107スレ/梅の花びら

Last-modified: 2014-08-22 (金) 23:33:24
720 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2014/07/31(木) 03:39:01.67 ID:46UPHhgj0
なんかできました 昨日梅干しの日だったので書いてた同棲ほむまど
『梅の花びら』
http://ux.getuploader.com/homumado/download/679/%E6%A2%85%E3%81%AE%E8%8A%B1%E3%81%B3%E3%82%89.txt

http://hello.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1405814706/720

txtファイルはこちら

7月30日は梅干しの日だったので思いついたもの 同棲してるほむまど
興味から書き終わりそうな頃に梅の花言葉を調べたら西洋では
「約束を守る」「忠実」「美と長寿」といった花言葉があるみたいです。

短く数レスのつもりだったのにいつの間にか長くなってしまいました。以下注意
・キャラ崩壊してたり変な生活感があるかも
・二人が結婚したりまどほむ喫茶を開きたいと思っている
・ほのかちゃん(仮)まほちゃん(仮)ネタ
・微HUKENZEN



「ほむらちゃん、今日のご飯はどうかな?」

7月下旬のある日のこと。帰宅するとまどかは手の込んだ和食を作って待ってくれていた。
この猛暑の続く中で煮込み料理と格闘していたことを考えると、本当に頭が下がる。
優しいその味が胸の奥までまでしみ込んでいくいく。

「とても美味しいわ。まどか、いつもありがとう」

「どういたしまして。いつも美味しそうに食べてくれるから感謝してるよ」

頬杖をついて私が食べる様子を見守るまどか。少し気恥ずかしい。

「昼間は暑かったわね。大丈夫だった?」

「本当に暑かったね。私は平気だよ。ほむらちゃん、お外大丈夫だった?」

「私は平気よ。あなたのためにもそうそう倒れないわ」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、自分の身体のことも大切にしてね」

他愛のない、でも恋人たちにとってはかけがえのないやり取りを交わす。

まどかと暮らすようになってから、本当に食卓が明るくなった。前よりも食事が楽しいと感じるし
大切な人が目の前で食事する姿を見るだけで、安心して幸せな気持ちになれるから。

一人暮らしが長かった私にとって、誰かが作ってくれる料理はいつの間にか特別なものになっていた。
たとえそれが対価を支払う外食や、陳列されているお弁当でもありがたいと思える。
誰かに何かを与えてもらえる、当たり前のようでそれはとても尊いことだと思う。

それが世界で一番大切な人から与えられたのだとしたらなおさら。
今こうしてまどかがいることが、彼女が与えてくれた日常と食卓が尊い。

目の前で微笑みながら共に食卓を囲んでくれるまどか。
まだ熱い煮物をふーふーと冷まして口に運ぶ。そんな所作も愛らしい。
私はまどかの好きな具をほんの少し冷ましてからまどかの口に運んだ。

「まどか、あーん」

「嬉しいな。いただきます」

少し身を乗り出して口に含んだまどか。すごく幸せそうに微笑む。
あなたの自然な笑みが好き。無邪気な笑顔のなかには純真な気持ちと慈しみが包まれているから。
私にもそんな気持ちがしみ込んでいく気がする。あなたといると本当に暖かい気持ちになれる。

「ほむらちゃん、私すごく幸せ。頑張った甲斐があったよ」

小さくガッツポーズをするその姿に、思わず私も屈託のない笑みを湛えた。
まどかは私を元気づけようと笑わせてくれるし、いつも明るい仕草を見せてくれる。
私の心に働きかけるビタミン剤があるとしたら、それはまどかの言葉や仕草の一つ一つ。

「本当にいつも感謝しているわ。でもあまり気張らないで。たまには力を抜いていいのよ」

「うん、わかってる。でもね、8月になったら夏バテになりそうだし、素麺や冷麦を食べる機会が
 増えそうだから、栄養を欠かさないようにしなきゃって……そうだ、ほむらちゃん。ちょっと待ってて」

キッチンテーブルから離れたまどか。彼女が食事中に席を立つのは珍しい。
冷蔵庫から戻ってきた彼女は小さなパックを持っていた。中に入っているのは蜂蜜漬けの梅干しだ。
普段のまどかからはあまり考えられないチョイスだった。こう言ってはなんだけど
普通は梅干しを若者の食べ物とは連想しないはず。若いカップルであればなおのこと。

