」
泣いてなんかいないのに。
しっかりしなきゃって思ってたのに。
口の中の飴が、とても甘くて。
肌に感じる温もりが、余りに心地良くて。
私を想う不器用な優しさが、こんなにも嬉しかったものだから、
私の胸で凍えていた何かが一気に溶けて、
抑えていたものが瞳からこぼれて溢れて、
止まらなくなってしまった。
ほむらちゃんは何も言わずに、しがみつく私の髪をあやすように撫でてくれて。
夕日が沈みきってしまうまで、私たちはそうやって身を寄せあっていた。
802 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/06/17(火) 22:19:34.16 ID:3B9scFRL0
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「…あぅぅ。私、なんて、恥ずかしいことをぉ!!」
あれから、ふわふわ気分の私をほむらちゃんはいつの間にかお家に送ってくれて、
我に返った私はこうやって、ベッドで足をバタバタさせている次第であります。
「…はぅ。」
なんとなく、ほむらちゃんが優しいのは分かっていたけれど、
今日のはズルイ。
反則です。
レッドカードです。
まだ、ほむらちゃんが撫でてくれた感触とか、そっと抱き寄せてくれた腕の優しさとか、抱きしめたときの体の柔らかさとか、さらさらの髪の毛のくすぐったさとか、
なんだか落ち着く心臓の鼓動とか、ふんわりと香るほむらちゃんの匂いとかが忘れられなくて、とても困るのです。
小一時間ほどジタバタして、あまりに困りましたので、
いっそのこと忘れないことにしまして、パパからお菓子を貰ってきました。
そう。今日、ほむらちゃんがくれた白地に赤の包装で包まれた、赤くて三角の飴。
ほむらちゃんがしてくれたみたいに、飴を唇に押し入れて、
お気に入りのクマさん人形を抱きしめて、今日は眠ることにします。
口の中の甘さが、とても幸せな気分にしてくれたので、今日はいい夢が見れそうです。
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