「ほむらちゃん、今日買ってきたんだけど梅干しは大丈夫? 苦手じゃない?」

「食べられるわ。でも、今はおかずがいっぱいあるから遠慮させて。明日頂くわね」

本当は少し酸っぱいものを摂るのもいいと思ったけど、まどかの愛情のこもった
目の前の料理をしっかりと味わいたいと思い遠慮した。

「そうだね。じゃあ仕舞ってくる」

そそくさと片そうとするまどか。私は悪い気がしてその手をそっと掴んで制止する。

「お皿を片すときでいいわ。座っていて」

「でも、痛むといけないし……」

「さっきクーラーをつけたから大丈夫よ。まどか、気持ちは嬉しいけどなんで今の時期に
 梅干しなのかしら。二人で生活を始めてから今まで食べる機会がなかったから驚いてるの」

「そんな大した理由じゃないんだよ。テレビで梅干しは夏バテに効くし、食中毒対策になるって聞いて
 ほむらちゃんに食べて欲しいなって。二人で食べるように心がけたいなって思ったの。
 でもなんか唐突だったよね。ごめんね急に」

照れ隠ししてるように振舞いながらも少ししゅんとしたまどか。そういうことだったのね。
たぶんまどかの中にもあまり若いカップルが食べるイメージのない食材だから
勧めるのに一歩引いてしまったり、相手に嫌われたくないという気持ちが湧くのね。
私はまどかの思いやりを改めて感じるとともに、自分の無思慮を反省した。

「まどか。ごめんなさい。別に責めてるわけじゃないの。ただ、私も、その……
 あなたと愛し合っているし、まだ若いと思ってるから。あまり梅干しを食べる印象がなかったの。
 でもね、あなたにそんな風に思って貰えたなら私も食べるように心がけたいわ」

「ほむらちゃん……」

「さっきは少し問い詰めるようなことを聞いてごめんなさい。
 でも、あなたからももっと胸のうちや考えていることを聞かせて。
 あなたが胸に秘めている感情や思いやりにもっと気づけるようになりたいから。
 私はこうしている今もあなたに見惚れるばかりで、気づけないことだってあるかもしれないし」

つい胸が詰まって饒舌に話してしまったけど、本当にそう思う。
互いを想い合っているからここまで上手くいってるけど、相手を思うがゆえに
親切を働けたとしてもそれを当たり前のことだと思って、相手に気を遣わせないように
胸のうちを語ることを忘れている側面もあるから。

「そうだね。私ももっと話すようになるから、ほむらちゃんからも話してね。
 私もほむらちゃんの話や気持ちをいっぱい聞きたい」

晴れやかな笑顔を向けてくれたまどかに安堵する。これからも二人でこうしていたい。
愛し合う二人が確認し合った、切なる願いだから。

「私も心がけるわね。まどか、梅干しを一粒頂いて良いかしら」

「うん、いいよ。二人で食べよっか……あーんしてもいい?」

「お願いしていいかしら」

「いいよ」

嬉しそうなまどかの声。差し出してくれた梅干しを口に含んだ。
…………やっぱり酸っぱい。久しぶりに酸味が口に広がって戸惑う。
でも少しすると慣れてきて、ほんのりと甘みを感じると、酸っぱさも嫌ではなくなった。

「どう?」

「最初はちょっと酸っぱいけど美味しいわ。食べてみる?」

口元をティッシュで隠して種を除いた。今度はお箸で種を除いて食べようかしら。

「うん……」

ほんの少し不安そうなまどか。私が梅干しを差し出すと、口に含んだ瞬間目を瞑ってしまった。
最初は酸っぱそうな顔をしたけど、それも徐々に和らいで、美味しさに気づき驚嘆の表情を見せている。

「確かに酸っぱいね。でも私は好きかも」

苦笑しながらまどかはそう呟いた。見つめあうと二人でなんだか嬉しい気持ちになっていた。
お互いの共有する好きなものがまた一つ増えたからかしら。

「「ごちそうさまでした」」

笑顔で食器を片す。今日も幸せな夕食だったわね。


入浴も終えて二人でソファーにゆったりと腰掛ける。クーラーから漂う風にうっとりしながら身を寄せ合う。

「ほむらちゃん」

「なにかしら」

「ちょっと酸っぱめの炭酸が飲みたくなっちゃった」

「買ってきましょうか?」

幸いなことに数分も掛からない場所に自販機もスーパーもある。

「良かったら一緒にお散歩しない?」

「そうしましょうか。少し夜風に当たりましょう」

「やった! 二人でお散歩だね」

外に出ても恥ずかしくない程度にカジュアルな格好をして二人で夜道を歩く。
お祭りの太鼓や笛を練習する音が聞こえてきた。もう夏祭りの時期ね。

横を歩くまどかを見る。ポニーテールに結ってできたうなじに少しどぎまぎした。
まどかがどうしたのと話しかけてくれたのでそのことを話すと、くすりと笑われてしまった。

しゅっと髪を下ろしてまどかは感想を求める。その姿も改めて見惚れるほど綺麗で
素直に伝えると二人は急に恥ずかしくなって、無言で手を繋ぎながら街路樹のそばを歩いた。

暑いからなかなか外出を切り出せないけど、もっとこうして歩きたい。
春と秋が少し恋しい。二人で夜空の満月を見ながらそんなことを話し合った。


帰宅するとさっそく清涼飲料水で喉を潤す。

「はーっ、とっても美味しいよ」

まるでお酒でも飲んでいるかのようなまどかにくすりと笑う。
まどかが選んだのは飲みやすい微炭酸で梅の風味が施されたもの。最初は梅の炭酸を
気に入らなかったら私の飲み物をあげようと思っていたけど、気に入っているようで何よりね。

「まどかったらお酒を飲んでいるみたい」

「ちょっと酔っちゃったかも」

ふざけたふりで私に甘えてくる。

「嬉しいから買い足しておかなきゃね」

私もふざけた調子で返す。いつもこうやってじゃれあっているけど、この時間が一日のうちで一番楽しい時間ね。

「違うよ。酔ってるのはね、ほむらちゃんにだよ」

満面の笑みでそう言われて、思わず恥ずかしさで戸惑う。

「気持ちは嬉しいけど、その炭酸にアルコールでも入っているのかしら」

いつもよりも攻め攻めな気がする。ペットボトルだからないだろうと思いながらもラベルを見た。
成分表にアルコール度数の記載はない。豆知識に梅の花言葉が紹介されているだけだ。

「シラフで言ってくれたならそれはそれで嬉しいけど、なんだか恥ずかしいわ……」

私もお酒を飲んだように顔が赤くなっている。そんな私にまどかは私の大好きな頬ずりをしてくれた。

「いつもほむらちゃんに酔ってるよ。だからね、褒めてもらえると嬉しいの」

首筋に軽いキスを貰う。うなじや髪型のことが嬉しかったのかしら。
まどかの浴衣姿を思い出す。今年も二人で夜店を回れるといいなと考えながら。

「ほむらちゃん笑ってる?」

どうやら頬が緩んでいたみたいね。

「まどかの浴衣姿を思い出したの。綺麗だったなって。また今年もお祭りを見て回りたいわね」

「うん! また連れていってね。ほむらちゃん、その、一つ聞きたいんだけど……」

「何かしら」

「私、去年の今頃より綺麗になった?」

唐突にどうしたのだろう。まどかは昔から魅力的だったけど、二人で暮らすようになってから
ますますその美しさに磨きがかかっているのに。

「あなたは昔から綺麗よ。今のあなたもすごく素敵。磨きがかかっていると思うわ」

「そう思う?」

「心から」

「嬉しいな……ほむらちゃん、私、二人で生活していてほむらちゃんに大好きって
 言ってもらえることも、二人で、その、身体を重ねるときもすごく幸せなの。
 だからもっと魅力的になってほむらちゃんに喜んで欲しいなって、そう思ってたの」

どうしてあなたはこんなにも愛おしいのだろう。寄り添ってくれた細く柔らかな身体を抱きしめる。

「今のままであなたは世界一魅力的よ。私は世界一の幸せものね」

誇らしげにそう伝える。謙虚な所も魅力の一つだけど自信を持って欲しい。
あなたの魅力を語ったり好意を伝えると恥ずかしそうにはにかんでくれるけど、その全てが心からの言葉だから。

「ありがとう。最近外は暑いし、ほむらちゃんも心配してくれるから、あまり運動とか切り出せなくて。
 家事や二人の時間も大事にしたいし、お昼に室内のヨガとかいいなぁって思ったけど、二人のための
 お金も貯めたいし、このまま8月を迎えていいのかなって思っちゃったの」

私とまどかには小さなな夢があった。
一つ目は挙式すること。こうして寄り添えているならそれで幸せだけど
ウェディングドレスや誓いのキスは魅力的で、正式に結ばれたいと思うから。

二つ目は自分たちのお店を手に入れること。二人で小さな喫茶店をやってみたいと話し合った結果
まどかは料理の腕を磨いて経営の本を読んでいるし、私は珈琲や紅茶の淹れ方を学びながら
今の仕事と平行して良いテナントや条件に見合った資材を探している。

今のままでも充分幸せだけど、叶えたいと思う願い事がある。
でも、そのためにまどかの願望をあまり抑圧したくない。

「まどか、少しならヨガに行ってもいいんじゃないかしら。それくらいなら問題ないと思うの」

「ううん、大丈夫。さっきほむらちゃんが褒めてくれたから心が落ち着いたし
 テレビで体操のコーナーがあるから」

「そう? あまり我慢しないでね。今度その体操を私にも教えてくれる?」

「いいよ。いつも教えられてばかりだから」

まどかが私の耳にキスをする。私がまどかに教えていることって、『そういうこと』なの?
恥ずかしさと同時に胸が甘く疼く。今だってすごく密着してるし、まどかはすごく扇情的で
改めて大変なことを教えてしまった気がした。それでも愛し合いたいと思う気持ちは素直だった。

「まどか、教えられるのは好き?」

「大好き。ほむらちゃんに教えられるの大好きだよ」

「今日も二人で教えあう?」

「教え合おっか。いっぱい教えてね」

「まどかからもいっぱい教えて頂戴」

「うん……大好きだよ」

「私も大好き。愛してる」

冷房を弱めて、素肌を重ねた。二人でどこが気持ちいいのかいっぱい教えあった。



「やっぱり酸っぱいもの好きかも」

少し炭酸の抜けたはずの梅のソーダを飲みながらまどかはそう告げる。

「まどか、本当に大丈夫? 味覚に変化でもあった?」

一時的なものかもしれない。身体が夏バテを予防するためにビタミンを求めているのかも。
それでも少し心配で手を重ねながら尋ねる。

「平気だよ……あのね、ほむらちゃん、呆れないで聞いてくれる?」

「聞かせて」

優しい口調でまどかの髪を撫でながら促す。

「私たちは魔法少女だったから条理を覆す存在だったし、本当に色んなことがあったよね。
 だからその、酸っぱいものが欲しくなったし……もしかしたら赤ちゃんができるのかなって」

「どうかしら……私にも分からないわ」

果たしてあり得るのだろうか。こればかりはそれなりの前兆が来るまで分からない。

「か、考えすぎだよね! ごめんね急にこんなこと言って」

恥ずかしさから反対側に顔を向けてクッションをぎゅっとするまどか。
そんなまどかも愛しくて、手を引いてこっちを向いてもらう。

「まどか、確かに今の段階では分からないけど、私はあなたとの間に愛の結晶を
 授かったのだとしたら、素直に嬉しいと思う」

まどかのほっそりしたお腹を撫でる。切なそうな顔をしたまどかと口づけを交わした。

「ありがとう、ほむらちゃん。少し安心した」

「些細なことでも話してみて。あなたを支えたい、力になりたいから」

「うん……ありがとう。大好きだよ」

「愛してるわ」

「……名前は『ほのか』がいいかな」

「考えてくれたの?」

少し驚くと同時に小さく笑ってから、その後で胸がじんわりと熱くなった。

「もう一つはまどかとほむらの頭文字で『まほ』」

「悩ましいわね」

くすりと微笑む。もし子宝に恵まれなかったとしても、目の前にいるまどかを幸せにしたい。
そう思いながら手を繋いでキスをする。

「ちょっぴり梅の味がするかも」

「嫌だった?」

「嫌じゃないわ」

「よかった……続き、して」

「ええ……まどか、さっきのラベルに書いてあった花言葉、覚えている?」

「三つくらい書いてあったよね」

「その中のひとつに『美と長寿』があったわ。あなたは内面も外面も美しいからぴったりね」

「照れちゃうよ///」

「そんなあなたを愛してるの。だからね、健やかでいて欲しい。長生きしてね」

まどかの手の甲を撫でる。細い指先にも血が巡っていて暖かい。愛おしくてずっと触れていたい。

「二人で長生きしよう。ずっとそばにいてね」

「お返事させて。あなたの唇に」

「うん……私もお返事させて」

桃色にほんのりと赤みを帯びた、梅の花びらのようなその唇に、私はそっと口づけた。
まどか、桜や梅の花のように可憐な人。
どうかあなたが少しでも長く、美しく咲き誇っていられますように。
これからもずっと寄り添わせて。